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第十九章:私の前から

俺とソフィアは非常階段から下りてポルシェに向かった。


「手が早いな」


まさか、ホテルを割り出すとは・・・・・・・・


しかし、詰めは甘い。


甘過ぎる。


あんな事をするなら最初から手榴弾などを投げ込んでやれば良い。


IRAお得意の爆破で、な。


それなのにしなかったのはIRAじゃないから。


「ネオナチ、だな」


あいつ等は弱い。


個々の実力など高が知れている。


しかし・・・数はある。


その数に物を言わせた物量作戦で来れば、ここを当てるのも難しくはない。


何にしても急いだ方が良いな。


ソフィアを見るが、彼女は何も言わなかった。


いや、言えないんだな。


俺が侵入者の首をへし折った瞬間を見た。


初めての殺しを見て・・・怖くなったんだな。


それでも逃げないのは俺が手を掴んでいるから。


手を離せば逃げる、だろうな。


何だかんだ言っても彼女は今まで平凡だが・・・・幸福な日常を過ごしていたんだ。


それが突然、血生臭い世界に足を踏み入れたんだから無理も無い。


「・・・・・・」


俺は非常階段を下りる足を止めた。


「べる・・・・・!?」


ソフィアが何か言おうとするが、また口を塞ぐ。


「・・・・・・・・・」


黙って下を見る。


ポルシェに男が居た。


餓鬼だ。


しかも、手には武器を持っている。


ちっ・・・・・不味いな。


『来たか?』


『いいや。しかし、仕留めたかな?』


『どうだろうな。何せ狂犬でさえ仕留め切れなかったんだ』


そこまで知っている、か。


『だけどよ・・・流石に仕留められたんじゃないか?何せ女も一緒なんだ。庇いながら戦う、となれば出来なくはない』


『まぁな。で、どうする?金を手に入れたら』


『先ずは武器調達だな。今回の作戦で調達ルートも破壊されたんだ。新しいルートを確保するにも必要だからな』


『確かに。総統閣下も望んでいるだろうぜ』


『あぁ。もう直ぐだ。今度の帝国は1000年持つ』


アホらしい。


そんな永遠に繁栄する所など無い。


何時かは必ず衰退する。


それが現実だ。


ちょび髭伍長が何処までそれを理解していたのかは知らないが・・・・・こいつ等は根っからの馬鹿でアホだな。


さて、どうするか。


そう考えた時だ。


『はい・・・ドイツ本部が襲撃された?!』


『お、おい・・・嘘だろ?』


片方が無線に出て本部が襲撃された事を大声で言う。


それに釣られて片方も取り乱す。


大声で言うとは・・・・・・・・


しかし、奴等の本部がドイツにあり襲撃された、という情報は得られたから良いだろう。


『それで幹部たちは?大半が射殺された?そんな・・・・分かった。直ぐに向かう』


『本部が襲撃されたのかよっ』


『あぁ。誰かは知らないが、いきなり襲撃されたらしい。直ぐに行くぞ』


『あぁ。だが、こっちはどうする?』


『IRAに任せれば良い。行くぞ』


それだけ言うと2人は消えた。


「・・・待てよ」


本部が襲撃された・・・・・・これは本当か?


疑問が何故か頭に浮かぶ。


もしかすると大佐辺りが無線を盗聴でもして偽情報を流したのかもしれないな。


欺瞞を流すのも戦場では当たり前だからな。


まぁ、良い。


俺にとっては好都合だ。


「・・・・・・」


ソフィアの口から静かに手を離す。


「車に乗ってスイスへ行くが、良いか?」


敢えて確認を取った。


「・・・・・・・・」


「嫌なら送って消える。二度と現れないと誓う」


自分で言って嫌になるが、こうでも言わないと今の状況を打開できない、と思った。


俺を怖がるのは解かる。


目の前で当たり前のように人間を殺したんだ。


好きと言われたが、後悔して嫌われても仕方ない。


とは言え・・・・・好きで居て欲しい、と願う自分も居るが。


「・・・行きます。スイスへ。だから・・・・・・・・・・・・」


ソフィアは俺の手を取り真っ直ぐに見つめた。


綺麗な瞳で吸い込まれそうだ。


「だから、何だ?」


「・・・私の前から消えないで下さい」


ギュッ・・・・・・・


強く握られた手が温かい。


まるで母親に握られた気分だ。


母親がどんな人物なのか知らないが、ソフィアなら良い母親になるだろう。


そう思った・・・・・・・・


「分かった。スイスへ行く。だが、さっきみたいな事もある。だが、これだけは約束する」


ソフィアの手を握り返す。


「・・・お前は何が遭っても護り抜く」


それだけ言って階段を素早く下りてポルシェに乗る。


『奴だ!!』


階段の上から餓鬼共の声が聞こえる。


「シッカリと掴まってろ」


エンジンを始動させてアクセルを踏み込む。


急発進したポルシェに銃弾を浴びせようと餓鬼が躍り出るも、跳ね飛ばして突っ走った。


「・・・・・・・」


ソフィアはバッグを開けてモーゼルを取り出した。


俺が教えた通りの動作で撃てるようにする。


「・・・・・・・・」


その行動が何を意味しているのか・・・・・・・・


俺は理解したが、そうならないように心がけた。

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私は途中で見つけた車---BMW社の車を運転しながらゴロワーズを吸った。


ハンドルもギアも座席も悪くない。


防犯装置も悪くなかったから・・・・ピッキングする時、苦労したわね。


まぁ・・・あいつの言う通りにやったら簡単だったけど。


今度、買おうかしら?


いえ・・・買ってもらおう。


誰に?


勿論・・・ブルドッグにね。


ご褒美としては申し分ない。


それにしても、と思う。


「ネオナチも大した事ないわね」


第3帝国を復活させる、とか言っていた割には脆過ぎる。


まぁ、前科があるから情け容赦しないのかもしれないけど。


でも、問題はこれからだ。


恐らく今回の件で私の会社に依頼が殺到する事だろう。


ネオナチはナチスを模範しているが、全てがそうではない。


共産主義もあれば、民族主義もあるという複雑な中身をしている。


だから、自分は安全・・・・なんて事はない。


となれば、PMCなどの部門でもあるボディ・ガードを雇う筈だ。


「・・・忙しくなるわね」


利益さえ出れば良い。


昔はそうだった。


向こうだって死ぬ事を前提として入社するんだから。


でも、今は違う。


社員の安全も考慮しなければならない。


となれば、車を装甲化する、防弾ベストなどを支給する、など必要ね。


出費がかさむけど、それで本社の名が売れるなら元は取り戻せる筈だわ。


その前に・・・・もう一度、ブルドッグをスカウトしようかしら。


あの男の実力と人脈は大きい。


元自衛隊にして外人部隊の現役傭兵。


これだけで伝手は十分にある。


現在、外人部隊には自衛隊出身者が多い。


でも、訓練ばかりで飽きて辞める者も居ると聞いている。


そういう者を伝手で本社に入社させられたら良い。


自衛隊の実力は未知数ではある。


実戦を経験していないから。


だけど、海外派遣なども実戦の分類には入るし、射撃の腕も良いと聞いている。


これなら基礎は出来あがっているから、後は場数を踏ませれば完成よ。


その為にもやはりブルドッグの人脈があれば、現役から学校を通っている者も含めて幅広くスカウト出来る。


本社でも教育部門はあり、大雑把に説明するなら民間受けの内容も含まれていた。


今の所はヨーロッパが主流だが、何れはアジアにも眼を向けたい。


かつて付き合っていた男の話を借りるなら・・・・・・・・・・・・


『今にアジアは一大市場になる』


そう言って私に別れのキスをしてアジアの土になった。


言っている事は間違っていない事を考えるなら、十分に当たる可能性は高い。


「・・・やっぱり必要な男ね」


その為にもここで色々とやらないと。


まぁ、あのソフィアとかいう小娘に負けたくない気持ちもあるけどね。


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