世界一お休みって言い方が似合う受付嬢
ルーナとマイアを奴隷として購入したよ。二人とも性格は対照的だったけど、人格に問題は無いはずだ。ルーナは護衛要員、マイアは家事要員として働いてもらう。
ただ、どっちの要員も一人ずつしかいないから、なるはやで段階的に増やしていく必要がある。それじゃ休みが無くなるからね。ブラック環境を憎む僕としてはそんなのは言語道断だ。でも、人の管理とか採用ってマジで難しいんだなぁ……ってちょっとげんなりしてる。奴隷頭とか奴隷長みたいなのいた方がいいんだろうな。中間管理職として。
今、奴隷二人はカリンと必要なもの買いに行かせて、僕とベステルタは冒険者ギルドでシャールちゃんに魔道具の調査結果を聞きに行くところだ。
「ケイ、冒険者ギルドで冒険するのよね? ダンジョンに潜るのよね?」
ベルセルクがワクワクした表情で僕を見る。冒険者ギルドで冒険はできないよ。
「いや、今日は前依頼した魔道具の確認をするつもり。潜るのは……明日の予定だね」
「あら、そうなの……」
ああ、シューンと落ち込んでしまった。すまぬ。
「我慢させてごめんね。思ったよりやることあってさ」
「ううん、ケイは亜人のために頑張ってくれているんだもの。気にしないでね。護衛は任せて」
ばるるん! 豊満な胸を自信にみなぎらせる。頼り甲斐があるぜ。一応冒険者ギルドだし、荒くれ者がいるだろう。そういうのは彼女に任せよう。
「ありがとう。助かるよ」
「そう言えば、冒険しないなら何しにギルドに行くの?」
あ、ベステルタにちゃんと説明してなかったか。あの時はいなかったしな。
「えっと、欲しい魔道具があってそれを調べてもらってるんだよ」
「商業ギルドの方が早くない?」
「かもしれないけど、冒険者ギルドの方が詳しそうな気がするんだよね。ダンジョンで見つかるらしいし」
この世界のことよく分からないけどアイテムドロップとかありそうじゃん? あと単純にシャールちゃんと仲良くなりたかった。
「ふーん、どんな魔道具が欲しいの?」
「えっと欲しい魔道具は……、遠くの人と話せる道具。食べ物を長期保存できる氷室。後、建物を覆えるような結界を発生させる道具とか。あとは知らない言語を理解できる道具。もしくは似た物。
他にも生活を便利する魔道具があれば調べてもらうようにシャールちゃんに言ってあるよ。魔法の鞄とかね」
思えば結構頼んでしまったな。ちゃんと調べられたかな。
「なんだか夢のような話ね……。何でそんなものが欲しいの? わたしたちなら遠くにいても話せるし、魔法の鞄はもう持ってるじゃない」
疑問を言いつつも、ちょっと楽しそうだ。分かる、魔法のアイテムの話は楽しいよね。
「僕たちは話せるけど、カリンやシルビアは話せないからね。カリンたちが遠くにいても話せたら便利でしょ? 魔法の鞄も同じ理由だよ」
「ケイは本当にあの子達のことが好きなのね」
ベステルタが生暖かい目で見てくる。なんか釈然としないな。
「まあ……そうだね」
「ふふ、素直で宜しい」
がばっ、と抱き締められた。暴力的ばいんに包まれる。ここは天下の往来なのだが?
あー、通行人がめっちゃ見てくる。うらやましいか? うらやましいか?
……
冒険者ギルドの扉を開けると、たちまち熱気のある喧騒に包まれた。
「誰か前衛できるやついねえか! 仲間が怪我しちまったんだ!」
「よおおおし! 今日こそ10層攻略するぞぉー!」
「デイライト郊外にオークの群れが出たんだってよ。狩りに行くやついるか?」
「あ、あのポーター必要な方いらっしゃいませんか……」
「腕の良いマッパーおらんか? 粗悪な地図はもううんざりじゃ」
「てめえごらぁ!」「やんのかオラァ!」
「うわぁ」
「うふふ、楽しそうね?」
ギルド内には多種多様な人種がひしめき合って怒鳴ったり募集したり取っ組み合ったりおどおどしていた。カオス。
「あ……ケイさん」
シャールちゃんが少しだけ顔を綻ばせて挨拶してくれた。おいおい絶対僕に気があるわ、僕のこと好きだわ。
で、相変わらず彼女の受付は過疎ってる。見る目がないよなー。
「久しぶり。元気でしたか?」
「あ、はい。何とかやってます……ご覧の通り誰もいませんけど……あはは」
自嘲気味に笑う。ぬーん、甘いものたくさん奢ってめちゃくちゃ誉めたい。褒め称えたい。
「大丈夫ですよ。僕と……彼女、ベステルタでシャールさんの評価を覆すからね。爆上げですよ、ええ」
「は、はあ……」
いかん、おかしなテンションになってしまった。
「あれ、最初はソロでやるのではないのですか?」
あ、 そうか。この前来た時は一旦ソロでやるって言ったんだよね。
「そうだったんですが、仲間が急遽揃いまして」
「ケイ、どういうこと?」
事情を知らないベステルタが首を傾げている。
「大したことじゃないよ。この前来たときは一人で迷宮に入るって言ったんだけど、二人で来たからシャールさんが戸惑っちゃったんだよ」
「なるほど。そういうことね。こんな楽しそうなこと、ケイだけでやらせないわよ」
ニヤリ、と不敵に笑う。頼むから何もしないでくれよ。
「あ、あの」
おっと、シャールちゃんをほったらかしにしてしまった。
「失礼しました。ところで例の魔道具の件、どうなりましたか?」
「あ、はい。ちゃんと調べてあります。少々お待ちくださいね!」
シャールちゃんはいそいそと机の上にたくさんの資料を並べ始める。若干嬉しそうだ。
「ずいぶん調べたんですね?」
「お休みの日に図書館で調べたので」
えへへ、と恥ずかしそうに笑う。
うわーーー。何て健気なの。お休みって言い方がかわいい。世界一お休みって言い方が似合う受付嬢だよ。
「それで調査結果ですが……」
シャールちゃんはたどたどしくも丁寧に調査結果を伝えてくれた。
結果から言うと僕が調査を依頼した魔道具はほとんどがダンジョンのドロップアイテムとして確認されていた。
しかし。
「ただ、ドロップ場所がどれも高難易度です。食べ物を保存できる魔法の氷室は、比較的浅い層で出ますが、それでも30層ですからEランク相当です」
ぱらぱらと資料をめくりながら、たくさん線が引かれたノートを見て教えてくれる。うーん、JKの家庭教師やっているみたいで癒しに包まれる。
「浅い順に言っていきますね。言語理解の魔道具……翻訳機と言うみたいです。これは42層で。遠くの人物と会話ができる魔通の瓶? は二つセットでドロップしますが46層で確認されています」
通信機が瓶の形しているの? 訳わからないな。瓶に向かって話すんだろか。
「結界発生装置ですが、程度によっては20層でも確認されています。しかし建物を覆えるほどになると50層以降でしか確認されていません……。これは現実的ではありませんね」
シャールちゃんが申し訳なさそうに目を伏せた。
「え、そうなんですか?」
「はい、50層はAランクを超えた人外領域Sランクが数人でやっとですから。この結界装置は王都に献上されたみたいですね。そのくらいレアで価値あるものです」
「そうなんだ……。ちなみにダンジョンって何層あるんですか?」
「言い伝えでは100層と言われていますが誰も確認したことはありません。かつてSランク冒険者が55層の部屋を確認していますから、60層まで存在すると言われています、が……」
まじか。人類の限界はほぼ50層なのね。もし言い伝えが本当なら半分も行ってないじゃん。ハードル高すぎないか?
ん? そういえばランクってどうやって決めているんだろう?
「ランクってギルドが決めているんですか?」
「正式なものはそうですね。パーティや個人の実績を評価して判断しています。ただ、暗黙のルールとして各々のダンジョンの踏破具合でランクを見なされることが多いです。慣習として5層刻みでランクが上がると認知されているんですよ」
なるほど。正式なランクはギルドが発行して、同業者間では現場で評価されると。分かりやすいな。5層刻みってことは、えーとどうなるんだ?
「ダンジョンについてもっと詳しく知りたい場合は初心者講習を受けられたらどうでしょうか?」
シャールちゃんが提案してくれる。そんなものがあるのか。
「ダンジョンに初めて潜る下位冒険者を中心にギルドで座学を行った後、実戦形式でダンジョンに潜るんです。現ギルドマスターがかつて発案されて以来ずっと開催されています。まだ空きがあるみたいですし、どうでしょう? 予約しますか?」
ふむふむ、願ったり叶ったりだな。ハンズオン形式で入門できるとは有り難いな。冒険者ギルマスもそれなりに優秀なのかな? いや、シャールちゃんをこんなになるまで放っておいたんだ。まだ信用しないぞ。
「ありがとう。お願いできますか?」
「分かりました。それでは氏名とパーティ名を教えて頂けますか? あと、得意な戦闘スタイルがあれば教えてください。あ、ケイさんは前教えてもらったので……そ、そちらの方だけ教えてください」
シャールちゃんはちょっとビビりながらベステルタに訊く。
やっべ。パーティ名どうしよう。
いつも読んで下さりありがとうございます。誤字報告や矛盾箇所のご指摘、助かっています。




