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落ち目領地とハーフな双子  作者: 鈴神楽
一年目 異世界生活に慣れよう!
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028 上から視線の領地と企みが多い食事会

イーラー様は、色々と計画しています

「イーラー様、これが今日までの提案書です」

 シールーが新たな書類の束を置いた。

 私は、それを一瞥し、その隣の未処理の書類の山と見比べる。

「これで全部なのだな」

「……はい、これで全部です」

 言い辛そうにそう答えるシールー。

「解った。魔法研究補助の通達は、継続して行ってくれ」

「了解しました」

 退室していくシールー。

 私は、今置かれたばかりの書類、新たな魔法研究の提案書の少なさに落胆を覚えていた。

「ようやく予算を捻出できたというのに、その研究を行う者が絶対数足りていないのが問題だな」

 問題点を再確認しながら、その予算を捻出する為の書類である未処理の書類の山を見る。

「マーグナの分割金額、予想よりも多い。マーグナもこちらとそう変わらない状況の筈で、金額の増額は……」

 相手の思考をよむ。

「気付いた可能性があるな。ただ、表立った行動をとらない以上、こちらにそれを知らす事も、周囲に知らせる事もしないだろう。スケジュールに変更は、いらないな」

 マーグナへの過剰とも思える魔帯輝の譲渡で、こちらの上層部が甘いと見て、魔帯輝の譲渡を要望してくる領地がいくつか来ている。

 その中にターレナからの譲渡依頼がある事に苦笑が出てしまう。

「まさか、ターレナからまで依頼が来るとは、流石に予想外だったな」

 ターレナは、上位領地の一つであり、ソーバトとは、隣接は、している。

 しかしながら決して仲が良いとは、言えない。

 はっきり言えば仲が悪いのだ。

 魔法研究も盛んで、中央にも近いターレナでは、あからさまにソーバトを格下として軽く見ているのが解る対応をとってくるのだ。

 そんな状況ゆえに今までは、魔帯輝の譲渡依頼など無かった。

「それにしても本当に譲渡依頼をしているつもりがあるのか?」

 そう疑問に思える程の上から視線の依頼文であった。

 具体的に言えば、他の依頼書には、目的が明記され、ご助力を願う旨と、その対価を誠意の形として書かれ ているのに対して、ターレナのそれは、まるで違う。

「『ターレナでは、ミハーエの更なる繁栄の為に重要な研究を行っている。その研究の助力をソーバトに任せても良いと考えている。研究が成功した暁には、ソーバトにもその栄誉の一部が与えられるだろう』、これを書いた人間は、まともな思考能力をもっているのだろうか?」

 ターレナは、協力させてやるから魔帯輝を遣せっていっているのだ。

 まともな対価等さえ提示されないこんな要求に応える意味など全く無いのだが、一応は、上位領地からの要請だ無視するわけには、いかない。

「シールーに指示して、他の領地への供給分から余った魔帯輝を渡してお茶を濁すのがベストだな」

 私は、その他の領地からの要請を優先順位をつけていく。

 この優先順位というのが実は、かなり難しい判断が必要な案件だ。

 カーレーとサーレーという規格外の存在があるソーバトは、必要な魔帯輝を潤滑に供給出来ているが、他の領地は、違う。

 魔法研究や領地の開発に魔帯輝は、幾らあっても足らないというのが本来の領地運営なのだ。

 ターレナみたいな論外の要求は、除外するとしても、対価としての金銭のみならず、領地同士の関係強化、ことの緊急性などを考慮する必要があり、とうてい他人に任せられる仕事では、なく、判断に必要な資料も多岐に渡る。

 通常業務をおざなり出来る訳もなく、どうしても睡眠時間を削る嵌めになってしまう。

 そこまでして予算を捻出しているのだから、もっとまともな提案書があってもしかるべきだろうと思うのだが、現在の所、成果が出る見込みがある研究の多くがマーネー様関係が殆どというのがソーバトの現状なのだ。

「やはり、魔法研究施設の大幅な梃入れが必要だな」

 私は、手元の資料から魔法研究に関わる施設を広げた。

 広げた資料がテーブル内で収まるという事実に落胆すら覚える。

「こんな状況だから、マーネー様が研究の大半をバーミンで行われている現状になるのだ。当座予算は、施設充実に回すのが賢明かもしれぬな」

 具体的な予算配分を検討に入る。

「新規に施設を開設したとしても十分な人員を配置出来ない。ここは、既存の施設への人員の追加と実験用の魔帯輝の増加と資材の投入にするしかないな」

 そこで苦笑する。

「本来なら、こういった思案の時に一番の懸案事項である魔帯輝の確保を悩まなくてもいいと言うのが救いだな。空の魔帯輝さえ揃えれば良いのだから。問題は、やはり人員の補充だ」

 人的資材の欠如、ソーバトにとって一番顕著にでるのが、魔法研究部門だ。

 兵士の育成や補充に対しては、武闘大会等を執り行い、充実している反面、魔法研究部門に関しても人員確保が困難を極めている。

「自国領土の貴族で賄えればなんの問題も無いのだが……」

 それが出来ればこんな事で頭を悩ます必要がないのだろう。

「戦果重視の政策をとっていた所為で、領内の貴族の大半が武闘派だ」

 先代の時には、公言こそされなかったが、武闘派以外の貴族には、冷遇されていたのは、確かなのだから仕方ない事だとしかいえないのが実情だ。

「かといって他領地が有能な人員を遣す理由など……」

 そこで思考が止まった。

 先ほどの優先順位を確認する。

「上位領地なら人材の派遣を要求でも応える事が可能かもしれないな」

 シミュレーションを繰り返す。

「提示された半数と引き換えに人材を派遣してもらい、その成果で残りを譲渡という形にすれば真っ当な人員補充が可能かもしれない」

 口でいうのは、簡単だが、そう単純な話しでは、ない。

 当然リスクも多い。

「相手が応じるかどうかも問題だが、こちらの研究が相手にも漏れる可能性がどうしてもでてしまう。いや、ここは、思い切った方向転換をすべきだろう」

 私は、キールーを呼び出して、即座に命令をする。

「他領の研究に詳しい貴族との食事会を組め」

「詳細な条件がありますでしょうか?」

 キールーの問い掛けに私は、即答する。

「規模は、大きく、一度に多くの貴族を呼べる様にしろ。そこで、他領との共同研究の話を提示する」

「共同研究ですか?」

 眉を顰めるキールーに私が告げる。

「そうだ。ソーバト主体の共同研究だ」

「なるほど、確保した予算をそこに投入するのですね?」

 キールーも気付いた様子だ。

「研究予算不足などどこの領地でも起こっている事だ。予算の大半をこっちが持つといえば応じる相手も多かろう」

 苦笑するキールー。

「向こうとしては、金を食う、魔帯輝が原価のみなんて現実を知らず、得をしたと思わせるのですね?」

「研究所の人員の育成にもなるだろうから一石二鳥だ。その為にも多くの情報が必要だからな、競わせる為にも参加者は、多い方が良い」

 私の言葉にキールーが頭を下げる。

「了解いたしました。大々的な食事会の準備を。それで個室は、いくつ用意しておきますか」

「一つで良い。その代わり、終了後の待機室は、広めにするのだぞ」

 一人ずつ、情報を取ることでより多くの情報を得る、その為にも待機室で疑心暗鬼に陥ってもらおう。

 退室するキールーを見送った後、私が多少興奮している自分に気付いた。

「少し、興奮しすぎたか。しかし、これが上手くいけば……」

 そういって再び資料を見て気付いてしまう。

「この案を実行するという事は、先ほどまでしていた優先順位リストは、全て見直しになるな」

 無駄骨という言葉が脳裏を過ぎるが首を横に振る。

「大丈夫だ、この検討にも使え、新しいリスト作成の時間短縮になるだろう」

 そう自分に言い聞かせるのであった。

ソーバトで一番働いているのは、やっぱりこの人だと思う。

そんな訳で短いですが他領との折衝や自領地貴族とのやりとりと大変なイーラー様でした。

次回は、カーレーが我侭を言います

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