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落ち目領地とハーフな双子  作者: 鈴神楽
一年目 異世界生活に慣れよう!
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053 茶番な話し合いと主従それぞれの誓い

戦闘準備回です

「シーワー、大事な話しをしましょうか?」

 そうサーレー様に声を掛けられて、私に否は、無い。

 サーレー様に連れられて来たのは、イーラー様の執務室だった。

「ここでの話は、正式発表があるまで無かった事になる」

 イーラー様の言葉に私は、これから行われる事がかなり重要な案件になる事が予測できた。

「心得ました」

 そうとだけ答え、参加者を確認する。

 まずは、私が仕えるサーレー様。

 この部屋の主で、象徴として領主で在るウーラー様に代わり実質的な政を取り仕切るイーラー様。

 騎士団の副団長でもある、キーロー様。

 イーラー様の側近でもある、シールー殿。

 サーレー様の姉気味、ターレー様とその護衛騎士、テーリー殿。

 ソーバトの政治を回す重要メンバーとも言える面子だが、そこにキーロー様が入っている以上、今回の話が軍事的な側面が強い事を意味している。

 そして私が呼び出された事を考えると、例の件に関わる話であろう。

「サーレーが提案している案の準備は、何処まで進んでいる?」

 イーラー様の問い掛けで私の考えが合っている事が証明された。

「魔法の選別が終わり、必要な兵士の確保も順調。魔帯輝の確保が済み次第、実行が可能かと思われます」

「そうか、魔帯輝に関しては、こちらで十分な数を用意する。リストの作成を行え」

 イーラー様からの指示に私が応じながらも私が確認する。

「それでは、近々実行に移るのですか?」

 イーラー様は、敢えて肯定の言葉を使わず話を続ける。

「現在、チェーラ部族の治める土地の一部で例年以上の水不足が発生している。過去にも何度かあった話であるが、その場合、チェーラ部族の中でも過激派がミハーエに水場を得ようと侵攻してきた」

 チェーラ部族、ミハーエの東部に位置する土地に住む、獣と共に生活する部族。

 文明レベルが低いが、身体能力が高い上、下位の魔帯輝を用いた魔法の使用者が多く、過去の戦争では、かなりの苦戦を強いられた部族。

 現在は、隣接した領地、リーモスがチェーラ部族との外交を行い、一応の不可侵条約を結んでいる。

 しかしながら、チェーラ部族は、一応は、一つの部族となっているが、その中でも幾つかの部族に分かれている為、過激な者達は、同族を襲うより、ミハーエを襲う事を選択する場合もあり、近年の争いの原因になっている。

「正式な要請は、来ていないが、通例ならばリーモスから増援の要請が来る。それもかなり小規模の」

 イーラー様の説明に私は、苦笑しそうになる。

 増援要請をしておきながらも小規模と言うのが、ある意味滑稽な話だ。

 しかし、これには、訳がある。

 ウェーフ神国からの救援要請に応じたカーカナへの増援と異なり、敵対者があくまで条約を結んだ相手なのだ、制御が利かない戦力では、意味が無いのだ。

 あくまでリーモスが主となり、その命令に従って戦い、そして撤退する事を求められる。

 そんな事をするならばリーモスだけで防衛戦を行えとも思われるが、実がここにも複雑な事情がある。

 チェーラ部族とは、不可侵条約を結んでは、居る。

 しかし、そんな物は、単なる書面上の約定でしかない。

 これを破る事にデメリットは、国の体制を取っているミハーエより、部族としてあるチェーラの方が明らかに少ないのだ。

 その理由は、隣国との関係である。

 ミハーエは、ヌノー帝国以外の隣国に対して幾つかの条約を結んでいる。

 それに引き換えチェーラ部族は、ミハーエとの不可侵条約しか結んでいない。

 元々、そういう事をしない、するようだったら国として形をとっているだろう。

 そんな状態ゆえにチェーラ部族は、何時でも条約を破棄して侵攻出来る。

 故に、リーモスの本隊は、チェーラ部族の侵攻に備えておかねばならないのだ。

 特に今回の場合は、一部の部族の暴走という事になるだろうが、実際は、チェーラ部族全体の総意による侵攻になる可能性もありえるのだ、十分な防衛力を確保しなければいけない。

 それらの状況を踏まえると、小規模の増援を各領地に求めるという歪な結果が生まれる。

 それに対して各領地にとってもこの案件は、面倒な話でもあった。

 同国内の話であり、明確な領土侵犯である。

 しかしながら、それに対して過度な反攻してチェーラ部族と本格的な戦争にもなろう物ならその責任は、大きい。

 とてもリーモス以外の領地がそれを背負う事等出来ない。

 当然、かなり制限された戦いになると思われるのだが、逆にここで戦力を全く出さないという判断も出来ない。

 自国への領土侵犯の対する増援の拒否は、明らかに国益に反する行為になる。

 そんな事情から、リーモスにとっても増援を送る他領にとっても喪失が出るのに関わらず実りが薄い戦いになる。

 本来ならばソーバトにとっても喜ばしくない状況では、あるのだが、ここに私が呼ばれた事情が加わると話が変わる。

「もしも増援の話があった場合の準備を進めさせて貰います」

 敢えてもしもを強調して言うが、この場に居る人間には、もしもを付ける必要ない事が解っている。

 言うなれば建前なのだ。

 誰に対する物と謂われれば万が一問題視された時の言い訳なのだ。

 今回の騒乱を利益に結び付けようと動いていた事実等無い。

 あくまで万が一の準備をしていたらそれが起こってしまったので、実行した。

 偶然、偶々、そういう流れを作っているに過ぎない。

 だから、実際に事が起こった際にどの貴族よりも先に準備が終わっていて、それを宣言しても言い訳が利くという建前なのだ。

 茶番とも取れる行動だが、政治とは、そういう物なのだ。



 退室後、サーレー様が声を掛けて来られた。

「人員だけど、カーレーがまた面白い駒を手に入れたみたいよ」

 そういって数枚のリストを挿しだされた。

 それを受け取り私は、苦笑する。

「これだけの人材をこうも簡単に引き入れるなんてどういう手品を使ったのでしょうか?」

「僕の故郷の言葉に類は、友を呼ぶっていう言葉があるの。似た者は、呼び合うんだよ。貴方は、違うの?」

 その問い掛けに私は、首を横に振る。

「サーレー様と出会ったのは、神が定めた運命です」

 肩を竦めるサーレー様。

「それより今回の目的は、告げておくよ。費用対効果は、無視。過剰な魔帯輝を要求して、最大限の功績と問題点を洗い出しなさい」

「了解しました。他には?」

 私が促すとサーレー様は、流れるように続ける。

「今回は、相手の反応よりもリーモスの反応を中心に観察して。今回試す戦法は、チェーラ部族相手には、有効だけど、一番多用するのは、内戦及びヌノー帝国になる筈だから」

 先の先まで読んだ見事な采配。

「内戦となればあまり手の内をばらさ無い様にしますか?」

 確認に対してサーレー様は、微笑を浮かべる。

「僕を試しているんだ?」

 何から何まで御見通しだ。

「その答えで十分です」

 下手な隠蔽は、不要。

 多少の種がばれたくらいでどうにかなる戦法では、ないし、どうにかなる様ならそれこそ問題なのだ。

「シーワー、戦争は、初めて?」

 サーレー様の言葉に素直に頷く。

「はい。しかし、問題ありません」

 必要な知識も鍛錬も十分に積んである。

 そんな私に対してサーレー様は、目を瞑り、静かに思考を廻らせてから口にする。

「今回の戦法では、直接に相手を殺す事は、無い。でも貴方の所為で大勢の人が死ぬ。その責は、貴方にある。それを背負う覚悟は、ある?」

 迷う必要など無い。

「それが貴族であり、騎士の勤めです」

 サーレー様は、頷く。

「そうです。そして僕もカーレーも同時にその責を負う覚悟は、しています」

 その言葉に、私は、驚いた。

 それでもその言葉は、言葉だけの物だと思おうとした時、サーレー様が私の手を握る。

「な、何を……」

 言葉の途中で気付く、サーレー様の手が震えている。

「怖いのですよ、自分の言葉の一つ一つが多くの人の生き死にを左右する、その事実が」

「侵攻に対する防衛です。これは、正当な行為です」

 私の主張にサーレー様は、肯定するように頷く。

「そう、正当ね。そうでなければいけない。だけど相手にもそれは、あるの。多くの同族を救う為に新たな地と水を求める。そうしなければ同族の死を受け入れなければいけない。正当とか正義なんて言葉で逃げない。僕は、僕の家族が居るこのソーバトを護る為に人を殺す指示を出す。それが傲慢で罪だとしてもそれを背負う。だから貴方にも心に刻んで欲しい、自分の命を懸けてまで戦って相手の命を奪うその理由、その根本を。それが家族や恋人への愛情でも、自分の欲でもかまわない。その為に戦い、命を奪うって事を刻む。それが最後の一線を分ける。国や上の人間が決めたお題目だけで戦った人間は、最後の最後は、脆くなる。そう父上は、教えてくれました」

 多くの戦いに勝利を呼んだと謂われるアーラー様、サーレー様の父上の言葉。

 確かにそれは、厚みがあった。

「私は、自分の才能と鍛錬を信じ、それを十全に生かして下さるサーレー様の為に戦う事を刃の神に誓います」

 私が戦いの神に誓うとサーレー様も金の神の神印を刻む。

「貴方のその誓いに相応しい者に成る事を金の神に誓います」

 未来を司る、金の神への誓いを聞きながら自分の幸運を全ての神に感謝した。

 学園で優秀賞を得ようと満たされる事無かった満足感、それがここにある。

 自分を理解し、尊敬出来る御方に仕え、己の力を思う存分に振るえる現状は、なんて幸運な事だろう。

 それ故に私は、口にする。

「次の戦いでその誓いの証にさせて頂きます」

 サーレー様の前をあとにし、今まで以上に高まったやる気を胸に、私は、準備を再開するのであった。

少し前にちょっと出たシーワーに与えられた戦法を使う場所を作りました。

それとそろそろ出した方が良いと思ったので、日本育ちである筈のカーレー、サーレーの命に対する考え方を上げておきました。

通常の異界物と違って父親がこの世界の人間なので、それ相応の生死感を持っている事にしてあります。

次回は、リーモス防衛線です

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