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落ち目領地とハーフな双子  作者: 鈴神楽
一年目 異世界生活に慣れよう!
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042 敵で無い反領主派と宿敵な前領主派

シールーとキールーの会話だけのです

「シールー、この情報の裏付けを行え」

 イーラー様からの言葉に従い、イーラー様の側近の文官である私は、ターレー様から送られてきた解体に参加したカイキ連合の人間のリストを受け取る。

「了解しました」

 退室した後、問題のリストの対処に双子のキールーに声を掛ける。

「このリストの裏付けだが、町民を使った方が確実だな」

「そうですね。しかし、単なるバカンスの予定だった筈が、また仕事を増やす事になるのですね」

 キールーが苦笑する。

「しかたあるまい。それは、そうと例の件は、どうなっている」

 私の問い掛けにキールーの機嫌が一気に悪くなるのが解った。

「これ以上なく順調です」

 とてもそうとは、思えない口調だが、順調なのだろう。

 例の件、カーレー様とサーレー様を排除しようとする勢力の洗い出しなのだから。

 キールーは、リストを取り出して忌々しげに告げる。

「予測は、していたが、本当に敵は、反領主派では、無かった」

「やはりか……」

 そう応じる私の口調も苦いものがあった。

 このソーバトにも領主一族に反抗の意思を持つ貴族が居る。

 他領からの影響の強い領主や、以前の領主に冷遇された貴族等々、多くは、無いが確かに存在した。

 だが、今回、サーレー様の故意に流した外国の間諜疑惑に飛びついてきたのは、そんな反領主派の貴族では、無かった。

「前領主派の連中は、本当に目障りだ」

 キールーが吐き捨てる様に口にした。

 前領主派、それが私達の敵である。

 領内、最有力派閥、それが前領主派である。

 この派閥は、一見すると現領主であるウーラー様に従順である様に行動をするが、その実は、既得権を振りかざし、領内の改革に反発する面倒な連中だ。

「元々、ターレー様ですら排他的行動をとっていた連中だ、ある程度は、予測していたが、ここまでとは……」

 キールーが裏で操作するカーレー様とサーレー様の間諜疑惑追及活動に前領主派の大多数が賛同していた。

 腐った林檎を見るような眼差しでリストを見ながらキールーが口にする。

「一応に綺麗事を口にするが、その大半が自分達の既得権を確保の為の詭弁だ」

「この者達にとっては、ソーバトの国内での地位向上より自分達の懐が潤う事が大切なのだろうな」

 私は、自分で口にしながら到底理解できない考え方を理由にあげた。

「馬鹿げた考えだ。国内での地位が落ちる事は、即ちソーバトの力が失われる。その中でどうしたいのだ!」

 声を荒げるキールーも理解しているだろう答えを私があげる。

「反領主派の排除、それで生まれた利益を自分達が得るという虫の良い考えだろうな」

 高笑いを上げるキールー。

「なんとも愉快な連中だ。ろくにソーバトに対して貢献もしていない癖に利益だけを得ようとしているだからな」

 私は、その笑い声が静まるのをまってから確認する。

「念書は、確保しているのか」

 ギラついた目でキールーが頷く。

「当然だ。これでこの者達が領主一族に対して明確な反意を持つ事が証明出来る」

「ようやくだな」

 私のその言葉にキールーも頷く。

「ようやくだ」

 私達がイーラー様に仕え、領内の政治に関わる様になってからというもの、この前領主派、当初は、まだ現領主派だったこの者達との対立は、大きかった。

 何が厄介といえば、前領主の容認だった。

 それを錦の旗として、前領主派の貴族は、ウーラー様にも自分達の要求を突きつけてくる。

 それによって潰されたイーラー様の改善案がどれ程あった事か。

 私やキールーにとっては、前領主派の貴族は、無益で有害な存在でしか無かった。

 それでも大多数派であり、領地運営で無視できない存在。

 前領主の意思の代弁という詭弁を使って今までどれだけの無益な行為を繰り返してきたか、それを考えるだけで私達の腸が煮えくり返る程だ。

「問題は、今回の糾弾で前領主派の貴族が開き直る事だ」

 私の言葉にキールーが満面の笑みを浮かべる。

「そうしたらそれまでですよ。その者達を切るだけ」

 その言葉には、私も多少の緊張をした。

「大事になるな」

 キールーが真剣な顔で続ける。

「しかし、それが必要な事だって理解しているだろう?」

 私は、強く頷く。

「ソーバトには、茎をしゃぶるだけの害虫を放置する余裕は、既に無いのだから」

 領地経営に関わっていれば否応にも理解できるのだ、このソーバトが緩慢な死に向かって落ちている事を。

 ヌノーからの侵攻が無いのが表面的な原因だが、本質は、実は、全く違って居た。

 魔法王国ミハーエにおいて重要な魔法研究の遅れが致命的な程に発生しているのだ。

 打開策として予算確保に動いていたがその光明が見えていなかった時は、自分の死刑時刻の砂時計がゆっくり落ちているそんな気分にもなったものだ。

 それがカーレー様、サーレー様の帰還により、一変した。

 予算の目処がつき、必要な魔帯輝の確保も可能になった。

 遅れを取り戻す準備が整いつつある。

 ここでそれを妨害する者達は、排除しなければいけない。

「決行は、紅の淡。領主による、新たな魔法研究に関する声明が行われる。その場で今回の件を一気に片付ける手筈になっている」

 キールーの告げた日程に苦笑する私。

「それは、また大変なスケジュールだ。しかし、やらねばならないのだな」

「当然だ、事が終わるまでお互い、まともに眠れは、しないだろうな」

 キールーの自傷気味の発言に私は、溜息を吐く。

「自分の無力さを嫉みながらベッドに入っていた頃が懐かしいな」

「安心しろ、私は、自分の部屋のベッド等、掃除すらさせてない」

 キールーの言葉に私は、遠い目をする。

「そうだな、無駄に毎日シーツを取り替えるのも無駄だな」

 そんな他愛もない事を話しながら私達は、このソーバトの運命を左右する為の準備に追われる事になるのであった。

ソーバトの害悪、前領主派に対するシールーとキールーの気持ちを吐露した回でした。

この決着は、早々につけるつもりです。

次回は、今回話題に上がった声明をウーラーが行います

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