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まんなか  作者: R
2/9

第二章 吉田 優子

今日もいつも通りの一日が始まった


吉田 優子 25歳 派遣アルバイト

アパレル関係の派遣会社で

週6日ほど働いている


唯一の休みは

トイレと食事以外のほとんどを

ベッドの中で過ごす

このご時世便利なもので

携帯電話というハイテク機が

1台あればベッドの中で

買物も宅配も指1本でできる

もちろん支払いだって


分からないことは

検索すれば直ぐに答えが見つかるし

暇を潰したければゲームし放題

誰かに聞いてもらいたいことがあるなら

ネットに書き込めば全世界が聞いてくれる


リアルな人肌の温もりというものを

随分感じていないわけだが

夜になると寂しいなどと言いつつ

そんな気楽気ままな生活パターンも

1年が経とうとしていた


地元の調理専門学校を卒業し

保育所で給食を作っていたが

何かしっくりしないまま

悶々とする日々を変えたくて

わずかな貯金と漠然とした都会への憧れだけで

大阪での一人暮らしを始めた


多種多様なバイトを転々とし

結局のところ

仕事情報サイトで高時給

交通費全額支給

髪型自由という絞り込み検索で

ヒットした会社にいくつか応募した結果

現在の派遣会社に身を寄せている


派遣といっても

WAVEという服屋の常勤で働き始めて1年が経つ

社員にならないかという話をもらっているが

あまり乗り気ではないし

そろそろ他の仕事でもしようかと考えている


なぜって

悶々とした日々を変えたくて

大阪に出てきたものの

色々な仕事をしても

その違和感は全く拭えないままでいる


そんな中

ばあちゃんの最後の言葉がさらに絡まって

今朝は変な夢まで見るのだから

悶々を通り越してただただ気怠い


テレビのニュース番組を流しながら

ソファでグダグタと歯磨きすること10分

昨夜準備しておいた服に着替え

メイク10分

髪のセット10分

無糖ヨーグルトに

薄くスライスしたリンゴ半玉と

蜂蜜をかけた朝食を摂ること10分


何の返答もない六畳の小さな部屋に

「行ってきます!」

と気合いを込めて出るのが

朝のルーティーンだ



「いらっしゃいませ。

どうぞごゆっくりご覧くださいませー」



服屋の店員はなぜ

あの様な声を出すのだろうか?

疑問に思っていたはずの自分も

今ではすっかり同じように挨拶をしている

お客様の不快にならない声を出しなさい

少し鼻にかけて高めの声で上品に

と言われてしまっては

もうコレ以外に辿りつける気がしない


むしろ

通りすがる人にまでモノマネされそうなほど

間違った方向に極まりつつある

私のいらっしゃいませは

雑音に上手く溶け込むBGMではなく

耳について仕方ないかもしれない


私の心の隅には

アパレルの仕事に憧れる連中を

バカにしている私が居る


特にやりたい仕事ではないし

仕事情報サイトの

絞込み検索でヒットしただけで

生活の為でしかない


正直

服に対してのこだわりもない

トレンドがどうした?

流行りに乗らないと置いていかれる?

服屋で働いてるなんて

ただのミーハーじゃないか


流行ってるものが可愛いと思えてしまう

脳みそ停止状態の自分がない奴ばかりじゃないか


アパレルの仕事をしているけれど

自分は他と違うなど、とてもじゃないけど

言葉にできそうにないので

自分でも忘れてしまうくらい

心の隅のさらに隅っこにしまってある


そこら辺の反発が

ヘンテコないらっしゃいませとなって

出ているのかもしれない


そんな私だが

仕事を転々としていくうちに

気づいたことがある


どうやら私は

喋りかけやすいキャラクターのようで

WAVEでもお客さんや同僚とも

1人を除いては仲良く仕事をしている


そう

1人を除いては

 

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