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それでもマッチ売りの少女はマッチを売りたい

作者: 般笑

はじめまして黒炎の羊と書いて焦げたジンギスカンと読みます。

なろう初投稿です。よろしくお願いします。

昔話をしよう、あれは今から一週間…いや、一億と二千万年前だったか?

まぁいい。私にとっては今起こっている出来ことだが、君たちにとって多分数分後の出来ことだ。


私の名前はアリス。ウサギを追いかけている訳じゃないがアリスだ。誰だよこのありがちな名前をつけたの…

あ!目の前の私のクソ親父でした。


テヘッ♪


話を戻すよ。私はアリスであってアリスではない。

哲学ではないよ?これは本当の話。

一週間前に初めて北の広大な土地に行った時にちょっとハイテンションになってしまい、マッチ売りの少女ごっこやったらそのまま遭難してマジでマッチ売りの少女と同じ末路を辿った可哀想なお・ん・な。


まぁ、私の場合マッチじゃなくてライターだったんだけどね?ナウいでしょ?(死語)


そんな自業自得で死んだ私ですがどうやら異世界転生したようです。

ただ、その異世界転生した世界は物凄く厄介そう。

異世界転生系の物語でありがちな世界ではなく、魔法は無く、モンスターなども居ない、本当に昔のヨーロッパみたいです。

そして一番厄介なのがこの世界は「マッチ売りの少女」と同じ世界で、私がそのマッチを売っている少女って訳。


え?なんで転生一週間で知ってるかって?

そりゃ神様にあったからね。あの神様、マジ意地悪だわ。

イケメンだけどさ、すべてのイケメンが許されるわけではない。


ワタシ・アイツ・キライ。


だって、私の壮大なる人生を爆笑されたんだよ?酷くない?


☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆


温かい…あんなに寒かったのにここはすごく温かい…それに誰かが私を呼んでる気がする…


よし、もう五時間ぐらい寝よう。五分じゃ足りない。

睡眠・イズ・ジャスティス!!


「いい加減目覚めよ少j…女よ」

「ここは少女と言ったほうがポイント、高いよ?」


しょうがなく目を開けるとそこにはイケメンの男が佇んでいた。

うん。ここは天国ね!!(確信)


「流石に二十半ば過ぎた女性を少女と呼ぶのはキツイのでな」

「知らなかった?女はいつまでたっても少女なのよ」


バチコーーーン♪


「普通少女がウィンクをしたらそんな擬音はつかないと思うのだが?」

「私の必殺技だからね」

「っく…プスッ…キ、キスもしたこと無いのに必殺技か!!あ~~はっはははははは」

「な!失敬な!!付き合ったことありますぅ~~。経験豊富ですぅ~~」

「ひ~~余を殺すつもりかぁあっははははははははは」

「シクシク…酷いわ。こんなか弱い少女を虐めるなんて…シクシク…」


私は両手を顔に当て、嘘泣きをする。これで大抵男は焦るはず!

チラッ。チラッ。


「はぁはぁはぁ、え~と…なになに。小学六年の時に体育館裏で好きな男子に告白しようとして壁ドンしたら先生に見つかってカツアゲしていると思われ指導室に連行?お前面白いな!わははははは!!」

「な!なんで知ってるのよ!!って言うかどっからその紙取り出したのよ!!!」


あれは苦い経験だったわ。壁ドンでキュン死にさせようとしたらまさかカツアゲに間違えられるとは…

好きだった男の子は私を恐れて近寄りもしないし他のメスガキに保護された。

どうしてああなったし…


「あ~面白いな。なになに?高校一年の時、好きな三年生の先輩に過去の失敗を教訓にストレートに『私と付き合ってください』と言ったら『いや、勘弁してください。もう、マジ反省しているので…拳を突き合うのだけは…公開処刑するのだけは勘弁してください』と断られた…なんでこんな勘違いになるんだよ!あっははははは!!」

「あ、あれも事故だったのよ!」


あれも苦い経験だったわ。入学した時にスポーツをする男子が好きだったし、自分の体動かすの好きだったから空手部に入部したら新入部員恒例の手合わせで先輩を含め、全員フルボッコにしてしまった。


私の神秘()に触れようと必死だったからちょっとイラッってしちゃって♪


告白は体育館裏でやるとカツアゲと間違われるといけないから道場の練習中に言ったのが駄目だったらみたい。

実家が空手道場でダイエット代わりに父親から教わったのがいけなかった。

筋肉の付いた体はリバウンドしづらいからダイエットに向いてたのにどうしてああなったし…


「お、まだあるな。なになに。大学四年の時、好きだった大学一年の男子に過去の失敗を教訓に飲みに行った帰りに遠回しに『月が綺麗ですね』と言った所、『そうですね』で終わった…なんでお前が言うんだよ!男子が言わないと意味がないだろ!!ひ~~笑い死ぬわ!!」

「ま、まだ私のターンは終わっていない!」

「ん?続きがあるのか?なになに。『いや、その違うの…月が綺麗ですねって言うのは貴方が好きって意味なの…』ほぅ。攻めるな。で、返事が…『え?まだそんな言い回し使ってたのですか?先輩って古風な人なんですね』と笑われ轟沈…わはははははははは」

「もうやめて!私のHPはもうゼロよ!!」


私は頑張った。けど古風って言われ心が折れたわ。

ただでさえ自分の恥ずかしいセリフを説明しなければいけないのに遠回しに年寄りって言われて…ジェネレーションギャップを初めて感じたわ。


「で、最後に…」

「や、やめて!それだけは言わないで!」

「二五の誕生日が過ぎた後…」

「そ、それ以上は!」

「四捨五入すると三十に入るから、『まだ自分はか弱く、若い少女なのよ』を演じるために一人で北の大地に向かい誰もいない場所でマッチ売りの少女をやったら遭難して死んだと…お前馬鹿じゃないの?わはははははは!しかも、マッチじゃなくライターとか…ひ~~笑い死ぬ!!」

「や~め~て~よ~」


私は両膝と両手を地面に付き項垂れた。

完敗だ…もう真っ白に燃え尽きたよジョー。


「あー。面白かった」

「グズっ…そりゃーようござんしたね…」

「で?なんでマッチ売りの少女をやろうとしたんだ?」

「え?なんでってあんたがもう説明したじゃない。なに?これ以上私に説明させるの?渾身のギャグが滑った時程説明したくないの分からない?」

「いや、マッチ売りの少女をやった動機は分かったがなんでマッチ売りの少女を演じたのか分からんのでな。童話や物語はたくさんある。例えばシンデレラや白雪姫、ラプンツェルは初めは惨めだったが最後はハッピーエンドだったし、悲劇なら人魚姫。お笑い狙いなら裸の王様もあるぞ?お前のまだ若い体(笑)を見せるには良い童話ではないか」


最後にすごく悪意を感じたが、まあいい。許してやろう。


「そうね。別に私も童話に詳しい訳じゃないけどマッチ売りの少女ってお父さんにマッチを売って来いって言われて街に向かうけど結局売れなくて自分でマッチを使って暖を取ろうとしたけど結局そのまま凍死した少女の話でしょ?」

「そうだな」

「一人ぼっちってどんな気分なのかな?って思って」

「ふむ」

「それで…最後、大好きなおばあちゃんに会えたでしょ?」

「そうか…お前も寂s」

「極限状態ならイケメンの男と会えないかな?って思ってさ!」

「俺の感動を返せ!」

「私もかなり粘ったのよ?迷子になるし食べ物も無く飲み物も無かったから雪を溶かして…」

「そうだろうよ!まさか余も冬の山に遭難して、食べ物も飲み物も無く四日間も粘れる女が居ると思ってなかったわ!!」

「女は強いのよ…」

「少女じゃなかったのか?」


私はタバコを吹かすような仕草をした。


「フ~。少女は女。女は少女。裏と表や光と闇と同じ。二つは一つなのよ…」

「ここでハードボイルド!?お前のキャラが余には分からん…」

「乙女心は複雑なのよ」

「お前ほど複雑なのは居ないわ…」


イケメンはがっくり項垂れていた。

よし、勝った。私の過去を暴露した罰だ。ざまーみろ。


「まぁいい。遅れたが余は神だ」

「で、イケメンの神が私になんのよう?惚れた?ってかマッチで本当にイケメンに会えるとかマッチパネェわ。あ!ライターだった。マジチョリッス」

「お前、死んだばっかなのに元気だな。しかも死語バリバリ使って恥ずかしくないか?しかも、最後意味分からんし」

「え?死語なの?ここでも感じるジェネレーションギャップ!」

「今時の若い子は『マジ卍』って言うらしいぞ」

「意味は?」

「無いらしい」

「は?え?意味がない?意味わかんない。今時の若い子は怖いわ。オヨヨ」


私は(シナ)を作って神様に寄りかかろうとすると神様は一歩下がり避ける。


「ッチ」

「えーい!話が進まん!!勝手に進めるぞ。お前にはマッチ売りの少女の世界に行ってもらう」

「はぁ!?意味わかんない!」

「お前見てたらマッチ売りの少女を舐め腐っているのでな。せっかくだからお前にマッチ売りの少女を本当に体験してもらうと思ってな」

「え?意味わかんない。え?」

「どうやら話を長引かせているようだし、なんとなく余も狙われている気がして…」

「え?バレてる!?え?」

「やはりそうだったか…じゃあ頑張ってな。死ぬなよ。簡単に死んだら次ドブスで転生させるからな」

「え!?ちょ!それやだ!!」

「しかも、周りはイケメン揃い。だが、ドブスのお前に誰も見向きしない」

「はぁ!?意味わかんない!!マジ卍」

「お前やっぱ余裕あるだろ?まぁいい。さらばだ!!グット・ラック!!」


待って!

私の地面が光り自分が引っ張られる感覚がする。

ドブスはヤダ!!せっかくイケメンが多いのに!!待ってください!!


「まーーーーーーーってーーーーーーー!!」


そこで私の意識は失った。


☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆


分かる?この理不尽。

確かにマッチ売りの少女ごっこをやって死ぬのは結構アホだと思うけどさ。

まさか、私が本当の物語の主人公になるって…しかも、今日死ぬらしいし…


え?なんで今日かって?


アリスに転生した時に神様が突然出てきて『言うの忘れてたがお前、一週間後に死ぬ運命だからドブスになりたくなかったら全力で生き残れれよ?じゃあな!』とかいきなり言われたからね…


「おい。アリス!聞いているのか!!」


おっと、物語上私を間接的に殺したクソ親父が目の前に居るの忘れてたわ。


「えっと…マッチを売りにいけばいいの?」

「そうだ!売らないと家は生きていけない。分かるな?」

「えっと~アリスよくわかんな~い。テヘッ♪」

「あ゛ぁ゛ん?」

「ッヒ!」


このおっさん、マジで怖い。

私も一週間後に死ぬって分かってたから今日は家を出ないようにしようと思ったけどアリス()のお父さん、マジ熊だし。

髪はモヒカンだし髭もモジャモジャ、左目には縦の傷が入っており、体は超ムキムキ。どこの世紀末生きてたし?

絶対に汚物は消毒してたタイプ。


「で、でもぉ~。アリス売り方わかんないよ?」


必殺!首45度に傾け下から目をウルウルさせながら瞬をすればどんな男でもイチコロ上目遣い!!(マダム・オトコゴロシ(男殺し)著、男をイチコロにする110の方法、第48章より抜粋)


「何ナヨッとしてんだ!!男ならシャンとしやがれ!!ぶん殴るぞ!!」

「いえ、少女です」


あぁ、マダム(師匠)。必殺技が効きませんでした。どうすれば…

私の名前がユリアだったら世紀末を生き残ったムキムキのイケメンが助けに来てくれたのに!


「まぁ、良い。とにかく売れるまで帰ってくるなよ?帰ってきたら分かってんだろうな?」

「む、無理だよぉ~。アリスまだ1○歳だよ?みんな買ってくれないよぉ~」


必殺!両拳を顎に当ててピーカブースタイルからの頬を膨らましで私、怒ってるんだよアピール!!デンプシーロールをしながら近づけば効果は増加!!(マダム・オトコゴロシ(男殺し)著、男をイチコロにする110の方法、第88章より抜粋)

あと、年齢を伏せるとちょっとエロいよね?


「フンッ」


あ、マダム(師匠)!こいつ、私の必殺技鼻で笑いましたよ!!


「そうやって媚びれば誰かは買ってくれるだろうよ」

「え~でも…」

「あ?それともなんだぁ?自信がないのか?」

「あぁん?」


あらやだ。可愛い美少女からあるまじき声が出てしまったわ。オホホ。


「そうやって俺に毎日媚売ってくるくせに外では使えないのか?」

「え?いや、その」

「ほぉ~ん。そうだよなぁ。不細工だから売れないもんな。俺が悪かった。俺が売ったほうが断然売れるもんな。こんな不細工から買うよりもよ」

「あ゛ぁ゛ん?」

「自信ないもんなぁ~。しょうがない。俺が行ってやるよ。ドブス(お前)はそこで待ってな」

「ちょっと待ちな!」

「あん?」

「こんな美少女を捕まえて不細工ですって!?」


私は怒った。こんな可愛らしいアリス()が不細工!?

あり得ないわ!


「この私が熊面のクソ親父に負けるですって!?笑止!見てなさい!!マダム(師匠)の名にかけて私はすべてのマッチを売ってみせるわ!!!」

「ほぉ~…売れなかったら?」

「全部売れるまで帰ってこない。死んでも帰ってこないわ!」


見てなさいクソ親父。少し大きいけど死んじゃったママのガラスの靴に継ぎ接ぎだらけだけど自作のドレス。

そして腰まである長いブロンドの髪を三つ編みにしてマッチの入ったバスケットを持ち、さぁ戦場へ。


「準備できたわ」

「よし!わかった。行って来い」

「えぇ、行ってくるわ。見てなさいクソ親父!!」


…ん?あれ?私、行くことになった?なんで?


☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆


今日は寒い日。日も沈んできてるから早く売らないと。


でも、私の足元は裸足。寒い…


家を出る時は確かにママのガラスの靴を履いて意気揚々と出ていったんだけど、ちょっと大きかったからなのかしら?大きな道を急いで渡った時、ちょうど二台の馬車が猛スピードで走ってきて引かれそうになったの。

それで球児もビックリ、横っ飛びしたら靴が無くなってて…辺りを探しても見つからない。

片方は浮浪児が見つけ、走って持っていこうとした所ぶん殴って奪い返したんだけどガラスの靴のせいでヒビが入ってしまった。

流石にヒビの入ったガラスの靴を片方だけ履いてたらいつ割れて足を怪我をするかもしれないからマッチを入れているカゴの一番下に入れた。


「本当に最悪だわ。マッチ売りの少女と全く同じパターンよ」


そう、マッチ売りの少女も道を渡った時に片方の靴を無くし、片方は浮浪児に持って行かれて裸足で売ることになってしまったのだ。まぁ、私の場合片方はぶん殴って取り返したけど片方が見つからない…足が寒い…


「マッチは要りませんか?誰かマッチを買ってくれませんか?」


私が声を上げても誰もこっちを見ない…なぜ?


「あ、おじいさん。マッチは買いませんか?」

「ん?あぁ…ライターを持ってるから要らないよ」


な ん で す っ て !?


「ラ、ライターを持っていらっしゃらの?」

「あぁ。マッチより楽だし一個100円程度だからの。今時、マッチを使っている者は居ないと思うよ?」


しかも円!?ユーロじゃなくて円!?なぜに!?

って言うかなんでライターがあるのよ!!意味分からない!!!


「で、でもマッチを売らないと私…」

「うーん。すまないのぉ。お嬢さん。では…」

「ちょっと待ちなさい」

「ん?」

「買いなさい」

「え?」

「良いから買えよ?」

「え?いや…だからわし…」

「良いから買えって言ってんのよ」


もう良い。マダム(ペテン師)の教えはもう良い。

そうだ。売ればいいんだ。そう、どんな手を使っても…


「ねぇ、おじさん。買えよ」

「ラ、ライターがあるk」

「買えっていってんのよ」


私はおじさまの胸ぐらを掴み私の目の前に引っ張り、そして可愛らしくニッコリ笑う。


「ね?」

「は、はい…い、幾らですか?」

「1000円」

「え?高いよ。ライターひゃk…」

「1000円」

「は、はい…」


おじさまは私に1000円を渡し、逃げるように去っていった。

よし。私の美貌のお陰で一箱売れた。あと九箱ね。


え?別に全部売る必要は無いんじゃないかって?


違うわ。これは魂を賭けた勝負。

全部売って、不細工って言ったあのクソ親父に土下座させないと私が許せない。

それまで死んでも家に帰れないわ。


「さて、次の獲n…買ってくれる優しいお方はどなたかしら?」


辺りを見回してみると何故か皆距離を取ってこちらを見ている。


「あ、そこのお兄さん?マッチ買いません?」

「え?い、いや、た、タバコを吸わないので勘弁してください!」


私が近寄るとお兄さんは方向転換をし、逃げていってしまった。


「あ、そこのおじい様?マッチは…」

「か、勘弁してくれー」

「お、奥様?マッc」

「殺さないでおくれ~!」


そして、私は一人ぼっちになった。


「これは洒落にならないわ!」


そ、そうだ。場所を変えよう。そうすればまたカモが居るはず。

寒さと空腹で若干震えながらアリス()は歩き始めた。カモを求めて…


「ちょっと君」

「カモが来た!!」


後ろを振り向くとイカツイ憲兵さんの姿が。


「ここで裸足でカツアゲをしている少女がいるって聞いてね。あと、浮浪児が傷らだけで保護されたんだがどうやら継ぎ接だらけのドレスを来た凶悪な少女にやられたらしくて…ちょっと一緒に来てもらえるかな?」

「えっと…さらばだ!」

「え?ちょっ!待て!!」


イカツイ人は求めてないの。イケメンかカモになってからまたいらっしゃい!

私は走る。走る。走る。

風を切り裂いて走る。その姿、まるで女豹の如く!

角を曲がり、更に曲がる。

狭い道を通り、暗い道を通り、そして憲兵を撒いた。


「はぁ、はぁ、はぁ。裸足で雪の走るのはキッツイわ」


私の足はすでに真っ赤を通り越して青くなっていた。


「寒いなぁ…これは…無理かなぁ…」


ドブスは嫌だけど仕方がないね…一応一箱は売ったけど…でも、帰れない。

あんなに啖呵を切ってしまったのだ。家に帰ればあのクソ親父が激怒してぶん殴るだろうな。

私は壁を背に座り込んだ。


「ま、いっか…どうせ一回死んだ身だし、物語もここで終わり…ごめんねアリス()。マッチ売りの少女ごっこなんてしちゃって…」


私は目を瞑ってそのまま意識を手放s…


「もし、お嬢さん。大丈夫ですか?こんな季節に裸足だなんて自殺志願者ですか?」


私が目を開けるとそこにはイケメンが居た。

…イケメン!?


「ちょ!お兄さん。マッチを買いませんか?」


私は勢い良く立ち上がりイケメンの胸ぐらを掴んだ。逃さんよ?


「え?マッチ?こんな時代に?」

「マッチを売らないと帰れないんです!!」

「そ、そうか。なら、いくつあるんだい?」

「九箱です!一箱1500円で全部で1万と3400円!!」

「高っ!ま、まぁいいや。じゃあ、全部買おう」


よっしゃー!全部売れたで!!

あんがとなイケメンのあんちゃん!!!


私が一箱ずつ取り出し、渡そうとした瞬間。


「あれ?そのガラスの靴…」

「あ、これですか?実は馬車に引かれそうになった時片方無くしてしまったの」


箱と箱の間からひび割れたガラスの靴が見えたのか、私が苦笑してイケメンのお兄さんを見ているといきなり肩を掴まれてしまった。


「あ、貴方をずっと探していました…」


お?これマッチ売りの少女には無い流れだけど美味しいシチュエーションですかな?

イケメンの顔が近いですなぁ…ぐへへへ


()()()()()()()()()

「はいぃ?」

「見てください!このガラスの靴を!!」


イケメンのお兄さんが手に取り出したのは私の靴の片方だった。

ってかどっから取り出したよその靴?


「あの時、踊ってくれた貴方が忘れられなくて…」


いや、踊ってないから。

でも、いっか。シンデレラ姫を探しているのは王子さまだよね?って事は玉の輿だよね?

なんでマッチ売りの少女の世界に居るのか分からないけど良いや。

イケメン、ゲットだぜ!!


「僕と一緒に来てもらえますね?シンデレラ姫…」

「私でよk」

「ちょっと待ったぁ!」

「ん?」


突然、私の手が引っ張られイケメンのお兄さんから離れてしまった。

あぁん!誰よ私の手を引っ張った馬鹿は!!


()()()()()()()()()()()。この坊っちゃんが」

「え?」


急に胸に抱きしめられ、上を見るとこれまたイケメンが…でゅへへへへ


「怖かったでしょう?俺の白雪姫…俺の口づけで目を覚ましてあげましょう…」


そしてイケメンが目を閉じどんどん近づいてくる…

これがファーストキスなの!?きゃーーーー!!じゅるり


「僕のシンデレラから手を離せ!このキス魔が!!」


また、私は引っ張られ、イケメンから引き剥がされる。

そしてイケメンがイケメンに近寄り…ええい!分かり辛い!!

シンデレラ姫って呼んでたのがイケメンAで、白雪姫って呼んでたのがイケメンBね。


イケメンAがイケメンBと取っ組み合いをしていた。

これは女子が言いたいセリフ第3位のあのセリフを言うしか無い!!


「駄目よ!私の為に争わないで!!!」


ドヤァ!言ったったで!!


「その声は…()()()()()()

「いやいや、確かに私は歩くたびに足は痛くなるけど人魚姫は喋らんやろ。声無くしているんだから」


つい似非関西弁が出てしまった。

イケメンAとBが殴り合いをしている最中に後ろからアリス()を人魚姫と呼ぶ声が。

後ろを振り向くとそこにはまた違うイケメン(イケメンC)が…ん?その後ろに見えるのは女?


「ずっと探していたよ。人魚姫…私は知らなかったんだ…君が私からの愛を貰えなければ君は海の泡になって消えてしまうなんて…」

「消えてしまっても良かったのに…(ボソッ」


ちょ!後ろの女ぁ!!聞こえたわよ!!!

って言うか意味わかんない。

シンデレラの後は白雪姫で今度は人魚姫?

何が起きてるの!?


「済まなかった…助けてくれたのはあなただって言うのに…もう、離さないよ。私と結婚しよう」

「え?ちょ…後ろの方は!?」

「彼女は私の正妻だよ。君は私の側室になるけど大丈夫。二人共愛することを誓うよ…」


私の手を取りイケメンCが私を胸に手繰り寄せた。

そして顔がどんどん近くなっていく…

今度こそファーストキス!?むふふ


「「ちょっと待ったぁ!この二股野郎が!!」」


と、思ったら殴り合っていたイケメンとAとBがストップをかけた。

もう、寸止めは止めて…私の心臓が持たないの…


「二股で結構。ほら、正室の目の前で告白しているんだし別に浮気していないんだから良いじゃないか!私の本命はこの二人だ!!」

「一人を愛せないやつは帰れ。彼女は僕が初めに見つけ出したんだ!!」

「煩いよ。ママに舞踏会を開いてもらわないと嫁探しも出来ない坊っちゃんはさっさと帰ってママにまた舞踏会開いてもらって新しい嫁さん探しでもしてな」

「あ゛ぁ゛ん?」

「それに比べて俺はワザワザ森に入ってまで彼女を探し出したんだ。真実の愛は俺にある!!」

「お前なんかについていったらクソババア(王妃)が付いてくるじゃねぇか。毒リンゴでも食わせるつもりか?」

「なんだと!?」


2人の取っ組み合いが今度は3人の取っ組み合いになった…

どうしてこうなった!

あ、正室さん。どーもスミマセン。こんな事になってしまって…私も二股されるぐらいなら一人に愛されたいな~って思ってまして…

え?お宅もそう?あ、スミマセン私のせいで…

え?私のせいじゃない?イケメンCのせいだって?

あ、そうですか。いや~、もしかしていい友達になれますかね?

え?ライバルになりそうだからヤダ?そんな事言わz…ぐぇ!!


「痛い痛い!誰よ!!私の髪を引っ張ってるのは!!」

()()()()()()()…我輩は盲目の闇から帰ってきた。さぁ、帰ろう。君の男女の双子が国で待っているよ」

「ちょ、痛い!待って、ラプンツェルみたいに私剛毛じゃないしそんなに長くないから!塔登れないから!!って言うか双子!?」

「あぁ、トンヌラとエリザベートだよ。」

「え?何?私、子供居るの!?しかも男の子の名前、適当過ぎ。それ絶対にパ○スがつけた名前だよね!?」

「何を言っているんだ?君と我輩の愛の結晶だよ」


私は後ろ髪を引っ張られ勢い良くイケメン(イケメンD)の胸に抱かれた。


「もう離さないよ…さぁ、また一緒に愛し合おう」


そして私と彼の唇は…また、くっつかないんだろうなぁ…


「「「待てや!このヤリ○ンが!!僕(俺)(私)の姫に手を出すんじゃねぇ!!」」」


イケメンDの唇が私の唇とくっつく前にイケメンA、B、Cの拳がイケメンDに着弾した。

にしてもよく3人邪魔にならず殴れたな。実は仲いいんじゃね?


「我輩に何をする!ラプンツェルとの愛を邪魔するでない!!」

「うるさいよヤリ○ン。塔に捕らわれている何も知らない少女を孕ませやがって!うらy…けしからん!!」

「そうだ。結婚もしないで手を出すなんて最k…最低だな!!」

「そうだそうだ。彼女の育ての親に可愛い子どもを孕ませられたと激怒され追放されてもかっこy…惨めに帰ってきたくせに!!それに…」

「「「彼女は処女だ!!!」」」


やめて。それ地味に私の心抉ってくるわ。


「彼女はピュアなんだ!」

「キスもした事無いんだぞ!」

「キスどころか付き合ったことでさえ無いんだぞ!」


もうやめて。私のHPはゼロよ。

ええ!そうよ!!私の年齢=彼氏いない歴よ!!!

それ以前に手を繋いだ事でさえ無いんだからね!!!ドヤァ


はぁ…死にたい…


「うるさい!彼女はラプンツェルで我輩との双子が居るのだ!!」

「居るよね!妄想癖の強いやつ」

「居る居る。あれだよね。僕だけが彼女を見ているんだ!的な」

「で、他の男と話したら僕を裏切ったな!って言って彼女にナイフで突き刺すんだろ?」

「「「怖いね~」」」


いや、あんたらイケメンDを馬鹿にしているが私は怖いぞ?

え?なに?私刺される系!?


「お前ら!我輩を馬鹿にしよって!!」


イケメンDがイケメンA、B、Cに飛びかかっていった。

うん。なんか意味わからないね。4人でもみくちゃになって…

ん?あ、イケメンCの奥さんどーも。

え?貴方も大変ねって?

いやぁ…自分どうしてこうなったかわからないんですよね…

ただ、マッチ売りたいだけなのに…

え?なんだか可哀想になってきたから友達になってくれるって!?やったこっちに来てからの初の友達だ!!よろしくお願いします♪


「ようやく見つけたぞ。()()()()()…」

「なに?またイケメンですか?」


イケメンCの奥さんと仲が良くなったのに後ろから声がかかったので振り返って…


「って!!ななななななな!!!服を着なさいよ馬鹿ぁ!!!!」

「何を言っている?」


後ろを振り返った先にはパンツ一丁とマント、頭には王冠をかぶったおっさんが居た。

そう、()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()だ。


「なんであんた服を着てないのよ!!あんた馬鹿?変態!?セクハラよ!!!」

「何を言っているのかわからないのぉ…」

「服よ!ふ・く!」

「あ、この服かの?これはバカには見えない布地で作った服じゃよ。周りの皆も絶賛してくれてのぉ~。ほっほほほ」

「あんた騙されてんのよ!!」


私は悲しい…しかも王妃って私の事呼んでるから多分この人私の事奥さんだと思いこんでるわ。

イケメン四天王はまだ許せる。だが、ここに来て魔王(裸の王様)が来るとは予想しなかったわ。


「さて、王妃よ。儂と帰ろう」


魔王は私の手を取り、引っ張ろうとするが…

まぁ、イケメン四天王が邪魔するわな。


「「「「待て待て待てぇい!キタネェおっさんが僕(俺)(私)(我輩)の姫に手をだすんじゃねぇ!!お前じゃねぇ!僕(俺)(私)(我輩)のだ!!真似すんな!!!」」」」

「なんだと?王子風情が儂に楯突くのか!?儂と同じ王様になってから出直してこい!!」

「「「「あ゛ぁ゛ん゛!?」」」」


今度は5人で取っ組み合いのバトルになった。

君ら仲がいいね?

私?もう疲れたよパトラッシュ。

ほら、イケメンCの奥さんなんて雪だるまを作り始めたよ。


寒くなってきたな。そうだ。マッチを使おう。良いや。ちょっとでも暖かくなりたい。

そして私はマッチを一つ取り火をつけるとほんのり暖かくなった。そして…


「やぁ、一週間ぶり」


マッチの暖かみからイケメンの神様が出てきた。


「一応生きてるわよ」

「そうだね。頑張ったねぇ」

「そうよ。一箱売れたんだから」

「あれは売れたのか?」


神様は苦笑していた。が、火が消えるにつれ神様も薄く消えていった。


「ちょちょちょ!!待って!!」


私は急いで二本目のマッチに火をつけた。


「ちゃんと火をつけとかないと駄目じゃないか」

「え?何?今の私が悪いの?」

「まぁ、良いや。さて、イケメンが五人に囲まれたがどうかな?」

「いやいや。四人は良いとしてもう一人はただのおっさんじゃない!」


私は憤慨しながら三本目に火をつけた。


「お金があればどんな不細工でもイケメンに見える説」

「いやいや。それは駄目なやつ」

「別に良いじゃないか。人間、顔じゃないよ」

「確かにイケメンCの二股とかイケメンDの妄想癖は怖いと思ったわ。でも、セクハラおっさんはもっと駄目」


私はため息を付きながら五人の喧嘩を横目に四本目に火をつけた。


「で?突然神様が出てきてどうしたの?」

「いや、余のプレゼントはどうだったか気になってな?ぷ、クスクス」

「どうだったか?見てたから分かってんじゃない?」

「そうだな。見事なカオスっぷりだな」


私は五本…えぇい!!


「ちょっと!毎回マッチつけるの面倒なんですけど!!そのままついたままに出来ないの?」

「出来るぞ」

「そうよね…出来ないって出来るだったらヤリなさいよ!!本当に意地悪ね!!!」

「いやぁ、面白かったぞ?」

「そら、よーござんしたね。で?何がしたかったの?」

「んーお礼だな」

「お礼?」

「神は見てるだけだ。どんなに世界に手を出したくても出せない。見てるだけ。分かるか?一億と二千万年何も出来ず、ただ世界の行く末を見ている者の気持ち」

「そんなの…」


私は答えられる気がしなかった。

目の前にはテレビ。チャンネルを変えて番組を変えられるが番組の内容は自分では変えられない。そして自分はそれ以外してはいけない。

どんな拷問だろう?初めは面白いかもしれない。けど時間が経つにつれ楽しみは薄れてゆく。それを一億と二千万年だ。

ん?一億と二千万年??それってネタじゃ…


「ぷ、クスクス。いやぁ、面白いなお前」

「あんた、真面目になれないの!?人をおちょくって!!!」

「まぁまぁ。ありがち嘘ではないからな?余は人々の生活をずっと監視している。直接手を出せないが地球にどんなリソースが必要か見極め、必要なリソースを地球に次世代に生み出させる。火、船、蒸気、電気、電話、PC、色々だな。発明や発見は人がやらなければいけないし、神はそれに関わってはいけないからそれを出来る人間を生み出す」

「何よそれ。余は偉い、すごいアピール?」

「だが、それは事務的なものだ。喜怒哀楽は全く無く、人が生きていくために神は感情を殺し、監視をそしてリソースを送り込む。さて、こんな事をずっと繰り返していたお陰で感情が無くなったと思ったのだがな」


イケメンの神は私を見た。


「…なによ?」

「偶々だがな?極東のある国を見たら一人、面白い女が居るじゃないか。子供の頃から空手を嗜み、小中高では恐れられ、大学では古風な女と見られ、挙句に社会人では北の大地でマッチの少女ごっこをやってたら遭難して死ぬ」

「それだけ聞くとアホの子って聞こえるわね」

「違うのか?」

「違う!!」


神様はクックックッと笑う。

それに釣られ私も笑顔になってゆく。あんなに寒かったのにだんだん暖かくなる。


「そんな女を童話の世界に送ったら面白そうだと思ってな?」

「そんな理由で振り回される私の身になってみなさいよ」

「楽しいだろ?」


神様と私は未だに争っている五人を見る。

確かにクソッタレの世界だと思ったけど悪くは無いのかもね?

意味の分からないイケメン四天王と魔王(裸の王様)。退屈にはならないわね。


「だから余からのプレゼントだ。イケメンが好きそうだったから他の童話からイケメン引っ張ってきたぞ」

「あら?ありがとう。でも、扱いづらいイケメン四天王と魔王ね」

「マダム・オトコゴロシ(男殺し)を師にしているお前なら楽勝だろ?」

「そうね」

「しっかり生きろよ。余に退屈させるなよ?」

「しっかり見てなさい。お腹が痛くなるほど笑わせてあげるから」


そして、マッチが消えた。

が、私はもう寒く感じない。

未だ喧嘩しているイケメン四天王と魔王を見て私は思う。

もう大丈夫。この世界でも私は生きていける。だから見てなさい。そして思いっきり笑いなさい。それが私のあなた(神様)へ送る私なりの恩返し。


「マッチはあと九箱よ!!一箱2500円で売ってあげるわ!!誰が買ってくれるの?多く買ってくれた人にはデート券もつけてあげる」

「「「「「僕(俺)(私)(我輩)(儂)だ!!!でも、それより僕(俺)(私)(我輩)(儂)の嫁になれば売らなくて住むぞ!!」」」」」

「今はお断り!全部売ってあのクソ親父に土下座させてやるんだから!!全部私のマッチを買いなさい!!!話はそれからよ!!!!」

え?物語の原型留めてない?

それは気の所為です(ぇ

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