青い目と金色の髪 ―レオ―
あいつの子供が産まれる。
━━あいつって誰だ?
今夜はなんて星が美しいんだ。
まるで、あいつが親になることを祝福しているかのように星々がきらめいている。
こんな気持ちで夜空を見上げたのはいつだっただろうか?
まだ誰もが笑っていたときだ。
ああ嬉しいな。
まだまだ子供だと思っていた。
まだまだ俺があいつを守ってやらねばと思っていた。
そんなあいつにも子供が産まれる。
こんなに喜ばしいことはない。
ずっと……ずっとあいつは独りだった。
俺たちの力が及ばないばかりに、独りで辛い想いをさせてしまった。
━━俺たちって誰だ?
どなな子が産まれるのだろうか?
あいつに似て綺麗な色をしているのだろな。
楽しみだ。
……楽しみだが、これからが正念場だ。
俺も力を取り戻さなくては。
このまま傍観者のままでいるなんて耐えられない。
だって俺はあいつを守らなければいけない。
あいつの剣となり盾となる者。
守護者でありながら守られてきた。
この恩も返さなければ……
白銀色の髪をした少女のような女が産みの苦しみにもがいている。
あいつの子を産んでくれる愛らしい方だ。
あいつの隣に立つ人だ。
愛らしいだけのモノではないだろう。
あいつがこの彼女と共に笑って過ごせる時間を作ってやりたい。
戦いは全て俺が引き受けるから……
力のない俺じゃダメだ……
力がないからシラユキだって……
━━そうだ俺のせいで彼女は……
俺が弱いから守りたいものも守れず、守られるだけの存在に堕ちてしまったんじゃないか。
このまま情けないままでいいのか?
このままじゃあいつの子供だって守れない。
もう失うのは嫌だ。
あいつを奪われた時間を過ごすのは耐えられない。
俺独りでいるよりもあの全てを奪われた時間だけは嫌だ。
早く力を取り戻さなくては。
この異世界から元の世界に戻る方法を探さなくては。
元の世界を覗く事が出来たんだ。
あとは帰るだけ。
━━帰るって、異世界ってなんだ?
幾千幾万の時間をあいつ独りにしてしまった……
泣き虫だったあいつをもうこれ以上独りになんてさせない。
シラユキ。俺じゃまだ力不足だろうか?
あいつを、世界を取り戻すには俺は邪魔か?
なんで俺を異世界に飛ばしたんだ?
そんなに俺は弱いのか?
守護者というのも肩書きだけのお飾りだったのか?
━━夢だから。
これは夢だから。
もう起きろ。
このまま負に支配されてはいけない。
目覚めが悪くなるぞ――
産声が二人分響いた。
王子と王女の双子だ。
一度に二人も産まれるなんて、なんとおめでたいんだ!
あ……夢か……
どんな夢だっけ?
今までしっかりと覚えていたのに目が覚めた瞬間に忘れた。
忘れてしまったことがもったいなく感じるけどさ。
まあ、夢ってこんなものだろう。
って、俺向こうに行っていたんじゃなかったか?
こんなふうに寝て起きて帰ってくるなんて初めてだ。
見慣れた天井がそこにあるだけで安心できる。
自宅、俺の部屋っていいな。
あんな怖い思いも命の心配をすることもないし。
はぁぁぁ
寝起きだけどため息がでる。
仕方がない。
思い出すだけで疲れる……
今見た夢はよく覚えてないけど、あー向こうの世界は疲れたな。
なんで急にラスボスの目の前に召喚なんだよ……
こういうものは段階を踏むものじゃないのか?
同じ顔だった。
金色の髪も、青い目も、形なんてアランさんそのものじゃないか。
金色の魔王って双子の父さんじゃなかったけ?
あれは双子の弟っていわれてもおかしくなかった。
だってどう見たって俺と同じくらいの年齢にしか見えなかった。
いや、俺より若くね?
あの双子の親なら若くても40歳は越えてるだろう?
異世界だからこっちと同じような年齢計算じゃないかもしれないけど……
それでも、あんなに若いわけないでしょ。
子供の方が老けてるって変だ。
金色の魔王は俺を知っている?
知り合い?
俺は知らないよ。
なんか双子を宜しくされたけど……俺、金色の魔王と知り合いなんかじゃないよね。
まさか……
まさか双子に召喚される前に金色の魔王に召喚されていたとか?
……ははははっ
そんな馬鹿な話あってたまるか。
金色の魔王も向こうに召喚された誰かとか?
そもそも召喚なんてファンタジーなことが自分の身に起きていることだって誰にも相談できない。
こんなこと頭がおかしくなったと思われるだけさ。
よくて中二病か。
制服のままだけどいいや。
もう一眠りしよ。
仰向けだった体を横に向けた。
……なんで?
どうして?
は……?
金色の魔王と同じ金色の髪をした超然なイケメンが寝ていた。
「あ……アランさん!?」
日本でこの町でご近所で絶対に見かけることのない異世界人。
向こうの世界の、ゲームや漫画のような格好そのまま俺の隣にいた。