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この作品には 〔残酷描写〕が含まれています。
苦手な方はご注意ください。

ゲキド

作者: 勠

リメイク作品も作成予定です

「舐めた面しやがって!」

 体格の良い男が小柄な少年に殴りかかる。顔面に向かって来る男の拳を少年は腰を少し落として躱した後、男の腹に拳を打ち込んだ。 もろに拳を食らった男は目を白くして倒れてしまった。

(舐めた面ってどんなだろ⋯⋯)

 少年はこう思いながらその場を去った。この時、少年は十三歳だった。

 

 大人にも勝てる少年は高校に上がるとぱったりと喧嘩を止めた。中学三年間、負けなしであったから喧嘩がつまらなくなった。

 そんな少年は優という名である。大人しく、抵抗もしない為、いじめの対象になった。毎日殴られるだけの生活が暫く続いた。

「おい!優!今日も俺のサンドバックになってくれよ」

 いつも朝と放課後でそれぞれ同じ時間、同じ場所、同じ人物に殴られ続ける。

 優の通う高校には落ちこぼれが多く通っている。優の様な日々喧嘩に明け暮れる人や頭が悪い人などだ。

 まさに地獄。校内ではいじめが至る所で行われている。自分が標的にならない様に誰もがいじめを黙認し続ける。勿論、生徒だけではなく教師も例外ではない。まともな授業が行われるはずがない。

 こんな高校でも入学希望者はあとを絶たない。いじめを告発できる生徒が居ない為、外部にこの学校の闇が漏れないのだ。それに加えてどんな成績でも入学可能である魅力もある。

 ただ、自殺者も絶えない。

 誰しもが強い訳ではないからいじめに耐え抜ける生徒が居ない。だが、入学生が途絶える事がないから、標的も途絶えない。極稀に強い入学生もいるが、ただ強さの序列が変わるだけで地獄は終わらない。

 いじめられた子の親は我が子を心配するが、いじめを打ち明けたとしても何も変わらない。というより、何も変えられない。

 極論、そんな学校に入学した本人が悪いと言ってしまえばしょうがない事となる。

 ところで、この学校は男女共学だ。女子だからと言っていじめられない程、優しい世界な訳がない。男子にはほぼ勝てないので、女子はどの男子に付くかで高校三年間の楽さが大きく変わる。男子に付く方法はたった一つ、己の身体を売る事だ。男子に付けなければ、死を待つだけだ。男子に付けたとして楽になれるのは気に入られている間だ。身体を売ったとしても玩具になれば何も変わらない。実際、いじめと同じく女子が無残な姿になっているのも多く見受けられる。まさに地獄。

 男子では一匹狼は珍しくないが女子だと極端に珍しい。優と同学年の翠という女子だ。喧嘩が強く、口調も男勝りで、男子も下手に手を出せない。そんな翠は人知れず、大人しく静かな優に好意を寄せていた。

 ある日、翠は優のいじめられている現場に出くわした。たまたま普段の時間と違った。

「先公に怒られたからむしゃくしゃすんだよ!」

 相変わらず優は抵抗しない。翠の身体は気が付くと動き出し、優をサンドバック扱いしている男の股間を思いっきり蹴り上げていた。男はあまりの痛さに気絶してしまった。翠は直ぐに優の腕を掴んでその場から走り去った。

「どうしてやり返さないの?おとこでしょ!」

 翠は四階建て校舎の四階女子トイレで優を怒鳴った。翠は行く当てなく優を連れて逃げる様にその場を後にした為、これまた気が付くと四階女子トイレに駆け込んでいた。

「お前には関係ないだろ。俺は喧嘩を止めたんだ」

 こう吐き捨てて自分の腕に震えながらしがみ付いている翠の腕を振り払い、個室を出ようとした優の腕を翠はまた掴んだ。

「やられっぱなしなんて格好悪いよ!」

「別に良いだろあんな雑魚を倒したって何もならん」

「やり返しも出来ない癖に雑魚とか言うのダサい」

「お前にダサいと言われ様が構わん」

 翠は優を挑発しようとしたが、優には全く無意味だった。

「じゃあな。適当に反撃するとか敵増やすだけだぞ」

 優はこう吐き捨ててその場を去った。

 翠は全く挑発に乗ってこない優に一瞬呆気にとられた後、優を追いかける為に女子トイレを飛び出した。が、飛び出した先に居たの優ではなく、先程翠が股間を蹴り上げた男が立っていた。

「よう。さっきは良くもやってくれたな」

 男は不適な笑みを浮かべながら翠に近付いた。翠は身構えて男の攻撃に備えた。

 男の攻撃は大柄なのに素早く重たいものだった。最初はかろうじて防いでいた翠も徐々に男の攻撃を防げなくなっていった。腕は男の攻撃により痺れて感覚がほぼ無くなりつつある。腹や顔には沢山のあざが出来た。この状態に陥るまでに三分も掛かっていない。

(殺される⋯⋯)

 翠は死を覚悟した。

「下手に出てやってんのに調子に乗るなよ」

 ただならぬ殺気を放ちながら優は吐き捨てた。

「俺のサンドバックが偉そうに⋯⋯」

 男は翠を殴るのを止めて標的を優に切り替えた。いつもの様に男は優に殴り掛かったが、全ての攻撃を優は躱した。

「お前の攻撃は遅すぎる。威力も無いし、弱い。その程度で粋がるんじゃねぇよ」

 男の攻撃を躱しながら、優は男を煽った。「舐めた面しやがって!お前如き俺に敵う訳がないんだよ」

 男の攻撃は更に雑になっていく。

「お前の攻撃なんざ躱す価値もねぇ」

 優は宣言通りに男の拳を顔面で受けた。そして笑みを浮かべた。

「ほらな。お前は弱い」

 優は言い放った後、男の腹に拳をめり込ませた。

 翠は優の発言に嘘はないと思い知らされた。そして、翠の優に対する好意は更に増した。

「お前、よく耐えたな。乗れよ」

 優は翠の前にしゃがみ翠に背中に乗る様に促した。翠があたふたしているのに気付いた優は無言で翠をお姫様抱っこした。

 翠は顔を真っ赤にした。

 

「優の事⋯⋯好き⋯⋯」

「何だ?お前らしくねぇ」

「何よ!最低」

「俺もお前が好きだ」

 あの出来事以降、翠と優はよく一緒に居る様になり、お互いがお互いを好きになっていった。そして付き合う事になり、幸せな時間が暫く続いた。

 

 だが、長くは続かなかった。

 翠にも優にも敗北した男は「打倒、優」を掲げ、喧嘩好きを集めて軍団を作った。

「よう。サンドバック。殴りに来たぜ」

「今回は人数多いな」

 人数以外はいつも通りだった。

「俺の部下をお前の大事な人の元へ向かわせてある。どういう事かわかるよな」 

 卑怯な男だ。優に抵抗させない為に人数を増やし、翠までも人質にした。

 抵抗できないまま、数十分殴られ続けた。

「優!」

 意識が薄れる中で優は翠の声を聞いた。一刻も早く優に近付きたかったが周りにいる男達が邪魔で行けなかった。翠は女の子とだが、一匹狼の様に誰にも付かずに暮らしていける程の強さはある。男達を次々と倒しながら、やっとの思いで優の元へ辿り着いた頃には既に散々殴られた優は虫の息だった。

 あまり悲惨で優に近付けたのは良いがその場に立ち尽くしてしまった。

「よう!サンドバック二号」

 いつも優をいじめている男は不適な笑みを浮かべて、立ち尽くしている翠の腹に思いっきり拳を打ち込んだ。

 鈍い音が響き翠は後方へ吹っ飛んだ。そして、倒れている翠の周りに男達が群がり始める。翠は腹を抱えて悶絶したままだ。

「覚悟はいいな?」

 倒れていえる翠を見ていた男達は凄まじい殺気を感じ取り視線を優に動かした。

「何だ?サンドバック。威勢だけは良いな。お前ら!殺れ」

 命令が下り一斉に襲い掛かって来る男達に急所へ強烈な一撃を優が打ち込んだ。その場にいた二十数名の男がたった一撃で次々と倒れていく。

「残るはお前だ。今度は俺がお前をサンドバックにしてやるよ!」

 いつもの男に優は何発も拳を打ち込み続けた⋯⋯

 

 あの出来事以降、優は学校内を周りいじめ現場を徹底的に潰し、平和な高校へと変えた。

 そして優と翠はずっと仲良く幸せに暮らした。

 

読んで下さりありがとうございました

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