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【お知らせ】

今話で一部完結となります。

二部も更新予定ですので、ブクマはそのまま!だと嬉しいです。

 長老たちの会議室を出て、ギルド本部の集会所に行くと、受付にいるノイヤーさんが手を振って俺達を呼ぶ。


 どうせ今晩あたりに一杯飲みに行こうという誘いが来るだけだろう、と思いながらも受付に向かう。


「皆! 今から飲みに行こうよ!」


「はやっ……」


 想像よりも早い時間だったのでついそう言ってしまう。


「むぅ……私、本当は今日お休みなんだよね。元々ハイドン鉱山のダンジョンに出張してる予定だったからさ。癖でここに居るけど暇でさぁ」


 言われてみればノイヤーさんの隣には別の受付の人がいて、仕事はその人がやっているようだ。


「なら一人で飲んでたらいいじゃないですか」


「えぇー! そんな事言わないでさぁ……ね?」


 ノイヤーさんは胸の下に腕を回し、たゆんたゆんと豊満な胸を揺らしながら俺を誘ってくる。その瞬間、殺気ともなんとも言い切れない空気が背後にいる3人から漂い始める。


「下品な乳なのです」


 レヨンの冷たい声が聞こえる。


「……爆乳」


 スズは相変わらず無の感情でそう言う。


「ノイヤー! 構わんぞ! もっとやってくれ!」


 ゼツは大興奮。もう慣れたけれど、この人が唯一の正式パーティメンバーという事実を思い出すたびに少し悲しくなる。


「もっとぉ!? ほれほれえ!」


 ノイヤーさんはさらに激しくたゆんたゆんと胸を上下させる。そんなアピールをしてくる程、なぜかレヨンの俺に向く視線が痛くなる。あ……あれ? ビリビリしてきたけどレヨンって雷魔法使えないはずだけど?


 そんな風に雑談をしていると、横から見知った顔が現れた。ゼカとムサビだ。首からはドッグタグのような鉄板をぶら下げている。


「よ……ヨウム。久しぶりだな」


 ゼカが恐る恐る俺に話しかけてきた。


「あ……あぁ。久しぶり。何の用だ?」


「いや……ちらっと小耳に挟んだんだがな、今って二人パーティらしいじゃないか。俺とムサビを入れて貰えないかなって……」


「無理な相談だな」


「そ、そう言わず! この通りだ!」


 ゼカは床に正座すると、額まで床に擦りつけて拝んでくる。ムサビもそれに続いた。なんとも居心地の悪い空間だ。


「私からもお願いします! ヨウムさんは何もしなくていい! 私達が全部やります! これまで通り! それではダメですか?」


 ムサビは顔を上げて必死の形相で訴えかけてくる。


 こいつらは何もわかってない。俺が何もしなくていい? じゃあ俺じゃなくても良いじゃないか。


 俺も悪かったのかもしれない。本当の力をひた隠していたのだから。でも、各々の役割を全うはしていた。何もしていないわけじゃない。今の四人なら誰もそんなことは言わないはずだ。


「それだからダメなんだよ。何も分かってないんだな。それに、もうすぐ4人埋まるんだ。動きづらくなるからそれ以上の人数のパーティにするつもりはない。二度と俺の前に現れないでくれ」


「なっ……」


 二人は立ち上がると俺をキッと睨みつけてから去っていった。


「あの二人……D級なのだな」


 二人の背中を見ながらゼツがそう呟く。


「D級? 嘘だろ?」


「本当だ。ランク証を見れば一目瞭然だからな。余程これまではヨウムにおんぶにだっこだったとみえる」


「俺は別に……大したことはしてなかったよ」


「あぁ! ほらほら! 打ち上げ行こうよぉ! ね? 飲んで嫌な事も嫌な奴も忘れちゃおー!」


 妙に湿っぽい空気になっていると、受付のカウンター越しにノイヤーさんがまた元気な声をかけてくれる。


「そうですね。あ! でも先に行かないといけないところがあるので……」


「……どこ?」


 飯にありつけると思っていたのか、スズが絶望的な表情をしながら聞いてくる。


「依頼人のアイノさんにまだ報告してないだろ? それにカスタリア公爵への謝罪もある。まぁ俺が一人で行くから皆は先に飯でも食っててくれ」


「そうはいかないな。こう見えても私も『テクノス』の一員だ。ついて行こう」


 ゼツは誇らしげに胸を張ってそう言う。


「なんだよ。自覚が出てきたんだな」


「当然だろう?」


「……私もついて行く。新しい女の匂いがする」


 スズはそう言って俺の左隣にピッタリとつけた。


「そんなんじゃないからな……」


 後はレヨンだけ。ちらっとレヨンの方を見ると「わっ」と驚いた声を出して帽子を目深に被った。


「レヨンはどうする? 来るか?」


「あー……」


「まだ資格がどうこうとか言ってるならもう遅いぞ。報告の行脚が終わったら長老たちに正式に宣言するからな。この4人でテクノスだって」


「うぅ……つ、ついて行くのですよ!」


 レヨンはやけくそになって俺の空いている右腕に抱き着いてきた。


「そ、そこまで密着しなくていいからな……」


 やることはたくさんだ。アイノへの報告。いや、先にカスタリア公爵への謝罪だろう。領地にいるのならまた馬車で逆戻りか。そういえば預けていた宝石もまだ受け取ってなかったな。


 そんなことを考えながら俺達は四人でギルドの集会所をあとにするのだった。

以上で一部完となります。

少し空けてから二部も更新予定です。


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