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†三章†1




 ピンポーン。

 突然のインターホン!


 玄関のドアを開けると、白髪(しろかみ)長髪の幼女が立っていた。


「…………助けてください!!!!」


「助ける!!!!!!!!!!」


†三章


 とりあえずリビングに招き、ソファに座ってもらう。

 お客は白髪の幼女だけでなく、オレンジ色の髪を肩で切り揃えた高校生ぐらいに見える女の子もいた。

 白髪の幼女は青いフリフリのお嬢様みたいな服を着て頭に青いリボンをつけている。オレンジ髪の少女は淡い色のパーカーにショートパンツと、スポーティな格好をしている。


「あたしは「しととねちゃん」っていいます。召喚獣です。「しととねちゃん」の「ちゃん」までが正式な名前です。そしてこの子はあたしのご主人様、北条院(ほうじょういん)アリスちゃんです。今日は、あなたが、召喚獣を消滅させないで解決できると聞いて頼りにきました!」


 オレンジ髪の女の子、しととねちゃんが話す。アリスはしととねちゃんの隣で隠れるように俯いて黙っていた。さっき、助けてくださいと自分の口でいった時は、とても大きな勇気を絞り出したのだろう。

 アリスは、酷く悲しいカルマを背負っているように見える。


 俺とツキも名乗ってから、質問した。

「俺が解決できるという情報はどこで得た?」

「この町の駅前で宣伝している人がいるという噂を聞きつけまして」

 保護者のようにしととねちゃんが応対する。

「あの大通りでの宣伝が功を奏したのは重畳(ちょうじょう)だな」

「まさかアレで来てくれる人がいるとは…………」

「なんか文句があるか?」

「ないよ~」

 ツキはそっぽを向いて口笛を吹く。吹けてないが。


「あの、本当に助けてもらえるんですか……?」

「当然だ。今すぐにでも実行できるぜ」

 敵でないのなら拳を当てなくとも効果を発揮できるから安全に速やかに救うことができる。

「なら、今すぐお願いします!」

「よしきた! ツキ、《サモンアビリティ》!」

「うん! 【ウルトラミラクル】!」

 

【勝利条件:現時点、10時28分から24時間経過すること】


「小癪な。なぜこういう時に限って時間がかかる条件を……」

「難しい条件が設定されるからね。相手が受け入れてる状態だと無駄に時間だけ引き延ばされるんだよ」


「助けるための《サモンアビリティ》の効き目が明日になってしまったんだが、一旦帰るか? それとも泊まっていくか? 護衛ならできるぞ」

「泊めてほしいです! アリスちゃんが安全な方がいいので」

「よし。決まりだな」

 この家には俺とツキしか住んでいないと言ってもいい。親父は遠い所での仕事でそうそう帰ってこないから、気軽に人を泊めても問題ない。


「…………ありがとう、ございます」

 

 アリスは、しととねちゃんにしがみつきながら小さく絞り出すように言った。

 

 

 夜、就寝前。

 俺は自室のベッドに身を横たえて寝ようと思ったが、喉が渇いた。

 水でも飲もうと部屋を出て、一階に降り、台所に行く途中の廊下で、客間から女の子がすすり泣く声が聞こえた。

 アリスの泣き声だった。


「お父様……ぅぅ……お母様……ぅぅ……」

「だいじょーぶです。だいじょーぶですよ、アリスちゃん」

 しととねちゃんがあやす声も聞こえる。

 

 俺は察した。アリスの両親は死んでいる。恐らく、††Summoned Beast Battle Royal††に巻き込まれて。

「悲しきカルマを背負っていると思ってはいたが、そういうことだったのか……」

 保護者を失っている故に、簡単に俺の家に泊まるという選択ができたのだ。もう帰る家などないのだから。


 あんな小さな子供が背負うには、とても重く辛いものだろう。

 しととねちゃんがいるから、何とかギリギリのところを保っていられるのだろう。


 そしてここから分かる一つの事実。

 俺は、アリスの両親を、アリスを守れなかったということだ。

 俺でも、目の届かない範囲。手の届かない範囲は救えないということ。

 俺はアリスちゃんの両親を、アリスちゃんを救えなかった。

 今からアリスにする助けは、すべて次善策に過ぎない。

 そんな現実。


 こんな考えは傲慢なのか。

 誰かを救おうなんて、傲慢なのか。

 傲慢なのだろうな。


「…………」


 いや、俺はしたいことをしているだけだ。

 目の前のやれることを、やるだけだ。

 それだけでいい。


 救うぜ。俺はヒーローだ!!!!!!!

 悩んでる暇があるなら、できる限りやるだけだ!!!!!!!


 俺は台所へ意気揚々と歩いて行き、、水をがぶ飲みしてから就寝した。


 

 翌日、リビングのソファに俺達四人は座り、時が来るのを待っていた。

 壁掛け時計が秒針をカチカチと鳴らすのを聞きながら、【ウルトラミラクル】の効果が表れる10時28分を待望する。


 そうして、時間になった。


【条件達成:勝利確定】


【ウルトラミラクル:超動】


 よし、これで、アリスを助けられ――


 瞬間。「召喚力」を感知。


 俺達は、知らない場所にいた。

 そして、【ウルトラミラクル】の発動は打ち消された。


 ―††Summoned Beast Battle Royal††ー


 Battle Start…………


「なっ……!!!???」

「なになに!!????」

「…………っっ」

「なんですかーー!!???」


 無数の柱が乱立した闇夜の草原。そうとしか言えない場所だった。


 こんな異常事態、どう考えても召喚獣関係の事象だろう。


「つまり今、俺達は召喚獣の攻撃を受けている!!!!!!」


 さらに、とんでもない「召喚力」を先の瞬間から犇々(ひしひし)と感じる!


 俺は、敵の意図を理解した。


「そうか。そういうことかよ、クソがッ!


 俺のツキと同タイプの《サモンアビリティ》か……!

 

 これは、「罠」だ! 俺たちの【ウルトラミラクル】が発動した瞬間に敵の召喚力を感知した。つまり、その瞬間がトリガーだ。【ウルトラミラクル】も打ち消されている!!」


 ツキの《サモンアビリティ》が発動した瞬間に効果が表れる。条件が達成されると発動する《サモンアビリティ》。俺と完全に同タイプだ。


 いつ仕掛けられたのかはわからない。遠距離から設定できるタイプなのか、アリスにどこかで設定しておいたのか。


 自分の《サモンアビリティ》がこの世に存在するのなら、それと同じような《サモンアビリティ》を相手が使って来ると想定しておくべきだった。いや、想定したところで今の状況を避けられたかどうか。そんなこと考えたところで意味はない。今の状況を見極めて打開するのだ。


「どどどど、どうしようご主人様! てか理解速いな!」

 ツキはまだ慌てている。

「落ち着け!!!」

 バシッと背中を叩く。

「あふんっ」


「あ、あ、あ……ごめんなさい……ごめんなさい……アリスのせいで……アリスがいるから……また、死んじゃう。みんな、死んじゃうよぉ……」

 しととねちゃんがアリスを守るように抱きしめる。

「アリスちゃん、大丈夫です。なんとかなりますから!」


「ああ、俺が何とかしてやる」


 アリスをこれ以上、悲しませないために。

 もう悲しみ過ぎたほど悲しんだのだ。こんな小さな子供に、これ以上の悲劇なんていらない。

 見せてやるぜ。俺のHAPPY FIGHT END


 正面から、敵の召喚獣であろう狼が見えた。

 と思った時には。

 俺の腹が裂かれていた。

 

「ぐあぁぁーーーーーっ!!!???」

「ご主人様ー!?」


 そして反撃する間もなく狼は消えた。


 攻撃の軌道が可笑(おか)しかった。速度に追いつけなかった。

 確定の一撃だった。

 そう、敵の《サモンアビリティ》の条件が達成されている状態なんだ。今は間違いなく、かなり厳しい状況なのだ!!!!!!!



 暗闇に歪んだ声が呟く。

「人間などに、容赦はしない。人間は、消えろ」

 スーツを着た会社員の男、社平権蔵(やしろだいらごんぞう)は、極度の人間嫌いだった。

「絶対隠形(おんぎょう)と絶対命中は既に超動している。私の勝利は揺るぎない」

 "アリスの近くで《サモンアビリティ》が発動する"、という条件が達成された今、社平権蔵の召喚獣、フィールドキングの《サモンアビリティ》、【ビーストワールド】は無敵のフィールドへ代悟たちを捕らえていた。

 社平権蔵は代悟たちに必ず見つかることはない。フィールドキングは代悟たちには捉えられない。さらに、フィールドキングの攻撃は絶対に命中する。

「例え子供であろうと、人間である限り私の敵だ」

 社平権蔵はそれほどまでに人間社会を憎悪していた。そして、それ故か、動物が好きだった。

「フィールドキング、いい子だ。あとでビーフジャーキーをやろう。うんと高級なやつをだ」

 フィールドキングの爪が大海代悟の腹を裂くのを見て、社平権蔵は口角を上げていた。

「このままじわじわと苦しめてから殺してやる」





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