表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
43/70

エピローグ:ジャーナリストとは

これにて篝火編は終わりです。


次が最後ですが、時間を見ては番外編も更新します!!

「いやー、素晴らしかったぞ。ブレイズ君」


俺の前では終始、にこやかな笑みを絶やさない編集長が居る。


口からは俺を褒める言葉しか出ていない。


「ありがとうございます。しかし、これで良かったんですか?」


俺は自分の書いた記事を指差す。


それにはプリンセス・エリザベス社の記事が一面を飾っている。


別に大した事は書いていない。


ただ・・・顔写真を載せただけだ。


「それで良いんだよ。美人が一面を飾っているんだ。記事も良いし、文句は無い!!」


「ありがとうございます」


「それに、もう一面飾っているんだ。しかも、君の、ね」


俺はこれに笑みを返す。


「ジャーナリズムとは社会の真実を暴く物ですから」


その記事にはこう書かれている。


『学校でイジメあり。しかし、教師は黙認したばかりか斡旋した』


両手で顔を隠そうとするが、周りが無理やり抑えてデカデカと顔を撮られている。


ざまあ見ろだ。


「まったく教師も落ちた物だ。だが、我々のようなジャーナリストが居る限り、このような不正は許さん!!」


「感涙しそうな言葉ですね」


涙など流さないが、言っている事は賛同できる。


「それで、今回の仕事振りに敬意を表して特別ボーナスだ」


茶色の封筒が膨らんでいる。


「・・・大金、ですね」


まさか、こんなに出るとは・・・・・・・・・


「実はね、重役から渡されたんだよ」


重役が?


「何でも、その記事を読んだ然る方が豪く気に入ったらしい」


だから、これを渡すと・・・・・・・・


「そうですか」


何となく察しは付いたが、敢えて言わないでおいた。


「あぁ。それじゃ今日は帰って良いよ・・・・その顔を何時までも晒したくはないだろ?」


俺の顔は大きく膨らんでいる。


というのも・・・・彼女から折檻されたんだよ。


オリビアと居る所を見られた、そして電話にも出ない。


これが理由だ。


このボーナス・・・・手元にはどれ位、残るだろうか?


・・・・殆ど彼女の機嫌を直す金で消えそうだ。


まぁ、仕方ない。


「では、お言葉に甘えて帰ります」


俺は直ぐに身支度を整えて社を出た。


そして暫く歩いていると・・・・・・・・・


「よぉ」


黒のBMW・E63に乗ったショウが俺を待っていた。


「おう」


俺は車に乗り込む。


「行くか?」


「あぁ」


車が発進する。


行く先は学校だ。


「酷い顔だな」


ショウは俺を見て笑みを浮かべる。


「うるせぇ。で、兄貴は?」


「大佐達と話し合ってから行く」


「そうか。特別ボーナスが出たんだが・・・大佐だろ?」


「だろうな」


ボーナスをやったのは、大佐であると何となく勘づいていた。


まぁ、勘だが。


そして、そのまま学校へ行く。


学校の庭と言えば良いだろうか?


そこでは1人の少年が大勢に囲まれて、イジメられている。


その内1人の餓鬼が前に出る。


あいつ、か。


見るからに親の愛情という名の“甘え”で育てられた糞餓鬼だ。


「・・・・・・」


「・・・・・・」


俺とショウは黙ってやられ続ける子を見る。


まだだぞ。


もう少しだ。


後少しで・・・・・・・・


『今だ』


男の子がしゃがんでいた身体を起こし、餓鬼の顎を殴る。


見事なアッパーだ。


それに対して餓鬼は倒れる。


そこへ間を置かず馬乗りになり、殴りつける。


そうだ・・・それで良い。


「どうやら成功したようだな」


兄貴が何処からともなく現れた。


そして大佐も出た。


「ふふふふふ。ざまぁないな」


大佐は笑いながら糞餓鬼を見る。


「糞餓鬼・・・窮鼠、猫を噛むという諺もあるんだ。イジメも大概にしないと・・・全てを失うぞ」


もう失うが、と大佐は言い直した。


「何をしたんです?」


俺が訊ねると大佐は答えた。


「なぁに・・・少しばかり熱めの灸をしたまでさ。子の不始末は親の責任で償う、というのが私の生きた時代だからね」


詳しい事は訊かないでおこう。


しかし、大佐の言葉から察するに・・・かなりシビアであり厳しい償いだろうな。


ジャーナリストってのは、真実を書くのが仕事だ。


ただし、社会的地位の高い物の前では・・・ペンを時には折ってしまう。


そして言われるままに書く時もある。


しかし、ジャーナリストの信念は、あくまで真実を書く事だ。


・・・虐められっ子が相手を打ち負かす。


そんな記事もまた真実だ。


そういう有り触れた物でも真実を描くんだ・・・・最高じゃないか?

|

|

|

|

|

|

|

|

|

|

|

|

|

|

|

|

|

|

|

|

|

|

|

|

|

|

|

|

|

|

|

|

|

|

|

|

「ん?」


俺はポストに入っていた手紙を取り出して開いて見る。


オリビアが笑顔で帽子を被って写っていた。


しかも、場所は日本だ。


写真の後ろには、一言だけ書いてある。


『日本は最高よ』


キス・マーク付きだ。


これは彼女に見せられないな。


そして次に、もう1枚の手紙を見る。


こちらも写真入りだ。


「・・・・これが一国の大統領が首を吊る理由、か」


いやはや何とも・・・・・・・・


「ブレイズ。帰ったの?」


彼女の声がリビングから聞こえる。


「あぁ、今から行くよ」


俺は写真を懐に仕舞った。


後で開けた写真は破り捨てライターで燃やした。


「・・・確かに首を吊るだけの“価値”はありますね。兄貴」


俺等みたいな職業に就いている者が見たら、それこそ書くだろう。


何せ・・・真実を書くのが仕事だからな。


                                     篝火編 完

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ