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絶死の森の良心

 明日デイライトに出発だ、と意気込んでいたら家の設計どうするか考えていなかったよ。議論は白熱しシュレアが絶死の森の樹木を使ったらどうかって提案してきた。どういうことだろう。


「森の木材で家を作る? それが解決案なのか? 単なる素材提供にしか聞こえないが」


 プテュエラが代弁してくれた。僕にもそう聞こえる。


「そんな訳ないでしょう。シュレアと絶死の森の樹木が心を通わせられることは知っていますよね? 彼らに頼んで家の素材を分けてもらい、後から家に根付いてもらいます」


 さらっと樹木たちを彼らって言ってたけど性別って全員同じなのかな。いや、今はそれよりもシュレアの話に集中しよう。なんだか光が見えてきたぞ。


「根付くっていうのはどういうこと?」


「そのままの意味ですね。家自体に根を張り一体化するという形です。その役目はリンカが適任でしょう」


 リンカの中に住む……。なんだか想像がつかないけどすごそう。


「うーむ、つまり意志のある家ってことか?」


「そういうことです。ケイの気にする汚れはリンカにお願いして吸収してもらうか排出してもらえば問題ないかと」


 なんだそれ。便利すぎる。全自動お掃除機能付きの家ってことか。


「他にも物を取るくらいの簡単な事なら最初からできます。そもそもリンカの知能が高いですからね。他の樹木たちの素材で接ぎ木すればもっと力を奮えるはずです。教えれば学習しますからもっと複雑なことができるようになりますよ」


 物を取るってことはにょきにょき枝が生えてきてロボットアームみたいに手伝ってくれるようなイメージかな。だとしたら素晴らしくない?


「そう言えば、他の樹木たちって言ったけど、リンカ以外の樹木たちも意思表示してくるってことかな。何かほかの樹木たちに利点はあるの?」


「他の樹木たちは力をリンカに素材を与えるだけです。意思表示は特にありません。利点ですか。ふむ、何といえばいいのでしょうか。リンカはまだ幼いですが彼らから接ぎ木してもらうことにより大きな力を扱えるようになります。他の樹木たちは自分の接ぎ木から苦労せず魔力を定期的に摂取できるという訳です」


 うーん、他の樹木たちが不動産オーナーで、リンカは彼らから土地を借りて商売するって考えれば分かりやすいのかな。なるほどね。僕たちも助かるしウィンウィンの関係だな。


「完璧じゃない。その案でいきましょう」


「ただ、対価としてより高い魔力が必要です。家主が魔力を与え、樹木が助力する。自他共栄です」


 なるほど。厳しい絶死の森では特にその考えが大事なんだろうな。となると家主はどうするかだけど。


「家主はもちろんケイで異論無いですよね?」


「無いわ、リンカは彼に懐いているのだし」「無いぞ、私たちの契約者だからな」「そ、その方がうまくまとまると思う」「ねぇぜ。ケイは旦那なんだからな」


 やっぱそうなるか。シュレアでも良さそうだけど、それじゃ立場がないよね。少しくらい搾取サーバー以外の役目があってもいい。これからは繁殖サーバー兼家主と言うことで頑張ろう。


「あと未来の亜人王ね」


「ぷふーっ」「い、いきなりやめてください」

 

 ベステルタが茶化してきた。完全に定番化している。くそ、絶対見返してやる。

 

「僕としても異論はないよ。シュレア、家主になるにあたって必要なことはある?」


 にやにやするベステルタたちを無視し平静を保ちつつ言った。


「く、ぷぷっ……。そうですね。魔力が必要なのでもう少しレベルを上げた方がいいでしょう。シュレアたちの相手もする訳ですし」


 あー、そうか。魔力が対価なんだもんね。それならたくさん必要か。となると、デイライトに行っている間はダンジョンに潜る必要がありそうだな。僕一人でもいいけど、やっぱり一番人型に近いベステルタには付いてきて欲しいところだ。その方がパーティとして名目が経つし、ソロより不自然じゃないだろう。ああ、パーティ名考えなきゃな。あとはゴドーさん腕次第だ。


「そうね、わたしもケイにはもう少し強くなって欲しいわ」


「ああ、強い雄の子孫を残し育てるのは亜人の本懐だからな」


「やっぱり旦那だからな。強い方がいろいろ燃えるよな!」


「う、うん。で、でもあたしはそこまで強くなくてもいいよ…? いてくれるだけで……」


 皆やっぱり強い方がいいのか。まあそうだよね。僕も日本では貧弱ボディだったし、強くなりたいという気持ちはある。そして曲がりなりにもハーレムになるんだから、最低でも自分の身と子供は守れるようにならないと。ていうかハーレムじゃなくて共有種サーバーって感じだけど。それにしてもサンドリアはいい子だ。頬ずりしよう。


「それにしてもシュレアはやっぱすげえな! 研究狂いなだけあるぜ!」


「……研究狂い?」


 あっ、ラミアルカが余計なこと言った。どういうことかシュレアが触手でぐいぐい締め上げて尋問している。彼女が凄いことには同意だけどね。さすが賢樹。賢いぜ。夜は激弱だけど。ちなみに繁り時の手ごわさはベステルタが一番手ごわかったけど、最近そこにラミアルカが食い込んできた。次にプテュエラで、サンドリア。最後にシュレアかな。


「シュレア、それなら早いとこ樹木たちにお願いしたいんだけどいいかな?」


「ええ、シュレアが仲立ちしましょう。この駄蛇を締め上げますので少々お待ちください」


「ぐぇえ、ギブギブ、シュレア締まる締まる」


 いつも占める側のラミアルカが占めてくるのは何か新鮮だなーって見ていた。いやぁ、仲が良くていいな。


…………


……


「ふむ、ではリンカ。シュレアたちの家に根付いてもらえますか?」


(……)


 その後僕たちは絶死の森の樹木たちに頼んで素材となる木材を分けてもらった。どうやるんだろうと思っていたら、バキバキ! っと、幹に生えている太い枝を別の枝でむしり取るようにして目の前に積んでくれた。もっとソフトな方法でやってくれてもいいんだけな。何か痛そうに見えちゃうよ。


 そんなこと考えていたらものの数分で山のような樹木が集まった。シュレア曰く、「余っている体を有効活用できるから喜んでいる」らしい。そう言ってもらえるのは嬉しいけど、うっかり魔力を吸い尽くされないように注意しなきゃな。リンカの管理能力に期待しよう。木材は片っ端から魔法の鞄に収納した。


「リンカは何て言ってるの?」


「詳しくは分からないけど受け入れてもらえそうだよ」


 そのリンカだけど、ちょうどシュレアと契約内容を詰めているところらしい。さっき言ったように商売っぽいしね。契約は大事なんだろう。シュレアはそう言うの気にするからな。僕も賢樹魔法を少し使えるからなんとなく分かるけど詳細はさすがにまだ理解できないからこうやってシュレアに任せている。


「終わりました」


「大丈夫そう?」


 ちょっと不安に言ったらシュレアが少しだけ微笑んだ。かわゆ。


「問題ないですよ。もっとケイの役に立ちたいから嬉しい、と喜んでいました。いい子ですね」


 いい子過ぎる。何ていい子なの。絶死の森、最大の良心かもしれない。サンドリアもいい子だけど性癖が特殊だからね……。


「契約内容としては家に根付いてシュレアたちの生活を手伝う代わりに、魔力を貰う。素材となった樹木たちへの余剰魔力の提供、その管理をしてもらうことになりました」


 おお、ちゃんと話してくれてたのね。他の樹木たちとの仲介もしてくれるみたいだし、ありがたい。リンカの成長が目覚ましいな。


「まあまだ家が出来ていないから先の話なんだけどね」


 明日デイライトに行って、そこで見積もりしてどのくらいかかるかって感じだからね。職人も探さないといけないし。うーん、シルビアとカリンなら分かるかな。それとも商業ギルドに訊こうか。どうしたもんか。


「それは仕方ねぇな。オレはよくわからねーけど、家をイチから作るのは大変なんだろ?」


「大変よ。この洞窟だって崩れたりして大変だったから」


 大変だった程度で洞窟くりぬいて家を作れるものなのかはなはだ疑問ではあるけどね。


 よし、でもこれで出発前の心残りは無くなったぞ。明日からデイライト再びだ。個人的には早く冒険者として活動したい。ダンジョンに潜ってみたいけど、それ以外の仕事にも興味がある。ベステルタの防具の出来にもよるけど、普通の獣人と同じように見られるならかなり活動しやすくなる。楽しみだな。




いつも読んでくださりありがとうございます。次回から街に戻る予定です。

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