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川の中へ雷魔法を流す事数秒。たまらず浮き上がってきたサーペントに向けて今度は脳天から尻尾までを貫くように圧縮した雷を放つ。
一撃で仕留めるために力を出し過ぎたのか、バリバリ! ドガァン! と閃光と共に大きな爆発音があたりに響く。
太陽がすぐ近くに来たかのような明るさにやられた目が慣れると、川の真ん中で伸びているサーペントを視認することが出来た。
ダンジョンから抜け出してきたからなのか、すぐにベヒモスの時と同じように灰となる。
それと同時にプカプカと大量の魚が浮かんできた。どうやらサーペントを倒すための雷が周囲の魚まで感電させてしまったらしい。
「おぉ! 魚が取り放題じゃねえか! 急げ急げ!」
「今日の晩飯は豪華だぞぉ!」
周りにいた兵士や町人たちはサーペントがいなくなった川に向かって船を出し始める。
それは向こう岸のトシバトゥン王国側も同じ。
だが、お互いに網で魚を掬うだけで、一向に言い争いや小競り合いは見受けられない。
突然の大量にお祭りのように両岸が盛り上がっている。
「……私も」
「待て待て! 私達がでしゃばる場面ではないだろう!」
スズが食欲に負けて川へ入っていこうとしているところをゼツが腕を掴んで引き止める。
「それにしても平和なのです。本当にここで戦争なんて起こりそうなのですか?」
「いずれは、そうなりますよ」
レヨンの問いに答えるためではないのだろうけど、良いタイミングでハニヤが現れて俺達の隣に立ち、対岸を眺めている。
対岸にある偵察台にはトシバトゥン王国側の責任者であるハイカが立ち、こちら側をじっと見ていた。
二人の視線は明らかに交差しているし、その目つきは川の上で突然の豊漁に喜んでいる兵士達のそれとはまるで違っている。
「まるでロムビア側から仕掛けるとでも言いたげですね」
俺はそれとなく探りを入れてみる。
ハニヤはおどけた顔をして「どうでしょう?」とだけ言い、自分の部屋がある小屋へと戻って行った。
「こっちだ! こっちに流れて来い!」
「こっちだろ! ロムビア側に行くなぁ! あぁ……」
川の中心が両国の境目らしく、律儀にその線を守り、ぷかぷかと大きな魚が国境線のこちら側に流れてくるのを両国の人が見守っている。相手側に流れたところで非難はしない。
所詮、小競り合いなんていうのも上の人達の争いであって、下々にいる一般人からしたら大した興味は無いのだろう。
お祭りのように騒ぎながら協力して魚を取り上げている人たちを見ているとそう思わざるを得ない。
「どうする? 俺達はもう行くか?」
「……そうする」
スズはグゥ~とお腹を鳴らしながら俺の右腕に抱き着いてきた。
「はいなのです! 目指せ王都! なのですよ~!」
左腕はレヨンが占拠。左右にぐいぐいと引っ張られるので真っ直ぐ歩けなくなる。
「お前ら力を抜いてくれよ……」
「何を抜いてくれとねだっているんだ?」
ゼツは俺の斜め前に来てニヤニヤしながら右手をグーにして上下運動させる。
「だからそんな事言うんじゃねぇよ! するな! 見せるな!」
「はっはっ! それにしても、ヨウムでも戦争が起こりそうだな!」
ゼツはそう言って俺達三人を見て豪快に笑う。
「誰と誰が戦争するんだよ」
俺がそう言うとスズとレヨンは俺を挟んで目を見合わせる。
え? 二人って仲悪いの!?
「おまえら……仲良くしてくれよな」
「仲良しなのですよ。ね? スズさん」
「……うん。とっても仲良し」
そう言う二人はニッコリと笑ってはいるが、ギリギリと俺の腕を締め上げて引っ張ってくる。
「言葉と態度と力の入り具合が合ってないんだけど……」
「……気のせい」
「そうなのですよ。気のせいなのです」
「本当、パーティ内で揉め事は勘弁してくれよなぁ……」
「今回の小競り合いの原因はヨウムにありそうだがな」
ゼツはそう言ってにやりと笑う。
「そうなのか? 俺、何かしたか?」
「……何もしないのが悪い」
「そうなのです」
どうやら女性陣の意見は一致しているらしい。
パーティ運営は難しいなぁ、と思いながら、俺達は国境線を後にするのだった。
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