崇めよ。称えよ。信仰せよ。―アシュリー―
舐められたものだ。
この僕にたった2体の魔王で立ち向かってくるとか、酷いな。
こんな雑魚じゃ僕の相手になるわけないじゃないか。
アリスの封印だって術者が意味を理解していなかったから簡単に解けた。
あの獣人の女が馬鹿で助かったよ。
アリスはなぜ僕が神だと気がついたんだ?
ただの勇者だったはずがなぜ?
勇者は7体の魔王を排除するためだけに作ったものだったんだ。
アリスは何者だったんだ?
ただの勇者とは思えない。
ロールの側に居たせいでどこか狂ったとか。
……まあ、いいか。
アリスを生かしてくれた魔王どものお陰で僕は封印を解き、復活できたんだしな。
ベルゼブブも甘かったな。
僕の復活の鍵が勇者の子供として産まれることだったとは思ってもいなかったんだろう。
何度も勇者と戦っていながらお粗末なやつらだ。
だから今ここに立ち塞がっているつもりのやつがいるのか。
相手は憤怒のサタンと強欲のマモンか……
髭面の重厚な甲冑の男と成金趣味な子供ときた。
僕の相手になれると思っているとしたら……とんだ茶番だ。
サタンはなんの捻りもなく僕に真っ直ぐ槍を突いてくる。
半歩左に避けやり過ごし、マモンに向かって稲妻を放つ。
ああ、まあ簡単に避けられるよな。
当たるとは思ってなかったしね。
後ろから振り下げられる槍を受け止め……重いな。
マモンからの火炎を同じ火炎で相殺する。
なにをそんなに驚いているんだ?
僕はお前らの使う術なんて幾らでもどうとでも出来るんだ。
サタンのこの力だって僕には軽いね。
槍を弾き返し、振り向き様に薙ぐ。
おお、たたらを踏みながらよく避けたな。
サタンが体勢を整える前に打ち込む。
あれ? 甲冑が固くて刃が入らない。
じゃあ、術を打ち込んでみようかな。
ああ、飛んだ。
僕はあの土手っ腹に穴をあけるつもりだったんだよ。
髭面のおっさんが飛んでも可愛くも綺麗でもないな。
もう、あの甲冑穴も空かないのか。
マモンから放たれる火炎がウザいな。
先にあっちを片付ける?
踏み込むだけでマモンの懐に入り込み突き刺す。
あはッ
面白い顔するなあ。
マモンが血を吐き、僕を悔しそうに睨み付ける。
突き刺さっている僕の剣を掴む。
なににしての? そんなことしたって無駄じゃん。
その拙い魔術で僕が倒せるとでも……
「マモンに気を取られて気がつかなかったよ」
真上から槍を突き刺しにくるとはさ。
でも、無駄だったね。
サタンの槍に刺さっているのはマモンだもの。
「残念だったね」
そのびっくりした顔は面白いよ。
剣を薙ぎ払い、サタンの右腕を落とす。
「うわぁぁぁl!!」
咄嗟に腕を出すからそうなるんだよ。
ああ、マモンから目が離せなかったから仕方がないか。
もうマモンは動かないんだから気にしなければいいのに。
馬鹿だなあ。
「!? まだ動けたの?」
僕の右肩が焦げる。
マモンの放った術だ。
僕に当たったことがそんなに嬉しいの?
……ウザっ
魔術をマモンに向けて放つ。
どうせ大して動けないからなんの細工もなく火柱をあげさせてもらった。
サタンは火柱に尻餅つているし。
ほら、大事な仲間のマモンが燃えてるよ?
いいこと思い付いた。
火柱を消し、瀕死のマモンはそのままにしておく。
まだ、殺さない。
サタンが槍を手に再び僕に突っ込んでくる。
何度こようと僕にその槍が刺さることはないよ。
だってお前はサタンだもの。
この神に叶うわけがない。
お前たちの信仰は全て僕のものになったんだ。
信仰をなくし、ロールに与えられた力しかないお前たちが敵うわけがないんだ。
僕は全知全能の神よだ。
中途半端な信仰しかなかったお前らなんて目じゃないくらい凄いんだ。
――この僕を崇めよ
――この僕を称えよ
――この僕を信仰せよ
「……あはッ……あははハハっ」
笑いが止まらない。