カフスは踊った
カフスは踊った。
ひらひらと、くるくると、きびきびと、がたがたと。
月明かりを頼りに、星屑を観客に、虫の音に合わせて手を叩く。
それは滑稽で、不規則で、いい加減で、情熱的で、
祈るように、嘲るように、語るように、嘆くように、
ふあふあ、ふあふあカフスは舞う。
取り留めのない自由なダンスは、いつしか人を集める。
カフスの踊りは太鼓によく合う。
カフスの踊りはリュートの音色に映える。
音を奏で、酒を交わし、カフスのように皆が踊る。
カフスの踊りはこうだったか?
いやいや、カフスの踊りはこうあるべきだ。
古参は新参を教育し、こうあるべきだと説教する。
作法を、韻を、礼を、想いを。
自由であることを強要し、平等であれと命令する。
それが使命と鼻息を荒くする。
ある日カフスは踊らなくなった。
窮屈、窮屈、次は詩でも詠もう。
カフスのいないカフスの踊りは、毎夜続くが人は減る。
リュートが消え、太鼓が止み、
虫の音が落ち着くころ、やがて誰もがいなくなる。