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食って寝て繁って相談

野菜取りに行ったらニンニクがあったのでステーキにしたらみんな虜になったよ。そのあとは気にせず物理的に口内ケア祭りじゃ。

 たぶん次の日。


 目が覚めると二人が横にいた。曜日の感覚がほぼないんだよね。仕方ないけど。両手を伸ばして抱き寄せる。うーん、最高。これぞ自由って感じ。


「あら、おはよう。朝から元気ね」


「ふふ、続きをするか?」


 えっ? えへへ。


 お言葉に甘えた。朝からスローライフ(意味深)は素晴らしいよ。それにしても二人とも体力どうなってんだろ。昨日の絶死ニンニクが効いているのかな。ていうか、それについていける僕って……。


 みんなで仲良くしたあと、ベッドの上でしっぽり毛繕いなんかしてた。僕はもちろん毛繕いなんてしたことなかったけど、目の前にふかふかの羽と毛があると、ついつい触りたくなってしまう。


 で、さわさわしてるうちに毛繕いのやり方を何となく理解してた。要は優しく触って、整えて上げることが大事なのだ。これがグルーミングってやつなのかな。


 二人とも共通して背中の毛繕いをすると心地良さそうにしてくれる。届かないところだしね。目を細めて喉を鳴らす。ちょっとくねくねする。うーん、やばい。

 

「あー、ケイ ー、そこだーそこそこーうあー」

 

 プテュエラが翼の下という新たなグルーミングスポットを開発されて、伸びきっている。身体がだらんと弛緩して、完全に野生を失っている。あのクール軍人系お姉さんはどこ行っちゃったの。これじゃ正月のOLだよ。ていうか寝るときは普通に横になって眠るんだね。


「ケイ、こっちもお願い。あれやって」


 プテュエラがぐったりして寝入ってしまったのを確認して、ベステルタがお願いしてくる。こういうところ優しいよね。優しくないって言ってたけどうそだよ。なんとなくベステルタの方が年上っぽいよね。


「じゃあ、ベス。横になって」


「ふふ。その呼び方恥ずかしいから、こういうときだけにしてね?」


 なんで恥ずかしいんだろ。女心は複雑だなあ。でもそうしておこう。

 

「ベスはこうやって背中を浄化マッサージされるのが好きなんだよね?」


「うー、そうなのよ。ほんとに気持ち良いの。なんだか、固くなった魔力の滞りが解れていくっていうか、そんな感じなのよ」


 『あれ』というのは浄化マッサージのことだ。一週間繁殖生活してた時、たまたま見つけた。浄化の出力を調整しようと思ってフレイムベアの肉に触わっていたら、なぞったところだけ色が変わったんだよね。もし魔力の流れを清浄なものにするのが浄化スキルなら、ベステルタの体内の魔力も良くなるんじゃないかと思って始めたんだよ。


 ベステルタはベッドにうつ伏せになり手を顎の下に組んで横を向いている。あれだ、ビキニのお姉さんが「オイル塗って?」って言うポーズだ。ええ、なんでも塗りますよ。やりますよ。


「でも魔力って浄化しなきゃいけないほど悪いものなの?」


「うーん、詳しくは分からないのよね。力の源であることは確かなんだけど。シュレアがそういうの詳しいのよね。今度会ったらきか……ない……と」


 新しい名前だ。シュレアさん。どなたでしょうか。もの知りそうだから理知的なのかな? いつかお会いできたら良いですね。


 ベステルタも蕩けるような顔で寝てしまった。僕は前の世界で少しだけマッサージ師みたいのをやってたことがあるんだけど、彼女の筋肉は素晴らしい。


 背筋は半端じゃないくらい分厚くボリュームがあって逆三角形だ。僧帽筋上部から下部にかけての盛り上がりが素晴らしく、大円筋が補うようにしっかりついている。脊柱起立筋は太くそれでいてしなやかだ。そして全ての筋肉が柔らかくてのびのびしている。指を当てているこっちが気持ち良いくらいだ。


 さっきまで寝てたのに、またすやすや眠る二人を見ているととても幸せな気持ちになってくる。正直、こっちに来た寂しさで突然泣いたりしそうなことがあるんだけど、彼女たちのおかげで持ちこたえている。


 もし、人の街に行くことがあったらブラシを買って毛並みや羽を整えてあげたいな。なんか彼女たちの毛並みに触れているとすごい幸せな気持ちになってくるんだよ。なんでだろうね。アニマルセラピーってやつかな? 動物って言ったら怒るかもしれないけどさ。


 それにしてもスキルはすごい。

 生活魔法は文字通り科学が無くても生活を豊かにしてくれるし、浄化スキルはすごいポテンシャルを秘めてる。まさかのマッサージ効果もありそうだからね。言語理解は無くてはならないものだし。でも繁殖生活に書かせないのはやっぱり頑健だ。


 前の世界ではもちろんモテるってことはなく、ふつーだった。だからこんな猛獣相手の経験無かったし、ましてや二人相手なんて想像したこともなかった。いやまあ、妄想はしてたけど。


「頑健が無かったら今頃腎虚になってるよね」


 最初の一週間、このまま搾り取られてしぬんじゃないかなと思った。でも一度死んだようなもんだし、いけるところまでやってやろうという気持ちだった。そしたら意外と慣れた。もちろん気合い入れないとだめだけど、最初の頃の絶望感は無い。


 その余裕も新しくプテュエラが加わって早々に打ち崩されたけど、また慣れてきている感じがする。ちょっと怖い。だって一日何回衛星打ち上げてるんだよと思う。十回を超えた辺りで僕は数えるのを止めた、って感じ。


 こんなにタフになった要因は二つあると思う。一つは食べ物。フレイムベアの肉が下半身にめちゃくちゃ効くのではということ。もう一つは『頑健』だ。思うに物理的にも健康的にも頑丈になるスキルなんじゃないかな。そうじゃないと説明がつかない。ぜつりん効果もあるのでは。


 無防備に寝息を立てる亜人たち。そっと身体を撫でるとくすぐったそうに身じろぎする。


 やっぱりこれからもっと増えるんだろうな。大変だけど、幸せだ。美味しいもの食べて、繁殖して。気持ち良いことしかしてない。サラリーマンしてた頃には無かった感覚だ。電車に押し込められて社会の部品だったころ今では、今の方に歓びを感じる。


 亜人たち、彼女たちには感謝しかない。彼女たちのために何か……、おっといかんいかん。とにかく幸せを追い求めよう。自由を失わないようにしよう。その結果周りも幸せになったらいいな。



「ふわあ、すっかり寝ちゃったわ」


「こんなによく寝たのは久しぶりだ」


 あの、ぐーっと伸びをすると、けっこう強調されてもぞもぞしてしまいます。


「亜人はあんまり寝ないの?」


「そういう訳じゃないんだけどね。あんまり寝る必要も無いし」


「私はベステルタみたいに家を持たないからな。居を構えるなんて煩わしいだけと思っていたが、案外悪くないな」


 まさかの事実。プテュエラさんホームレスだった。


「えっ、何処かに住んでないの?」


「ケイ、あんまり亜人は人間みたいに定住するってことはしないんだ。みんな自由にやってるよ。ベステルタとかシュレアみたいのは変わり者の部類だな」


「あなただってたまに帰る場所くらいあるでしょ?」


「あるけどここみたいにちゃんとはしてないぞ。雨避けみたいなものだ」


 ふーむ。それはどうなんだろうか。完全に僕の我が儘だけど、プテュエラの綺麗な髪や羽が野晒しになってしまうのはちょっともったいない。


「もしかしてプテュエラ、しばらくしたらここから離れるつもりある?」


「もちろんそのつもりだったが、今はどうしようかと思っているな。ケイやベスとこうしているのは心地がよいんだ。離れたくない」


 真っ直ぐ瞳を見つめてそう言う。堕ちるんたが? まあもう堕ちてるけど。


「ならずっとここにいればいいじゃない」


 さらに真っ直ぐ答えるベステルタ。二人とも心を偽らないね。


「ここの主はベスだからな。許してくれるなら喜んで滞在させてもらおう。だが、私が来たら少し手狭にならないか? それが心配なんだ」


「ああ、確かにそうね。これからまだ増えるかもしれないもの。どうしたものかしら……」


 困ったようにしている二人。プテュエラはベステルタより小さいけど、 一般的な人間よりはずっと大きい。羽も広げたいだろうしね。それにもし増えるとなったら完全にキャパオーバーだ。となると。


「増築した方がいいんじゃない?」


 やり方なんて分からないけども。


「それはもちろん考えたげど、方法なんてしらないわよ?」


「ちなみにここはどうやって作ったの?」


「いい形の洞窟探して少しずつ改良していったのよ。苦労したわ」


 しみじみと遠い目をする。自宅DIYはすごいな。でも、やっぱり建築の知識は無いか。当たり前だね。


「誰かそういうの知ってそうな知り合いいる?」


「うーん、シュレアくらいしか心当たりないけど、多分彼女もあんまり知らないと思うわ」


「あいつ知識は豊富だけど魔法狂いだからな」


「まあでも訊くだけ訊いてみましょうか。どうせ亜人は遅かれ早かれケイと会うことになるんだし。暇を見て呼んでくるわね」


 おっ、前から話が出ていたシュレアさんにとうとう会えるのか。楽しみだな。


「ただ、ちょっと今どこにいるか分からないから時間かかるかもしれないわ」


「気にしないで、ありがとう。楽しみだよ。他に案ある?」


「うむ、ちょっと思い当たらないな」


「わたしも」


 ……いちおう僕は一つあるんだけど言っても大丈夫かな? 反対されそうな気もするけど。いやいや、言うべきことは言わないと。それで今までの人生損してきたんだから。


 よし、言うぞ。


「ま、街に行って人に訊くってどう?」


 やべ、どもった。


「ああ、その手があったわね。ここからなら迷宮都市デイライトが一番近いわ」


「悪くないな。近くまで何度か行ったことあるから私が連れていってやろう」


 あ、あれ。全然問題無かった。もっと拒絶したり難色示されるかと思ったけど。


「何よその目。……ああ、わたしたちが人間を憎んでないか、街に行って問題ないか心配してるのね。ふふ、優しいじゃない」


「はは。憎む気持ちも無いでもないが、私たちは長生きだからな。人と違って一つの感情に長い間とらわれないのさ」


「人にも良いのがいるのも知ってるしね。まあ舐めたらぶっ飛ばすけど」


「うむ」


 あっけらかんと話され拍子抜けしてしまった。


 まあ確かに圧倒的な強さを持っているのに人を武力で支配しなかった訳だし。僕たちとは心の広さが全然違うのかもしれない。見た目は人と異なるけど、人よりずっと大きいんだろうな。


 ん? 心の広さ?

 見た目よりずっと大きい?


 まって、閃いた。魔法の鞄に家入らないかな?

読んで下さりありがとうございます。ブクマ、評価、逆お気に入り、感謝です。まだ絶死の森にいますがそのうち出るのでお待ちください。

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