16
5人の兵士と共に坑道の中を進む。明かりは各々が持っている松明だけ。
少し進むたび、灯りの消えた松明に火を移す作業を繰り返しながら奥へと進んでいく。
そんなことを一時間も繰り返していると、明るく開けた空間に出た。あたり一面、貴金属の結晶が露出していて光を乱反射している。
「うわぁ……綺麗なのです……」
「うむ。故郷の星空を思い出させる美しさだ」
レヨンとゼツもその輝きに見惚れている。俺はここでミスラルとナツナに渡す宝石を探さないといけないのだった。
一人で先に進むと、岩陰で何かが蠢いているのが見えた。それは一匹ではない。何十匹もの生き物が寄せ集まって一つの岩に見せかけていたのだ。
その岩を構成していた生き物は俺に気づくと一斉に離散してこちらを向く。
「おっ……オレスリザード!」
岩に見えていたものはオレスリザードだった。そして、オレスリザードが元々集っていたところには見事な大きさのミスラル鉱石があった。
オレスリザードの群れは俺に向かって威嚇をしてくる。
あのミスラル鉱石は自分たちのものだと言いたげだ。
「ヨウムさん! 一旦引きましょう! 数が多すぎるのです!」
レヨンが背後からそう叫ぶ。だが、オレスリザードの足の速さもわからないのに、逃げ切れるのだろうか。テクノスの名にかけても兵士達や仲間に怪我をさせるわけにはいかない。
俺は強めに調節した雷魔法を一匹のオレスリザードに向かって放つ。
バツン! と音がしたが、やはり石のように高い表皮を貫くことはできないようだ。
もう一度、さっきよりも強めに放つと、倒れはしなかったがオレスリザードは怯んだ。そして、表皮は溶岩のように赤く輝き出した。暗闇でも光るそれはまさに溶岩だ。
「そうか! 溶かして貫通させれば……おい! 全員耳と目を塞いでくれ!」
背後に向かってそう叫ぶと、俺はこれまで人前で見せたことがない程に魔力を凝縮し、一筋の雷を放つ。
バリバリバリバリ!
空も見えない採掘用の広い空間に雷鳴が轟く。
それと同時に、一筋の閃光が一匹のオレスリザードを頭から貫いた。
真っ赤に溶けた液体が流れ出ているのは血か溶岩上になった表皮だろう。
(これならいけそうだな……)
俺は同じように魔力を凝縮し、今度は一斉に雷を放つ。
バリバリバリバリ! ゴロゴロ! ドーン!
地下空間は一瞬で大荒れの天候を迎えたように騒がしくなる。
眩い光に目をやられそうになるので目を腕で覆う。
少しして腕を離すと、目の前には大量のオレスリザードの死体が転がっていた。
「うぅ……耳がツーンとするのです……」
「こっ……これは凄まじいな……」
音と光にやられてしまったのか、フラフラしながらレヨンとゼツが俺の隣にやってきた。
背後では兵士達も光にやられて気を失っている。
「あ……や、やり過ぎたな……」
俺がそう言うとレヨンは俺の肩をポカンと叩いてきた。
「だーかーらー! これが出来るなら最初っからやってほしかったのです! なぜ支援に回るような立ち回りをしていたのですか!」
「本当は本気を出すなって止められてるんだよ。だけど緊急事態だから仕方なかった。生け捕りも無理だったしな。とりあえず一回戻って他の入り口を封鎖し直したほうがいいな。多分ゾロゾロと入ってきてるぞ」
俺は別の入り口から繋がっているのであろう通路を指差す。そこからは別のオレスリザードが首だけを覗かせて俺たちの方を監視していた。
「ゼツ、一緒にミスラル鉱石を集めてくれ。小さいやつが十個くらいあればいいよ」
「承知した」
「レヨンは倒れた5人の介抱を頼む。歩けるようにしてくれ」
「分かったのです!」
アイノはここまで読んだ上で俺達を寄越したのだろうか。いや、さすがに考えすぎか。
俺はゼツと一緒にミスラル鉱石の採取を始め、真ん中にあるオレスリザードが集っていた一際大きなミスラル鉱石を見つめる。
あんなにオレスリザードが集まっていたのにレインディアが知らなかったなんてあり得るのか? と不意に疑問が頭をよぎるのだった。
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