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序章 【結婚】

 この作品は夏ホラー2008百物語編の一編です。


夏ホラー2008


百物語編


のどちらかのキーワードでサーチをかけますと、百編全てにヒットいたします。

2008は、半角です。ご注意ください。



 この作品は歴史物ですが、定説とは全く違う方向に進んでいます(勿論、それなりの根拠はちゃんと有りますよ)。

 例えば長政とお市の結婚は永禄十年とされていますが、本作は四年としています。

 また本作では、この結婚の段階で、浅井、朝倉同盟が既に消滅しています。


 この製作に臨むに至り、様々な資料を集めて(主にコンビニやブックオフで買い込んだ書籍)、『これ一番有り得るだろ』と思う説をチョイスした結果、このようなことになってしまいました。


 史実と違い過ぎてんじゃねーか!! と目くじらを立てずに、こういう考え方もあるんだな程度に思ってくださると幸です。

 魔王。それは、東洋で言うところの死神に相当する存在である。

 西洋に生まれた魔王という存在は、死に瀕し精神力が弱った者、あるいは、難局に直面し心がくじけてしまった者を贄とし、贄の精神や心をひたすらしゃぶり尽くすことで、死に誘う者であると言われている。



 時は日本の戦国時代。この、時代自体が狂っているとしか言いようの無い凄惨な状況の中、一人の漢が魔王によって、しゃぶり尽くされようとしていた。








【新・浅井長政伝 〜戦国乱世に魔王を喚んだ男〜】









 永禄四年、一組の男女を結び付ける婚姻の儀が、尾張の国にて盛大に行われていた。北近江に本拠を置く戦国大名浅井賢政と、南尾張(実質的には隣の三河も含む)の戦国大名織田信長の妹であるお市との政略結婚である。

 領地面積としては数有る戦国大名家の中に在って、一二を争う狭さであったが、日本で一番活発に活動している島津商人達の収益のほとんどを吸い取るシステムを確立することに成功し、経済的には有り得ないほど富んでいる織田家主催の婚姻の儀である。その豪華絢爛さは、後に尾張の国から愛知県と地名が変わっても【尾張の嫁入り】として伝説的な語り種となるほどのものだった。


 この婚姻によって両家にもたらされる恩恵は、計り知れないものがあった。信長にとっては、義父の仇である斎藤家当主、斎藤義龍を南北から挟み撃ちに出来る絶好の状況を作り上げ、賢政にとっては、宿敵である南近江の六角家と、その同盟者である美濃の斎藤家による挟み撃ちに対し、強烈な牽制が出来たのだ。

 つまり、美濃の斎藤家を撃ち滅ぼさねばならないという状況で両家の利害が完全に一致しているのである。



 故に政略結婚、そして、同盟なのである。



《父上様。貴方は誠よく決断してくださった。貴方が朝倉との縁を切ってくださったが故に、某が義兄上と縁を持つことが出来たのでございます》

 賢政は父久政に心から感謝していた。

 越前の国戦国大名、朝倉家。

 確かに祖父亮政の代には相当世話になっていたらしいが、父の代になってからはなんら協力してくれない朝倉家。

 六角家との合戦で援軍を要請しても、【雪が降ってる】【雨が降ってる】とはぐらかし続ける朝倉家。

 その結果、合戦に破れて臣従に近い形で六角勢力に取り込まれても詫びの一つも入れて来ない朝倉家。

 そんな朝倉家に愛想を尽かした久政が同盟破棄を突き付けたからこそ、この織田家との同盟が成立したといっても過言ではないのだ。なぜなら、織田家と朝倉家は昔から越前の国の領有権を巡って争ってきた仇敵だったからである。

《誠に父上様の御蔭でござる》

 賢政は戦国一の美女と謳われるお市を横に、感涙に咽び始めた。一旦出始めると止まってくれないのが、男の涙というものである。賢政は、静かに、だが、烈しく、しくしくとしゃくりあげ続けていた。

「いかがなされましたかな、賢政殿」

 二人の仲を取り持つこととなった、微妙に薄い口髭、色白の細面というやや頼りない印象の、鎧甲より紋付袴のほうがよく似合いそうな典型的な優男が声をかけてきた。今回の盟主、織田弾正忠信長である。

「何を申されます、義兄上様。某共、これより義兄弟なのですぞ? 呼び捨てて良うございまする」

 満面の笑みを浮かべながら、和やかに反論した。他人行儀に接されてしまっては、いまひとつ連帯感も沸いて来ない。

「あい解った。賢政がそう望むのであらば、この先、かように接することにいたそう。で、いかがした?」

 慈しむような目で賢政を見据えた信長は、そっと人目につかないよう手ぬぐいを差し出してくれている。

「実は某、もっと臣従に近い形の同盟を覚悟してございました。それがかよう同等の如く良き約定にて結んで頂けるなど……。感激に言葉もござりませぬ」

 信長の気配りに答えるように賢政は、来賓達に背を向けてひっそりと涙を拭った。

「それと兄者。某もう、【賢政】という不快なる名は捨てまする」

 【賢政】。その名は昔六角家に戦で散々に打ちのめされた際、六角家への臣従の証として強引に押し付けられた名なのである。賢政の賢は、六角家当主、六角義賢の賢だったのだ。

 その時名とともに押し付けられた嫁はとっくに叩き返していたが、この屈辱的極まる名は、未だ引きずったままだったのである。

「兄者にさえ異が無ければ、一文字拝借致しまして【長政】と名乗りとうござりまする」

「左様にござるか。そなたの良きに計らうが良いぞ、【長政】」

 信長は、友好的に賢政の肩を軽く叩いた後、彼のことを【長政】と呼んだ。それは、信長が己の名の一部を与えることを認めたと同時に浅井賢政から浅井長政へと、賢政の名が正式に変更されたことを意味している。




 やらんほうがいいのかも知れませんが、一応定説と違う点の根拠を列記してみようかと思います。


【結婚が永禄四年】


〇若干歳喰ってはいるが、お市の年齢が結婚適齢期

〇お市が結婚直後にいきなり淀殿を産んでいるという矛盾が消える

〇十年だとすると、織田家には上洛の際に近江を素通りできるというメリットしか無く、浅井家に至っては全くメリットが無い(斎藤家は信長が既に滅ぼし、六角家も滅亡寸前)

〇長政が賢政から名を改めたのがこの年



【浅井、朝倉同盟消滅】



〇浅井方の史料に久政以降の代が朝倉家の世話になっている記述が全く無い

〇同盟相手の織田家が朝倉家の仇敵である

〇浅井家と朝倉家の政略結婚が一度も無い

〇姉川合戦や小谷城防衛戦での朝倉軍にやる気が無さすぎる


以上でございます。

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