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落ち目領地とハーフな双子  作者: 鈴神楽
一年目 異世界生活に慣れよう!
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015 早すぎる早朝鍛錬と女官からの奉仕

カーレーは、本気に行動派です

 カーレー=ソーバトの朝は、遅いらしい。

 でもあちきは、目を覚ましてしまった。

 あちきが起きたことでサーレーも目を覚ますが直ぐに背中を向ける。

「おやすみ」

 毎朝の光景だ。

 あちきは、周囲の人間を起こさないように忍び足で移動する。

 少し進んだ所で運動できる中庭を発見。

 ただし、あちきが居るのは、三階なのでここから階段を探したりするのは、ちょっと面倒。

 そんな訳で窓から飛び降りる事にした。

 勢いをつけないように窓の所にぶら下がるようにしてから手を放す。

 ちょっとした距離の差だけど、漫画とかである様に飛び出すのに比べたら純粋な重力の加速しか起こらない上、慣性も発生しないので受身が取りやすい。

 無事中庭に着地した所で体をほぐし始めながら空を見る。

 まだやや薄暗いので五時前だろう。

 それでも駄目親父に聞いた話では、農家の人達は、動き出しているらしい。

 こっちの時間は、二十四時間を六分割している。

 それを四時間ずつ、例のごとく新から始まる神様の名前で呼ぶらしい。

 始まりは、夏の日が早いときに農家の人達が動き始める午前四時から数える。

 詰まり今は、新の刻って事になる。

 しかし、この時刻にお城で動いている人は、皆無らしい。

 下働きの人だってまだ目を覚ましていない。

 下町に居たときもそうだったが、普通の人達は、その日の最初の鐘、包の刻を知らす鐘を合図に仕事を始めるのが普通。

 準備が終わった仕事始めが八時だと思うと早く感じるけど、電気が無く仕事終わりも早いディーラーの事情を考えればそう早い時間でもないだろう。

 暫くそうやって体をほぐしていると、誰かやって来た。

 少し警戒していたが、直ぐに相手が誰だか解った。

「カレじゃないか、君も無事城勤めに就いただな」

 武闘大会の決勝で戦ったムサッシさんだ。

「ムサッシさん、おひさ、随分と早いお目覚めだね」

 苦笑するムサッシ。

「君も同じだろう。新人としては、ゆっくりと早朝鍛錬をする訳にもいかないと言うわけだ」

 そういってムサッシさんも体を動かし始める。

「やっぱり生活習慣が変わっても基礎鍛錬は、外せないからね」

 あちきの方もストレッチから簡単な技の反復に切り替える。

「そうだな、一日休めば元に戻すまで三日は、かかるからな」

 素振りを始めるムサッシさん。

 そうやってお互いに基礎鍛錬がすんだ所であちきは、思いつく。

「ねえ、無手も普通に出来るよね?」

「当然だ。七獣武技の使い手たるもの、己の得意武器以外が使えなくてどうする。君だって刀以外に鉄鞭を使っていただろう」

 あちきが頷く。

「あっちは、常に持ち歩ける様にしてたから護身に有利だったんだよ。それじゃあ、ちょっとやらない?」

「そうだな、偶には、素手の模擬戦もやらねば感覚が鈍るからな」

 ムサッシさんも乗り気になってお互いに向かい合い、礼の後に拳を交える。

 無論、本気の勝負じゃなく、直撃寸前で止める形だが、ムサッシさんは、剣同様、こっちもかなりの使い手だった。

 スピード重視の狼技がメインなのは、予測通りだったけど、しっかり猿技エンギとかも混ぜてくる。

「君は、全獣技を習っていたんだな」

 意外そうな顔をするムサッシにあちきが頷く。

「そういうムサッシさんだってそうでしょ?」

 ムサッシさんも頷く。

「拙者は、ナーヤ山で鍛えていたからな。しかし、ナーヤ山以外では、指導が出来るほど、複数獣技を使える者は、そうそう居ないと聞いているが」

「あちきの師匠、駄目親父は、その例外の一人だったんだよ」

 あちきの答えにムサッシが驚く。

「ほう、全獣技使いか、一度手合わせしたいものだ」

「駄目駄目、死ぬ気じゃないといけない本当に遠い所から来たからね」

 あちきの説明にムサッシが残念そうにする。

「しかたない。まあ、この国には、まだまだ拙者より優れた使い手が多いからな」

「だね。少なくとも騎士団長のカーローさんは、駄目親父に近い実力者だしね」

 あちきの言葉にムサッシが頷く。

「拙者も会ったのは、武闘大会のあの場だけだが、気の配り方や立ち姿だけで達人なのは、解った。あの領域まで行くのにどれだけの鍛錬が必要か。武の道は、長くて険しいな」

 あちきは、強く同意する。

 そんなこんなしていると何かお城の中が騒がしくなってきた。

 そして、近くを通りかかっていた兵士さんがこっちを向く。

「おい、新人緊急の召集だ」

「何があったのですか!」

 ムサッシさんが問い返すと兵士さんが複雑そうな顔をする。

「それがよく解らないが、高い地位の貴族の娘が行方不明らしい。洗礼前の娘らしいな」

 そんな兵士さんの目があちきに止まる。

「君は?」

「この子は、拙者が武闘大会で決勝を戦った相手だ。確かマーネー様の所に仕官したと聞いている」

 ムサッシがそう答えるけどあちきは、なんとなくこの騒ぎの原因がなんなのか解った。

「えーとそれってどのくらい前からですか?」

「新の刻の中頃だと思ったが」

 あちきは、軽く太陽の位置を見て時間を推測する。

 おおよそ七時前後。

 新の刻の中頃って言うと確か六時の筈だから、一時間近く騒ぎに成っているって事だ。

 もしかして怒られるかも。

 どうやって誤魔化そうかと考えているとそこに調度来て欲しくない人が見えてきた。

「お前達、何をしている早く捜索をしないか!」

「「はい」」

 兵士さんとムサッシさんがそう返事をする中、あちきは、ムサッシさんの背中に隠れる。

 さっきの声の主に気付かれる訳には、いかないから。

「何しているんだ、君も捜索に参加しないと」

 ムサッシの言葉にあちきは、仕草で黙る様にいうが、遅かった。

 さっきの声の主、オーラーさんの護衛騎士、自決騒動を起こす責任感の塊、コーローさんがあちきに気付いてしまう。

「カーレー様、こんな所にいらっしゃったんですか!」

 やっぱりあちきを探していたのか。

「側近の物が様子を見る為にお部屋に入らせて頂いたのですが、カーレー様のお姿がない事に気付き、慌てて捜索をしていたのです!」

 コーローさんの説明にあちきが確認する。

「えーとサーレーには、何も聞かなかったの?」

「サーレー様は、まだ御就寝でしたので起こしませんでした」

 コーローさんが即答する中、あちきがため息混じりに言う。

「サーレーに聞けばあちきが朝の鍛錬に行っているって解ったから、ここまで騒ぎにならないですんだんじゃないの?」

「そうだとしても、領主一族の人間を煩わせるより、我々、下の者が動いた方が宜しいのです」

 領主一族が舐められてる中、こういった実直な臣下は、大切なのは、解るが、昨日の事といい、コーローさんは、生真面目過ぎる気がする。

「そう、とにかくあちきは、朝の鍛錬をしていただけですから捜索の方は、中止させてあげてください」

「解りました。しかし、朝の鍛錬の大切さは、ご理解していますが、お一人で行うのは、お止めください」

 コーローさんの説教は、結構長かった。

 その間も捜索は、続いていたらしい。

 そして、傍に居たムサッシさん達は、いきなりの展開についていけないようで固まっていたが、それがムサッシさんの運命を大きく変えることになる。

 説教の後半、明日以降の為にとどんな鍛錬を成されていたのですか尋ねられたので、素直に答えた。

「ムサッシ、付いて来てもらう」

 ムサッシさんは、コーローさんに連行されて行く事になった。

 部屋に戻るとようやく目を覚ましただろうサーレーが言って来る。

「おはよう、今日は、随分と長かったね」

「途中、説教されたんだよ。領主一族って朝の鍛錬一つするのも大変だよ」

 そんな愚痴を漏らしていると女官さん達がやってくる。

「新の神の目覚めの祝福あらんことを」

 高貴な人達の朝の挨拶。

「「新の神の目覚めの祝福あらんことを」」

 あちき達がそう返すと、女官さん達は、お湯を持ってくる。

「体を清めさせて頂きます」

 あちきは、固まった。

「諦めた方が良いよ、貴族ってこういうものだから」

 サーレーは、達観した感じでされるがままに服を脱がされて、体を拭ってもらい始める。

「えーと、自分でするって訳には、いかないかな?」

 あちきの言葉に女官さんは、笑みを浮かべて答える。

「いきません」

 有無を言わせない言葉に従うしか無かった。

 全身を拭われた後、ドレスの様な服を着せられてしまう。

「この後の予定は、どうなってるの?」

 あちきが尋ねると女官さんが答える。

「包の刻の中頃から御朝食、御朝食終了後、礼儀作法の時間、刃の頃の始まりから御昼食。御昼食後は、ソーバトについての勉学の時間と聞いております」

 やっぱり今日もありますかマナーの勉強、礼儀作法が。

 軽く憂鬱になるが避ける訳には、行かないって思っているとサーレーが考え事をしていた。

「どうしたの?」

「髪の毛は、夜しか洗わないのですか? 洗うときは、どうしていますか?」

「はい。夜の湯浴みの際にあらいます。洗い方は、私達が手で解きほぐすように洗います」

 サーレーの質問に女官さんが即答した内容にあちきは、何を疑問に思ってるのか気付く。

 女官さん達が一時退室した後、あちきが荷物をあさる。

「さてシャンプーとリンスは、当座の分は、あるけどどうする?」

 サーレーは、ノートを開くと増設HDハードディスクの稼動音が聞こえる。

「基本的な製造方法は、解ります。変わりになる原料を探して作るのは、簡単ですけど、これは、意外な収入のチャンスかもしれません」

「だね、さてどこら辺から手をつける?」

 あちきの問い掛けにサーレーが悩む。

「ターゲットを何処に絞るかで変わります。絶対数多い庶民をターゲットにするならシャンプーやリンスより、洗剤の方を優先した方が良いですけど、金を持っている貴族相手なら美容関係ですね。イーラー叔父さんと相談ですが魔法研究以外の商売での収入増加。多分、ソーバトにとっては、必須になる事です」

 こうしてあちき達は、行動指針を見つけたのであった。

朝から騒ぎを起こしました。

んで、本好きの下剋上の大きなネタの一つ、シャンプー。

あちきとしては、同じネタをメインに使うのは、なんなんで、もう一つの洗剤の方をメインに進ませようと思っています。

次回は、苦労人文官、シールーさんの睡眠時間は、あるのか?

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