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落ち目領地とハーフな双子  作者: 鈴神楽
一年目 異世界生活に慣れよう!
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001 駄目親父と女子小学生なツイン

プロローグ的な日本的世界でのお話

 あちきの名前は、宝野タカラノ夏阿零カアレイ

 小学五年生だ。

 家族は、父親と双子の妹の早阿零サアレイの三人。

 母親は、小学校あがった直ぐ後に病気で亡くなった。

 何でも母親の家系は、早死にする人間が多く、身内は、居ない。

 そして残った父親なのだが、はっきいりいって屑である。

 仕事をしないのだ。

 それでどうやって暮らしているかというと、外人らしい外見だけは、飛びぬけて良いので女性に貢がせている。

 救いと言えるかどうかは、解らないが、相手には、嘘偽りなく、生活費をくれといっている。

 実際何度か見たことがある。

 何せ、娘が居ることすら隠さないのだから良い根性をしている。

 娘ごと女性の家に居候したりと本気で性根が腐った父親だ。

 今は、女性から貢がせたお金でギャンブルをしている。

 現在、ギャンブルで大勝した時のお金で借りているアパートで暮らしているあちき達としては、学校から帰宅後何をするかは、確定している。

「カーレー、ルートが決まった」

 そういってノートパソコンで調べた安売り情報を元にしたルートを携帯で送信してくる。

「了解。健闘を祈る」

 あちき達は、頷きあい、父親が生活費としておいていったお金を握り締めて家を出る。

 ギャンブルなんて時の運、昨日は、偶々大勝したから生活費を出してきたけど、大負けして一文無しになってくることの方が多い。

 そんな駄目親父を頼るなど絶対に出来ないあちき達は、大抵の事は、自分でやる。

 ある程度お金がある今、やるべきことは、一つ。

 食料と生活必需品の確保である。

 少ないお金でどれだけ多くの食材をゲットし、消耗品を確保するかが冗談抜きで生死を分ける。

 安定収入がある一般家庭が羨ましい。



 二人で買出しを終えて帰ってみると、家では、駄目親父が呑気にテレビを見ていた。

「おかえり、食事頼むな!」

 こっちを向こうともせずそう言い放つ駄目親父にあちきが近づき確認する。

「それでお金は、残ってるの?」

「全部スッた」

 一切、悪びれる事無く平然と言い放つ駄目親父に怒りがこみ上げて来るあちきにサーレー(早阿零の愛称)が言う。

「言うだけ無駄。三つ子の魂百までだよ」

 冷め切った顔をして冷蔵庫に食材を入れるサーレー。

 解っている、いくら言っても無駄だって事は、それでも言わずには、居られない。

「駄目親父、少しは、まともに働いて金を稼ごうとしろ!」

 あちきのクレームに駄目親父は、遠い目をする。

「残念だが、領主の家産まれの俺には、労働と言う物は、出来ないんだ」

 また始まった駄目親父の意味不明な言い訳が。

 何でもこの駄目親父は、遠い異国、それも魔法王国にあるソーバトという領地の領主の次男坊だったが、本人は、魔力が無く、居場所が無かったのでこの国に逃避して来たらしい。

 どこのラノベの設定だと何度も突っ込んだが、駄目親父は、本当だといって曲げないのだ。

「はいはい。月末までには、お金を用意してね。携帯や電気が止まったら困るんだからね!」

「おう、任せておけ」

 あちきの言葉に自称魔法の国の領主の次男坊は、器用に携帯を弄り女性にお金をせびるメールを送っている。

 子供の情操教育上絶対いけない駄目親父が目の前に居て、それが自分の父親だという事実に現実の非情さを感じるのであった。



 安売り肉と豆腐で作ったハンバーグを食べながら駄目親父が言う。

「ところでお前達、体は、平気か?」

 駄目親父は、何かのタイミングでそう聞いてくる。

 母親の家系の事を考えれば心配してもおかしくない事だが、そういう時の駄目親父は、少しだけ父親らしく見える。

「あちきは、平気だよ」

「僕もなんともな……」

 返事を途中で止めたサーレーにあちきと駄目親父の視線が延びる。

 その視線の中、サーレーが倒れた。

「サーレー!」

 慌てて近づき確認が、サーレーの意識が無く、息も荒い。

 駄目親父も真剣な顔をしてサーレーの様子を確認する。

「救急車を呼ばないと!」

 あちきは、慌てて携帯で電話しようとするが駄目親父は、止めた。

「止めろ、お金の無駄だ!」

「お金くらいヘソクリでなんとかするもん」

 あちきは、涙目になりながらも救急車を呼ぼうするが駄目親父は、強引に止めた。

「止めないで!」

 睨むあちきに駄目親父は、悲しそうな顔で告げる。

「これは、お前達の母親と同じ症状なんだ」

 あちきの脳裏に、どんどん衰弱し、そして息を引き取った母親が思い出された。

「で、でも昔は、駄目だったとしても今だったら治るかもしれないじゃん!」

 あちきの精一杯の反論に駄目親父が首を横に振る。

「これは、普通の医学じゃどうにも成らない病気なんだよ」

「普通の医学じゃどうにもならないってどういう事だよ!」

 あちきの詰問を他所に駄目親父が自分の荷物の中から何か不思議な宝石を取り出すとサーレーに持たせた。

 するとサーレーの呼吸が落ち着き、そして暫くするとサーレーが目を覚ます。

「僕、倒れて居た。どうして治ったのか解らない」

 治った事実に疑問を持つサーレー。

「お父さん脅かさないでよ、治るんだったら治るって言ってよ!」

 あちきの文句に駄目親父が辛そうに答える。

「残りは、数個しか無いんだ」

 あちきは、駄目親父の言っている意味が理解できなかったがサーレーが自分が持たされていた宝石を見て言う。

「僕が治ったのは、この宝石のお陰で、それが後数個しかない為、こういう事が繰り返されていたら何れは、治せなくなるって事だよね?」

 駄目親父は、ゆっくりと頷く。

「えーとその宝石って物凄く高いの? それとも売ってる場所が遠いとか?」

 あちきが尋ねると駄目親父が遠い目をする。

「この宝石があるのは、俺の故郷なんだ。こっちの世界では、発生しないらしい」

「だったら、そこに行けば良いじゃん! どんな遠くてもあちきがとってくるよ!」

 あちきが身を乗り出すように告げると駄目親父が言う。

「この世界のどこにも無い、異世界なんだよ、普通の手段じゃ行くことなんて出来ない」

「じょ冗談は、止めてよ! 異世界なんて嘘でしょ!」

 あちきは、信じられなかったが、サーレーが頷く。

「それじゃあやっぱりお父さんは、異世界の人なんだ」

「何、納得してるのサーレー!」

 あちきの問いかけにサーレーが淡々と説明する。

「お父さんの話してくれた話は、話として矛盾が無く、とても作り話だとは、思えなかった。それで何処か実在する国かもって思って色々調べたけど、世界中、どこにもお父さんが生まれたって国、ミハーエなんて国は、存在しなかったんだよ。それに今まで不思議に思ったこと無い、お父さんや僕達の髪の色が普通の人のそれと違うって」

 そうなのだあちきやサーレー、駄目親父の髪の色は、黒っぽいが何処か輝く感じがするのだ。

「でもそれは、駄目親父が外人の所為だからとおもってたけど」

 あちきの答えにサーレーが首を横に振る。

「こんな髪の色、輝く様な髪の色の人種は、世界中探しても居なかったよ」

 サーレーの言葉は、理解できるがどうにも釈然としない中、サーレーが確認する。

「お父さんは、この病気がなんだか解るの?」

 駄目親父は、即答する。

「過剰魔力の暴走だ。お前達の母親も巫女の家系らしく、魔力を持っていた。魔力は、日々増幅していく。巫女が短命なのは、どうやってもこの世界では、使いきれない魔力が暴走して死ぬからだと聞いている。俺の居た世界では、これ、魔力を吸収して魔法を使う糧になる魔帯輝マタイキが存在していたから特殊な状況でなければ死ぬことは、無かった。俺は、こっちの世界に来ていた時に偶々持っていた魔帯輝で、お前達の母親の延命をした。それを恩に感じたお前達の爺さんがこっちでの戸籍とかをどうにかしてくれたんだよ」

「でもそれが残っていたんだったらお母さんが死ぬことは、無かったんじゃない?」

 あちきの疑問に駄目親父が苦笑する。

「魔帯輝は、そんなに数が無かったんだよ。お前達を生んだ後、あいつが言ったんだ。残りは、娘達の為にとっておいてくれってな」

 何時も笑顔で、元気に育ってねっと言っていた母親の顔がはっきりと浮かんだ。

「詰まり、僕の寿命もそれが残って居る間だけって事?」

 サーレーが何処か他人事の様に尋ねるのを聞いて現実に戻るあちき。

「そうだ、どうにかサーレーが助かる方法って無いの?」

「ない事は、無い」

 珍しくはぎりれの悪い答え方をする駄目親父にあちきが詰め寄る。

「あるんだったら言ってよ!」

「しかしな、その方法は、だな……」

 答えを濁す駄目親父だったが、サーレーが口にする。

「異世界、お父さんの生まれた世界に行く方法があるんですよね?」

 そうだった、駄目親父がこっちに来たんだから、あちき達がその世界に行く方法があっても何もおかしくない。

「サーレーを助けるためだったら異世界だろうがどこだろうが、行ってくるから教えて!」

 あちきの要求に駄目親父は、天を仰ぐ。

「行ったら戻って来れない。俺が使った方法は、片道切符で、一人一回だけって制限があるんだよ。そうじゃなければ俺がとっくの昔に魔帯輝を確保してるさ」

 想定外の方法だった。

「そんな片道切符だなんて、それじゃサーレーを助けられない……」

 あちきが困惑する中、サーレーが大きくため息を吐いて口にする。

「僕が自分でそっちの世界に行けば良いんです。そうすれば命が助かります」

「そんなの駄目! 二度と戻れなくなるんだよ!」

 反対するあちきを見つめてサーレーが答える。

「それでも死ぬよりは、ましです」

「それは、そうだけどサーレー一人を行かせるなんて……」

 サーレーと離れ離れになる、それが納得いかなかった。

 あちきが答えを出せずに居ると駄目親父が少し間が悪そうに言う。

「さっきからサーレーの事ばかり言っているが、お前も一緒だぞ」

「え、でもあちきは、平気だけど?」

 あちきが反論すると駄目親父が苦笑する。

「それは、お前が母親が魔帯輝に力を入れるのを見て自分もやるって我侭いってやってたからだろうな」

 そういえば、昔、母親があの宝石見たいのを手にして輝かせるのを見て自分もやるって言った事あったな。

「詰まり、あちきもこのままじゃ何れは、魔力暴走を起こす可能性があるって事だよね?」

 サーレーが頷き。

「だから二人でお父さんの生まれた世界に行きましょう」

 独りじゃない、サーレーと一緒だと考えたら、心強かった。

「本気で行く気があるなら俺は、止めない」

 駄目親父のその言葉にあちきは、気付く。

「でもそうなると駄目親父が独りで残る事になるじゃん。そんなの直ぐに死ぬに決まってる」

 あちきな確信を籠めた言葉に駄目親父は、苦笑する。

「安心しろ、お前達が居なくなったら女の所で全部やって貰うからよ」

「自分で何とかしようって気は、起こらないの?」

 この期に及んでのこの駄目親父ぷりに呆れるあちき。



 その後、あちき達は、異世界に行く準備をした。

 駄目親父から言葉をはじめとする様々な異世界の情報を聞き、暫く活動出来るような物資。

 なんと言っても移動と荷物運搬用のリアカー付き自転車、夏早号ナツハヤゴウを手に入れた。

 そして、駄目親父が使ったという、領主の家に代々伝わるといわれる神器、名百布ナオフを使い、新月の晩あちきとサーレーは、異世界、駄目親父の故郷、ディーラの地に旅立つのであった。

下手な誤魔化しが嫌いなのではっきり言えば、小説家になろうの本好きの下克上を読み、異世界に現代知識を入れ込むって設定で書きたくなって書いた話です。

ゴールデンウィークを使って設定を作りこんでのアップです。

次回辺りから異世界に行く予定。


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