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第九章:作戦開始

翌朝も俺たちは尾行を続けていた。


これを2、3日は続けて行くがシンドイぜ。


とは言えこれが仕事だから仕方が無い。


にしても一体どういう事だ?


尾行している奴等は昨日とは別の店に行って買い物をしている。


ただし、店に売られている品物は同じだ。


「まさか全員が女装趣味なんて事は・・・・・・・・」


「有り得なくはないぞ。モサドなんて女装して任務をすると聞いた事がある」


兄貴は運転席に座りながらジタンを吸い俺の言葉に答えてくれたが、俺は些か引いた。


「それは・・・かなり引きますね」


「しかし、案外だがバレないもんだぞ」


「経験があるんですか?」


「流石に無い。というかこの顔で女装なんてしたらお前どうする?」


「・・・・失礼ながら逃げます」


こんな顔・・・失礼な事をぶっちゃけた話だが、ブルドッグ顔の女性が眼の前に現れた10人中10人が裸足で逃げ出すだろう。


「だろうな。おっ、動き出したぞ」


兄貴はエンジンを掛け出した。


行こうとした時である。


「おい、俺の縄張りで何をしている」


・・・何でこう大事な局面で来るんだよ。


この馬鹿犬は。


俺は嘆息した。


兄貴が“借りた”車に寄り掛かるのは自称フランスNO.1の傭兵であるシャルル・ペスだ。


「おい、俺の縄張りで何をしているんだ?」


駄犬は兄貴に話し掛けるも兄貴は無視してギアを・・・バックにした。


それからは想像通りで車に寄り掛かっていた駄犬は無様に道路とキスをする。


そして何事も無いように兄貴は車の後を追い掛けた。


「厄介な奴だな」


「確かに。まぁ、相手を見失う事はなかったから良かったですね」


「そうだがあいつの事だ・・・俺等を見付けては突っ掛かって来るぞ」


「そうなると不味いですね・・・どうします?」


「余りやりたくない手だが・・・仕方ないな」


どうやら何か手はあるようだ。


兄貴は携帯を取り出すと何処かへ電話を掛け始めた。


「俺だ。少し頼み事をしても良いか?ああ、すまねぇ。今度チェスの相手か?良いぜ」


短い話を終えた兄貴は携帯を切った。


「誰に掛けたんですか?」


「007だ」


007?


「あの映画の007ですか?」


「そうだ。もっとも現実はかなり地味だが、な」


「まぁ、それがスパイというものですけどね」


スパイなんて007みたいな展開は先ず有り得ない、と皆が口を揃えて言う。


そりゃ銃撃戦あり、世界の存亡あり、女との夢ありなんて事は無い。


何処までも地味だ。


ずっと同じ場所で相手の様子を探ったりするのがスパイの仕事だ。


もっとも先進国だと新聞紙とTVさえあればその国の情報9割は分かる。


それから豆知識だが大使館に居る警備員は元スパイというのが多い。


彼等にとってはスパイをやって良かったと思うだろうな。


外交権は使えるし休暇は金髪美人を侍らせて遊べるんだからな。


とまぁ、こんな豆知識は置いといて。


「その007がやってくれるんですか?」


「正確に言えば孫娘だな。あいつはもう歳だ」


「歳、ですか。と言うと第二次世界大戦中に活躍したとか?」


「当たりだ」


「是非とも会いたいですね。第二次世界大戦の記事は結構書きがいがあるので」


「今度言っておく。これで奴を足止めできるぜ」


「ですね。一々あんな駄犬を相手にしていたら切りが無いですからね」


などと話し合いながら俺たちは尾行を続けた。


それから不思議と犬っころは出て来なくなった・・・例の007の孫娘が活躍でもしたのか?


そう思いながら尾行だけする日が何日か続いたがいよいよ決行の日になった。

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「先ずこれが前金よ」


ディアドラが俺達に茶色の膨らんだ封筒を渡した。


「そして無事にケースを奪取したら後金とボーナスを上げる。それを貰ったらただの他人。道端で会っても知らない振り。良いわね?」


『了解』


俺たちは口を揃えて頷いた。


「では、これから作戦内容を説明するわ」


白い板---ホワイトボードにディアドラは地図を広げた。


「もう既に車にはベルトランとブレイズが発信器を取り付けたから問題ないわ。2人はこの地点で護衛を数分間でも良いから足止めして」


赤い点を指差しディアドラは俺と兄貴に言った。


「それからは?」


「後を追って。ショウとエンジンはここから左右に別れて相手を追い詰めて」


今度はショウとエンジンを青い点を指差し命令する。


「ショウとエンジンが左右から追い詰めれば敵は私たちが網を張ったルートを通るしか道は無い。そこを私を含めた残りで叩く」


「で、誰がケースを奪う?」


「その時点では誰かが奪うわ。そして奪ったら後で連絡があるからその通りにして。そこで仕事は終わり」


「分かった。おい、ブレイズ。行くぞ」


兄貴はジタンを銜えて俺を促した。


「了解」


「精々ヘマしないように気を付けるんだな」


トミーがまた嫌みを言うが俺たちは無視して車に乗り込んでアジトを後にした。


あの野郎・・・何時か叩きのめしてやる。


しかし、俺の心はあのトミー野郎の顔面をぶん殴る気持ちで一杯だった。


アジトを出た俺と兄貴は赤い点の場所に到着し駐車場に車を停めた。


「ブレイズ。お前の役割は分かってるな?」


「勿論。こいつで赤信号にして兄貴が護衛の車---前方を攻撃する。俺はそれを援護するでしょ?」


「上出来だ」


兄貴は俺の言葉に頷いた。


敵は突然の攻撃に驚き反応するが俺が爆竹を鳴らす事で気を紛らわせるという寸法だ。


ここで使う武器はショウから借りたS&W M19だけ。


とは言え車の中に武器はあるから追う時になれば使用するだろう。


「じゃあ、健闘を祈るぜ」


「了解です」


俺は車から降りて信号を渡った。


信号の前で止まり煙草を銜えて懐から小型のスイッチを取り出す。


こいつで赤と青に変えられるように細工してある。


試しに押して見る。


パッと赤信号になったから上出来だ。


それから奴等が来るまで待つ。


5分・・・10分・・・15分・・・30分が経過した。


まだか?


煙草を何本か灰にしながら待つと・・・・・・・


『来た』


狙いの奴等が来た。


車は全て黒塗り。


こいつらを停めれば・・・・・・


スイッチを押し一番前の車を停めさせた。


そして兄貴の方へ眼をやると・・・・・・


「・・・“H&K HK69”ですか」


H&K社が開発した中折れ式のグレネードランチャーだ。


ストックは伸縮式でグリップは持ち易いピストルグリップで操作性と携帯性に優れている。


まさかあれをこんな街中で使用するとは・・・・・・


兄貴はドアから出るなり狙いを素早く定めると引き金を引いた。


車に見事なまでに命中し爆発する。


するとその後ろに居た車は勢いよく飛び出して行き更に後ろに居た車からサブマシンガンなどで武装した男達が出て来た。


『・・・今だ』


俺はボタンを押した。


すると在らぬ方向から爆竹の音がして奴等の気がそちらへ行く。


今度は“SIG SG551”を取り出した兄貴はフルオートで奴等を撃った。


俺もまた懐からS&W M19を取り出して遮蔽物に身を隠し撃つ。


先ず1人を仕留めたが、やはりサブマシンガン相手だと分が悪くて倍返しを喰らう。


それにも負けずに撃ち返す。


だが、ここで思わぬ横槍が入って来た。


「覚悟しろ!この東洋人が!!」


『ゲッ!犬っころ・・・何で出て来るんだよ!!』


どうしてこういう大事な局面で犬みたいな名前を持つシャルル・ペスが顔を出して来るのか。


俺は舌打ちしながら撃とうとしたが、本命は車に乗り込み後を追い掛けてしまった。


「追うぞ!!」


兄貴が俺に怒鳴る。


俺は急いで信号を渡り車へ行くがペスの車に撃つのも忘れない。


「この東洋人が!俺の愛車に傷をつけやがって!!」


ペスが何やら吠えるが知った事か。


急いで車に入り俺たちもまた奴等を追い掛けた。


ここからが勝負だ。


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