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決意

「私のせいだわ……」


藤堂家からの帰り道、蝶子は深刻な表情で呟いた。


「なんでそう思うんだ」


時雨は蝶子の横顔を見下ろしながら冷静に質問した。


「あの日、光の君を一条殿が送っていれば、きっとこんなことにはならなかった……。私が強く断らなかったから、光の君は一人で帰ったのよ」

「それは結果論だろう。あのときこうなるとは誰も思っていなかった」


少女はその言葉を受け、青年にくってかかった。


「吸血鬼の話は皆知っていたのよ。彼女は吸血鬼に襲われたから、吸血鬼になってしまった。一条殿、あなたは特にわかっていたはずだわ」


理不尽だとは思いつつ、蝶子の怒りの矛先は時雨にも向いていた。


「あなたなら、光の君を守れたかもしれないのに……」


時雨は何も答えなかった。

何を言っても無駄だと思ったのかもしれない。

光の君がどれほど恐ろしい目にあったか。

栄や家族がどれだけ深く悲しんでいるか。

それを思うと蝶子は胸が押し潰されそうだった。


「一条殿は何とも思わない?あなたはそれでも人間なの?」


蝶子は目に涙を浮かべて時雨を睨みつけた。

少女はその言葉が完全に八つ当たりだとわかっていた。

だが気持ちが高ぶって自分を抑えることができなかった。

時雨は蝶子の言葉にぴくりと眉を動かした。


「俺は同情で彼らを救えるとは思えないが」


と冷たく言い放った。

「じゃあ、じゃあ他に何ができるっていうの。あるなら教えて」


どうせないでしょう、とでも言うように蝶子は語気を強めて言った。

しかし時雨から返ってきたのは意外な言葉だった。


「……可能性があるとすれば、君だ」

「え?」


なんのことか分からずに蝶子は聞き返した。


「君を助けた男がいたそうだな。黒髪に、金色の瞳をした人物だったと」


時雨は淡々と言葉を紡いだ。


「そうよ。長い外套をまとった不思議な姿だったけど……彼がなんだっていうの」

「そいつは、鬼だ」


時雨はさらりととんでもないことを言ってのけた。


「おに……?」

蝶子は混乱して時雨の言葉を繰り返した。


「奴なら、光子君をもとに戻す方法を知っているかもしれない」


蝶子は丸い目をさらに大きく見開いた。


「それ、本当なの……?彼の居場所は知っているの?」

「大体の根城はつかんでいる。君が望むなら、連れて行く」


蝶子はもちろん、とうなづいた。


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