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王子様とお姫様を救い出す―アシュリー―

 ねえ、僕は必要だったの? 僕はお飾りの勇者だろう。

 軍議に出たって僕にはちっともわからなかった。

 せめてもの救いはマリア様が隣にいてくれたことだ。

 僕一人で軍義に参加させられていたら本当にちんぷんかんぷんだった。


 今だって数人とはいえ部隊を率いて行くことになった。

 あの二人は無事だろうか?

 魔王の動きが活発になっているとは聞いてはいたけど、あんな小さな教会に……いや、王子様とお姫様の前にだな。

 やっぱり金色の魔王の子だからあの二人は魔王に狙われることが多いのかな?


 報告を受けたときは驚いた。

 どれだけ慌てたことか。

 マリア様がいなければ僕はなんの準備もなく飛び出していた。

 今だって直ぐにでも駆け出したいんだ。

 心配で仕方がない。


 外からはなんでもないように見えるんだ。

 どこにでもある小さな教会。

 教会にいた司祭が命からがら逃げて来なければ僕は魔王の襲撃を知らなかった、気が付かなかった。


 僕はこのたった数人の部隊をちゃんと率いることができるかな?

 王子様とお姫様を救い出す。

 それが成功すればいいんだ。

 今日の目的は魔王を倒すことじゃない。


 僕の合図に一斉に教会に雪崩れ込む。

 教会に備え付けてあったはずの椅子は全てなぎ倒されて、焦げたあともある。

 この場に似つかわしくない派手なテーブルに、あれは茶会?

 暴食の魔王ベルゼブブと傲慢の魔王ルシファー2体もいる。

 報告にあった通りだけど、本当に2体一緒にいるなんて!

 王子様とお姫様はこんなとこで茶会に参加していたのか、させられていたのか知らないが側にいるのはレオ?

 いつもと様子が違うようだけど、あれはレオだよね?

 王子様の手を咥えているのは……『白の魔女』か。

 これって、二人が危険なんじゃないのか?

 助けなきゃ!


 身体強化に僕の気配に極力気が付かれないように……打ち込む!


「アシュリー!?」


 レオが剣を使ってる!?

 格好いい……なにあれ。

 レオの黒い焔で象られて、あんなの見たことない!

 王子様を守ろうと『白の魔女』に斬りかかったはずなのに、レオの剣に阻まれるなんて……

 炎が僕に向かってくるからそれを剣で振り弾く。

 爆煙に視界を奪われ、隙を衝くように目の前に赤いマントが翻る。


「これはこれは……此度は退かぬぞ!」


 ルシファーと目が合った瞬間には吹き飛ばされていた。

 激突の衝撃に備え、空で体勢を整え壁に着地し降りる。

 王子様とお姫様は僕に加勢してくれないの?

 レオも! こっちを見もしないし。

 魔王なんかとなにをしていたんだ?

 ただの茶会を開くような酔狂なことをしていたんじゃないでしょ。

 崩れるように倒れる『白の魔女』を王子様が支え、レオのあの心配そうな顔はどうしたの?


 ねえ、なにやってんの?

 向かってくるルシファーに短剣を投げる。

 あれ? おかしいな。

 ルシファーの眉間を狙ったはずの短剣は近くで剣を構えていた騎士に刺さり、そのまま倒れた。

 避けられちゃった。


「味方を死なせたというのに表情にもでないのか……我ら魔王よりも魔王らしいじゃないか」


 それは褒め言葉じゃない。

 僕を貶したってルシファーを倒すことだけは決まっているんだ。

 諦めてくれないかな。


「レオの言葉を信じないのではなく、整理がつきませんわ」


 なんの話をしているんだ?

 『白の魔女』を横たえた王子様はベルゼブブに剣を向けた。

 なんだ。

 一緒に戦ってくれるんじゃん。


 横に薙ぐようにルシファーにって、斬れないし。

 うぅ……力押しに負け後ろに退く。


 ねえ、まだ加勢してくれないの?

 僕ルシファーなんかに負けないけどさ。

 なんていうのかな?


 ちょっと! なんで剣を下げるの?

 あぁ、そこの『白の魔女』消えるんだ。

 レオが泣いてる。

 レオも泣くんだ。

 いつも泣くのは僕だったから変な感じだ。


 白い花びらと雪の結晶が僕に向かってくる。

  

「うわぁっ! なんだよこれ!?」


 剣で追い払うように振り回すけど、僕に纏わり付く。

 力を削がれていく……


 ――ウザったいな。


 少し力を込めると白い花びらと雪の結晶が消える。


「王子様! お姫様! 二人は金色の魔王に下ったの?」


 あはッ……

 そんなに驚いた顔しないでよ。

 だってそうなんでしょ?

 一緒に来た騎士達が動揺している。

 まあ、そうだよね。

 マリア様までそんな顔しちゃって。


「なにを言って……」


 王子様の弁明を遮るようにレオが立ち上がり、涙を拭う。

 レオはなにをする気だ?


「アラン、ヴィクトリア」


 レオになにをされたって僕は大丈夫だけどね。


「実はアシュリーが神なんだ」


 眩しい……

 なんだよこの光は?

 僕たちの間に塞がるようになにかが輝きだす。

 ……僕はこれがなにか知っているよ。


 空に栄華を誇るように輝く太陽にそっくりで、満月のように暗闇を明るく照らす優しい光に似て、散々と輝く星々よのうに自分勝手に光る。


 僕はこの金色の輝きが羨ましくて欲しかったんだ。


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