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大剣には電撃が走っている。
俺は、先ほどのようにギリギリでかわすような事はせず、余裕をもってかわし、時には受け流し、確実に捌いていく。
上からの打ち下ろしには、刀を沿わせ、受け流し、横や下からの斬撃は、刀を合わせ、切り結び、魔法による援護射撃は全て避ける。
刀と大剣が結ばれては離れ、結ばれては離れるという事を幾度も繰り返す。
かわしても簡単に体勢を崩す事はない。
これも気力による身体強化の為だ。
気力は魔力とは似て非なるものだ。
本来、魔力とは自分の生命力を変換して作られる。魔力量は、その人がどれほど生命力に溢れているか、ということでもあるという事だ。
気力はその生命力を魔力ではない、純粋な気に変えるもの。
魔力は周りに影響して事象を引き起こすが、気力は自分の内側を改変するものという事だ。
大剣には電撃が走っている。
俺は、先ほどのようにギリギリでかわすような事はせず、余裕をもってかわし、時には受け流し、確実に捌いていく。
上からの打ち下ろしには、刀を沿わせ、受け流し、横や下からの斬撃は、刀を合わせ、切り結び、魔法による援護射撃は全て避ける。
かわしても簡単に体勢を崩す事はない。
これも気力による身体強化の為だ。
気力は魔力とは似て非なるものだ。
本来、魔力とは自分の生命力を変換して作られる。魔力量は、その人がどれほど生命力に溢れているか、ということでもあるという事だ。
気力はその生命力を魔力ではない、純粋な気に変えるもの。
魔力は周りに影響して事象を引き起こすが、気力は自分の内側を改変するものということだ。
つまり、魔法を使いながら気力を使うのは不可能ではないだろうがほぼ無理と言っていい。
今俺が、春樹の攻撃を避けることが出来ているのは春樹が電撃の魔法を使いながら戦っているからだ。
この状況は泥沼だ。
なかなか決着がつかない。
春樹もそう悟ったのかお互いに大きく打ち合い、大きく後ろに距離を取る。
すると、春樹は大剣を下ろす。
「どうした?」
「そろそろいいだろ?」
「何がだ?」
「そろそろ本気出そうぜ、あの時みたいにな」
春樹の言う「あの時」とは、入学試験の事を言っているのだろう。
入学試験では、教官との試合もあった。
そして、教官を倒した後、教官を倒した者同士を戦わせ、一番を決める。
俺は教官を倒した時、この月夜見を使って倒した。まぁ、相手が教官と聞いていたし、下手に手加減して負けてしまうとAクラスに入れないと思っていたからな。結局Aクラス入れなかったが。
そして当然、教官は倒した。というか楽勝だった。なんなら月夜見無しでも大丈夫だったほどだ。
問題は教官との試合は、他の生徒が見る事が出来た事だ。
そこで、春樹は俺を見ていた様だ。
教官との試合が終わり、教官を倒した生徒同士の試合で春樹と当たった。
もちろん教官との試合を元に普通の刀を使う予定だったが、春樹がそれを拒んだ。
そして、月夜見を使い、春樹に圧勝した。
その事を言っているのだろう。
「いや、今出せる俺の本気はこんなもんだと思うぞ」
「は?何言って...」
春樹は何を言っているのか分からないといった様子で言うが、その言葉が最後まで発されることは無かった。
『緊急事態発生!緊急事態発生!安全の為、強制送還を開始します』
突然、けたたましいサイレンの音とともに機械音のアナウンスが入る。
その直後、視界を光が覆い、音が遠ざかる。
次の瞬間には、試合前の転移装置にいた。
ただ試合前と違うのは、観客が悲鳴を上げ、逃げ惑っているという事。
そして、観客席の中央に制服を着ていない、男たちがいるということ。
「これは、どういう状況だ?」
春樹がこちらに近づいてくると、疑問を口にする。
「恐らく、何かしらの犯罪集団の侵入だと思う。とにかく今は避難しよう」
「ああ」
嘘は言ってない。
ただ、奴らを見た時点で確信した。
観客席にいた男集団の服装は統一してあり、その肩には、黒い鳥の紋章が刻まれた肩章が見えた。
それが表す組織の名は《常闇の宴》。
犯罪集団の中でも上位に存在する組織の同盟、《影の同盟》の一つでもある。
春樹と共に入り口に走る。
が、入り口から二人の女生徒が奥から走って来て、その後に一人の男が数人を連れ、歩いて来る。
二人の女生徒は、風切、アリエッタ先輩コンビだ。
どうやら先ほどの試合の後、まだ控え室にいた様だな。
「他の生徒は全員、無事に逃げました。しかし、ここは囲まれています」
アリエッタ先輩が緊張した声で伝えてくれる。
目の前のリーダー格らしき人は相当の手練れの様だ。
更に、観客席及びリーダーの近くにいる下っ端連中も銃器をこちらに構えている。
やばいな。
恐らく、凪沙がやられたという事は無い。
これは断言出来る。
しかしこちらに敵が現れたという事は、向こうは相当な人数で来ていると見ていい。
そしてこの状況。
確かに銃器の弾は魔法などで簡単に防ぐ事が出来るが、魔法は殆どが発動までに時間を要する。
それに対して、銃器は引き金を引くだけだ。
魔法は間に合わないだろう。
それに加えてこの人数を守りながらの戦闘となる。
まぁ、ここの連中なら自分の身は守れそうだが、相手は大勢だ。無傷という訳にはいかないだろう。
アリエッタ先輩は小型の機械を耳に当てている。
「この外で、先生方とスペリオ王国の方が戦っている様です」
どうやら通信機器の様だな。
しかしこのままでは俺たちはやられてしまう。
すると、リーダー格の男が話しかけてくる。
「ここにレイト・アン・アリスティア王女様がいらっしゃるとお聞きしたのだが、君たち知らないか?」
「知らない。ここにはもう俺たち以外はいない。王女様なら今頃どこかに避難してるよ」
やはり王女が狙いの様だ。
どこで聞いたのかわからないが、ここに王女が居ると思っているみたいだな。
「そうか。ならお前らには死んでもらう。そういう上からの命令なんでな、と言っても邪魔が入って、まだ一人も殺してないんだがな」
そう言って、男は先輩たちの方を見る。
アリエッタ先輩達が戦って、生徒を逃した様だ。
仕方ない。任務とはいえ、ここで知り合った級友と先輩だからな。
「三人とも、今から起こる事は他言無用だ。軍の機密保持の為、他言すると裁判沙汰になるからな気をつけろよ」
俺は一歩前に出る。そして刀を抜く。
「ほお、お前何者だ?ただの学生じゃないだろ?まさかお前が派遣されたっていう魔装部隊の隊員か?
だが情報によれば潜入中の隊員は一人のはずで、一人は本校舎の方を守っている様だしな。
本当に何者だ?」
今の言葉で本来はありえない予想が立ってしまったが、事実確認は後にしようか。
「そうだ俺は特殊魔装部隊所属の黒川夏希。
私有施設の襲撃、その他の現行犯で、逮捕する。
とりあえず言っておくが降伏しろ」
「降伏する気がないって分かってるんだろ?
それにしても特殊魔装部隊とは。ハハッ、道理で向こうの嬢ちゃんも強い訳だ。
だが、この状況では成すすべないなだろ?」
その言葉とともに、男は手を上げる。
すると、男の部下が銃を構え、こちらを狙う。
上げている男の手には、メリケンサックの様なものが付いているのが見える。
「撃て」
そう言いながら手を振り下ろす。
だが、弾は飛んでいくどころか、銃声の一つもなることはない。
「ほぉ」
男が訝しげに振り返ると、部下たちは全員倒れていた。
前に向き直り、笑う。
「ハハッ、なるほど。本当の様だな特殊魔装部隊というのは。
嬉しく思うぜ!お前に会えた事をよぉ」
そう言って拳を構える。
そして下に振り下ろし、地面を叩き割る。
地響きとともに、空間が揺れ、本当の景色が現れる。
「見破られるとはな。だが、お前は抜けた」
「そのようだな」
すでに俺以外は俺の後ろ、入り口の方に走っていった。
男はまた、構え直す。
そして俺も。
「俺の名はアラド。元傭兵だ。てめえのような強者を待っていたぞ!」
「そうかよ。俺のやることは変わらない。
アラド、逮捕させてもらう!」
お互いに地面を蹴り、拳と刀が交錯する。