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落ち目領地とハーフな双子  作者: 鈴神楽
一年目 異世界生活に慣れよう!
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052 両手剣と双剣

コシッロとの対決

「コシッロ、久しぶりだな」

 騎士に頭を下げて部屋に入ってきたのは、ムサッシだった。

「久しぶり。それより、どうなっているの?」

 ウチの責める視線にムサッシは、苦虫を噛んだ顔をする。

「複雑な事情があるんだ。この者の事は、こちらで対処しますので、別室で話してかまいませんか?」

 騎士達は、何か言おうとした時、部屋の外に居た騎士が慌てて合図を送ってきた。

「良いだろう。だが、解っているな?」

「重々に」

 ムサッシの返答し、ウチを連れて部屋を出る。

「説明をして貰えるのだな」

 ムサッシが何か言おうとした時、一人の少女が話し掛けて来た。

「あちきが問題のカレだよ」

 カレ、それは、ムサッシを破ったって相手の名前。

 とてもムサッシが負ける相手には、見えなかった。

「カー……」

 何か言おうとしたムサッシの口を押さえカレが告げる。

「まあ、色々事情があるんだよ。そんでさ、他人に聞いた話でどうこう言うのは、武人としてなんでしょ? 武人だったら、これで判断しない」

 そういって取り出したのは、試合でも使った剣だった。

「望む所だ」

「駄目に決まってるだろうが!」

 声を荒げるムサッシにカレが言う。

「武人が口で何を言われたって納得行く訳ないでしょうが。自分の立場になって考えてみたら解るでしょうが」

「……それでもですが」

 明らかに歯切れが悪いムサッシに対してカレは、続ける。

「そんな訳だから、ばれない様にやれる場所に移動だよ」

 さっさと移動を始めるカレに頭が痛い様子を見せるムサッシだったが、今回ばかりは、ムサッシよりカレの言葉に従う事にした。

「あの娘が言うとおりだ、武人に言葉は、要らない。剣が全てを語ってくれる」

 大きな溜息を吐くムサッシ。



 人気の無い場所に移動した後もムサッシは、異常なまでに周囲を気にしている。

 ムサッシは、ここまで小心では、無かった筈と違和感を覚える。

「ムサッシ、事情は、解らないがここまで来たんだもう諦めろ」

「万が一にも発覚したら大事なのだ!」

 きつい言葉を返すムサッシにウチは、このカレという娘が平民でない事を察した。

 貴族、それもかなり上位の。

 それが何かの戯れで武闘大会に出場して、コネと八百長で優勝した。

 しかし、それが表沙汰になると面倒なのでムサッシが優勝した事に話を変更した。

 八百長に乗る形になったムサッシとしては、あんな顔になるのも理解できる。

 そうなるとやはり、ここは、カレって二つの意味で身の程知らず娘を叩きのめしてやる必要がある。

「ルールは、大会と同じで良いよね?」

 木の胸当てをつけながら尋ねてくるカレにウチも用意された木の胸当てをつけて、両手に一本ずつの剣を持ち、広げる様に構えた。

鳥技チョウギをメインにしながら剣を使う、面白いですね」

 なるほど、一応の知識があるのだろう。

 鳥技は、速い手業がメインであり、槍を使う者が多い。

 剣を使うなら高速移動がメインの狼技に偏るものだ。

 理由は、そう難しくない、間合いの違いだ。

 剣の間合いは、槍や斧等に比べて短い。

 自分から動いていかなければ攻撃を当てられない。

 手の動きが早いだけでは、攻撃を届かないのだ。

 だからこそ私は、二つの剣を使う。

 臨戦態勢のウチを見てムサッシが諦めた顔をする。

「試合、始め!」

 その声と共にカレが一気に踏み込んでくる。

 中々鋭い踏み込みだ。

 確りと鍛錬された打ち込みだが、ウチは、それを左手の剣で受け、右手の剣を相手に向かって振るう。

 半身になってそれをかわすカレ。

「うん、やっぱり実際やってみると、面白ね。対戦相手も勘違いしていたしね」

「勘違い? 何の事を言っているの?」

 ウチが聞き返すとカレが答えてくる。

「貴女が双剣使いって勘違いですよ。貴女は、両手で剣を持ってるだけで普通の剣の使い手なのにね」

「何を言っているの? ウチは、双剣使いよ!」

 ウチは、詰め寄り、右手の剣を振るい、避けられた所を左手の剣を振るった。

 それを受け止めてカレが告げる。

「今のが証拠だよ。左右の剣に何の連携が無い。交互に振るってるだけ。双剣ってやつを見せてあげる」

 そういってカレは、腰に着けていた短剣を引き抜くと切り込んで来た。

 今度もウチは、左手の剣で受け止めた筈だった。

 確かに受け止めた、右手に握られていた剣は。

 左手に握られて短剣が胸の木の胸当てに向けて進んでいた。

 右手の剣で咄嗟に防いだ時、左手の剣が押し込まれ、体勢が崩れたので大きく飛びのく。

「意外そうな顔をしてるけど当然。貴女がやっていたのは、剣を盾にする事。相手の一撃を盾にした剣で受け、もう一方の剣で攻撃する鳥技の速さを生かした戦法だろうけど、それって同時に両手の剣を同じ様に扱い慣れていないって事で、今みたいに両方を盾扱いさせれば、片方が不完全になるんだよ」

 まさかこんな娘に自分の戦法の弱点を指摘されるなんて思いもしなかった。

「気付かなかった理由は、簡単。ナーヤ山では、ムサッシさんみたいに正面から戦ってくれる相手で、こういう風に弱点を突いてくるタイプが少ないだろうからね」

「まだよ、そんな意表を突くやり方が何度も通じると思わないでね」

 ウチは、そう宣言した。

 その宣言に嘘は、無い。

 今は、不意を突かれたから体勢を崩したが、次からは、同じ事にならない。

「やっぱり双剣って物を理解していない」

 カレは、短剣の方で切りかかってきたのでそれを受け止める。

 案の定、もう一方の剣が振るわれる。

 どこに打ち込まれても大丈夫の様にしていたが、全く予想外の所に打ち込まれた。

 短剣を打ち込まれた剣に向かって振り下ろされたのだ。

 一気に押し込まれ体勢が完全に崩れた。

 危ないと思った瞬間、そのまま転がり間合いを広げる。

 カレは、短剣を腰の後ろに納める。

「双剣を剣が二本あるだけと思っているからこんな風に勘違いする。さてこっから本番といきましょうか」

 最初の構えに戻るカレ。

「何のつもり?」

 このまま戦えば負けていたのは、ウチだろう。

「何のつもりも何も、勝つ為の勝負じゃないでしょ? あちきの実力を知る為の勝負。それなのにこんなあんたの戦法の弱点を突いた戦い方しても意味が無いじゃん」

「自信があるって事?」

 ウチの問い掛けにカレは、笑う。

「自信、そんな事は、関係ないよ。戦いは、勝ち負けじゃなく、その内容こそ意味がある」

 ウチは、勘違いしていた。

 この娘は、八百長をする様な娘じゃない。

 ならばするのは、この娘の言うとおり、全力の戦いのみ。

 深い呼吸と共に相手の一撃を待つ。

 ウチの戦い方、相手の一撃を受けてからの高速の反撃、それで勝負を決める。

 カレは、一見動いていない見えるが、全身のバネを絞り上げている。

 目的は、高速突進による最速の一撃。

 それを防げるかどうかが勝負の分かれ道。

 一呼吸、その刹那の時間が一時間にも感じた後、カレが動く。

 全身のバネを一気に開放した突進、その加速が乗った刀身は、早いだけの剣では、弾かれる。

 左手で防ぐのは、断念した。

 右手の剣で振り上げられる剣を防ごうとした。

 そしてカレと視線が合わない。

 剣を合わせる、当然、視線は、自然とぶつかる物である。

 しかし、視線は、合うことは、無かった。

 カレの最後の一太刀を放った踏み込みは、ウチが想定していた位置よりほんの少しだけ離れていた。

 その差は、足のサイズ程もなかっただろう。

 刃の届く踏み位置では、無かったのだ。

 しかし、その刃は、ウチの木の胸当てを切り裂いた。

 それを可能としたのは、体の向き。

 カレは、ウチに視線を向けないという本来の型には、無い斬り方で、右肩を前方に突き出して間合いを広げたのだ。

「騙まし討ちだと思う?」

 カレの言葉にウチは、首を横に振る。

「戦いとは、常に相手の裏をかくもの、速さの競い合いで、間合いを伸ばすことでの早期化は、技術以外の何物では、ない。ウチの負けだ」

「それで納得してくれた?」

 確認してくるカレにウチが頷く。

「ああ、これならムサッシが負けた事も、負けた上で勝った事にされた事への容認も納得できた。他人の言葉でどうこうなる勝敗では、ないのだからな」

 ルール上の勝敗でなく、ちゃんとした戦いの勝敗なら、他人にどういわれようと関係ないものだ。

「とにかく、ここでの事は、他言するなよ」

 安堵した顔を見せるムサッシにウチが苦笑する。

「解っている。意外と小心なんだな」

「ところでこれからどうするの? ソーバトで仕官するつもり?」

 カレの質問にウチは、思案した。

「元々は、ナーヤ山に帰郷してきた兄弟子にムサッシが小娘に負けたと聞いたから確認に来ただけだが、さっきの双剣には、興味があるので教えて貰えないか?」

「良いよ。だったら、ムサッシと同じ様に城で雇って貰いなよ」

「その方が便利だな」

 こうしてウチは、ソーバトの城で兵士をやる事になった。



「小心と言った事は、謝る」

 数日後、城の中庭でムサッシにそう謝罪する。

「気にするな」

 ムサッシは、達観した様子でそう言って、領主一族の一人、カーレー様の鍛錬の相手を始めた。

「次は、コシッロ、相手して下さい」

 カーレー様は、そういって双剣の構えをとって相対したウチにしか聞こえない様に小声で続ける。

「約束通り、双剣は、教えますから安心して」

 何合か斬りあいして終わり、離れる。

 周囲に護衛騎士の目が光る中、ウチは、横に居るムサッシを睨む。

「どういう肝をしている。ウチだったら、絶対にやらせは、しなかったぞ」

「どう説得してもコシッロが納得しないだろう事が解ってたからな。それともお前は、口で曖昧に説明されて納得できたのか?」

 ムサッシの指摘にウチは、半歩引く。

「そうかもしれないが、もしも傷一つでもつけたらウチ等は、間違いなく処刑されてたぞ」

「だろうな。あの時は、遺書の内容を考えながら観戦してたからな」

 ムサッシは、何か物凄い遠いところを見る眼を見ながらウチは、もう後戻り出来ないだろう流れなんだろうと悟るのであった。

名前が武蔵と小次郎から来ているのに、なんでコシッロが二刀流なんやねんって突っ込みが来そうな話でした。

カーレーって滅茶苦茶強そうですが、普段の模擬戦では、ムサッシの方が強い、実戦に強いタイプです。

次回は、シーワーに因る新戦法を戦争で試す話し

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