表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
落ち目領地とハーフな双子  作者: 鈴神楽
一年目 異世界生活に慣れよう!
3/553

003 美童女ウエイトレスと鉄鞭

マリュサから見た謎の双子の話

 あたしの名前は、マリュサ。

 年齢、女性に年齢を聞くのは、失礼って奴だよ。

 あたしの宿に不思議な客が来た。

 年頃は、まだ洗礼(十二歳)前とも思える双子の少女。

 初対面というのは、間違いない。

 しかし、不思議と以前にあった事がある雰囲気を持った双子だった。

 カレと言う名前の姉が前面に出ているが妹のサレは、決して交渉を傍観している訳では、なかった。

 逆に、交渉事を取り仕切っているのは、妹の方だ。

 二人の目的は、マーネー様との対面とメッセージを渡す事。

 目的があまり見えない。

 マーネー様は、夫であるアーラー様が失踪してから表舞台には、あまり出ることは、ないらしい。

 しかし、こっちの業界では、そこそこ名を聞く。

 失踪から十数年過ぎた今でもマーネー様は、アーラー様を捜索しているからだ。

 そういう意味では、この二人がその捜索の何らかの情報を持ってきたと考えられない事もない。

 ただ、そうするとマーネー様とのコネがない事が合点行かない。

 それに会話の途中であったが、数年前の領主の世代交代も知らなかった。

 これは、この領地の人間ならまずありえないだろう。

 服装からみて、遠い異国から来たというのは、信憑性が高い。

 何かと謎が多い二人だが、現在の所、かなり良い稼ぎをしている。

 珍しいウエイトレスとして酒場の客入りが良い上、客単価も良いのだ。

 下働きの経験があるのだろう、給仕の仕事も見事にこなしている。

 何より、この二人は、かなりの美少女だ。

 髪や肌の手入れも確りされているのが更に容姿を際立たせる。

 下働きをした事があるという予測とは、異なるが貴族、それも上位貴族の特徴も持ち合わせている。

 見れば見るほど謎が深まる不思議な双子だ。

 そんな二人の働きもあり、盛況のままピークが過ぎた頃、店に残ったの中で一部の余所者の会話に二人の神経が向けられたのに気付いた。

 内容は、明後日から行われる武闘大会についてだ。

 定期的に侵攻してくるヌノー帝国との国境に面したソーバトとしては、優秀な兵士は、幾らでも欲しい。

 その為に、一年に数度、武闘大会を開いて兵力の増強に繋げている。

 話を聞き終えた後、カレがあたしに近づいて来て尋ねて来た。

「武闘大会、魔法無し部門で優勝すれば、マーネー様と会うチャンスありますかね?」

「魔法無し部門でも優勝すれば可能性があるけど、残念だけどあそこに居る連中では、無理よ」

 あたしの答えにカレが頷く。

「解ってます。だから駄目元であちきがでます」

「貴女が? 武闘大会にでるの?」

 驚きの所為か、声が少し大きくなって居た。

「ガキが武道大会にでるだと! 舐めてるんじゃない!」

 そういって詰め寄ってくるのは、何度も武道大会に出ては、予選落ちしている常連の男だった。

「こっちにも事情がありまして。でもそれでは、納得しませんよね。だから実力を試してみませんか?」

 カレの言葉に男が拳を見せつけ怒鳴る。

「良いだろう。世の中を舐めきったガキに現実って奴を教えてやるぜ!」

「おいおい、ガキ相手になにやってるんだ!」

「大人げないぞ!」

 その男は、ガタイも大きく、田舎町では、喧嘩番町をしていた事もあり戦いなれている。

 そこらへんのヘボ兵士よりは、強いはずだ。

 そんな男が振り下ろした腕を引くと同時に肩から体当たりをして男を反転させて背中から床に叩き落すカレ。

 それに囃し立てていたギャラリーも声を無くす中、カレが告げる。

「準備運度は、ここまでにして武闘大会みたいに武器を持ってやろう」

 そういってカレは、腰に巻いたバックから鉄の武器を取り出す。

 それは、少し通常のそれとは、異なるが鉄鞭だった。

「良いだろう!」

 男は、武闘大会の為に準備した斧を構え、力任せに振る。

 カレは、それを避けると同時に鉄鞭を振るって斧の柄を強打する。

 その衝撃が持ち手に伝わり緩んだ所を鉄鞭を引き、斧を奪い取る。

 重量がある斧は、流石に直ぐに床に落ちるが、それに向かって手を伸ばす男の目前を鉄鞭が通り過ぎる。

「まだやりますか?」

 言葉を無く首を横に振り、男は、支払いを済ませると、斧すら忘れて酒場を後にする。

 もう二度と武闘大会に出ようとは、思わないだろう。

 ギャラリー、店の客達は、信じられないって顔をしているが最初の攻防を見ていたあたしとしては、極々当然の結果だった。

 男は、喧嘩慣れこそしているが正規の訓練は、受けていない。

 それに引き換え、カレは、間違いなく七獣武技シチジュウブギの指導を受けている。

 七獣武技は、ディーラ全域で使われるその武術であり、実戦向きでもある。

 例え子供であろうとそれを学んだ人間とそうで無い人間と戦えば、勝つのは、学んだ人間だ。

 まあ、これでまた一つ謎が増えた。

「具体的な参加条件とルールを教えて下さい」

 サレに尋ねてきた。

「参加には、参加費が必要で、大銀貨一枚。参加費を払った選手が予選を争い。残った八名が領主の一族が天覧する会場で戦う。細かいルールは、……」

 こうしてあたしは、この謎の双子の武闘大会参加に関わることになるのであった。

少し短めですが、マリュサ視点のお話でした。

マリュサが見覚えある理由は、その内出てくる予定です。

次回は、カーレーの武闘大会のお話です。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ