デイライト再び
絶死の森、マイホーム計画の相談をしたよ。カオスな家になりそうだけど、森の樹木を使ってリンカが家に根付くことでなんとかなりそうだ。
「よし、じゃあプテュエラ、デイライトまで宜しく頼むよ」
「ああ、任せろ」
そして当日早朝。今朝早いっていうのに昨晩もこってり搾られた。特にしばらく会えないラミアルカ、サンドリア、シュレアからの要求はすさまじく繁殖術を使わないとあっという間にボッコボコにされてしまう。
シュレアがラミアルカの影に隠れて搾ってくるのがいやらしかった。いや、いやらしいのはいいんだけど。
もしこの子たちがパーティ組むとしたらラミアルカは間違いなく前衛だろうな。あとベステルタで前を固めて中衛にプテュエラ、後方にシュレアとサンドリアかな。まあ亜人がパーティ組む事態なんて考えたくないが。遊びでやることはあるかもしれない。
「ベステルタはリッカリンデン教会の中で召喚するからね。ラミアルカとサンドリアはもしかしたら顔見せで召喚するかもしれない。シュレアは拠点のこと頼んだよ」
「ふふふ、なるべく早くお願いね。ああ、冒険が待ちきれないわ」
「わ、わかった。あたしは完全透明化できるからいつでも呼んで大丈夫だよ。足手まといだけど……」
「サンドリア、そんなこと言うもんじゃないぞ。あーあ、羨ましいぜ。ダンジョンでぶっ放してぇなあ」
ベステルタは念願の初冒険になるかもしれない訳だからね。うずうずしているみたいだ。
しょげるサンドリアといさめるラミアルカ。サンドリアは召喚してもいいかもしれない。ただ、プテュエラみたいに色々フォローしてもらえるか分からないけど。いや、研修みたいにすればいいのかな。プテュエラに護衛の方法教えてもらうって感じ。それだとプテュエラの負担が増えるから応相談か。ていうか完全透明化ってけっこうやばいんじゃ。アサシンし放題じゃん。
ただ、ラミアルカを召喚する機会は限られそうだ。人型じゃないから目立つし、リッカリンデン教会に召喚するのはいいんだけど、孤児のバルデの反応がちょっと恐ろしい……。ザルド、リーノウたちも元気かな。筋トレしているのだろうか。レベル上がってもう成長していたりしてね。
「それじゃ行ってくるよ!」
「「「「いってらっしゃい」」」」」
亜人たちのお見送りを背にぐーん、と青空に飛び立った。風が気持ち良い。まあ実際はこんなもんじゃないんだけどね。魔法で風の勢い調整してもらっているから平気なだけだし。
さて、しばらく空の旅だな。プテュエラといちゃいちゃしながら待つことにしよう。
…………
……
「ケイ、そろそろだぞ」
「あ、もう?」
プテュエラがそっと起こしてくれた。うーん、もうか。寝ていたようで申し訳ない。最初は怖かったけど今じゃすっかり慣れちゃったよ。
おー、眼下にデイライトが見える。城壁が美しい。今更だけど城塞都市ってやつなのかな。そんなに時間は経っていないはずなのにこの迷宮都市も久しぶりに感じる。
近くの森に下ろしてもらって門で受付する。相変わらず長い列だ。特に変わっていないな。最後尾に並んで自分の番を待つ。
「では次、身分証はあるか?」
城門の衛兵も変わらなかった。この前は余裕無かったけど、若い人なんだな。しっかりしているからもう少し老けているかと思った。
「あります。冒険者ギルドカードです」
僕はシャールさんに作ってもらったギルドカードを見せる。ドヤ顔で。苦労したからな。
「うむ。Jランクか。気張って死ぬなよ……ん、タネズ?」
あれ、衛兵さんの眉がぴくりと動いた。まさかブラックリスト入りなんてしていないよね?
「何か問題ありましたか?」
「い、いえ問題ありません。商業ギルドのオルスフィン様より言伝を預かっております。お伝えしても?」
ざわざわ……。
列に並んでいた商人やら冒険やがざわつく。こんな人気の多いところで言う内容じゃないよ。でも、ふっ、これで僕も有名人になってしまうな。やれやれだぜ。
「商業ギルドのギルマスから言伝って何もんだあいつ」
「でもJランクの雑魚だぞ?」
「あ、あいつ通りで斧舐めてた変態じゃねえか!」
「私もニヤニヤ顔で話しかけられたわ」
「マジかよ……近付かないでおくか」
なんでそうなるの。これじゃ悪い方の有名人じゃん。悪評だよ。
本当ならここで「おお、すげえ!」とか「ただもんじゃないな」って一目置かれる流れじゃないの。いや、悪い意味で一目置かれたけど。
「タネズ様?」
「いえ、伺います」
「はい、『結果が出たのでギルドに立ち寄って欲しい』とのことです」
……それだけ?
元々寄るつもりだったから問題無いけれども。あー、流石に部外者にはフレイムベアの詳細、あんまり伝えられないか。直に会って色々話してくれるのかな。それなら仕方ないか。
衛兵の兄ちゃんも伝えられてほっとした様子だ。何か敬語になってるし。
「それではお通りください」
他の衛兵も畏まりつつ見送ってくれた。ぺこぺこしながらそれに応え、まずは教会に向かう。
『何て言っていたんだ?』
プテュエラがチャンネルで訊いてくる。
『うーん、商業ギルドに寄れってさ。フレイムベアの毛皮のことだと思う』
『そうか。また家に一歩近付くな。私だけの止まり木……』
恍惚とした表情だ。肉食ってる時だってこんな顔じゃないぞ。
止まり木ってそんなに良いものなのかな。この前の議論でも熱く語っていたし。うーん、マイカーみたいなもんかな。確かに、亜人たちって個人の持ち物をほとんど持っていなかったし、憧れがあるのかもしれない。
そんなこと考えている間にリッカリンデン教会に着いた。
「ししょうーーーーー!」
すぐに飛び込んできたのはショタリザードのザルド。そっちの気は無いけど嬉しい。あれ、ちょっと大きくなった……?
「ザルド、元気にしてた?」
「ひん! ザルドは元気です! 筋肉も付きました! レベルも上がりました!」
前より元気に見える。 よかった。
嬉しそうに見違えるほどに発達した四肢を見せてくる。しなやかで鋼のような筋繊維。でも見た目はショタリザードで子犬のような笑顔。世のお姉様方がほっとかないぞこれ。
「アニキ! リーノウもまた会えて嬉しい!」
「僕も嬉しいどぐふぉ」
リーノウの突進が僕の腹筋に深々と突き刺さった。ぱ、パワーがかなり上がっている。体もほぼ成人男性くらいはある。この前もっと小さかったよね? 獣人の補正半端ないな……。
「お姉さまあああ……、使徒様。お久しぶりで
す」
バルデは目をギラギラさせてプテュエラを探しに走ってきたけど、いないことに(見えないだけなんだけど)気付くや否や冷静に挨拶してきた。本当に怖い。
「ケイ様。お待ちしておりました」
子供たちと戯れていると後ろからカリンがやってきた。……ん? 何か静かだな。それに自信に溢れているような。少しもじもじしている? 前ならもっとわーっと狂信者モードで突撃して来た気がする。言っておくけど別に寂しくなんてないぞ。
『ケイ、褒めてやれ。カリンはどうやら頑張ったようだ』
プテュエラがそっと耳打ちしてくれた。
あっ、そういうことか。そういえば筋トレするって言ってたね。背筋がピンと伸びて、なんていうか健康的だ。健康美人。適度な運動は精神にも良い影響を与えるからね。そして健康的だけどふくよかなところはふくよかなまま。ブカブカのシスター服着ているけど僕には分かる。
「カリン、あー、何ていうか綺麗になったね」
こういう時なんて言えばいいか分からない。詩人ならもっとうまく言えるんだろうけど。この言葉でも十分恥ずかしいし。
「はっ! 左様でございますか! わたくしごときに過分なお言葉、有難うございます!」
「う、うん」
あ、元に戻った。これこれやっぱこれだよ。あのままだとこっちまで恥ずかしくなってくるからね。
「あーあ、それなら私も筋トレ? すればよかったかなぁ。カリンすごく可愛くなったもんね。ねぇ、ケイ。私もあの器具の使い方教えて下さいよ」
そのカリンをちょいちょいつつきながら現れたのはシルビアだ。しかもザ・部屋着。髪も寝癖がすごい。
「何を言っているんですか。この前誘ったのにシルビアはエール飲むのに忙しかったじゃない。あと徹夜だからってそんな恰好でケイ様の前に出るなんて不敬よ。着替えてきなさい」
「あー、うるさいなー。ケチケチすんなよー」
え? 二人が仲良くなってる。すっごく仲良くなってる。カリンは世話焼き幼馴染で、シルビアはズボラOLと化している。いやカリンはいいとしてシルビアはこんなんだったけ? 前会った時は欲望駄々洩れお金大好き商人だったんだが。
「さーてケイ、報告はいろいろありますよー。早く儲け話をしましょうおかねおかねぇ」
ひどい語尾だけどやっぱりシルビアだ。人って第一印象だけじゃ分からないものだな……。
「申し訳ございません。最初はきちんとしていたのですが、コスモディア製造計画にのめり込んでいく内にいつの間にかあんなことに……」
まぁ、あれが素顔に近いんだろうな。本人がストレス無く働けるのなら一番だよ。あのずり下がりそうなズボンは教育上悪いから止めさせた方がいいけど。
いつも読んで下さりありがとうございます。




