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父性ホルモンどぱどぱ

 スラムの人を治療するべきか悩んだけど、シュレアやベステルタの声に押されて治療(浄化)したよ。でも効果が予想以上でスラムがピカピカ、綺麗になってしまった。フェイさんが入信するために押し寄せる民衆から僕を守ってくれたけど、その瞳は狂信者のそれだった。も、目的は果たしたからね。孤児院にとんぼ返りしたよ。


「ただい「ケイ様! 先ほどの演説、カリン感激しました!」お、おう」


 そうだ、ここにも狂信者がいたんだった。うう、逃げ場はないのか。


「ケイ様、新たな子羊たちの洗礼はお任せください! このカリン、片っ端からジオスの子にしてみせます!」


 やべーよ、張り切っちゃっているよ。どうすっかな。本当ならこの後奴隷を雇うつもりだったんだけどな。


「使徒様! 使徒様はおられますか! フェイです。約束通りジオス教徒に入信しに参りました!」


「ケイの旦那! ママンの具合が良くなったんだ! ぜひとも俺をジオス教徒に入信させてくれ!」


「俺も!」「私も!」


 孤児院の扉の外から喜びに満ちたフェイさんの声とパウロとあとたくさん。はえーよ。僕はジェットプテュエラ号で帰ってきたのに。何か特殊な歩法でも使ったのか? それにいっぺんに来るなって言ったのに……。頼むから静かにしてくれないか?


「フェイ……演説に出てきた名前ですね?」


 カリンの目が鋭く光る。


「そ、そうだよ。スラムのリーダーみたいな人なんだ」


「なるほど。分かりました」


 カリンがつかつかと歩いていく。何か嫌な予感がする。


『ごめんプテュエラ。この周りにも防音壁張ってもらってもいい?』


『別にかまわんが……。でーと楽しみにしているぞ?』


『ちょっとプテュエラ何よ、でーとって。教えなさい』


『秘密だ』


 プテュエラはすぐに防音壁を展開してくれたが、ベステルタと小競り合いしている。だめだ冷静な人がいない。救いは無いのか。


「……」


 あ、シルビアがこっちをじっと見ている。もう君しかいない。


「……し、シルビア?」


「……ふん」


 どこかに行ってしまった。見捨てられた。神はいない。


 カリンはパウロたちが騒ぐ扉の前に立って、大きく息を吸った。


「静まれ!」


 ええ……。


「わたくしは使徒様専属の信徒であり、洗礼を執り仕切る司祭、カリン・リッカリンデン! 蒙昧なる子羊たちよ、使徒ケイ様は崇高なる力の行使により一時的に休まれております! 貴方たちのために御身体を犠牲にしたのですよ? 自分たちの欲望に目が眩んで感謝を忘れるとは何事ですか! 恥を知りなさい! 聖編を千回黙読して出直しなさい!」


 一喝どころか五喝ほどするカリン。さすが元祖狂信者。年季がちげえや。そして君は僕の専属信徒で司祭だったんだね。専属信徒ってマネージャーかな。初めて知ったよ。


 そして外はしん、と静まえり返る。


「司祭様。私はスラムを仕切るオボロ代表、フェイ・イェウと申します。この度は誠に申し訳ございません。使徒様の御身を顧みず、自らの無知蒙昧さを恥じ入るばかりでございます」


 フェイさんが代表して答えた。


 まるで心の底から反省しているかのような声。やめてくれよ。ちょっと前まで熱いバトルを繰り広げていたじゃないか。もはや懐かしいよ。新しい称号ってもしかして狂信者増やす効果があるんじゃないだろうな。普通の人と普通に話したい……。


「その心掛け、忘れてはいけませんよ」


「はっ! もちろんです司祭様!」


 扉を隔てて会話する新旧狂信者。僕はじっと動かず空気の振りをしている。


「本日のところは時間が無いので貴方と数名の洗礼を行います。後日、そちらで調整の上、来ると良いでしょう」


「はっ! 有難き幸せ!」


 過ぎろ時間よ過ぎろ。それか戻れ……。


「ケイ様、どうやら本当にお疲れの様子。ここはこのカリンに任せて、奥で休まれてください。それと大変心苦しいのですが、新たな同胞に亜人様たちのお姿を見せて頂くようお願い申し上げます」


 丁寧だけど逃げ場のないお願いだ。あとカリンって張り切ると自分の事「このカリン」って言うよね。


「分かった……。『ベステルタ、プテュエラ。これから新しいジオス教徒が入信するから姿を見せて欲しいってさ』」


 ベステルタはさっき見せてたけどね。防具を外して気配を解放するのかな。


『分かったわ。ふふ、腕が鳴るわね』


『ああ、二人で練習したもんな』


 うきうきの二人。知らない間にそんなことしていたのかよ。

 ただでさえ酷い精神的苦痛を感じているのに、亜人必殺のダークアクションを見せされたら心が崩壊する。


 だめだ、部屋に帰ろう。あー、疲れた……。


 奥の部屋に戻るとサンドリアがベッドにちょこんと腰掛けていた。


「あ、お帰りなさい」


 純真無垢なサンドリア。ぎこちない笑みと、細い肩。


 むらむらっ。


「ど、どうしたの……きゃっ」


 抱きしめて匂いをいっぱいに吸い込む。くんかくんかうすんすんぷはー。うん! 春先の幼馴染の部屋の匂い!


「ちょっと疲れたんだ……しばらくこうさせて……」


「そ、そうなんだ。おつかれさま」


 よしよし、と撫でられる。


 ポッ。やばい惚れそう。サンドリアはナデポの能力者だったようだ……。


 そのままなし崩しにいちゃついて繁った。サンドリアとの繁殖はとてもKENZENで健康的だったけど、ある一線を超えるとムカデが飛び出してきて丸呑みされるからHENTAIに変わってしまう。まあ、外のダークアクションやら狂信者トークが聞こえなくてちょうどよかったけど。


…………


 カリンがジオス神の尊さ、亜人の素晴らしさを礼拝堂で説いている。それは良い。でも僕のことまで話さないでほしい。お優しい方とか、いと高き方とか。使徒様と接する時の心構えとか。熱を帯びた話っぷりが聞いていて辛い。現実逃避するためにサンドリアの身体に溺れた。


 今はいちゃいちゃピロートーク中だ。いや、霧から生えたムカデを枕にしているからムカデトークか?


 サンドリアがきょどきょどしつつ、三白眼をぱちぱちさせて、一生懸命話してくれるのは心が安らぐ……。


「そ、それでね姉さんがね、やっぱり二刀流は最高だぜって! よくわからないけど」


「うんうんそっかあすごいね、はいお肉たくさん食べるんだよ」


「う、うん。食べる」


 恥ずかしそうにお腹をきゅうきゅう鳴らすサンドリアにきゅんきゅんする。


 フレベやらダンボやらブラサの生肉をサンドリアのムカデに与える。内臓が好きらしいからそれも一緒に。ムカデはきしゃーっと喜び? ながら無邪気にパクつく。ちょっと可愛く思えてきた。はー、心安らぐ。サンドリアは可愛いし良い子だな……。母性と父性が同時に刺激される。

 

「ケイ様。洗礼の儀が終わり、信徒たちも帰りました」


 カリンの声がする。ああ、終わってしまったか。行かなければ。奴隷による人員の拡充は急務だからね。早く終わらせて楽しよう。


「ありがとう、お疲れ様。ところでこれから孤児院の護衛のために奴隷を見に行くんだけど、カリンも来てくれる?」


 流石に人員の選出を僕だけでやる訳にはいかない。シルビアはコスモディアの製造で忙しいからね。


「畏まりました。少々お待ちください」


 カリンはそう言って身支度を始める。


「……」


「あっ」


 その後ろの物陰からシルビアがじっとこっちを見つめている。家政婦かな?


「やあシル……」


「このロリコン」


 ぐっは。


 違うんだ。違うんだよ。誤解だ。


 サンドリアは僕よりずっと歳上なんだよ。だから見た目はロリでも合法いや合法とかじゃなくて。あれ僕ってロリコンなのか? 自信無くなってきた。いや、シャロンちゃんとかファイナちゃんには父性しか沸かないから大丈夫なはずだ。


「お待たせしました」


「……」

  

 カリンはよそ行きの格好に着替えていた。うっ、可愛い。可愛い女の子だ。大人しい服装だけどスカート姿で、こう色々と強調される。抱き締めたい。でも我慢だ。


 後ろにシルビアが控えてジト目でこっちを見ている。やりづらい。


「問題無いよ。カリンはシスター服も可愛いけど普通の服装も可愛いね」


「カリンは仕事でシスター服着ているんだけど? ケイの趣味のためじゃないんだけど?」


 し、辛辣ぅー。

 シルビアさん容赦ない。いや、おっしゃる通りでマジでへこむ。僕の浅く歪んだ女性観をばっさり切り捨てられた気分だ。


「シルビア、なんてこと言うんですか。ケイ様はただ誉めて下さったのよ。言葉の表面だけでなくもう少し深いところまで察すれば分かることじゃない」


 カリンが擁護してくれる。狂信者とか言ってごめんなさい。ありがとうございます。もっと言って下さい。


「だ、だってサンドリアちゃんみたいないたいけな少女と……その、そういうことするような変態だし……」


 シルビアが顔を赤らめつつ反論する。ただ、サンドリアにちゃん付けしたくなるのは分かる。


「サンドリア様はわたくしたちよりずっと歳上よ?」


 そう! そうなんだよ!


「え、そうなの?」

  

「そうよ。それに亜人様を近所の少女みたいに扱うのは不敬だと思うわ」


「うーん、それならいいの、かな?」


 と考え込むシルビア。あと一息だ。


「ねえ、ケイ。ちょっと誤解があったのは認めるけどサンドリアちゃんの気持ちも聞きたいな。通訳できる?」


 それならお安いご用だ。僕とサンドリアは仲良い……よね? あらためて言われると自信無くなってくる。なんか今日は自信喪失してばかりだな。


「サンドリアちょっといいかな。シルビアが僕とサンドリアが仲良いのか知りたいんだって」


「え、え? そうなんだ。仲良い……よね?」


 途端に不安に顔を曇らせるサンドリア。きょどきょどしている。きょど可愛い。抱き締めて「なかよしだよなかよしだよグェヘヘ」って言って飴ちゃんたくさんあげたい。きっと父性ホルモンがあったら今の僕はどぱどぱ垂れ流しているに違いない。


「もちろんもちろん。でもシルビアには仲良いのが伝わりづらいみたいでさ」


「そ、そっか。よかった。でもどうすればいいのかな」 


「うーん、何でも気持ちを表せばいいと思うよ」


 ほら、ぎゅっとしたりとか。ぐへへ。


「わ、わかった。えいっ!」


「キシャァァァァァ!」


 ズボォ!

 

 サンドリアのムカデ先輩が僕の頭から足先まで丸呑みにした。


 はは。目に入れても痛くない、の延長だよ。ってそんなわけあるかい。


 ただ、シルビアには効き目抜群だったようで後で謝られた。いや、わかってくれたらいいのよ。身体張った甲斐があったよ。


 ていうかこのムカデ、最近丸呑みするとき妙に嬉しそうなんだよね。サンドリアと連動しているのか?

いつも読んでくださりありがとうございます。

そろそろどれいを購入しに行きます。

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