シュレア
遠距離の戦闘訓練をしたよ。筋肉カラスことマスキュラスは性格が悪かったから良心痛まなかったよ。
そんなこんなで一週間が経った。
ここで僕の日々のスケジュールを発表しよう。
・ライフスタイル
朝 まったり繁殖、開拓
昼 戦闘訓練
夕 温泉 準備運動
宵 自由時間 ご飯
夜 亜人と繁る
こんな感じだ。
朝起きて余裕があれば繁り、ご飯を食べ、ベステルタかプテュエラのどちらかと戦闘訓練をする。もう片方はシュレアさんの捜索だ。
戦闘訓練の前に拠点の拡張や、周囲の開拓を進める。
周りの木を切ったり、土を均したり、できる範囲で住みやすい環境を整えている。もちろんベステルタたちの力も借りているけどね。だから全然汗掻かなくてらくちんだ。
その内畑とかも作りたいんだけどね。やり方分からないんだよなあ。誰か詳しい人いないかな。
戦闘はかなり慣れてきたよ。
ダイオークはそれなりの群れ相手にも立ち回れるようになったし、ベステルタ曰く動きにも無駄が無くなってきたようだ。練喚功との相性が良いおかげだろうね。
正直、こちらはどうとでもなる。最初あれだけ怖がっていたのが嘘みたいだ。
だって練喚功で身体能力を底上げし、ベステルタソードでぷすぷすしていく作業だからね。
ダイオークの強みは圧倒的なパワーなので、素早さを上げてしまえば問題ない。スキル持ちだけ気を付ける必要はあるけど。必要なのは度胸と油断しない心だ。
マスキュラスはダイオークほどじゃないけど、自分の中である程度セオリーが組上がったので対処できている。
ただ、五羽までなら殲滅できるけど、それ以上になると相手の手数が勝るので押し切られやすい。負けるってことはないけど長期戦になってしまう。
やっぱり飛び道具と飛行能力はかなり大きいね。厄介だ。
それで、午前午後の訓練が終わったら温泉湖に行って汗を流す。毎日少しずつ岩を良い感じに組み上げたり、尖ったところを削ってつるつるにしたり、改良したお陰でだいぶ使いやすくなった。
そのまま夜繁りの準備運動繁りをして、また汗を流す。
家に戻ったら自由時間だ。
日も落ちてくると夕飯の支度をする。
基本的にはステーキなんだけど、ちょっとずつ部位や焼き加減を変えたりする。微妙な差なんだけど、うちの亜人たちは結構グルメで敏感に察知してくれて感想を言うから作り甲斐があって楽しい。
野菜は新しく玉ねぎを試した。
浄化してもかなり辛味があったけど、肉と炒めると甘くなって美味しかった。
例によって、二人は玉ねぎに懐疑的だったけど即堕ち二コマでばくばく食べていた。様式美だね。
そのまま口の中を浄化して、まったりする。皆でベッドに横にって夜の静けさに耳を澄ましたり、わいわい話すこともある。
すると、自然とボディタッチが多くなってきて、繁り合いに突入する。色んなパターンがあって説明仕切れないんだけど、とにかく最高。飽きないし幸せだ。頑健スキルのお陰で亜人二人と対等にやり合えてる。
そんな感じで夜も更けていって一日が終わる。
こんな幸せでいいのかな?
異世界繁殖スローライフ完ッ! でもいいくらいだけど、まだまだ続くんじゃよ。まだ繁殖できてないしね。そう言えば子育ての話とか親の話できてないんだよなあ。まあ、今度でいいよね。
ー
『シュレアが見つかったわ』
それはプテュエラと訓練している時だった。マスキュラス十羽相手に何とか食い下がって、波状攻撃を掻い潜って一匹ずつ確実に仕留めていった。あのマスキュラスの憎たらしい嘲笑が絶望の表情に変わっていくのは、最初は心が痛んだけど、今ではめちゃくちゃやり甲斐あるよ。あいつら本当に性格悪いからね。
「ふー、やっぱりマスキュラスを仕留めると心がスカッとするね」
「ケイ、悪い顔をしているぞ」
プテュエラが若干引いていた。
そんな時、ベステルタから契約者チャンネルで連絡が届いた。
『シュレアがいたわ。まったく、やっぱり木に同化していたわよ』
「マジか」
「どうしたケイ?」
「シュレアさん見付かったんだって」
「おお、やっとか」
プテュエラが嬉しそうに言った。やっぱり久しぶりに友達と会えるのが嬉しいのかな。
『事情はある程度説明しておくわ。だから訓練は切り上げて一旦戻ってきてくれる?
あ、こら、シュレア。叩かないでよ、痛いわ。……そんなにしょげなくてもいいのよ。あはは、何でまた叩くの。相変わらずね。じゃ、またね』
契約者チャンネル越しに楽しげな声が聞こえた。
シュレアさん、どんな亜人なんだろ。結構幼い感じなのかな。今までベステルタ、プテュエラとお姉さん属性だったから妹系かもね。仲良くなれたら良いんだけど、クセがありそうなんだよなあ。よし、出来る限りもてなそうかな。
「ベステルタが一旦戻ってこいってさ」
「うむ、ならばそうしようか」
プテュエラが羽をパタパタさせて、クールフェイスをほころばせている。かわゆ。
ー
「シュレアです。宜しくお願いします」
ああー、こういう感じか。結構予想外だな。
「種巣啓です。こちらこそ宜しくお願いします」
「ふん」
うわ、露骨に鼻で笑われた。つんけんしている。頭の枝がぴかぴか光った。
シュレアさんは、そうだな、お姉さん系だった。でもベステルタやプテュエラみたいな活動的な感じでは無く、不健康系だ。
何故か研究者っぽい白衣と……タイトな黒いスカートを着用している。最高じゃん。でもどこで手に入れたんだろう。服を着ている亜人を見るのは始めてだ。
顔色は青白く目の下に軽い隈がある。黒い髪はぼさぼさだ。研究以外どうでもいいのよ、という印象を受ける。すっごい不機嫌そうな目をしている。
でも溢れ出る有能美人感を隠せていない。
不健康だらしない系クール不機嫌美人か……しかも白衣タイトスカートなんてロマンの塊じゃないか。
「こら、そんなにつんけんしちゃだめよ」
ベステルタがつんつんシュレアさんをつつく。
「止めてくださいベステルタ」
嫌そうに手を振るシュレアさん。
びっくりしたのが、手がなんというか、木だ。触手とでも言うのかな。人間の手では無い。柔らかい枝と植物の茎の中間という見た目だ。頭の時折ぴかぴか光る枝も特徴的だ。
「種巣啓。シュレアは友人であるベステルタに言われてここに来ましたが、貴方を認めているつもりはまったくありません」
高めの声は自信と不機嫌さに満ちている。
うわっ、冷たい眼差しだ。ベステルタとはまた違う実験動物でも見るような目だ。うっ、ぞくぞくします。
「いえ、こちらこそ私事で招いてしまい申し訳ありません。お気になさらず」
「ふん」
鼻を鳴らしてつんとしている。
シュレアさん、自分の事名前で呼ぶのね。幼さがあるな。その割りにお姉さんオーラを漂わせているからちぐはぐな印象を受ける。一見すると冷徹な研究一筋の不健康系美人なんだけどね。ああー、コーヒー飲みながら罵倒して欲しい。
「シュレア、久しぶりだな」
「……久しぶりです。プテュエラ」
プテュエラが嬉しそうに話しかけると、シュレアさんは無表情に応える。……なんか頭のぴかぴか枝の点滅速くなってない?
「ここで立っているのもなんだ、中に入ろう。いいよな、ベステルタ?」
「もちろんよ。旧交を暖めましょう」
二人がわいわい話しているとシュレアが眉を黒眉をピクリと動かした。
「……ベステルタはともかく、プテュエラはそんなに話す人でしたか? もっと冷静だったと記憶していますが」
「うん? 私はこんな感じではなかったか?」
プテュエラは不思議そうに首を傾げた。僕は残念気味クールお姉さんのプテュエラしか知らないから何とも言えないんだけど昔は違ったのかな? ベステルタも最初はもっと冷静だと思っていたみたいだし。
「そうね、ここでケイやわたしと過ごすうちに変わったかもね」
「はは、そうかもな。今は毎日が楽しいんだ。シュレアもそうなればいいな」
プテュエラの何気ない一言に泣きそうになった。お互いに楽しい時間共有できてるって確認できると嬉しいよね。独り善がりじゃなかったんだって思えるからね。あー、羽もふもふしたい。
「そうですか」
シュレアさんは複雑そうな表情をした後、僕を睨んできた。心臓がキュンッてなる冷たい目だ。
「ま、まあとりあえず中に入りましょう」
「ここは貴方の家ではなくベステルタの家のはずですが?」
主人気取りですか? という気持ちが言外にあるように感じる。ひゃー、こえー。
「いいのよ、今は皆の家みたいなものだし。一人の時よりずっと家として使えているわ」
「ああ、ケイと少しずつ辺りを拡張したり色々やっているんだ。とにかく中に入ろう。食事が冷めてしまう。ケイの料理は美味しいぞ」
「シュレアはあの温泉湖について訊きに来ただけですが」
「そんなこと言わないの。貴方どうせ木の養分からしか、食事してないんでしょ? 皆で机囲んで食べるご飯は美味しいわよ」
「しかし」
「ケイは浄化スキル持っていて、絶死の森の魔獣の毒素を消せるんだ。毒素なんて気にしたことも無かったが、これが消えると格段に旨いんだぞ」
「む、毒素ですか」
あっ、食いついた。
「そうね。シュレアはフレイムベアの肉見たことあるかしら。浄化する前は毒々しい色をしているんだけど、綺麗な色になるのよ」
「ああ、味も格段に良くなる。毒草も食べられるようになったしな」
「ふむ……それは気になりますね」
何やら考え込むシュレアさん。研究者として何か感じるものがあるのかな。
「いいでしょう。種巣啓。貴方の力、見せてもらいましょう」
よかった。とりあえずその気になったみたいだ。
「もちろん。そのつもりですよ」
僕はシュレアさんを中に案内しようとしたが、華麗にスルーされてしまった。 白衣のポケットに木の手を突っ込み、タイトスカートをふりふりさせてベステルタハウスに入っていく。
ベステルタとプテュエラは苦笑して後に続いた。ふ、フォローしてよ。
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新しい人外お姉さんも出せました。
今後とも宜しくお願いいたします。




