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魔法学園の魔装使い  作者: 出雲真
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 視界(しかい)が戻ると植物が鬱蒼(うっそう)と生い(しげ)る密林にいた。


 急いで周りに目を向けて、先輩(パートナー)の姿を確認する。

 どうやら何事も無く転移できたようで、(転移した時、本当に(まれ)だが、転移酔いしてしまう事がある)安心する。


 しかし一息つく(ひま)も無かった。

 突然一組のチームが飛び出してきたのだ。タイの色を見る限りどちらも上級生。

  ひとまず先輩の手を引き、ある程度の距離を取る。


 そこに追い打ちの攻撃魔法が飛んでくる。

 一直線に火の矢が飛んでくるが、俺は抜刀(ばっとう)し、刀で火の矢を()ち落とす。

 それからの追撃(ついげき)は無く、どちらも護衛を後ろに(かば)うように立ち、相手の様子を(うかが)う。

 素早く周辺(しゅうへん)を見回し、即座(そくざ)に作戦を立てる。


「先輩、すみませんが、防御魔法で後ろに障壁(しょうへき)を張って(くだ)さい」


 初級に分類(ぶんるい)される、障壁は、物理、魔法攻撃を防ぐことができる盾を作り出す魔法だ。

 ただし、その盾は、一方方向(いっぽうほうこう)にしか展開することができない。

 小声で先輩に伝えると、一瞬、何故?という顔をするが、俺の顔を見て言う通りにしてくれた。


 こちらが障壁を張ると、次は自分達の番とばかりに相手が動き出す。

 護衛役であろう人を残し上に跳ぶ。

 上に跳んだ男子生徒は、空中でほのおを生み出し先程の火の矢を量産(りょうさん)していく。


 そこで俺はすぐに前に走った。

 対象は目の前だ。


 すると地面から炎が吹き上がる。

 あと少しのところで(はば)まれてしまう。


 そして今度は大量に生産された火の矢が先輩に向かって飛んでいく。

 もともとこの上級生たちは護衛対象を(おとり)にすることが作戦だったのだろう。


 しかし、そのような事を現役(げんえき)(今は隊を離れているが)の魔装部隊員である俺が気づかないわけがない。


 もうそろそろだろう。


 次の瞬間、暴風(ぼうふう)が木々をなぎ倒しながら先輩の後ろから飛んでくる。

 範囲が広いその暴風の魔法は、火の矢をかき消し、飛ばした上級生はおろか護衛対象の者さえも吹き飛ばした。


 ちなみに先輩は後ろに障壁を張っていたおかげで無傷。俺もその障壁の近くまで跳んで、直線上にいたため無事だ。

 相手の護衛対象は気絶(きぜつ)したようで動かない。

 もう立つ事ができない様子の護衛の上級生が驚いている。


「な、なぜだ...護衛対象は防御魔法しか使えないはずだ!」


 どうやら今の魔法を先輩が使ったと思っているようだ。

 もちろん、先輩は魔法を使っていない。


「凄い...」


 先輩も呆然(ぼうぜん)としていた。


「簡単だよ」


 そう発した言葉の(ぬし)に視線が集まる。


「こうやって戦っていれば、近くにいる他のチームに見つかるのは当然だ。

 さっき草陰から別チームに見られていた」


 俺の発言に、俺を除く者達は魔法が飛んできた方向を見る。

 そこには、先ほど魔法を放ったであろう生徒が見えたが、こちらの様子を見て、すぐに草陰に隠れていった。


「ここは漁夫(ぎょふ)()(ねら)おうと思ったはずだ。

 一気に倒すなら、どちらかが相手を罠にかけたりして、(すき)が出来ている(あいだ)に広範囲の魔法で倒してしまえばいい」


 しかし、俺が先輩を立たせていたのは草陰で向こうからは見えない位置だ。

 相手は先輩がまさか後ろに障壁を張っているとは思わなかったんだろう。


「俺が先輩方の罠にかかり、火柱(ひばしら)の障壁が消えた時に狙えば一網打尽(いちもうだじん)に出来る、後は先ほどの通りということだ...です」


 最後の"です"はなんとなく相手が上級生だと言うことを思い出したからの言葉だ。

 説明を終えると、相手の服から玉を出して壊し、退場させて、先輩のところに戻る。

 先輩は口を開けてこちらをじっと見ていたので、


「そんな風に口を開けていると、可愛いですね」


 と声をかけると、先輩は澄ました顔でこちらを向き、


「ありがと。お世辞(せじ)でも嬉しいですよ。ていうか夏希君って本当に何者?」


 と、俺の褒め言葉を軽く受け流し、疑問をぶつけてきた。

 しまった。ちょっとやりすぎたか。かなり怪しまれてしまったようだ。

 その言葉を先輩の手を引いて、話をうやむやにし、素早く移動する。

 

  -----


「なんでさっき攻撃してきた方も狙わなかったの?」


 草むらに身を隠しやっとの事で一息ついていると、そんな疑問を投げかけられた。

 先程の広範囲攻撃を仕掛けてきた方だろう。


「ああ...あれはもうダメだと思いますよ。

 おそらくもうリタイヤしている(ころ)かと」


 先輩は首を(かし)げる。


「え?でもあれ(ほど)の魔法を使えるなら簡単にはやられないんじゃない?」


「確かにその通りなんですけど、あれだけの大きな魔法を使うと魔力に影響が出てしまうので、今はほとんど魔力が無くなって魔法が使えないと思います。

 それに、あれだけの広範囲攻撃をするということは他のチームにここに居ると言っているような物ですから」


「なるほど。本当に夏希君は凄いんだね」


 と、先輩は面白そうに言ってきたので


「それしかないですから」


 と自虐(じぎゃく)のつもりで返す。

 すると先輩に、


「夏希君は面白いね」


 と笑われるのだった。




  ーーーーー



 どれくらいの時間が経っただろうか。

 とはいえ時計などはないので、時間を確認する(すべ)ない。


 俺達は身を隠しながら戦うのを極力(きょくりょく)()け、やり過ごしてきた。

 するとアナウンスが鳴り響く。


『試験中の生徒に告ぐ。残りのチームは三組。残り三組だ。

 あと一組脱落した時点で予選終了だ。では健闘(けんとう)を祈る』


 そろそろ動き出すだろう。


 すると、遠くの方で爆発が起こる。

 おそらく、あと一組を(つぶ)す為に全力を出すことにしたのだろう。

 それに答えるように別方向からも爆発音が響く。


「じゃ、こっちも始めるか」


 俺は座って身を(ちじ)めている先輩に手を伸ばす。


「ありがとう。ん~、腰いた~い」


 爆発音が無くなると、今度はその位置にいたであろうチームが遠距離攻撃の撃ち合いを始めた。

 ここは丁度(ちょうど)中間ほどなので、飛んでいる魔法と土埃しか確認できない。


「あれに飛び込むなんて言わないよね?」


 先輩が(そで)を掴んでいる。


「大丈夫、大丈夫」


 先輩は安心したのかため息を吐く。が、


怪我(けが)はさせませんから」


 と聞いて(あきら)めたように先程よりも大きなため息をこぼしていた。



 魔法同士がぶつかるところまで来たのはいいが、土埃で何も見えない。


「先輩。手を離さないでくださいね。

 はぐれたら見つけるのが大変ですから」


「...そんな事言うくらいならこんなとこ来なければいいでしょ」


 先輩の文句を無視する。

 行けるとしてもここまでだな。これ以上近づくと魔法の撃ち合いに巻き込まれてしまう。


「じゃ、そこから動かないでください。

 今からちょっと奥の手使うので目を(つむ)ってて下さいね」


 先輩から手を離すと、(のが)すまいと手を捕まえようと手が伸びてくる。


「いやいや吹き飛んじゃいます!このままだと吹き飛んじゃう!」


 またも華麗(かれい)に無視し、手を離す。


「じゃ。目を瞑って下さい」


 そう言って先輩の目を手で(おお)う。


合図(あいず)するまで目を開けちゃダメですよ」


 そう言って先輩から手を離し、距離を取る。


 よし。この土埃(つちぼこり)の中なら俺が何をしようと見えないだろう。

 前に手を突出し、目を閉じる。

 自分の中にある、()()が手の方に集まっていく。


顕現(けんげん)せよ。月夜見(つくよみ)


 手に漆黒(しっこく)の刀が現れる。

 切っ先から(つか)まで真っ黒で、刃に(うっす)らと刃紋が浮かんでいる。


『今回は何をするのだ?』


 刀から声が聞こえてくる。

 少し幼い女の子の声だ。


「今回は、見つからない様に動きたい。今、俺の力が見られるのはまずい」


『では、どちらを攻撃するのだ?』


 そうだな...片方は雷、もう一方が使っているのは、氷の魔法だな。

 正直どちらでもいいが...そういえば、あいつの魔法は雷系だったな。


「氷の魔法を使っている方を狙う」


『了解した』


 すると、俺の体がだんだん薄くなっていく。

 早くしないと先輩が待ってるからな。


  ーーーーー


 私は彼が離れた時に目を開けようとしたが、土埃のせいでよく(ひら)けない。

 仕方ないので、夏希君の言葉に従うことにした。


 目を瞑っていると当然の事だが真っ暗だ。

 しばらくじっとしていると、突如として魔法による衝撃が無くなった。

 気になって目を開けようと思い、そこで思いとどまる。夏希との約束を破る訳にはいかない。


 そう思い夏希君の合図(あいず)を待っていると、


『一チーム脱落。よって残ったチームは明日の二次試験に(そな)えるように。

 なお、転移はあと一分で行われる』


 というアナウンスが流れる。

 何が起こったか分からず、おどおどしていると、横から知っている声が聞こえてくる。


律儀(りちぎ)な人ですね。約束破ると思ってました。

 あっ、もういいですよ。ていうか終わりましたし」


 目を開けようとしたが目が光に慣れていないので(まぶ)しい。

 しばらくして視界がはっきりしてくると、魔法の撃ち合った痕跡(こんせき)(というか元々密林だったところが、何も無い更地になってしまっていた)が残っていた。


「今回はお疲れ様でした。明日もお互いにがんばりましょうね。先輩」


 彼がそういうと転移が始まる。


 気がつくと、そこは密林に転移する前の景色だった。

 感謝の言葉を伝えようとしたが、すでに彼の姿はなかった。

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