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第十章:追撃と邪魔者

俺は兄貴の運転する車に乗りながら後部座席からAKを取り出しレシーバーを引いた。


フルオートが可能にされているが無駄弾を使わない為にもこの場はセミ・オートで撃つべきだな。


「ブレイズ。奴等のタイヤを狙え」


「了解」


窓を開けて俺は身を半身だけ乗り出し構えた。


猛スピードで走っているから風が直に来るも構わず撃つ。


1発目は外れたが2発目で当てた。


しかし、弾かれた!!


いや、弾かれたと言うより弾を吸収しながらも走っているという感じか。


「防弾タイヤですよっ・・・おわっ!!」


背後からピュンと音がして振り返ると・・・・・・・・・・


「見つけたぞ!!東洋人が!!」


ゲッ・・・シャルル・ペス!?


シャルル・ペスはM16のスポッターモデルを手に部下達の乗った車---2台を引き連れて参上した。


「ちっ・・・あの野郎、しくじったな」


兄貴は舌打ちをしながら追いかけて来る犬っころを振り切ろうとした。


しかし、前の方も追わなくてはならない。


くそったれが・・・・・・


「この犬っころが!帰って自分の部下に尻でも掘られてろ!!」


俺はAKをフルオートにして引き金を引いた。


「俺の愛車に傷を付けるんじゃねぇ!この東洋人が!!」


シャルル・ペスは車---ルノーを部下に運転させながら怒鳴り散らす。


ルノーの前は穴が開いているがそれでも走り続けるから厄介だ。


何を言っているのかは想像できるから問題ない。


胸糞悪い程に、な。


「待て!東洋人!!」


「東洋人、東洋人ってうるせぇんだよ!!」


何が悲しくてこんな犬っころみたいな名前を持つ野郎と口喧嘩しながら撃ち合いをしないといけないんだと嘆きながら撃つ。


その間も兄貴は運転をしながら敵を追い続ける。


「兄貴、このままだとあいつ等と前とで不味いですよ」


向こうは典型的なフランス車ルノーだ。


その割には馬力がありエンジンでも変えたのかと訊ねたい位に速い。


「俺等の目的は前の奴だ。後ろは捨てておけ」


こいつで、と兄貴は俺に差し出したのは・・・・・・


「・・・ポテト・マッシャーですか」


ポテト・マッシャーことM24型柄付手榴弾は第二次世界大戦でナチス第三帝国が使用していた手榴弾の事だ。


柄の部分に紐がありそれを引っ張る事で中で摩擦が起こり3秒から4秒で爆発する。


形がジャガイモ潰しに似ている事からこう名付けられたらしいがその通りだと思う。


俺は安全キャップを外し紐を指に巻き付けて引っ張った。


マッチを擦るような音がして俺はルノーに投げ付けた。


「ば、爆弾・・・・ぎゃあ!!」


見事にルノーへ当たって爆発した。


2台の車も似たような末路だ。


「ざまぁ見ろ」


俺は景気付けにAKをお見舞いしたが向こうは追って来ないから成功と言える。


そして改めて前の車を追う。


さぁ・・・・ここからが正面場だ。


奴等を追い掛けてショウとエンジンが更に追い詰めるんだ。


それまでは岩に齧りつく勢いで追い続けなくてはならない。


俺は懐からラッキーストライクを取り出して銜えた。

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俺は車---黒のシエトロン・XMの中で1人煙草を吸いながら奴等が来るのを待っていた。


そろそろ相棒達が動き出した頃だが俺の方はまだ早い。


相棒達が追い詰める奴等を俺とエンジンが更に追い詰めるんだ。


そのエンジンはもう少し離れた場所に待機しているから話し相手も居ない。


待つのは慣れているが暴れたい気分だ。


俺の懐で眠る彼女も退院したからリハビリをさせたい。


ああ・・・早く来ないか。


そう思いながらラッキーストライクを燻らせていると・・・・・・・・・・・・


『こちらディアドラ。聞こえる?』


イヤホンにアイルランド訛りがあるハスキーな声が聞こえてきた。


「聞こえている」


相手はディアドラという女でアイルランド人と見ている。


俺たちを雇った女だが何処かの諜報員か?


そう考えてしまうほど手際が良くて準備が良い。


まぁ、金を貰っている身だから詳しい事は訊かない事に務めているが。


「何かあったのか?」


この無線は敵が来た時しか使用しない手筈なのに彼女はした。


つまり何か想定外の事が起こった証拠だ。


『不味いわ。邪魔が入った』


邪魔?


「誰だ?」


『犬とドゴールを合わせた名前の傭兵よ』


シャルル・ペスか・・・・・・・何でこんな時に来るんだよ。


自称フランスNO.1の傭兵と豪語している命知らずの大ホラ吹き男であるあいつとは少なからず因縁がある。


因縁と言っても相棒に逆恨みして毎度毎度の如く突っ掛かっているだけの話だが。


こうもシツコイと因縁とか怨念という類いの物をついつい想像してしまう。


『現在、ベルトランとブレイズが奴等を振り切りターゲットを追い込んでいるわ。だけど、そちらも不測の事態に備えていて』


何が起こるか分からないとディアドラは言った。


「・・・了解」


俺は重い息を吐きながら頷いた。


「・・・犬みたいにシツコイ奴だ」


俺の異名も犬が入るんだがあいつとは違う。


まったく・・・美味しい話を嗅いで来たのか?


それにしても相棒なら何かしらの手は打っている筈だ。


それなのにどういう事だ?


なんて考えるが答えなど見つかる訳もない。


仕方なしに相棒達が来るまでは煙草を吸って待つしかないな。


とは言え煙草ばかりでは舌が乾く。


そこで魔法の瓶を取り出す事にした。


「・・・“仕事、頑張って下さい”か」


綺麗な字で書かれている。


まだ青臭い字に見えるし香りもシャンプーがそれを表している。


これをくれたのは相棒に熱を上げている豊穣の女神ことソフィア・カリオストロの妹であるクラリス嬢だ。


長女に負けないくらいシッカリしており武術の心得もある中学生だが後1年もすれば高校受験を控える身である。


そこから成長して軍などに入れば女傑として名を残しそうな勢いで俺の教えをスポンジの如く吸収して行く。


とは言え自分を護れる技術だけを教えている。


それでも・・・やはり弟子が成長して行く姿を見るのは師として嬉しいもんだ。


その彼女にこの前、俺は銃を与えた。


金は相棒から貰って免許所なども相棒が用意してくれた。


銃は“S&W M10”だ。


こいつは38スペシャル弾を使用する。


リボルバーの定番的な弾で護身用としては申し分ないだろう。


おまけにS&W社の物だから堅牢だし警察や軍に長年愛された実歴もある。


そのためこいつの別名は「ミリタリー・ポリス」だ。


今でも地方ではこれを愛用していると聞いている。


これを与えて撃たせたが・・・まぁ、誰もが最初の頃は失敗するもんだ。


それなのに彼女は酷く落ち込んで周りの奴等からは「泣かせた」という不名誉な眼差しを俺が受けた。


男受けするんだろうなとは思うが、何で俺に批判の眼差しを向けるんだと言いたかったぜ。


まぁ、言うなれば少し歳の離れた“妹”を泣かせたと見えたんだろう。


俺から言わせればあの子は妹みたいなものだ。


シッカリ者であり兄である俺に何かと小言を言いつつもチャッカリしている面もある・・・・・・・


「・・・美味い匂いだ」


魔法の瓶を開けた途端に鼻を刺激するコーヒー豆の香りに俺は眼を細めた。


どんなに良い豆を使用しようが作り手が下手では不味いコーヒーになる。


相手の事を考えて美味しく作ろうという心構えがあればコーヒーは答えてくれるものだ。


それがこのコーヒーからは伝わって来る。


湯気を出す瓶に俺は口を近づけて熱いコーヒーを飲んだ。


「・・・美味い」


やはり最高の豆を使おうと最終的に美味くするのも不味くするのも作り手の心がけだな。


そう思いながら俺はクラリス嬢が淹れてくれたコーヒーを味わいながら煙草を燻らせた。


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