†四章†1
「UNO!!!!!(゜∀゜)」
「ぐぬぅ!!??」
「あがり!」
ツキが最後のカードをテーブルに叩き付けた。
「なぜだああああああああああああああああああああああ!!!???」
「ご主人様よっわ。ざっこ。ぷっぷくぷー!」
「殺す!!!!!!!!」
「ごめんなさいごめんなさい叩かないで! 髪引っ張らないで!」
あくる日の夜。俺たち四人はUNOをやっていた。そして俺は負けた。本来UNOのルール的に勝者は一人だけなのだが、独自ルールで最後に残った手札が最も多い者がビリということになっていたので、俺がビリになった。
「負けは負けなのでさっさと罰ゲームを敢行してください」
「……アイス」
「しととねちゃんもっと俺に優しくしろよぜ」
「あなたもツキさんに優しくしたらどうですか? あと語尾変なので黙ってください」
「……アイス」
さっきからアイスが涎を垂らしている。違う。アリスが涎を垂らしている。
「しょうがねえなあ! 俺の買い物力を見やがれ!!」
「買い物力ってなんですか……それに買い物に行くのは大海さんだけですから見れません」
「ファック!!!!!!!」
「アリスちゃんの前でなんてこと言うんですかちんこちょん切りますよ!」
「しととねちゃんも人のこと言えないような(・~・」
罰ゲームでコンビニにアイスを買いに行くことになりやがった!
俺は財布を持って家を出る。夜は暗い。星と月と電信柱の電灯が真っ暗ではなくしているが。
「ここは太っ腹にハーゲンダッツでも買おうかぜ!!!!!」
「やったー!>ワ<」
「なんでついてきてるんだ。くんな」
「ひどい! わたしはご主人様の召喚獣なんだから一緒にいてもいいでしょ!」
「これは俺が為すべき罰ゲームだ。余計な同行はいらねえんだよ」
「意地でもついて行ってやる! うららららららららららら迷路帖」
「やめろ離せ暑苦しい!!!!!」
ドクンッッッッッッ!!!!!!!!!!!!!
コンビニまでの道中、大通りで、突然、凄まじい「召喚力」を感じた。
振り向けば、召喚者がいやがる。二人だ。召喚者と召喚獣で二人ではなく、召喚者が二人立っていた。
一人は不気味な男だった。闇色のフード付きパーカーのフードを被った男。不気味な暗さを、纏っている…………。
対してもう一人は、幼女と言って差し支えない年齢に見える子供だ。白いワンピースに黒髪長髪の幼女。最近幼女をよく見るぜ。その幼女は、酷く怯えているように見えた。それも俺たちではなく、隣に立つ男に怯えているように。
対照的でちぐはぐな二人組。そんな印象だった。
「DEADに落ちろ……」
男が呟くと同時に、バトルの鐘は鳴る。
―††Summoned Beast Battle Royal††ー
Battle Start…………
「先手必勝!! ツキ、サモンアビリティを発動し――」
「させるかよ」
《サモンアビリティ》――【クァイエットストーン】
男が手に持つ紫紺の宝石が怪しく光った。
「あれ!? 発動できないよご主人様!?」
「なっ!!??」
ツキが金髪ツインテールを振り乱しながら何度念じても、勝利条件が出てこない。
「そんな宝石が、お前の召喚獣だというのか!!!!!??????」
「そうだ。俺の召喚獣だ。何も喋らず動かず、生物とは違い鬱陶しくない、最高の召喚獣だ。動く奴は、嫌いだからな。DEADすればいい」
「くそっ!!!! クレイジーな野郎だ!!!!!」
「どうしようどうしよう【ウルトラミラクル】使えない><!!!!!!!!!」
「焦るなツキ!!!!! 恐らく奴の《サモンアビリティ》は俺たちの《サモンアビリティ》を封じる能力!!!! 現状認識完了!!!!!」
「こんなんじゃわたし、ただのかわいい女の子だよ!」
「あ?」
だが、【ウルトラミラクル】が使用不可なのは非常に苦境!!!!!!
どれくらいやばいかというと、とにかくやばいぜ!!!!!!!
つまり、死オブア死オブザ死。
闇フードの男が死の宣告をした。
「デッドデッドデッドリーだ」
凄まじいデッドオーラを感じるッッ!!!!
「シュバルツェスツインドライブ。きて……」
幼女が呼ぶ、刹那、幼女の隣に巨大な漆黒が佇立していた。
二足歩行に二本の腕、しかし人間とは乖離した数メートルほどの巨体に全身漆黒。その顔には二つの瞳が怪しく輝き、人を一口で食い殺せそうな大口が鋭い杭の様な牙と共に開閉させている。目だけが光っていた……。
幼女の言曰く、こいつの名はシュバルツェスツインドライブ。
「ごめんなさい……」
幼女は謝ってきた。俺とツキを見て、悲壮な瞳で。
「お前は、何故謝る?」
フードパーカーの男が、ドスの利いた声で幼女の黒髪を引っ掴んだ。綺麗な黒髪を。
「いたい……っ」
「早くやれ!」
「ひっ」
「自分が立っている状況を忘れたか?」
「あ……あ……」
様子を見るに、幼女は何らかの理由で脅されてここにいるのかもしれない。闇フードの男が幼女の力を利用するために、
助けなければ!!!!!!!!!!!
だが、《サモンアビリティ》が使えない状況で、どうやって戦うんだ。
いや、戦わなければ。ヴィクトリーを得なければ、何も救えない!!
奴に勝つ方法は、なんだ。
「俺たちの【ウルトラミラクル】は封じられたが、ツキの飛行能力がなくなったわけではないはず」
それが、今扱える俺たちの唯一の武器だ。
「【ジャイアントダークネス】」
漆黒の存在が、漆黒のオーラを纏い、強化、凶化された。
あの拳を一撃でも食らえば、DEAD。そういう類の《サモンアビリティ》であろう。
シュバルツェスツインドライブが、動く。
「ツキィ!」
「はいよはいよー! シルバー!」
「お前が愛馬だ」
「ヒヒーン!」
純白の翼を生やした馬に飛び乗り、飛翔する。
シュバルツェスツインドライブの上空を旋回し滞空。
【ウルトラミラクル】が使えないのなら、正面からやりあっても待っているのは即死の終わりのみ。
されど、この安全地帯からの投擲戦法ならどうか。
俺は既に、投擲物をツキへ飛び乗る前に拾い手にしていた。
石を数個ほど、ポケットに入れている。
一つ、取り出した。
「お見舞い、してやるぜぇ!!!!!!」
投擲は、人類最大の武器だ!!!!!!!!!! ラノベでそう言ってた!!!!!!!!
石を、意思を、フード男に向けて投げる。
狙い違わず、奴が手に持つ宝石に吸い込まれていく!
しかし、阻む漆黒。
シュバルツェスツインドライブが弾丸を腕で弾いた。いとも簡単に。
「なんだと!?」
「雑魚が、効くかよ」
「お前の召喚獣じゃないだろ!!!!!」
シュバルツェスツインドライブは速い。石が鈍足だ。
もう一度投げたが、簡単に腕で払われる。
投石が効かない。
シュバルツェスツインドライブが俺たちに向かって跳躍してきた。
「うわあ!?」
俺たちは空を滞空しているにもかかわらず、確実に届くほどの跳躍力!!!!
「死にたくない逃走ーーーーーーー!!!!><;」
ツキが何とか上昇し、振るわれたシュバルツェスツインドライブの爪を避けた。その爪は《サモンアビリティ》により漆黒のオーラを纏っていて、掠るだけでも死に直行するだろう。
「怖い怖い……」
ツキはさらに上昇する。今度は跳ばれても危なくないようにかなりの高度へ。
「ここからなら安全に石投げられるな!!!!」
奴が手に持つ水晶、召喚獣へ向けて投石する。
だが石はフード男の後ろ、コンクリートの地面に落ちてバウンドした。
「くっ! あたらん! ツキ、お前に任せる!」
「任せて!」
ツキに石を一つ渡すと、投げる。
暴投だ。完全に的外れの方向へ飛んでいった。
「下手糞が!!!!!!!!」
「ご主人様も外したでしょーーーーーー!!!!!!???? 落とすよーーーーー!!!!!!!!!!ヽ(`Д´)ノ」
「やめろーーーー!!!!!」
ツキが暴れるが俺はしがみつく!
「しかし……」
距離があり過ぎて投石が当たらない。
この距離ならば俺たちは安全だが、こちらの攻撃も当たらないのだ。
フード男は貧乏ゆすりをしていた。
「ブンブンブンブン羽虫のように……。鬱陶しいイラつく殺したい。やれ」
「はい……【ジャイアントダークネス】!!」
漆黒オーラの、出力が上がった。
シュバルツェスツインドライブが跳ぶ。いや、もはや飛んで来る。 ただの跳躍のはずなのに。
天高く滞空する俺たちへ届くほど!!!!
爪で薙ぎ払われ、ツキは何とか避けようとはしたものの、白き翼を裂かれた。右の翼が千切れ飛んでいった。
飛行力を失った俺たちは墜落していく。
「ぐぎゃあああああああああああ!!!???」
「きゃあああああああああああああ!!!????」
ツキは左の片翼を必至に羽ばたかせて落下の速度を軽減する。けれどそれなりの速度で俺たちはコンクリートの地面に落ちた。
「ぐえっ!?」
「ぴぎゅっ!?」
すぐに立ち上がれねえ……いてえ……。
幼女とシュバルツェスツインドライブの【ジャイアントダークネス】は圧倒的。
【クァイエットストーン】で【ウルトラミラクル】を封じられている状況で抗することができる程度の強さではない!!!!!!
【ウルトラミラクル】が使えたとしても勝てるかどうかわからない厳しい戦いになっただろう。
本当なら逃げるのが賢明だろう。
やはり勝ち目はないのか。逃げなければ死んでしまうだけなのか。
いや!!!!!! 俺は力が在るから大層な望みを抱いていたのか? 違うだろう!!?? 力が使えない状態になっても守り救おうと戦う。それがヒーローだ!!!!!!
妹!!!!! 夕奈よ見てろ!!! ツキよ見てろ!!!! 俺は戦う。
シュバルツェスツインドライブが爪撃を放つ。
「ご主人様!!!」
ツキが俺を掴み、片翼を強くはばたかせて後ろに下がる。片翼なので不格好にもみくちゃになりながら。
しかし、シュバルツェスツインドライブの爪はコンクリートを剥がした。コンクリートが飛来し、俺達に激突する。
「ぐはあっ!?」
「きゃあ!?」
二人折り重なりながら倒れて、立ち上がれない。俺の上にツキがぐったりと乗っている。
「立ち上がらなければ……くそっ」
恐怖ではなく、身体の限界で足が震える。上手く立ち上がれない。あとツキが重い。
「重いとか言うな!!!」
「言ってねえ思っただけだ!!!!!」
「思うな!!!!」
「無茶を言う!!!!!!」
シュバルツェスツインドライブの力は圧倒的だ。敵わない。体はボロボロ。
「大海さん!」
「大海さん……!」
声に振り向くと、しととねちゃんとアリスがいた。
「大海さん、帰りが遅いから心配し――」
「あ……あ……」
何故か二人が固まっている。どういうことだ。
そして!!!!
状況が錯綜する中、突然!!!!!
不思議なことが起こった!!!!!!!!!!