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国境線から休みなく進み続けて2週間。ロムビア王国の王都に到着。
トシバトゥンの王都は整然とした佇まいから来る綺麗さだったのだと気づくほどに、ロムビア王国の王都は雑然としていた。
配色も何もあったものじゃないカラフルな外壁が立ち並んでいて、これはこれで好きな人はいるのだろう。
現にパーティメンバーの三人は街に入った瞬間に「うわぁ」と嬉しそうな声を上げた。
「なぁ……ロムビアってこんなに暑いのか?」
これまではトシバトゥン王国の領域を主な活動範囲にしていた。そこに比べると南に位置しているからか、太陽の照りつけが容赦なく、ジリジリと暑い。
俺は腕まくりをしながら皆に向かってボヤく。
「私は薄手の服を用意しておいたのですよ」
レヨンは少し大きめな上着をひらひらとさせる。少し中が透けているので薄手の素材なのは確かなようだ。
「……別に普通」
「このくらいなんてことはないな!」
スズとゼツは鼻の頭に汗をかきながらそう言う。こいつらは我慢するタイプらしい。
「ま……我慢出来ないほどじゃないか……うわっ! 冷たっ!」
いきなり首筋にひんやりとした感触があり驚いて振り向く。
どうやらレヨンが氷魔法で水を凍らせて俺の首筋に当ててきていたようだ。
「おまっ……やってくれたな!」
俺はレヨンを羽交い締めにして氷を取り上げて同じように首筋に氷を当てる。
「あっ……ひゃっ……やっ……あんっ……」
レヨンは急に艶めかしい声を出し始める。
「……雌の顔」
「同感だな。あれが誘い受けというやつか」
「そ……そんなんじゃないのですよ……」
俺はレヨンをいじる気もなくなり彼女を解放。レヨンも恥ずかしそうに帽子を下げて被り俺から離れた。
「ま……まぁ、あれだな。王都に到着したことだしまずは――」
「宿探しだな!」
「……ご飯」
「買い物なのですよ!」
俺の話を遮るように同時に3人が各々の希望を言う。
「……まずはギルドだろ? ここの支部にナンプソンがいるんだ。国境線の件も含めて話をしたほうがいいだろ?」
全員が「お前は真面目だな」と言いたげな顔で俺を見てくる。
「お前ら……旅行がしたいのか仕事がしたいのかどっちだよ……」
「それは両立できるのではないかな? まずは宿だ! 野宿はしたくないだろう?」
ゼツはフフンと笑って言い返してくる。
「なら、両立のためにまずはギルドだな。いい宿も紹介してもらえるだろうし、うまい飯屋も教えてもらえるし、買い物券もくれるんじゃないか?」
「私は最初からギルドの支部に行くつもりだったのですよ」
「……ギルド大好き」
「うむ。ノイヤーがいないのは寂しいが仕方ないな」
「お前らの手首がグニャグニャなことはわかったよ」
とりあえず意見は一致したので全員で冒険者ギルドの支部のある区画へと向かう。
他のギルドの支部も寄せ集まった一角に冒険者ギルドの支部はあった。他国の王都に設けているだけあって、本部と遜色ないサイズ感の3階建ての建物だ。
ドアを開けて中に入ると、受付のお姉さんが笑顔で「あかえり」と言って出迎えてくれた。
「ギルドの受付は乳がデカくないと務まらないのか?」
ゼツがそうぼやくのも分かるくらいに、この支部のお姉さんも乳がデカい。ノイヤーさんを彷彿とさせる見た目だ。
「誰の趣味なのやら……トンプソン爺ではないと思いたいのです」
「まぁ……こだわって決めるとしたら長老の誰かだろうな」
「お呼びかな?」
後ろからねちっこい声がしたので全員が驚いてビクンと跳ねる。
いつの間にか背後にいたのはナンプソン。ロムビア王国の暑さのせいか、いつもより髪の毛がジメッとしている。
「……巨乳好き?」
スズはいじっていい人とだめな人の区別がつかないらしい。もちろん、ナンプソンはだめな人。
「何がだ?」
ナンプソンは真面目な顔で返してくるのでスズも引き下がった。
「ナンプソンさん、それより……国境線の橋のところは見ましたか?」
「あぁ。随分と兵士が詰めていたな」
「そうなんです。ロムビア側の指揮官はやる気十分って感じでしたよ。国王とは話せましたか?」
「うむ。国王とのやり取りは私に任せてもらおう。良いかな? 雷神殿」
「はい。お願いします」
「あい分かった。では、貴公らはゆっくりされよ。長旅でお疲れであろう?」
ナンプソンの言葉に三人は喜びを全面に押し出してくる。
「話がわかる人なのです」
「そうだな」
「……最高」
俺達が休むモードに入ったことを確認すると、ナンプソンはニヤリと笑って去っていった。
俺はその笑い方に違和感を覚える。単に笑顔が苦手な人なのかもしれないけれど、ほくそ笑む、という言い方が似合う笑い方だったからだ。
「お買い物なのですよ!」
「だから宿だと言っているだろう」
「……ご飯」
「じゃ……受付のお姉さんに手配してもらうか」
ナンプソンは冒険者ギルドの長老だ。何を考えているかわからないとはいえ、俺達と全く違う方向へは行こうとはしていないはず。
そのはずなのにどうしても心の中のざわめきが大きくなってしまうのだった。
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