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「こ、国王が俺に何の用なんですか?」


「それは来てもらえれば分かる」


 ユティラミアと名乗った騎士は毅然とした態度で俺の質問を突っぱねる。


「俺達は今、カスタリア公爵に雇われているんです。領内の魔物の討伐をしないといけない。それが終わってからでもいいなら……」


「すまないが、即日で王都で向かってもらいたい。カスタリア公爵の了解も得ている」


「そうなんですか?」


「ま……まぁ、そうであるな」


 カスタリア公爵も相手が王の名代となるとあまり強く出られないようで、歯切れの悪い返事をする。


 王都はここから遥か西にある。冒険者ギルドの本部があるワイムが中間地点になる程だ。移動にばかり時間を取られるのは面倒だが、雇い主の公爵が良いと言っているのだから俺達がどうこう言えるものでもない。


「分かりました。じゃあ……皆はここで待ってるか?」


 三人にそう尋ねるも、誰も首を縦に振らない。着いてきますよね、そりゃ。


「ワイムよりも更に都会なのだろう? 私はいったことが無いんだ。楽しみだな」


「おーとおーと! 王都でお買い物なのですよ!」


「……三ツ星レストラン」


 三人の目的は様々だが、少なくとも真面目なものではなさそうだ。


 ユティラミアは俺達をジト目で見てくる。雰囲気からもかなり生真面目な感じがしているので、冒険者側のこういうノリはあまり合わないのだろう。


「で、では、行きましょうかぁ! ユティラミアさん!」


 俺はユティラミアの視線を躱すようにそう言って立ち上がる。


「あぁ。私の事はユティと呼んでくれ。貴公らの護衛も私の任務の一つだ。よろしく頼む」


 俺達、護衛される程弱くは無いんだけどな、とはさすがに言えないのだった。


 ◆


 馬車に揺られること一週間と少し。やっと王都に到着。


「うわぁ……城壁が高いのです」


「すげぇな……」


 俺も王都には来た事が無かったので、あまりに立派な城壁に言葉を失ってしまった。


 すぐ目の前にそびえている真っ白な城壁は定期的に手入れがされている事が伺えるし、その高さは雲を突き抜けるんじゃないかとすら思ってしまう程だ。


 実際には雲までは届かないだろうけれど、この城壁の向こうに籠られたら突破するのはかなり大変だろう。上まで届く梯子も作れないし、魔法や矢も上まで届くか怪しいほどだ。


 城門をユティの顔パスでくぐり、大通りを進んでいくとこれまた幅が広い堀に囲まれた城が現れた。何から何までスケールで圧倒されるまま王城の中へと馬車は進んでいく。


 馬車の乗降場所に到着すると、ユティが真っ先に降りて俺達を先導する。


「ではこれから国王との謁見の準備に入る。謁見はヨウム殿だけが参加されるのか?」


「用事は俺だけなんですか?」


「あぁ。今回の依頼はテクノスではなく、ヨウム殿個人へのものだ。他の方は中で休まれてもいいし、市街地へ向かわれても構わない」


 ユティはそう言うが、誰も市街地の方を見向きもしない。


「私も行くのです!」


「では私も行こうかな」


「……面白そう」


 三人は口々に俺についてくると言った。


「お前ら……遊びじゃないんだぞ」


 まぁ国王に会うだなんて死ぬまでこんな機会があるとは思わなかったし、せっかくだからあってみたいという気持ちも分からないでもない。


「では、4人だな。最初に身体検査を行う。信用していない訳ではないが、念のためだ。こちらへ」


 ユティは俺達を先導するように城の中へ入っていく。


「身体検査……一体どこまで調べられるのか楽しみではないか。穴の中まで見られてしまうのかな? レヨン、どう思う?」


「へ!? あ、あにゃなのですか?」


 レヨンは自分に振られると思っていなかったのか驚いて噛んでしまった。


「ケツの穴に何か隠してるって疑われそうなのはゼツだろうな。普段の言動からして怪しいだろ?」


「おぉ! そっちもあったか。早めに片づけておかないとな……」


「い、入れてるのか?」


「わははは! 冗談だよ、冗談!」


 ゼツは城中に響きそうな大声で笑う。


「検査ってユティさんがするのですかね。も、もしかしてヨウムさんも裸にされて……」


 レヨンも暇なのかゼツに乗っかって俺をいじり始めた。


「俺の時は男を呼ぶだろ! 仮に脱がすとしても!」


「堅物女騎士が裸を見た途端……というのも中々たまらないシチュエーションじゃないか。なぁ? ヨウム?」


 ゼツの卑猥な妄想が止まらない。この一週間、ずっと糞真面目なユティが一緒でろくな雑談も出来なかったのでかなり欲求が溜まっているようだ。


「俺は別に……女騎士とかは好きじゃないぞ」


「俺はどちらかと言えば魔女っ娘だな」


 ゼツが背後に来て、俺の声真似をしながらそんな事を言う。


 レヨンはさっと帽子を盾にしながら俺から距離を取った。


「ヨウムさん……魔女っ娘フェチだとは思わなかったのです……」


「おい! どう聞いても今のは俺の声じゃないだろ!」


「……ロリコン」


「その発言は私にとっても失礼になるのですよ……私は大人なレディなのですから」


 ロリ魔女っ娘は思わぬ角度からの射撃に戸惑いながら帽子を被り直す。


「テクノスの皆様、急がれよ。既に王にも謁見の準備を始めるよう使いを出しているのだ」


「あぁ……すみません! 今行きます!」


 俺までユティに怒られてしまった。こいつらを連れてきたのは間違いだったんじゃないだろうか、なんて思いつつも、やっぱり緊張するしいてくれて良かったとも思う。まぁ口が裂けてもそんな事は言えないのだけど。

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