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プロローグ*2

プロローグは連続投稿させて頂きます。


2021.6・25

プロローグ2と3をまとめて1話にさせていただきました。

少しだけ加筆修正をしております。

「魔女様!この間は薬を調合いただきありがとうございます。

 お陰様で息子も元気になりました。」


「まじょさま、ありがとう!!」


 買い出しのために町を歩いていると、先日薬を調合した子どもとその母親が声を掛けてきた。


 私はその子どもの様子を観察し、すっかり元気になっていることを確認すると


「元気になってよかった」


 と、子どもの頭を撫でながら答える。

少し親子と話をし、食料や薬の素材をそろえるためその場を後にする。

 

 別れ際に子どもから貰った飴を口の中で転がしながら、今日はいい日になりそうねと呟いた。



────────

──────

────



 私はいわゆる『魔女』と呼ばれる者だ。

一般的に『魔女』とは『魔力の扱いに秀でた者』とされている。


 魔力はヒトであれば大なり小なり生まれた時から持っており、人々は魔力をその特性に合わせて自分だけの使い方を見出している。

 基本的には他者の魔力に干渉ができないこと、魔力の使い方は一人一つであることが前提ではあるが、魔力の使い方は多種多様で町の人を見ていて飽きることがない。


 市場で大きな声で客に商品を宣伝している女将は自分の声に魔力を乗せて声を大きくし、荷運びをしているやせ型の男性は筋肉に魔力を纏わせて大きな複数の樽を軽々と抱えている。

 冒険者と呼ばれる者は武器に魔力を纏わせ魔獣を倒したり、魔力に属性を持たせ特定の攻撃の手段とする者もいるという。



 このように人々が魔力を様々な形で使う中、『魔女』は先ほども言った通り、()()()()()()()()()()である。


 人並み以上の魔力を持つ者、魔力に対し学術的に研究をし専門的な知識を持つ者や、魔力量こそ人並みだが緻密なコントロールを得意とする者、他者の魔力を自由自在に操れる者や複数の魔力の使い方ができる者など、様々な意味で規格外の者が『魔女(あるいは魔法使い)』と呼ばれる。



 私がなぜ『魔女』と呼ばれるかと言うと

人並み以上の魔力を持つゆえに複数の魔力の使い方を習得してしまい、さらには魔力の多さから老いることのない体になってしまったから。


─若い姿のままで固定されて良かったと心の底から思う─


 私は人々から『不死の魔女』と呼ばれている。



────────


──────


────



 町の人達の様子をぼんやりと見つめ、つらつらと考え事をしながら歩いていると、目の前に怪しげな店が見えてくる。レンガ造りの家全体を蔦が覆い、全体的に薄汚れた佇まいのこの店は看板すら出ていない。一見するととても営業中の店には見えないが知る人ぞ知る薬の元となる素材を扱う老舗である。


 店の扉を開けると、くたびれた外観とは異なり店内は意外と清潔で整頓されている。

―どんな用途に使うのか分からない、怪しげな物が所狭しと並んでいることを除けば―普通の店である。


 私はそんな陳列棚を素通りし、店の奥のカウンターにいる店主に声を掛ける。


「相変わらずね、ここの店は。

 いつもの薬草を季節風邪に備えてできれば数を揃えたいのだけど…」


 深緑のローブを身に着けフードを深く被り、顔が全く見えないようになっている店主がどこか疲れたような声で返事をする。


「なんだい、あんたかね。生憎だけど、いつもの薬草は売り切れだよ。

 なんでも近日中に大量に必要だとかで、薬師が買い占めちまったのさ。

 …薬草の処理を大量にしたせいで酷く疲れたわい…全く…」


 不機嫌そうにブツブツ言いながら店主が腰を叩く。

内心で(今日はいい日ではなかったみたいね)と思いつつ、いつ頃また入荷するかを訪ねると


「ここいらの薬草は取り尽くしたようだから、速くとも一月後になるだろうね」


 と素っ気なく返事を返されるが、思い出したかのように猫なで声で話を続けてきた。


「離宮近くの森ならまだ薬草はあるだろうよ。

 あそこは『魔女様』以外は立ち入ることができぬ場所だからねぇ」



 確かにあの森は『魔女』以外の立ち入りを厳重に管理している場所なので、薬草自体は探せばあるだろう。しかし離宮とはいえ王宮の近くにあるので、私はあまり立ち入った事がないし行くことに対しても気が進まない。

 ただ··薬草が無いのは困る。季節風邪は抵抗力の低い子供や老人の場合、重症化しやすいのだ。


「分かったわ。たまには自分で採取するのも悪くないわね」


 仕方なく私は採集をしに行こうと踵を返すと、後ろから嬉しそうな声が追いかけてきた。


「ちょいと多く採ってきておくれよ。買取額は勉強してやるから」

 

これを期待していたのかと私は苦笑いをしつつ、店を後にした。 

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