プロローグ
闇に包まれた空間の中。
闇で出来た浅い海の上に少女が一人。
裏表の無いボールが闇に浮かんでいた。
それは鏡のように少女を映す。
『見つけた』
―――...という夢を見た。
暗い闇の夢を見た。
あの少女は一体誰なのだろうか。
少女というだけで、姿が思い出せない...
私の名前は
霊野原 実久。
そこらへんによくいる普通の女子高校生です。
女子高校生とはいえ、まだ入学したばかりですが...
普通科と情報コースでわかれているこの学校で、私は情報コースである。
情報コースはひと組しか無いため
三年間同じ仲間と一緒ということになるのだ。
「............はあ......」
一番最初に教室に着き、一番最初に溜息を吐く。
最近変な夢を見るようになってから溜息が止まらないのだ。
「......なんなんだろ...」
「なにがー?」
「!!?」
突然話しかけてきたのは同じ情報コースの浅野 一浪。
173cmというデカめの男である。
「浅野...! 突然話かけないでよ」
「ふっふっー、ってか薔薇っち来るのいつも早いよな」
「...なにその薔薇っちって」
「んー? だってほら、霊野原=れいのばら=ばら=薔薇っちじゃーん!」
「......意味不明」
私は浅野の頭についていける気がしない
そのまま浅野は自分の机へと向かう。
私の席は入口のすぐ真横である。
「...んで、薔薇っちは何考えてたんだよ?」
「別にぃ、浅野には全くもって関係ないことだよ」
「お友達にも相談できないこと? ハッ! まさか女の子の日についヴァァッ!!?」
「五月蝿い違うし」
「だからって上履き顔面に投げつけんなよ」
「五月蝿い返して」
「はいはい」
と、浅野は私に上履きを投げる。
それを普通にキャッチし、履く。
「あ...あはよ...」
「おはようヨダっち!」
「おはよう予田ちゃん」
三人目に教室に入ってきたのは予田 愛海。
少し大人っぽい...が、
家ではネットでいつも発狂しているようなかなりのネット好きである。
「...他はまだ来てないの? もうすぐ...8時15分だよ?」
「あー、確かにこの時間もっといてもいいよなぁ」
「もうそんな時間? まあ...ギリギリくらいに来るでしょ」
「てか誰かさ、センコー(先生)見た?」
「どの? 私校長なら校門前で会ったよ」
「私は...誰も...」
「校長いたんだ! 俺今日だっれもみかけてないんだよねーー!」
「はあ? ただ見なかっただけなんじゃないの?」
「...あれ」
「どうしたの?」
予田は鞄から取り出した携帯を不思議そうに見つめていた。
「時間...学校のと違う...しかも圏外になってる...」
「ええ?」
「はああ!?」
予田の携帯を見ると、7時55分となっていた。
しかも、圏外になっている。
私と浅野も試しに自分の携帯を開けてみるが、予田と全く同じであった
「...圏外なのは...よくわかんないけど、どうせ学校の時計がズレてただけでしょ」
「まー、そうだよなぁ」
「あれ、三人しかいねぇの?」
「! おお、いっちー!」
「市川くん...おはよう」
「おお、おはよう」
四人目に来たのは市川 たくみ。
多分この中で一番の常識人である。
「俺さ、さっき校門くぐったら校長先生がいたんだけど。なんかずっと下見ててビクともしてなかったよ」
「え、なにそれこっっわ」
「あ、市川くんの携帯って圏外になってる?」
「は? なってるわけねぇだろ。ここ学校だぜ?」
そう言いながら携帯を開くと、市川は驚いたように目を丸めた
「え...圏外になってんだけど...」
「やっぱり?」
「私...たちも、なんだよ...」
「う~ん...? てか...あれ? 7時55分?」
「え、まだ55分?」
そこで携帯の異変に気づく。
一分も進んでない...?
『ザザ......あー、あー』
教室のにある壁掛型スピーカーから突然、雑音と声が聞こえた
「何!?」
『聞こえてますかー?』
「......これ、校長の声じゃねぇか?」
市川がそう言うと、確かに校長の声だと気付いた。
突然のことで頭が回らなかったのだ。
『えー、今学校に居る10人の生徒方、体育館に移動しなさい。今から15分以内に来なければ銃殺となります。繰り返します。学校に居る10人の生徒方、体育館に移動しなさい。今から15分以内に来なければ銃殺となります...ザザザ...』
その声は雑音とともに消えた...