方針決め
フレイムベアの肉と頑健スキルのおかげで、朝昼晩共に元気なことを実感したよ。これから亜人も増えそうだし、増築するかっていう話になった。
家が欲しいけどどうすればって時、アイデアが浮かんだので言ってみた。
「ねえ、気になったんだけどこの魔法の鞄ってどれくらい入るのかな?」
「何を唐突に。そんなの……分からないわよ。鑑定でもしないと」
「シュレアが鑑定魔法使えるから訊いてみたらどうだ?」
「ていうかなにか思い付いたの?」
ぐっと近付いてくる。うっ、いい匂いとばいんばいんとふわふわがっ。
「いや、魔法の鞄に家入るんじゃないかなって。人の街で家を作ってこっちに持ってくるんだ」
ベステルタがぱっと顔を輝かせた。
「それで行きましょう! 完璧じゃない!」
うおっ、びっくりするくらいはしゃいでるぞ。マイホームそんなに欲しいのか。
ベステルタって人の暮らしに興味あるのかな。亜人は普通家欲しがらないってプテュエラ言ってたし。
「うむ、かなり良い案だと思う。でも対価はどうするんだ? 人は何かをするのに金が必要だろう」
プテュエラが冷静に問題を指摘する。きりっと仕事できますオーラが出ている。何だかちゃんとしたところを始めて見た気がするな。普段はこんな感じなのかもね。
「……んんっ。た、確かにそうね。ケイ、何か具体策思い付いてる?」
それを見て恥ずかしそうに咳払いをする。僕はばっちり気付いてるよ。でも僕も大人だからね。生暖かい眼差しに留めてスルーしておくよ。
「何よその目は」
「いや、何でもないよ。うーん、ほんとに思い付きレベルだけど、シンプルに交易でいいんじゃないかな」
「交易? 絶死の森に特産品なんか無いわよ?」
「これまではそうだったかもしれないけど、今は美味しいお肉があるじゃないか」
フレイムベアの肉、絶対に売れると思うんだよね。あんなに美味しくて精力つくんだもの。
一番の問題は食べ物として見てもらえるのか、かなあ。あと現状毒を取り除かないと食べられなさそうだから供給に不安があることかな。ブランド肉として売り出すか? 売れすぎて肉屋さんになるのはごめんだけど、一定のキャッシュフローは確保しておきたいよね。
……あと、精力つきすぎて一般人が普段から食べていいのかちょっと疑問だ。
「良い案かもしれないな。フレイムベアなら腐るほど生息しているから狩り放題だ」
「あの厄介者が減って家になるなんて最高ね」
君たちフレイムベア先輩にめちゃくちゃキツいけど、マジで売れたらもう足向けて寝れないからね? 搾取されるフレイムベア先輩のためにもマイホーム作ってみせる。
「あっ、思い出したけどコス茶も売れるかもしれないわ。昔助けた商人がそう言ってたの」
ああ、テーブルとティーセットくれた人ね。絶死の森にわざわざ採りに来るくらいだし、リターンの大きい薬草なのかな。ていうか薬草ってことだよね。そういえば簡単にプテュエラに案内してもらったけど、フレイムベアとかヤバい魔獣がうろうろしている森を、少ない情報で探し回るのは骨が折れそうだ。
「わざわざ探しに来るくらいだから価値があるのかもしれないね。それも検討してみよう」
街に行ったらその商人を探してみるといいかもしれないな。人の世界は亜人差別が根強そうだし、件の商人は一度ベステルタに助けられているから何かとやりやすいかもしれない。
そう言えば、冒険者もいるんだよね? となると冒険者ギルドに登録しておけば何かと便利かもしれない。金も稼げそうだ。ただ、プテュエラやベステルタをどうやって仲間として登録させるかは分からない…。
「確認だけど冒険者って職業はあるんだよね?」
「もちろん、あるわよ。さっきも言った迷宮都市デイライトが一番多いわね。あそこにはダンジョンがあるから。金の流れも激しいけど、貧富の差もそこそこあるって聞いたことあるわ」
「ここからどのくらい?」
「一番近いぞ。何回か見に行ったことがある。絶死の森から魔獣が現れた時の防波堤の役割もありそうだ」
え、フレイムベア出たら壊滅じゃん。
「あの辺りはまだ浅いから都市が壊滅するような魔獣はそこまで出ないな」
たまには出るんかい。ほんとやばいなこの森。
「ちなみにその魔獣に勝てる?」
「誇張無しで寝てても勝てるわ」
「だな」
問題なさそうだ。
「じゃあそのデイライトってところに行くことは決定で良さそうだね」
「そうね。デイライトは亜人のわたしでも知ってるくらいだから何でもあるんじゃない?」
「デイライトまでは私が連れていこう。本気出せばあっという間だ」
「あら、よかったわねケイ。プテュエラの全力は速いわよー。トップスピードなら亜人随一の速度ね」
「ふはは」
ベステルタが手放しで称賛すると、プテュエラがドヤ顔しつつもテレるという器用な笑い方をした。すごい気になるな。
「全力出すと地形が変わるが、まあたまにはいいか」
小声で物騒なことが聞こえた。
撤回。ほどほどにしてもらおう。
まあ実際、どちらかがいれば魔獣はなんとかなりそうだから、冒険者として稼ぐのもいいかもしれない。
よし。そろそろまとめよう。
「確認すると、家が狭くなってきたからどうにかしようって話だったね。他に何かある?」
もう出尽くしたかな?
「うーん、少し気になっただけなんだけど、うまく家を買えたとして、何て言うのかしら、すぐに使えるの?」
ベステルタが歯切れ悪く言った。たぶん何か違和感を感じているのだろうけどうまく言えないのだろう。なんだろう。
「あっ、そうか整地が必要か」
当たり前の観点過ぎて忘れていたよ。こんなところに家を建てるんだ、周りの環境も良くしなきゃね。
「どういうことだ?」
「家を建てたら、周りの大きな木とか邪魔だよね? 住みやすいように周りの環境を整えようってことだよ」
「寝床をならすということか。それなら分かる。繁殖するなら次代のためにも良い場所を確保しなければ」
プテュエラさんマジ大黒柱。かっこいいです。
「そういえば亜人の子育てってどんな感じなの?」
ふと気になったので言ってみる。もうずっと子供がいないんだよね? 子育てのノウハウとかあるのかな。僕にはもちろんないよ。こんな無責任野郎が父親でいいのかな、とはすごく思ってる。なるべく子供たちには悪い思いさせたくない。
「それはまた今度話すわね」
「ああ、長い話になる」
何か意味深な感じ誤魔化されてしまった。大丈夫かな。子供たちには父親の生き血が必要です、とかだとちょっと躊躇ってしまうんですが。
「わかった。じゃあまた今度お願いね。じゃあ今まで話したことを整理するよ」
「ちょっと待ってくれ。ケイがおいおい街に行くとして、もう少し強くなった方がいいんじゃないか?」
……。プテュエラさん。それは気付かないふりしていたんだけどな。
「あっ、確かにそうね。盲点だったわ。亜人からしてみたら取るに足らないことでも、人間のケイからしたら脅威なこともあるわよね」
「うむ。基本的に私が上空から付いているつもりだが、とっさに身を守れるくらいはできた方がいいと思う」
「そうね。とりあえずフレイムベアくらい倒せるようにならないとね」
無理無理! 無理だよ! 何言ってんの? 人がビル倒せると思ってるの?
「鍛えれば問題ないわよ。契約者は亜人の力少し使えるんだから」
「心配ない。最初は弱いところからやっていくさ」
はー……。マジか。なるべく戦闘はやりたくなかったんだけど。やっぱりこうなるか。仕方無い。なるべく弱いやつとやらせてもらうように頼もう。
「じゃあもう無いかな? まとめるよ」
あー、黒板とかホワイトボードほしいな。こういうのは不便だ。あっ、僕字を書けないじゃん。言語理解スキルってたぶんヒアリングとリーディングのみっぽいよね。街に行ったとき調べてみよう。そういう講座あるかもしれないし。
・目的
繁殖と子育てのために、快適に暮らせる家の入手。調査。
・金策
フレイムベアやコス茶を売り込む。プランA。
冒険者になる。プランB。
・デイライトでやること
商人に会う。冒険者に登録?する。
・拠点でやること
周辺環境を整える。開拓する。シュレアさんに魔法の鞄を鑑定してもらう。戦闘訓練
こんなもんかな? 細かいこと言ったらもっとあると思うけどなるべく絞らないと忘れちゃうよ。筆記用具類を会社に置いてきたのはミスったな。どうにか現地で手に入れよう。ちなみにスマホは電池切って、財布やウィスキー冷凍食品なんかは全部魔法の鞄に放り込んである。いつか使うときが来るのかな。
「ふーっ。なんか頭使ったから発散してきたくなったわね」
「確かに。いろいろと食べたいな」
二人の目が怪しげに光る。ええ、今朝したばかりじゃん。
「あれは挨拶でしょ?」
「挨拶をするのは当たり前だ」
そう言ってひょいっと僕は抱えあげられ、ベッドに連れ込まれた。
そのあとはテニスで繁った。そうテニスだ。テニスだってば。向こうはダブルスでこっちはシングルス。向こうが手加減せずにガンガンぶつけてくるから、僕も激しく長いストロークで応戦した。
審判なんていないから手を使ったり、口を使ったりやりたい放題だったけどね。何とかへろへろになりながらも、ボールは向こうのコートに全てぶちこんだよ。
そしたらここからが本番よ、と言わんばかりに二人が本気になった。もう手元のボールは無いのに無理やりボール作らされてね。思わず悲鳴をあげてしまったよ……。
最終的に僕が動けなくなってゲームセット。ステータス見たらレベル上がってたよ。どういうことだよ。でも、やはりまだ向こうに分があるな。そのあと気絶するように眠った……。
ブクマ、評価、読んで下さりありがとうございます。
おかげで十話まで書けました。感謝です。今後とも宜しくお願いいたします。




