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お披露目

「いやぁ、外の空気は美味しいねぇ!」


 元気いっぱいのシルビア。さっきあんなにぐったりしていたのが嘘みたいだ。でも時間が経って、提案を拒絶されてないことが段々分かってくるとたちまち復活した。


「あのギルマスをぎゃふんと言わせる仕上がりを目指すぞー!」


 という訳でゴドーさんの鍛冶屋に向かっている。ベステルタの防具と僕の亜人素材の武器の受け取り、あとコスモディア錬成器具の進捗確認だ。結構いろんな案件を任せているけど、まさか忘れてないよね。大丈夫かな、心配になってきた。


 そんなこと考えていたら鍛冶屋に着いた。


 ガンッ!


「うおいっ、いてえな! ……ん? おお、ケイ! それにシルビアもか。こりゃちょうどいいぜ。ばっちり出来上がっているぞ!」


 うわっ、店内せまっ! そしてゴドーさんのクマ顔でかっ! 近いよ。開けたらすぐいたし。ドアぶつけちゃったよ。ああ、シルビアが足ぶつけてぴょんぴょん飛んでる……。


 お店の中は所狭しに物が溢れていて、足の踏み場が無かった。え、ここ武器屋だよね。武器がもうほとんど無いんですけど。


「ありがとうございます。なんかお店狭くなりました?」


「そうなんだよ。カリン嬢ちゃんとこの錬成器具に、そのポーションの器、それに亜人様の防具にお前の武器にかかりきりでよ。武器屋は常連の依頼以外いったん休業中だ」


「ゴドーさん、部屋片づけた方がいいと思うの」


「ん? おお、わりいな。夢中でよ。がはは!」


 シルビアの恨みがましく言うとクマの手を振り振りして応えた。くそ、おっさんなのにかわいいな。


「あ、ケイさん、シルビアさん。こんにちは」


「あら、ファイナちゃん」


 カウンターの奥から、くまみみ少女のファイナちゃんがぴょこりと顔を出した。シルビアがなでなでしている。仲いいな。人間は駄目なんじゃなかったのか?


「いやあ、いきなりカリン嬢ちゃんがシルビア連れてきた時は思わず怒鳴っちまったけど、まさかジオス教徒だったとはな。新しい同胞が増えるのは大歓迎だぜ」


 にこにこのゴドーさん。そういうことね。そう言えばシルビア改宗したんだった。いや、入教か? どっちでもいいか。


「それで頼んだ防具とかは仕上がったんだっけ?」


「おお、そうだそうだ。もちろん出来ているぜ。渾身の出来だ。どっちから出す?」


「じゃあ、まずは錬成器具からもらえる?」


「うっし、ちょっと待ってな」


 そう言うとゴドーさんとファイナちゃんは奥から冷蔵庫サイズの大きな器具を持ってきた。うん、やっぱり蒸留器に似ているな。これはマジで蒸留酒ができるかもしれない。


「使い方は分かるよな?」


「もちろん。ブラス家はこれを扱うために幼いころから知識を叩きこまれるんだから。でも、実際目の前にするとちょっと感慨深いかな……」


 じーん、と感動するシルビア。確かにある意味ブラス家の象徴だもんね。今日は寝ないで研究だ! と意気込んでいる。ほどほどにね。


 錬成器具はさすがに大きいので魔法の鞄にしまった。ちなみにポーションの入れ物も出来が良かった。何でも知り合いの鍛冶屋に頼んだらしい。鍛冶屋ネットワークすごいな。


「それじゃ本命のお出ましだぜ。ファイナ!」


「はーい!」


「じゃあベステルタ呼ぶね」


「おう! 早く亜人様に着てもらいたいぜ!」


 そんなに渾身の出来なのか。なんかワクワクしてきたぞ。


『ベステルタ。今鍛冶屋にいるから召喚するね。ゴドーさん渾身の出来だって』


『待っていたわ。やっとわたしの冒険が始まるのね』


 ベステルタも嬉しそうだ。ふーむ、でも期待値上がりすぎていない? 大丈夫かな。


…………


……


 ……まじか。


「こいつぁ、想像以上だぜ」


「なんて神々しいんでしょう……」


「ベステルタ様……」


『ずるい。私も欲しい。欲しいぞ』


 その場にいた全員が唖然とした。僕は二重の意味だけど。


 ゴドーさんが監修、そして作成した亜人の気配を隠す防具。


 漆黒の生地に。身体を覆い隠しつつも、ぴったりと凹凸を強調するデザイン。


 そして弾ける様に開放されている凶暴な胸元。


 そう、ライダースーツだった。


「ふんふんふふん。いいじゃない、いいじゃない。ケイ、ゴドーに最高の仕事よって伝えてくれる?」


「う、うん。ゴドーさん。ベステルタがとても喜んでいるよ。最高の出来だって」


「うう……ジオス教徒冥利に尽きるぜ……」


「よかったね、お父さん!」


 クマ親子も抱き合って喜んでいる。いやまあ、確かに最高の仕事だよ。まさかこんなに似合うとは思わなかった。漆黒のライダースーツからのぞく紫の肌と豊かな金髪と雄々しい角が合わさって最強に見える。神バランスだ。いや、ジオスバランスか。


「まず亜人様の気配を隠すためにはどうしても全身を覆うデザインにしなきゃいけなくてな。普段防具しか作らないから悩んだぜ。ファイナが色々調べてくれなかったらやばかったな」


「えへへ。ベステルタ様ならきっと似合うと思ったの!」


「何て言っているか分からないけどファイナはいい子ね」


 よしよしと豊満な亜人っぱいに包まれるファイナちゃん。


「その防具はケイのくれたブラッドサーペント何だが凄まじい素材だったぜ。柔軟性はあるのに鉄剣が通らない硬さ。熱にも強い上に、通気性も見た目以上に良い。何と言っても魔法の遮断性が半端じゃねえ。これがあれば王城に魔人連れ込んでもばれないぜ」


 魔人って誰だよ。お菓子光線出すやばいやつか? 聞いたことある気もするけど。とにかくすごいってことね。


「あとこれはおまけだ。ブラッドサーペントの瞳を加工した逸品だぜ?」


 手渡されたのは……サングラスだ。しゅっと細めのスタイリッシュなやつ。


 ベステルタがゆっくりとかける。


「どうかしら?」


 きらん。


 キメ顔でベステルタが言うと、


「ふぁ、ふぁああああ」


 ファイナちゃんが鼻血を出し、


「お、おねえさ、ま?」


 シルビアが何かに目覚めそうになり、


「ずるいずるい私も私も」


 プテュエラがばさばさ、ふみふみ、幼児退行した。


「……ゴドーさん?」


「……」


 だめだ、真っ白に燃え尽きている。職人の技術を出し切ったのだろう。


 いやそうじゃなくて。


「ゴドーさんゴドーさん、僕の武器は?」


「ん、お、おぉ、わりい。死んだ親父が川の向こうで手を振ってたぜ」


 それ川の鮭狩ってるだけだよ。


 ゴドーさんはがさごそとカウンターを漁る。


 まったく、鍛冶屋の遺作がライダースーツって、後世の熊人族が泣くぞ。


「うっし、こっちも傑作だ! 見てくれ!」


「うわなにこれかっこいい」


 思わず幼獣人並みの感想が漏れてしまった。いや、だってこれ、めっちゃよくね?


「だろ? 銘はベステルタ様からあやかって『ベストック』だ」


 ベストック。見た目通りでちょっと安易だけど悪くない。なにより覚えやすくて、ベステルタの名前だから愛着が沸く。


「刀身と鍔には見ればわかる通りベステルタ様の爪を使った。持ち手はシュレア様だったか? の枝をはめ込み、滑り止めにプテュエラ様の羽を巻き付けてある。両刃剣だがお前なら片手で扱えるだろうから、バランスは考えてある」


 見た目は伝統的なエストックだ。別名「鎧通し」。レイピアが護身用で片手運用だったのに対してこちらはガチ仕様と思えばいい。ただ、刀身が紫なんだよね。まるでベステルタみたいに。


「それがよ、爪を爪で研いでいるうちにどんどんそうなっていったんだよ。しかも尋常じゃない切れ味だからいくつもハンマー駄目にしたぜ。気を付けろよ?」


 うわー、それは申し訳ない。後で弁償しよう。いつも通り、こっそりお金置いていこう。


 いやーそれにしても最高だな。フランチェスカとベストック。無敵だな。二つが合わさって最強に見える。これはダンジョン探索が捗りそうだ。


 その後、ゴドーさん、シルビアを交えて少し話した。シルビアとしてさ錬成器具とポーションの容器は今後も順次生産して欲しいらしい。まだギルマスに認められていないのに大丈夫か? 思ったけど自信があるらしい。快く請け負ってくれた。


 あと新しく亜人素材が手に入ったから見せてみた。ラミアルカの鱗とサンドリアの牙だ。かなり親子揃って真剣に見つめて議論していた。


「任せろ。ベストックでいくらか取り扱いも分かってきたからか。業物を作ってやるぜ」


 いやー頼もしいな。次は何作ってくれるんだろう。ちなみにベステルタはずっとプテュエラに防具のことを自慢して、プテュエラがちょっと不機嫌になってしまった。後でご飯たくさん食べさせてあげよう。


 お金を払おうとしたら固辞された。ゴドーさんの表情がマジだ。仕方ないので隙を見つけて乱雑に積み上げられている品物の影に置いておいた。金貨100枚ほど。だって値段教えてくれないししょうがないよね? 鍛冶屋出てすぐに血相を変えて追いかけてきたからシルビアを連れて逃げた。

いつも読んでくださりありがとうございます。本日21時頃に次話を投稿するので、読んで頂けると嬉しいです。

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