049 デザート作りの遊び心とアイスクリーム
ただアイスクリームを作るだけの話し
「カーレー様、何処に向かっているのですか?」
ターレーお姉ちゃんの護衛騎士、テーリーさんが質問にあちきは、普通に返す。
「厨房、ちょっと作りたい物があるの」
「カーレー様、勝手に料理をなされては、困ります」
眉を顰めるテーリーさんにあちきは、手を振る。
「違う違う、作りたいのは、料理じゃなくてデザートだよ」
「一緒です!」
テーリーさんの突っ込みにあちきは、笑顔で応える。
「一緒だという根拠は?」
テーリーさんは、目を白黒させる。
「一緒というのは、どちらも料理人が作る物で……」
「違うよ、料理は、普通の料理人が作るけどデザートは、専門の料理人が作る物。それにデザートに関しては、貴族が娯楽として作る場合もある。テーリーも学友とかが作っていなかった?」
あちきの指摘にテーリーが怯む。
「確かにそういう貴族の女性も居ますが……」
「まあ、本格的な作業じゃないし、ちょっとした遊びも込み。大筋は、フッジイに頼むつもりだから安心して」
あちきがそう付け足すとテーリーが渋々納得する。
「本当にこうゆうのは、あまり止めてください。後で問題になって色々と言われるのですから」
「はいはい」
適当に流しながら歩いているとムサッシさんを見つけた。
丁度良いので声を掛ける。
「ムサッシ、ちょっと付き合って」
ムサッシさんは、物凄く嫌そうな顔で頷くのであった。
厨房に着くと事前に連絡して居た城の厨房のデザート担当、フッジイが出迎えてくれた。
「カーレー様、言われていた物は、用意して置きました」
「それじゃ、早速始めるから混ぜちゃって」
あちきの指示で、フッジイがアイスの材料を手順通りにかき混ぜる。
あちきの方も途中からムサッシさんに持ってもらっていた容器を洗おうとするとテーリーさんが止めてくる。
「そういう事も厨房の者に任せてください」
「自分が使うのに?」
あちきの疑問にテーリーさんが強く頷くの仕方なく厨房の人に洗い方の指示を出して、洗って貰って、その後、中の水分を綺麗にとって貰った。
その頃には、フッジイさんの準備も終わって。
「事前に指示があったところまでは、終わりました。この後は、どうするんですか?」
あちきは、洗った容器に入れて、それを密封、その後、それより大きい半球の容器を二つ準備して貰い、それに氷と塩を入れて、さっきの容器を中心にセット。
そして半球の容器を合わせて止めて固定する。
「それでは、行きますか、ムサッシ」
そういって回転させながらそれをムサッシさんに投げる。
「行き成りなんですか」
そこそこの重さがあるそれをあっさり受け止めるムサッシさん。
「同じ様に回転させる様にしてリレーするの。あちきが自分でやりたいんだけど、テーリー良い?」
テーリーさんが首を横に振る。
「なにがしたいんだか解りませんが、そういう雑務も駄目です。私が変わります」
そういって、テーリーさんとムサッシさんがそれを回転させながらリレーする。
暫くした所であちきは、止める。
「結局、何がしたかったのですか?」
ムサッシさんの疑問にあちきは、実物で証明する。
ボールを開け、中の容器を開封、容器の内面に出来ていたアイスクリームを見せる。
「これが作りたかったデザート、アイスクリームだよ。フッジイ、これを食べやすいようにとってくれる?」
「お任せ下さい」
新しいデザートに眼を輝かせ、用意するフッジイ。
当然の様にあちきの前に一番に置かれ、注目される中、あちきが食べる。
「うん、いまいち。フッジイ、味見をして味の調整をお願いね」
下手なお世辞は、言わない、言われたフッジイも味見をして眼を見開く。
「冷たくて美味しいです。不思議な感じですね。これは、どういう手法なのですか?」
「飴菓子を熱しながら混ぜているのに近い感じだよ。ただし、この場合、大切なのは、冷やしながらって所。だから密封できる容器に入れて、その周りを氷で冷やして回転させ続けるなんて真似をしたの。まあ、冷やして回せば良いだけだから専用の道具を作って、冷やすボールに入れた容器を回転させ続けるって言うのもありなんだけど、いまは、無いからね」
あちきの説明は、しながら他の人たちにもアイスを勧める。
「そんな訳で味の調整しながら再挑戦したいけどお願い出来る?」
「またやるのですか?」
テーリーさんが嫌そうな顔をするので素直に尋ねる。
「疲れているんだったらあちきが代わるけど?」
「……私がやります」
諦めた顔でテーリーさんが応じる。
その後、フッジイさんが分量や配合物の追加をしながら何度かやった。
因みに流石に数回目でテーリーさんがリタイヤしたから、その後は、厨房の人たちが転がして冷やした。
そのやり方を見てテーリーさんとムサッシさんが責める様な視線を向けて来たのであちきが言う。
「あちきとしては、ちょっとした遊びもかねるつもりだったんだよ」
「カーレー様が娯楽のつもりでも、傍から見たら雑用ですのでやらせられませんでした!」
テーリーさんの突っ込みに溜息を吐くあちき。
「面倒です」
「偉い人間も大変だな」
ムサッシさんの言葉にあちきが頷く。
そんなこんなでアイスクリームを堪能した。
数日後の夕食。
まだまだ暑い夕食の席にアイスクリームが出された。
「氷菓子とは、違う様だが、なんなのだ?」
イーラー叔父さんが配膳係に尋ねた。
「カーレー様から教わりました『アイスクリーム』というデザートです」
その一言に視線が集まってくる。
「カーレー?」
ターレーお姉ちゃんの視線が怖い。
「ええっと何かいけない事した?」
「何度も言うけど、異国の知識を不用意に開示しないで!」
ターレーお姉ちゃんの言葉にあちきは、気楽に応える。
「って単なるデザート、大した事じゃないよ」
「そんな訳があるか、これだけのデザートは、十分に秘匿に値する。リュパンに城外への流出しない様に伝えておくのだ」
イーラー叔父さんの言葉に配膳の人たちが慌てて走っていく。
この後の説教を覚悟しながらもあちきは、フッジイの自信作の夏果実果汁のアイスクリームを口にするのであった。
重い話が多かったので、今回は、異世界移住物ぽく、アイスクリームを作りました。
次回は、アイスクリームを作る魔法具作成になります




