069 新人達の評価とばれたおるごーる
シールー視点の新人評価回
「シールー、新人達の様子は、どうだ?」
イーラー様からの問い掛けに私は、少しだけ考えてから答える。
「概ね、問題なく働いています。まだ新人という事もあり、戸惑うところがありますが、増えた業務に対応していくのに大変たすかります」
「概ねか? その概ね以外は、どうなのだ?」
やはりイーラー様は、気付かれましたか。
「御二方に御付のミーロは、かなり無理をしている様に思われます」
城内のゲームに何人かの貴族を新たに貴族を文官に成ったが、どの新人も配属された場所で優秀な働きをしていた。
ミーロもその例に漏れずなのだが、その働かされ方が不憫だった。
一日本を読むだけという、悲しい物だ。
武闘派で有名なソーバトの学院での学問方面での成績アップの為に城の方で勉強資料を整えるといった事を行うことになった。
流石に一から作るのは、無理と既存の本からの選別となったのだが、対象となる大量の本、その全てを読ませるという無茶苦茶な事をさせているのだ。
初めて聞かされた時は、拷問かと思ったのだが、ミーロは、一学年分とは、いえ、一週間でやってのけてしまった。
出された結果もサーレー様が纏めるとターレー様をも認める物になっていた。
下手に成果を出してしまったのが運の尽きだった。
御二方に気に入られてしまい、続行させられる嵌めになっていた。
ターレー様も結果が出ている以上、止める訳にも行かず、無理をさせないという事で容認された。
イーラー様も少し眉を顰めて居たが小さな溜息を共に告げられる。
「体調の管理だけは、気をつけるんだ」
「了解しました」
私がそう答えるとイーラー様は、キールーの方を向く。
「食事は、良い物を用意してやれ」
「はい、ターレー様からも下級貴族とぞんざいな扱いをしないように注意されておりますので、我々と同等の対応をさせております」
キールーの答えに私は、ミーロが別の意味でストレスを感じていないか不安にも感じたが劣悪な扱いじゃない分いいだろうと思うことにする。
領主一族や上級貴族の側女からも蔑まれる事もあるくらいなのだから、その扱いは、別格といってもいいだろう。
「それは、そうとカーレー様達に新たについた下女、確かコショカと言ったな、そっちの教育は、どうなっている? 下女として学院にも連れて行くと聞いているが?」
私の問い掛けにキールーが渋い顔をする。
「……手間取っています」
キールーがこう答えるとなるとかなりの難物なのだろう。
「それでも二人の側においておく価値は、あるのか?」
イーラー様の問い掛けにキールーが頷く。
「あります。既に下女の中で人間関係を操り始めています。新たに仕える様になった貴族達の下女達の争いが激減しています」
あの金の旬に行われた大断罪以降、城に出入りする貴族にも大幅な変更があった。
それは、それに伴う者の変化にも繋がる。
当然の様に人間関係におけるトラブルが絶えないと聞いていたが、そんな所まで影響を及ぼしていたのか。
「コショカと言えば、領地外からの備蓄米の購入も順調みたいだな」
イーラー様の指摘に私が資料を提示する。
「このペースで購入を行えば予定していた備蓄量に達すると思われます。ただ、多少、予定より予算がかさみました」
イーラー様は、資料を確認しながら肩を竦める。
「この程度のな。米の凶作があったのだ、この程度の予算超過くらい問題じゃないだろう」
「はい、不興の米農家からの現金納税もあり、予算繰りには、全く問題ありません」
私は、そう答えてから改めて思った事を呟く。
「……順調すぎる状況です」
イーラー様は、真剣な顔になる。
「そうだな、こちらが予測していたトラブル、米の買占め、価格の沸騰や暴落が一切起こっていない。だいたい、このダマイが大量に買い占める米の料金は、何処から来た? 購入する伝があったとしても米問屋のダマイとて、あれだけの量の米の代金を残しておるまい?」
キールーと私が視線を交わす。
「憶測の段階ですが、御二方が動かれたのかもしれません」
キールーの言葉に私が自分の中にあった疑問を口にする。
「御二方がどうして、黙っているのだ? だいたい、御二方は、お金を稼ぐ術がなく、それだけのお金があるとは、思えません」
「そこだ。イーラー様、城下で流行っているこれをどう思われますか?」
キールーが出したのは、小さな箱に不思議な取っ手がついたものだった。
「見たことも無い物だ。何をするものだ?」
キールーは、取っ手を何度か回してから再び小箱を置くと、小箱から曲が流れた。
「なんだこれは!」
驚愕する私に対してキールーが淡々と答える。
「中に音がなる仕組みが施されております。中の仕組みを変えることで別の曲も鳴らす事が可能です」
イーラー様が沈痛な表情を浮かべる。
「出所が何処かなど詮索するまでもないな」
この場に居る者全員が即座に解った。
「自由に出来る資金を確保する為に流した知識だろうが、証拠は、無いだろうな?」
イーラー様の指摘にキールーが溜息と共に頷く。
「はい。追求しても言い逃れるのが眼に見えています」
イーラー様は、諦めの表情を浮かべた。
「下手に追求して、別の手口を作られても困る、但し規模だけは、把握しておけ」
「御二方も何故この様な真似を? その様な事をしなくてもイーラー様に進言されれば済む話では、ないのでしょうか?」
私の疑問にイーラー様が首を横に振る。
「即座に動かせる資金が欲しかったのだ。公では、どうやっても手間がかかる。それに今回の事の様に表立って資金を動かせない事もあるからな。アーラー兄上は、常々その準備を怠らないようにしていた」
アーラー様が居た頃の事を思い出す。
敵の焼き討ちにあって兵糧が失われ、早急に新たな兵糧を用意しなければいけなくなった時、度重なる戦いで備蓄していた食糧が底をついていた。
買い集める為の資金を通すのにイーラー様も必死だったが、一軍を維持する兵糧を買う資金がそう簡単に通る訳がなく、焦っていた中、アーラー様は、数日分の食料を購入して前線に送られていた。
そのお陰もあり、騎士や兵士達が飢える事無く戦えた。
その時のイーラー様の無力さを感じた表情を思い出す。
「しかし、私も甘く見られているものだな」
イーラー様が苦笑される。
その理由は、理解している。
「イーラー様の懐から補填されておきますか?」
キールーの問い掛けにイーラー様は、首を横に振る。
「今回は、借りておこう。次のときは、そんな借りを作らずに済むように先手を打てるようにしておくのだぞ」
私たちが応じる。
イーラー様もただ、善良に領地経営をしていた訳では、ない。
ウーラー様に出来ない闇の部分に関わり、そこで得た利益をいざと言う時の為に秘蔵している。
もしも、御二方が現れず、ソーバトの領地経営が更なる悪化した場合、ここから魔法研究予算が出された事だろう。
私達の主、イーラー様は、アーラー様が去った時とは、違う。
今のソーバトを支える大事な柱なのだ。
そのイーラー様を手伝える事が出来る自分達の幸運を感じずには、居られなかった。
おるごーるバレました。
それにしても数回に一度ある評価回をする度に双子がとんでもない存在に思えるから不思議。
本人達は、結構気楽にやってるんですがね。
次回は、冬の準備が本格的に始まります




