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魔法学園の魔装使い  作者: 出雲真
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「まてよ」


 学園の校門を抜けたところで後ろから声をかけられた。

 人影が近づいてくる。


「やっぱりお前だったか」


 春樹(はるき)が俺の肩を掴みながら言う。

 今の、やっぱり、というのは一次を受かったのが、という意味だろう。

 俺はその手を払いながら、


「まぁな。お前もだろ?」


 とだけ答えた。

 今日は色々あって疲れた。

 久々に力も使ったしな。


「へぇー。何も疑わないんだな」


「当たり前だろ?」


 こいつが言いたいのは、自分はFクラスだからということだろう。

 それに関しては全く疑う余地はない。

 Fクラスといっても、弱いわけではないし、現に俺だって、Fクラスだ。

 更にいうと、一次を通ったというのなら、俺と同じタイミングで戻ってきたはずで、俺は終わってからすぐに(普通なら追い付く事は出来ないスピードで)ここまで来たのだ。

 本気でここまで来たわけではないから、追いつこうと思えば追いつけるかもしれないが、それにしても早すぎる。

 おそらく、魔法だと思われるが、全く疲れていないところを見ると、実力というものがそれなりに分かってくる。


「明日、お前と当ったら本気(まじ)でやるからな」


「分かってるよ」


 少しの間、お互いににらみ合い、振り返る。


 お互いに手を振り、別れる。

 明日が楽しみだ。




「今回の予選、残ったチームはこの二チームでした。

 中でもこの中嶋 春樹というものがかなりの実力を発揮していました」


 キールは目の前の机に顔写真付きの書類をおく。

 それを机に座っている少女が丁寧に拾い上げる。


「そうですか。分かりましたこの中嶋君には、注意して見ておきましょう。

 それよりも最後は何があったのか分かりましたか?」


 少女が書類を置きながら、キールに言葉を投げかける。

 するとキールは少し眉を寄せ、少しの()を開けて、答える。


「...それが私達でも分かりませんでした。

 ただ、あの黒川 夏希と言う者が何かしたのは間違いないかと。

 その時、両者はまだ魔法を撃ち合い続けていたようなので」


「そうですね。私もそう思います。

 その黒川君の事は調べたのですか?」


「はい。ですが、何も特別な事は出て来ませんでした。

 ここに来る前は、普通の中学校に通っていたそうで、小学校も普通。

 家の方は、学校を経営している貴族のようです」


 今度も夏希の顔写真付きの書類を置きながら話を続ける。


「一見問題がなさそうに見えますが……」


 そこに少女が、書類に視線を落としながら話に割り込む。


「が……それはそれで怪しいと、そういう事ですね?」


「はい」


 キールが(うなず)きながら、短く答える。

 少女は顔を伏せ、考える。

 そこで、キールが話を変える。


「それよりも、王女様はこれからも作戦を続けるおつもりでしょうか?

 失礼ながらかなりの危険が想定されるので、即刻(そっこく)止めていただきたいのですが」


 ため息をついているキールに王女は(ほお)を少し(ふく)らませ、恨めしそうに机の上から見上げる。


「そんな事は分かっています。

 それでもこの作戦は意味があるので、今やめるのは無理ね。

 でも、まぁ、ある程度の憶測は出来たわ。

 この二人のどちらかが今回、この国からの私達の護衛兼監視役でしょうね」


 キールは不安があるような顔をしていたが、自分の仕える主人のやる事を全力でサポートするのが我等の仕事だと、自分に言い聞かせ、表情を戻し、次の言葉を待つ。


「では、今回あげられた二人の監視をしながら、生活するように。

 特に黒川君の方を重点的に監視しなさい。

 人となりをよく観察するように。

 以上です。解散してください」


 すると、いつからいたのか天井から人が二、三人降りて来て、王女に一礼すると、キールと一緒にドアから出て行った。

 王女は椅子から立ち上がって、窓の方へ向かう。


「はぁ、明日が楽しみですわ」


 窓際にもたれかかり、そう呟いた。


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