543 新型船と天測航法
新型船の登場です
『
1119/刃碧平(05/15)
ミハーエ王国ナーナン領南方海域
王族研究の協力員 カーレー=ソーバト
』
「これって大丈夫なのかね?」
さっきまで遊んでいたラースーちゃんが勉強時間になったので甲板に出た後、あちきは、帆が無い船の手すりを叩く。
「拙かったみたいだよ」
試験結果の資料の確認をしていたサーレーが淡々と言う。
「拙かったってなんかあったの?」
あちきが聞き返すとサーレーは、船尾下部を指さして言う。
「推進力になる様なスクリューは、流石にNGだったみたいだね」
「そりゃ、その構造も最新技術の上、確か特殊合金だよね?」
あちき達が帝国を回って居る間に駄目親父と何度か連絡した際に提供された船の知識で作られたスクリュー推進船の重要部品、スクリューを思い出しながら聞き返す。
「本来なら難しい合金の合成を誓約器『合わせ金炉』で行っているみたいだよ」
サーレーの答えにあちきが資料で読んだ知識を掘り起こす。
「確か、必要な金属を入れて魔帯輝を使えば勝手に合成してくれるんだよね?」
サーレーが一枚の資料を取り出す。
「誓約器だから当然、誓約もあって、その誓約が一度でもその合金を作った事があるって本来なら難易度が高いそれをお父さんの科学知識とマーネーさんの魔法知識で可能にしたって話だよ」
資料に書かれた必要経費を見てあちきが顔を引き攣る。
「指先程の合金を作るのに一億以上かかってるのが数個あるんだけど?」
サーレーがため息を吐く。
「それでもあっちの世界の特殊合金がこちらで再現出来る様になるって言うのなら安いもんだよ。カーレーだって解ってるよね?」
「そりゃ、奇跡鋼を除けば硬さで負けない合金や熱を通さないとか絶対に錆びないとかこっちの世界で考えたら奇跡ともいえる物があるけど、それってあちき達がやってた事とは、比べ物にならない程の技術流出だよね?」
あちきの指摘をサーレーが肯定する。
「そう。僕達がしてたのは、あくまで一般人レベルの知識。一般生活を向上できるけど、戦争を一気に変化させる物は、あっちの技術そのものを使った事は、ない」
携帯電話モドキの木霊筒とか自走車と呼ばれる自動車とかがあるけどあれは、概念こそ利用しているけどこっちの魔法技術が根底にあるように作ってる。
刻印柱だってマホコンだって同じだ。
あっちの技術をそのままもちこむのは、出来るだけ避けている。
やってもパチンコや凧、スキー板の様な遊具レベル。
食料問題に直結するサツマイモの知識なんて結構恐恐としながら提供してた。
それを特殊合金の合成なんて向うの知識が必須な上、スクリューの構造そのものを流用したとなればかなりヤバイきがする。
「実際何があったの?」
あちきの確認にサーレーが遠い目をする。
「神獣に襲撃されたって」
「はい?」
思わず聞き返すあちきにサーレーが再度言ってくる。
「神獣に襲撃されて殺されかけたって」
「嘘でしょ! いくら駄目親父で、あの十尾鳥より格下だろうけど神獣相手どうにか出来る訳が……」
あちきの言葉の途中で頭に他者の声が割り込んで来た。
『駄目です! 万が一にもあの御方に私より格下扱いされたって伝わったら色々大変ですからそれ以上口にしないでください』
あちきとサーレーが目線を合わせて暗号で話合う。
『これってまさか十尾鳥様?』
『その可能性が高いね。でも何でこのタイミングで? この情報ってターレーお姉ちゃん辺りが話していた筈なんだけど……』
サーレーが思考するとその答えが返ってくる。
『まだあちらは、監視の目は、緩いです。貴女達は、完全に界壁越境者ですから、同僚の監視があります。そこからあの御方に伝わる可能性があるんですよ!』
かなり焦った声だ。
「そこまで言うって事は、駄目親父を襲ったのってそんなに凄い神獣なの?」
『主の配下の中でも上位に入る御方な上、一二を争う武闘派なんです』
戦神配下の中で一二を争うってどんだけ武闘派なんだ。
「そんなのに襲われたとしたら……」
あちきが言葉を濁しているとサーレーが大きなため息を吐いた。
「なんかゲームにして、条件勝ちしたからって今回の事に関しては、問題なしになったって話だよ」
どこをどうやったらそんな武闘派の神獣相手にゲームだからって勝てるんだろうかと眉を顰めてしまう。
『もしかして戦闘力が低かったとか?』
拙そうなので暗号でサーレーにパスするが十尾鳥が応えて来る。
『勝負後に主が無かった事にしましたがあちらの世界の総軍事力の九割近くが消滅してました』
「へぇ?」
思わず声が漏れる中、十尾鳥が続ける。
『勝負のルールにどんな一撃でも居れたら二十四時間追跡しないとあり、あの御方にその膨大な軍事力をぶつけた隙を突いて一撃を入れては、逃げてを続けて七日間逃げ切ったそうです』
「アメリカ軍の戦闘機や戦車部隊とかも含めてる?」
あちきの確認に十尾鳥が何処か諦めた感じで応える。
『それどころかステルス戦闘機、原子力潜水艦、大陸間弾道弾、軍艦等々、考えられる戦力を投入されたそうです』
あの時の十尾鳥だって十分に凄いかったが、問題の神獣は、桁違いである。
それを踏まえてあちきが呟く。
「駄目親父の人間離れが加速してるな」
それに対する否定の言葉は、何処からも上がらなかった。
『
1119/刃碧平(05/15)
ミハーエ王国ナーナン領南方海域
王族研究の協力員 サーレー=ソーバト
』
僕達の父親が規格外過ぎるって事が改めて判明し、十尾鳥がしつこく問題の神獣の事を話題にしてくれるなと念をして会話を終了した後、勉強を終えたラースーちゃんがやってくる。
「サーレーお姉様!」
元気に駆け込んでくるので僕は、避けてカーレーが受け止める。
「もう、サーレーお姉様!」
少し不機嫌そうな顔をみせるラースーちゃんの頭を撫でながら僕が確認する。
「ちゃんと勉強した?」
「勿論です!」
目を輝かせるラースーちゃんに僕が問題を出す。
「それじゃあ、どうしてこの船の試験が行われるかを政治的な側面を含めて答えて」
ラースーちゃんは、少し思案して答え始める。
「新大陸探索船開発の為の試作船で、莫大な費用が掛かるそれを行う上での成功率の高さを内外に示す為ですか?」
「惜しい。確かにそれもあるけど、それだけじゃない。何が足りないか解る?」
勝手にヒントを出したカーレーを僕が睨む中、ラースーちゃんが悩みながら答える。
「えーと、新大陸探索があまり受け入れられて居ないって事が関係ありますか?」
僕が苦笑する。
「そう。本当だったらそこまで自力でいって欲しかったんだけど。さっきラースーちゃんが言った様に新大陸探索船は、膨大な費用が掛かる。それに対して新大陸の発見の必然性を感じているのは、僕達のお父様くらいなの。その対価としてのこの船自体が有益である事を示す必要がある。その有益さの照明をもってこの件をラースーちゃんの功績とする手筈になってるんだよ」
一応は、王族としての立ち位置をもっているラースーちゃんだが、将来的な話で言えば、その資格を保持し続ける為にもそれ相応の功績が必要になる。
僕達としては、その後押しを手伝うって事で今回の仕事をゲットした。
そうでもしないと僕達に国内の仕事が回って来ない状況だったりする。
「それにしてもこの船ですが本当に帆が無いのですね」
ラースーちゃんの護衛騎士、ルーチーさんが戸惑いながら呟くとラースーちゃんにじゃれつかれているカーレーが遠くに見せる帆船を指さす。
「大陸探索船ともなると風が有無による移動距離の違いが出るのは、色々と不具合あるんだよ。基本、同じ航路を同じ時期に行けば同じ期間にならないと以降の探索に影響がでるからね」
「そこが疑問なのですが、どうしてそうなるのですか? 多少の期日がずれようとも大きな問題があるとは、思えませんが?」
ラースーちゃんの側近、マーコーさんの疑問に僕が海面を指さす。
「たった数日、下手すれば数刻でも異なれば船自体が同じ方向に同じ距離を進んだとしたとしても海流の影響を受けて到着地点が異なるんですよ」
不思議そうな顔をするマーコーさん達にカーレーが説明する。
「陸地と違って目印になる物が殆どないですから、自分の居る場所が解らない。広大な海での移動で頼れるのは、詳細の移動記録だけって事です」
実際は、天体観測で現在位置を算出する方法も無くもないんだけど、その技術を持つ人が極端に不足している。
理由は、簡単で、こっちの世界の船の大半が陸地が視える範囲内での航海しかしない為、必要が無かったからで、持って居る人の大半が陸地に近寄りたがらない海賊連中だったりする。
「でも一番不思議なのは、この船って鉄で出来ているんですよね? 木でしたらまだ解るんですが鉄がどうして浮くんですか?」
ルーチーさんの船体を叩き金属音あげる。
「極論すればスキー板が雪に沈み続けないのと一緒。所詮は、海水も雪も水の親戚で、載ってる物重さを支えられるだけの接地面積さえあれば沈みません」
カーレーの説明は、随分と乱暴だけど、そこにつきる。
正確には、航行する上では、揚力も関係してくるんだけどそこまで説明し始めると素人には、わけわかめになるので省略しておく。
大体、試験用としてこの船に使われた外装金属は、スクリューと同じ、特殊合金。
鉄よりも軽い上に錆び辛いとか、外装のみなら木造船より軽いくらいだったりする。
何でって、硬度も高さも伴って厚さが全然違う。
向うの造船関係者が聞いたら顎が外れるだろう程に高価な合金を使ってる。
本番用の大型船には、流石にもっと安価な奴になるから重量があがるだろうけど、それだってある一定以上の大きさを越えれば十分な浮力が得られる計算になってる。
「技術的な事は、正直解りませんが、試験で積載したこの大量の物資をこの速度で運べるとしたらならば十分な成果と思われます」
マーコーさんが言う様に、この船は、来たるべき新大陸探査に対応する為の大量の物資を搭載した状態での高速航行テストを順調に終わらせようとしている。
それ自体は、はっきりいって心配なんて全然していない。
スクリューを回す動力以外は、神様に睨まれるという危険性を無視して向うの技術をおもいっきり詰め込んだんだ、造船技術が大幅に劣るこっちの世界船に対して絶対的な優位性を示せるのは、必然と言っても良い。
そうこの試験自体は、そんな大きな問題を感じて居ない。
「問題があるとしたら……」
僕が視線の端を通る様に進んでいく小型船を見る。
「あの船も帆がありませんがあれもこの船と同じなんですか?」
ラースーちゃんがそう興味深げに聞いてくるのをカーレーが船の後ろを指さして言う。
「アレは、放水進行船だね。ほら後ろに水しぶきがあがってるでしょ。船の下から水を魔法で組み上げて後方に放水した反動で進んでいるんだよ」
ウォータージェット推進船である。
スクリュー船が上手く行かなかった時の保険として開発されたが、スクリュー船に問題が無かった為、大型化に問題があるという事で新大陸探索船候補から外れた船である。
「魔法具次第でほぼ無制限に速度があげられるって事でナーナンに開発を委譲したって話なんだけど、ナーナン領主は、おもいっきり活用してるねー」
僕の言葉にカーレーがこっちを向く。
「スクリューと違って速度に上限がないっていっても大型化、詰り輸送には、向かない上に常時吸引と放出の魔法具が必要な大喰らいを活用出来るだけの実用性があるとは、おもえないけど」
「諜報だよ。高速で移動した後、高出力の木霊筒でカイキ連合の潜入員と連絡とって、こっちに来るカイキ連合の連中の船を追い越して事前に情報を手に入れて絶対有利に交渉進めるの」
僕の説明にカーレーがドン引きする。
「えげつない真似するね。カイキ連合の連中にしてみれば手札晒して札遊戯している様なもんじゃん」
「更にえげつなく、交渉している連中すら知らないカイキ連合の最新情報まで手にして、騙す様に有利な条件を掴み取る事すら平然としてるらしい」
僕の追加情報にカーレーがため息混じりに言ってくる。
「魔法王国の領主がそこまでえげつない交渉術を習得する必要性があったんかね?」
「それは、ナーナンの前領主の所為でしょうね」
マーコーさんの言葉にラースーちゃんが不思議そうな顔をする。
「あれ、でもでも学院の近代史でも前ナーナン領主には、そんな大きな問題無かったって習った気がする」
ルーチーさんも同意する。
「その筈です。逆に海からの侵攻の防衛においては、高い功績があった筈ですが」
僕が苦笑する。
「そう、ソーバトと違って前領主は、防衛には、成功するだけの高い魔力と能力を持った貴族だった。まさに理想的なミハーエ王国貴族だった訳だよ。さてここでラースーちゃんに問題です。理想的なミハーエ王国貴族が最近陥りやすい失敗とは、何でしょうか?」
元気よく手をあげるラースーちゃん。
「はーい! 帝国との貿易での大損害です!」
それを聞いてカーレーが納得した顔をする。
「なるほどね、理想的なミハーエ王国貴族って事は、魔法馬鹿であり、他国との交渉下手な訳だ」
「そういう事。その所為で前領主は、カイキ連合に対しての多額の負債を背負わされた。その負債を前面に押し出してカイキ連合は、かなり強引な取引を行ったみたいだよ」
僕は、暇を利用して始めたここ数代における各領地の問題事案の調査結果の一部を披露した。
「その結果があの人畜無害そうな顔でえげつなすぎる交渉をするナーナン領主ですか。カイキ連合も一時の利益の為に馬鹿な事をしたね」
カーレーが呆れるのに対して僕が補足する。
「当時は、帝国のクソジジイとヘレクス元大将軍の所為でカイキ連合は、想定以上の損失を出してたから、その埋め合わせに阿保みたいな事をした。ある意味、今の状況は、自業自得なんだよ」
「そのお陰で私たちまで現ナーナン領主相手に厳しい交渉をさせられていますがね」
マーコーさんの恨み節を聞きながら僕が改めて問題の船を見る。
「問題は、何故その船がこんな大っぴらに動いているかだよ」
「乗ってるのは、カイキ連合お偉いさんで、その人に対しての示威行為。ミハーエ王国に逆らう事なんて無意味だって圧倒的な魔法技術力を見せつけたいんじゃないかな?」
カーレーの予測を僕は、肯定する。
「その可能性が高いね。さてさてどんなお偉いさんが乗って居る事やら」
『
1119/刃碧平(05/15)
ミハーエ王国ナーナン領大交易港
カイキ連合の連合議会長 ハーマン=コウ
』
「議会長、本当にここは、ミハーエ王国なのでしょうか?」
側近の一人が信じられないって顔をしている。
私自身がそんな印象を抱きたくなる状況であった。
最近のミハーエ王国との交渉において、多くのカイキ連合加盟国が自国に不利な契約を行っていた。
帝国商品の輸入の件も含めて会談の機会を求めた際に提示されたのが、今回のこの放水進行船による送迎であった。
私がその船に乗ったのは、カイキ連合で通常に使われる船では、三日は、掛かる港でこんな小型船で移動する距離とは、思えなかった。
しかし、実際には、一日掛からずに私は、このナーナンの交易港に降り立っていた。
「なるほど、これでは、交渉に勝てる訳が無い」
交渉において重要なのは、相手の事前情報と交渉に関わる最新情報である。
カイキ連合から交渉の為に派遣した船団よりも早く、ナーナンの密偵からの情報を得た者がこの船に乗って情報の受け渡しをした上、交渉中に収集し、終る前に鮮度の高い情報を得る事も可能なのだ。
勝てる訳が無かった。
「問題は、その手札をどうしてきったかだが……」
相手の思惑は、透けて見えてくる。
確かにこの方法は、有益であろうが、そう遠くない未来にこちらが放った密偵がその絡繰りを露見させていただろう。
ナーナン領主は、今回の会談は、その予兆と察し、それを自ら提示する事でミハーエ王国の魔法技術の高さを示威して来た。
深い溜め息が漏れる。
「魔法王国相手に利益を貪ろう等愚かな事をした結果だな」
その一言に尽きる。
結局の所、魔法王国と呼ばれるミハーエは、国土こそそれほど広くないがその国力は、大陸図一といっても過言では、ないだろう。
実際に、大陸最大の支配地域を誇るヌノーにすら打ち勝ったのだから否定しようもない。
そんな相手を交渉下手だからといって食い物にすれば手痛いしっぺ返しを喰らうのは、必然だった。
「だからといってこのまま、一方的に貪られる訳にもいかないな」
私は、カイキ連合連合議会長として気を引き締めてこれからのナーナン領主との会談に臨むのであった。
『
1119/刃碧濃(05/16)
ミハーエ王国ナーナン領主の城の大広間
カイキ連合の連合議会長 ハーマン=コウ
』
「議会長、この『鮑のすてーき』というのは、美味し過ぎます!」
「このスープの深い味わいは、なんだ? こんな素晴らしいのは、初めてだ!」
感嘆の声をあげる側近達に私は、苦々しい表情を浮かべたくなるのを必死に堪えた。
ナーナン領主との会談が直ぐに始められる訳も無かった。
昨日は、お互いに挨拶と軽い食事会。
そして今日は、こちらからの贈答品を差し出し、それに対して感謝の言葉を受け、お互いの国を褒め合い、友好を深める夜会が行われている。
無論、この間にも潜入している諜報員からの最新情報を確認し、新たに交渉に必要な事柄をニ三人犠牲にする事を覚悟に踏み込んだ調査をさせる様に指示。
この夜会とて、お互いの腹の内を探り合いの場であるのだが、そこでナーナン領主が威圧をしてきたのだ。
夜会に並べられた見事な料理は、こちらの想定を数段上回る物であり、ミハーエの有利さを引き立たせていた。
ここ数年、ミハーエ王国発の新たな調味料や料理等がカイキ連合の市場を大いに荒らしているのを考えれば、まだまだ手札が残って居るという脅迫にしか考えられない。
この有利な状況でも手を抜かずにやってくるナーナン領主には、脱帽であった。
そんな気分の中、二人の少女が私の前に現れた。
私は、慌てて挨拶をする。
「新の神の御声が届いておりますでしょうか?」
それに対して、その少女等が返礼される。
「新の神の御声にカーレー=ソーバトがありました」
「新の神の御声にサーレー=ソーバトがありました」
「ハーマン=コウもある幸運を神に感謝致します」
私がそう頭を下げながら頭を巡ったのは、この少女等、ソーバトの双鬼姫の多すぎる逸話の数々である。
諜報員から王族が主導する新型船の試験運用に携わって居ると報告を受けて居たが、夜会に参加してくるとは、思っても居なかった。
なんでといわれればこの二人の強過ぎる影響力だ。
はっきり言って王族すら超えかねないそれを発揮させられないと国内外から監視の目が光らされている筈だ。
相手の思惑が読めないでいるとカーレー様が前置き無しに本題を言って来た。
「今回は、連合議会長の貴方を通じてカイキ連合に引き取って貰いたい者達の事で相談に来ました」
「それは……」
想定外過ぎる内容に言葉を濁す私に対してカーレー様が小さくため息を吐きながら言う。
「はい。その者達は、なんとあちき達の伯父、ソーバト領主が納める村で農民による反抗運動を起こさせようとしていた者達なのですが、なんとカイキ連合の一国、シオッテ王国の手の者と嘯いて居るのです」
私の側近達の顔が引きつり、私は、内心の動揺を押し殺して弁明を試みようとする前にカーレー様が続けられる。
「無論、そんな戯言は、信じて居ません。きっとあっちのクソジジイの策略でしょうから」
私は、カーレー様が指さされた方角、ヌノー帝国の方に視線を故意に向ける。
「あちらのクソジジイですか?」
大きく頷かれるカーレー様。
「そうです。あの狡猾なクソジジイなら本人すらそうだと思い込ませた工作員を用意してくるでしょうからね」
「確かにあちらの方ならそのくらい平然とされるでしょうな」
私が一応に理解を示すとカーレー様が嬉しそうな顔をされる。
「ご理解を頂けて感謝します。そういう事でその者達を引き取って欲しいのです。あちき達としても関係者と名乗る人間を処分し、カイキ連合と事を荒立たせたくないので」
「確かに、お互いに痛くも無い腹を探り合いたくありませんからな。了解いたしました。私が責任をもって引き取らせて貰います」
「それは、助かります。早々に連絡し、明日中に御引き渡し出来る様に致しますのでどうかよろしくお願いします」
カーレー様は、そう軽く言ってから私の前から去っていくのであった。
『
1119/刃碧深(05/17)
ミハーエ王国ナーナン領都、カイキ連合大使館
カイキ連合の連合議会長 ハーマン=コウ
』
諜報員からの報告等を纏める中、暗部を纏める男がやって来て報告をあげる。
「ソーバトより引き取った者達ですが、シオッテ王国工作員に間違いありませんでした」
「やはりな」
淡い希望を打ち消された私は、苦笑する。
「その様子では、元から確信されていたのですね?」
暗部の男の確認に私が頷く。
「当たり前だ。ヌノーの覇王ならば、ソーバトには、しないからな」
「やらないという訳では、ないのですね?」
少し意外そうな顔をする暗部の男の言葉を私は、肯定する。
「ああ、実際にそれに近い工作をしているという情報は、幾つか得ている。負けても尚、ミハーエに屈服するつもりは、無いらしい」
「だとしたら今回の件は?」
暗部の男の疑問に私が答える。
「場所が悪い。ミハーエ王国の中でもソーバトは、領民に対して善政を布いている。その上、直接的には、カイキ連合とは、関係ない。やるとしたらこのナーナンでやっていただろう」
「それをあの娘達は、気付かなかった訳ですか?」
暗部の男は、納得した様な言葉に対して私は、首を横に振る。
「そんな事など完全に把握した上でこちらに工作員を引き渡して来たのだ。余計な揉め事にする気がないからこちらで処分しろとな」
「処分ですね」
暗部の男の視線が一気に冷たくなる。
「特別な護送船を用意して沈めろ。ミハーエ王国に対してそんな工作をした生き証人などカイキ連合の入れられんからな」
「了解しました。その様に処理を進めておきます」
暗部の男は、そういって退室して行った。
「しかし、シオッテ王国も余計な真似をしてくれます」
側近の一人の言葉に私は、肩を竦める。
「あそこは、ソーバトの双鬼姫を手に入れようと欲をかいて、連合でも大きな力を進めていた計画を台無しにされたからな」
シオッテ王国が主となり進めていたヌノーに奪われたソルッテ奪還計画。
負債塗れのバイレーツを使い潰してヌノーを消耗させてからの本格侵攻、その際に偶々居合わせたソーバトの双鬼姫。
ミハーエからは、その事でシオッテ王国に対してソーバトの双鬼姫の退避までの作戦の遅延を要求していた。
それを受けてシオッテ王国がとったのは、真逆な対応だった。
バイレーツの侵攻の前倒した上のソーバトの双鬼姫奪取を命じたのだ。
ソーバトの双鬼姫の政治的価値の大きさに目を取られた愚かな選択だったと言わざるえない。
その為、ミハーエの魔法に無力さを晒していたバイレーツがソーバトの双鬼姫によって壊滅させられた。
それにより奪還計画は、霧散した上、バイレーツは、ヌノーの反抗戦で落ち、ヌノーの属国扱いされる事になった。
それによって生じたのは、バイレーツに対する債務の無価値化である。
国同士の債務というのは、お互いの国の力が均衡しているからこそ成り立つ。
良い例がミハーエとヌノーだ。
お互いに強大な力を持ち、債務不履行になった場合にそれを是正させられるからこそ債務が意味を成す。
どちらかの力が弱い場合、債務等あってないようなものだ。
強い方が一方的に搾取し、弱い方が無力に搾取される。
バイレーツは、かつて搾取し、ミハーエに負けてその力を減じてされる側に回っていた。
しかし、ヌノーという強大な後ろ盾をもった事でカイキ連合に対する債務を無視したのだ。
無論、カイキ連合とて催促を行っているがバイレーツは、予算に余裕が無いとそれを突っぱね続けて居る。
これが以前ならば直ぐにも海軍を送るのだが、現状でそれをすれば後ろ盾のヌノーにこちらに侵攻する口実を与える事になってしまう。
どの国もヌノーの侵攻の矢面に立たされる覚悟でそんな馬鹿な真似が出来ない為に半ば諦めさせられている。
こういった場合、本来ならばカイキ連合が保有する港に対する入港禁止で圧力掛ける方法もあるのだが、バイレーツは、ヌノーとミハーエ、もっと言えばナーナンの駒として動く事で自国の利益を確保してしまったのだ。
カイキ連合は、バイレーツという失っても惜しくない物を使った損失の少ない計画の筈がヌノーとミハーエに余計な海運の足を渡してしまい、莫大な貿易損失を産む自体に落ちった事になる。
現在では、ミハーエからの輸入品をもったバイレーツの船団が大きな顔をしてカイキ連合に入港してくる状況になってしまっている。
ミハーエからの輸入品を得る為と苦々しい顔の並ぶ議会の場でバイレーツの船の入港禁止案が否決されたのは、記憶にも新しい。
そんな事もありシオッテ王国は、ソーバトを目の敵にしている。
同時に計画の失敗にともなった関係国への保障による損失。
それを補う為にもシオッテ王国としてみればソルッテ近辺のヌノーから輸出される自国と被る商品を減らす意味でもヌノーとナーナンを繋ぐソーバトに混乱を起こしたかったのだろうが失敗。
決して安くないだろう工作費を考えればシオッテ王国は、今後カイキ連合内での立場が弱まるのは、必然だろう。
「何より問題なのは、今回の一件を何故交渉の手札にもしなかったかだな」
この一件がナーナン領主との交渉の場で使われた場合、大きな譲歩をせずにすますのは、困難を極めていただろう事を考えるとソーバトの思惑が読めない。
「それですが、問題の工作員の一人の所持品にこの様な物が」
側近が差し出して来たのは、一通の封筒であった。
十尾の鳥が描かれた封蝋、それは、ミハーエ王族を示している。
そして鳥を囲う十の丸の一つ、時計回りで四つ目が削られている。
これは、王族の地位を意味し、ラースー王女からの書簡を意味している。
「これが本命か」
私は、覚悟を決めてその封筒をあけるのであった。
『
1119/刃碧深(05/17)
ミハーエ王国ナーナン領都、カイキ連合大使館
ミハーエ王国ソーバト領主の姪、サーレー=ソーバト
』
「ご招待に感謝致します」
そういったカーレーと共に僕は、頭を下げる。
「その様な見え透いた真似をされますか?」
はっきりと嫌悪感を見せて来るカイキ連合の議会長、ハーマンさん。
カイキ連合の議会長とは、どんな立場かと言えば、例えるならば相撲協会の会長とかそういった感じになる。
一応に議会長としてカイキ連合の議会を取り仕切る権限があるが、それだけである。
元の世界の社会主義の大国の議長みたいに絶対権力者という訳には、行かない。
それでも議会を取り仕切れるって事でカイキ連合内で大きな発言力を持って居る。
そんな人物がナーナンに来てるのは、失敗続きのカイキ連合の現状の為だろう。
カイキ連合にしてみれば海運は、生命線であり、これにナーナンが割り込み利益を出している状況を是正する為に自ら乗り込んで来たのだ。
そんなハーマンさんに僕達を招待させる為に色々裏工作した結果こうなった。
「まあ、無駄な儀礼は、ナーナン領主として下さい。あちきは、実務的に話をさせて貰います。ハーマン議会長、新大陸捜索に対する協力をカイキ連合して行って貰えませんか?」
カーレーがずばり本題から入る。
折角の交渉材料である工作員を使い捨てにしてまでこの場を作ったのは、単にこの交渉の為だ。
はっきりいってしまえば現在のミハーエ王国の船関連の技術と人員では、新大陸捜索は、無理。
長期間の船に依る移動や大海原で現在位置をしる手段等々不足して居ない物を探す方が難しい状況。
中央やナーナンは、育成を前提に進めているがお父さんは、早期の新大陸発見を必須としている。
そうでなければ神様に睨まれてまでスクリュウー技術等を持ち込まない。
早期に対処するとした場合、カイキ連合の協力して貰うのが最善と判断した。
中央との思惑の差異がある以上、僕達としては、公に動けない。
だからこそこんな回りくどい手を使った。
それでも一応、ソーバト(イーラー叔父さん)とターレーお姉ちゃんの了解は、得ているけど。
「新大陸捜索に協力する事でカイキ連合の利益があるとは、思えませんが?」
当然の様にハーマンさんが拒否の意思を示して来る。
ナーナンと交渉中にその相手を出し抜く様な今回の会談だって嫌だった筈だし仕方ない。
それでも受けさせる為に工作員って手札をきった。
夜会では、クソジジイの工作だって事にしていたが、工作員がシオッテ王国の人間だって確証は、既に掴んである。
あそこは、ソルッテの一件があったから帝国経由で潜入捜査員を送った上、地元の人間を買収済みだから比較的簡単に証拠は、あつまったからね。
それをラースーちゃんに書いて貰った書簡で匂わせた以上、会談に応じない訳には、いかなかったって感じなのだ。
予測されていた反応だったから対処も決めてあった。
だけどカーレーは、こちらに別のサインを送って来た。
『新大陸発見の魅力を説いてみるから反応を見て』
僕が了承のサインを送るとカーレーが説く。
「新大陸を発見すれば、今までにない新たな商品を得る事が出来ます。ヌノーに支配されていない新たな領地を得る事が可能です。ミハーエ王国は、領土拡張自体は、率先して行いません。上手く立ち回ればカイキ連合は、広大な領地を得る事も可能かと?」
元の世界の王様たちにも通じた話。
ミハーエ王国って例外を除き、結局の所、領地の拡張こそ国としては、一番の望む事なのだ。
それなのにハーマンさんの反応は、違った。
「新大陸ですか、そんな夢現でしょう」
完全に信じて居ない。
「何故夢現と? ディーラ大陸以外に大陸が無いとだれに言い切れますか?」
カーレーの問い掛けにハーマンさんが首を大きく横に振る。
「大海原の先に陸地を求める等、遭難した船乗りの幻想でしかありませんな」
おかしい。
元の世界だって他の大陸の存在を知らない人間に新大陸だっていえばこういう反応を返すかもしれない。
実際に新大陸を発見した人の行為は、当初、馬鹿にされたらしい。
それでも僕は、不自然に思った。
なんというか、新大陸という言葉を認めたくないそんな感じがした。
お父さんが懸念していた事、神様が新大陸発見を阻害している。
その片鱗をみた気がした。
カーレーも同様らしく、予定通りに戻るとサインを送って来た。
「それでは、提案を変更しましょう。カイキ連合に新大陸調査の主導をお願いします」
「仰られている意味が理解出来ません。先程も告げましたように新大陸など存在しないと。そんな物の調査を受ける謂れは……」
ハーマンさんの言葉を遮る様にカーレーが告げる。
「その対価としてミハーエ王国が開発している新型船の理論とその動力をミハーエ王国が提供するとしたら?」
ハーマンさんの顔が一気に鋭くなるのを確認しながらカーレーが微笑む。
「現状、カイキ連合は、数と船員技術で勝って居る。でも逆を言えばそれ以外で何で船舶関連技術で勝っているんですか?」
「カイキ連合には、最も優れた造船技術があります」
そう主張するハーマンさんに対してカーレーが指を横に振る。
「言葉が正確じゃないよ。最も優れた帆船製造技術。自分達が何に乗って来たかを忘れた?」
拳を握り締めながらもハーマンさんが問う。
「あの船の技術を提供するというのか?」
カーレーは、肩を竦める。
「残念だけどあれは、ナーナンに独占させてるから無理。だけど、あちき達が新大陸調査用に開発している魔力発動機を搭載した新型船の理論とその動力を提供できる。これは、その船の試験運用結果だよ」
カーレーが集めていた資料を提示する。
それを確認するハーマンさんは、信じられないって顔をする。
「本当にこれだけの性能があるというのですか?」
「それを欺瞞する理由は?」
カーレーが聞き返すとハーマンさんは、天を仰ぐ気持ちも解る。
海運競争するのに、現代の船に中世の船で相手する様な物で、トラックと馬車以上の差があるそれをしなければいけないとなれば絶望的になるだろう。
「作った新型船を大陸調査に使った後は、こちらで運用できると思って居れば宜しいですかな?」
ハーマンさんが交渉の席に着いた。
「別に調査自体は、新型船でなくても構いませんよ。ただし天体観測で現在の座標の解る船員が乗船し、新刃の門が設置できる船であれば良いです。調査開始と同時に製造法を含む理論を提示、調査範囲に応じて主動力を提供する形を想定しています」
この案は、既にターレーお姉ちゃんを通じて中央には、了承を得ている。
そもそもミハーエ王国でも新大陸調査自体に価値を見出して居ない。
終戦魔法を生みだしたお父さんの高い貢献度と新技術の対価として仕方なくやっている事というイメージが強い。
だから、新型船程度の技術提供でそれを肩代わりしてくれるなら十分に妥当な取引。
『魔法が必要としない凡人で出来る事等、魔力の低いカイキ連合の下衆にでもやらせておけばいい』
と中央の口が悪い連中の言葉で言ってたとか。
ハーマンさんが目を瞑り熟考に入る。
きっと今頃、新型船を製造、運用コストとそれに伴う利益増加と新大陸調査に掛かる費用の算出が行われている事だろう。
数年で利益が出ない。
でもミハーエ王国がそれを運用し、他の国々に提供する事を考えればここでその技術を手に入れないって選択肢は、選べない。
覚悟を決めた顔をするハーマンさん。
「了解しました。この件は、戻り次第最重要議案として処理し、私の議会長としての地位に賭けて成立させましょう」
「ご理解感謝します」
カーレーがそう笑顔で告げて今回の会談は、終わった。
『
1119/刃碧光(05/18)
ミハーエ王国ナーナン領都、カイキ連合大使館
カイキ連合の連合議会長 ハーマン=コウ
』
「ミハーエであれだけの船が開発されていたとは……」
昼間にソーバトの双鬼姫が交渉成功の祝いとして乗せられた新型船にも居た側近の顔が青褪めるのも当然だった。
ナーナンまで乗って来た船も大概だったが、資料として渡された船の性能は、とんでもない。
今まで運用していた木造船が玩具と思える程の性能だった。
「金属の船が浮いているのは、魔法のちからでは?」
側近の一人の疑念に対して私は、苦笑を漏らす。
「それならばそれで良い。幾らミハーエとて、一般的運用に同様な魔法を使い続ける訳には、いかないだろう。問題は、あれが事前に提示された資料通りの物であった場合だ」
唾を飲み込み側近の一人が呟く。
「……カイキ連合の海運での優位性の大半が失われます」
大きくため息を吐き、私が告げる。
「大型化が可能で積載量も高く、その上、天候の影響も受け辛いとなれば一隻でこちらの木造船数隻分の価値が出て来る。現在ある優位性が失われるのもそう遠い未来では、ない」
言葉を無くす側近達に私が告げる。
「ならばこそ、この船を確実に手に入れる必要性がある」
「ですが新大陸調査など……」
言葉を濁す側近に対して私が応じる。
「海岸の砂で城を作る様な子供の遊びだろうがそれが対価ならば応じよう。ただし、全てがミハーエの、ソーバトの双鬼姫の思惑のままですますつもりもない」
私の考えた対抗案を聞き、側近達が驚愕の声をあげるのであった。
『
1119/金桃薄(07/20)
南洋の未知の海域に浮かぶ木造船
ミハーエ王国ソーバト領主の姪 カーレー=ソーバト
』
サーレーが天体観測による現在地の確認を行っている。
太陽の位置と星の位置と方角諸々の情報を元に調べる。
態々向うの六分儀を応用して作った最新型のそれまで使っての精密調査であるが、こっちの簡易版それと大差が無いという結果が今の所まで出ている。
「どうですかな?」
余裕たっぷりの顔で確認してくるハーマンさんに対してあちきは、頬を掻きながら尋ねる。
「船員の人達がよくこんな無茶な航海を了承しましたね?」
「大陸北岸地域との交易を行う船となれば数旬船に乗ったままと言う事もあります。彼等に言わせれば新刃の門で物資の補給が受けられるこの航海など散歩の様な物だといっていますよ」
勝ち誇った顔をするのも当然だ。
正直、こっちの想定を大幅に超えた調査範囲を叩き出しているんだから。
駄目親父が新大陸調査に新型船を用意したのには、大きな理由がある。
どう考えてもミハーエ王国が新大陸調査に多大な人員を割り振る訳がないからだ。
そうなれば量より質、少ない船で長期間、高速で調査出来る新型船が必要になると考えていた。
極端な話し、一隻にて新刃の門で交代と補給を繰り返し、新大陸を探し続ける事になる可能性すら考慮されていた。
あちき達としては、その足しになれば良いかとカイキ連合に投げただけなのだが。
カイキ連合は、とんでもない事をした。
数十隻という中型船を使っての大規模調査をしたのだ。
それを行う為に徹底的なコストカットしてた。
例をあげるならば交代も可能だって言うのに補給以外に新刃の門を使わせないや天測航法が使えるがもう荷運びも出来ない老人を使う等々。
当然、こちらが想定したより遥かに広大な海域が調査される。
それが何を意味するかと考えながらあちきは、ハーマンさんを見る。
「お約束の動力の方は、よろしくお願いいたします」
満面の笑顔を向けて来るハーマンさんに作り笑顔を返しながらカージヤにどう無理な注文を通そうかと考えるのであった。
最後は、少し先の話になります。
今回は、かなり反則的な技術流用になります。
高位の神獣に睨まれる程の。
この件は、リクエストがあったら書くかもしれません。
次回、ナーヤ山でカーレーのライバル登場です




