第八章:武器と尾行
更新が遅れて申し訳ありません!!
今度からは気を付けたいと思います。
俺と兄貴は朝の10時に盗・・・拝借してきた黒い車---アウディ・S8に乗ってディアドラから渡された写真の男が来るのを待っていた。
「3つ星レストランで朝食とは優雅ですね」
俺はラッキー・ストライクを燻らせながら隣でカメラを持つ兄貴に話し掛けたが兄貴は銀色のタンブラーに入れたブルーマウンテン豆をひいたコーヒーを飲んで答えない。
いや、答えるのに少しばかり遅れただけか。
「まぁな。だが、俺は3つ星レストランの飯より女神が焼いてくれたパンの方が好みだ」
「それを女神本人に言えば良いと思いますよ」
今朝、俺と兄貴は女神と言われる女性の営んでいるパン屋へ赴いた。
パン屋の名前はフランス語で「黒猫」を意味するル・シャ・ノワール。
そこを営んでいるのはまだ19歳の麗しき淑女ソニア・クリスチノフで愛称はソフィア。
で、そのソフィア嬢は兄貴に惚れているし妹であるクラリス嬢はあのショウに惚れているが、兄貴の方は気付いているのに対してあの馬鹿はまるで気付いていないのが悲しい所だ。
もう少し歳を取れば引く手あまたに男共が来るであろうに・・・なんと惜しい事か。
いや、俺には彼女が居るから他の女に現を抜かすような真似はしない。
しないが美人を見れば男なんてデレッとするのは間違いないだろ?
話を戻すとソフィア嬢は兄貴に何時も料理の出来を訊くんだが兄貴は「美味い」とか素っ気ない言葉しか言わない。
もし、今の言葉を言えば飛び上がるだろうに・・・・・・・・・
「・・・来たぞ」
兄貴はタンブラーを飲み干し横に置くとカメラを構え俺の方はメモを用意する。
「身長は180㎝でスキン・ヘッド。銀色のケースが左手首に手錠で繋がれている」
写真を撮りながら兄貴は俺に特徴を教え俺はそれを書く。
「武器はソード・オフのショットガンとサブマシンガン・・・アサルトライフルまである」
アサルトライフル?
それは昨夜の話では聞いていない。
となれば新たに持ったのか?
それとも調べられなかったのか?
どちらにせよアサルトライフルもある、と・・・・・・・・・
「車は黒のベンツにBMW。BMWは計3台で前方と後方に居る」
前方と後方で護りを固める、と・・・・・・・
「よし。追うぞ」
「了解」
兄貴がエンジンを掛け俺がカメラを持つ。
今度は俺が撮る番だ。
兄貴は数台の車を前にやり少し離れて尾行を開始した。
近過ぎても遠過ぎても尾行は失敗するから適当な長さを見極めなければならない。
これが難しいんだよな。
「アサルトライフルまで持つとは敵さんも必死だな」
「確かに。しかも手錠で繋いでいる所もそれを物語っていますね」
「あぁ」
兄貴と俺は煙草を吸いながら尾行を続けたが・・・やっぱり退屈だ。
尾行を始め捜査なんてのは退屈極まりなく地味な仕事だとは判っていたが、やはり地味だと思い知らされる。
奴等は何で行くんだ?と思う様な場所に行く。
何処か?と言えば・・・鬘を売る店とか口紅とかを売る店など、だ。
女の為か?と思うが男の集団が行く様な場所じゃないのは明白だろ?
女の店員とかがかなり顔を引き攣らせたのが良い例だ。
間違っても俺は行きたくない。
しかし、まったくあいつ等の意図が読めない。
・・・何を企んでいるんだ?
疑問を覚えながらも尾行を続けて行くこと数時間。
時間は既に夜になり奴等は優雅な食事をしているが俺と兄貴は悲しいかな・・・冷えたパンと温いコーヒーで食事だ。
刑事ドラマみたいだろうが、それが尾行というものなんだよ。
食事を終えた奴等はそのままホテルに帰って俺達はディアドラに奴等がホテルに帰った事を連絡した。
『それじゃ今から来て。恐らくもう今夜は出ないわ』
「了解した。出来るなら温かいコーヒーを頼む」
『分かったわ』
短い通話を終えた兄貴は携帯を懐に入れて昨夜の場所へアウディ・S8を走らせた。
昨夜の場所に行くと既に他の奴等は揃っており同時にテーブルには様々な武器が揃えられている。
「よく揃えたな」
兄貴が武器の1つを手に取りながら言うとディアドラは何でも無いように言った。
「国家の一大事だからね」
「確かに。で報告をしても?」
「えぇ。話して」
兄貴は報告を始めた。
「・・・なるほどね」
「しかし、何だね。大の男が数人で化粧品売り店に行ったりとは考えるだけで身の毛が震えるよ」
デジコンが洒落た眼鏡を掛け直しながら言い俺達も頷いた。
「そこ以外にも何箇所か見回って終わった。とまぁ、今日はこんな所だな」
「分かったわ。それから武器を調達したからそれぞれ好きな物を選んで」
「了解した。おい、ブレイズ。選べ」
おお、武器を俺にも持たせてくれるとは・・・・・・・・・・・
出来るなら一度は撃ってみたかった銃を選ぼうと思い手を伸ばした時だ。
「日本人が武器なんて持ったら弾が何処に飛ぶか分からないぜ」
・・・・このトミー野郎が。
日本人だからって馬鹿にしやがって。
俺は我慢していた物が口の先まで出そうだった。
「止めなさい。ブレイズは“やれば出来る”子よ」
ディアドラが俺を庇うようにトミーに口酸っぱく言ってきた。
「豪くそいつの肩を持つじゃねぇか」
「少なくとも貴方みたいに他人の悪口しか言えない見た目だけの紳士よりブレイズの方が紳士だもの」
・・・・くっ・・・・泣きそうだ。
なんて馬鹿な事を考えるが少しキツメの女からこんな言葉を言われたら誰だってやる気を出すものだ。
「へっん。そうかいそうかい。それなら好きにしな。ただし、俺の足手まといになったら容赦しねぇぞ」
「・・・その言葉をそっくりてめぇに返してやるよ。トミー」
これだけは言いたくて俺は言う。
しかし、誰もそれを咎めようとはしなかったから助かるぜ。
さて気を取り直して武器選びだ。
アサルトライフルからショットガン、グレネードランチャーと幅広くある。
「これ全部市販品?」
俺はディアドラに訊ねる。
「そういうのもあるわ。でも、裏で出回っていた物を買ったのもあるわ。だからフルオート出来る物もあるわよ。私が選ぶわ」
そう言ってディアドラは俺にスポッター・モデルのAKを渡してくれた。
しかも故障が多いと言われる中国製ではない。
これは助かるし良い眼をしている。
AKの強みは堅牢にして単純な所だ。
だから俺みたいなジャーナリストでも15分ほどで分解などをマスター出来る。
「それから貴方には支援火器も渡すわ。支援してもらうからね」
「兄貴達を?」
「えぇ。でも、私も出るからその時は頼りにしてるわ」
「・・・美人の頼みなら喜んで」
彼女が聞いたら上段回し蹴り所かそれ以上の眼に遭わされそうな台詞を吐きながら俺は渡されたAKと“FNミニミ軽機関銃パラトルーパー”を受け取った。
FNミニミ軽機関銃はワッフルなどの菓子で有名な小国ベルギー王国のFN社が開発した分隊支援火器だ。
口径は5.56mmでM16のマガジンも装填可能など互換性に優れ堅牢性で命中率も高い。
俺等の国---日本でもライセンス生産しているが部品の精度が落ちているなど未だに日本の重火器技術が未熟だと思い知らされるぜ。
FNミニミのマガジンはM16のマガジンだった。
弾数は少ないがAKと合わせれば問題ないだろう。
ショウの方はAK47とドラグノフSVDを持った。
こいつは遠距離か。
そして兄貴の方はUZIサブマシンガン、SIG SG551、H&K HK69だった。
グレネードランチャー何か使うのか?と思ったが・・・俺はそれを使うという事を未だに知らなかった。
武器などを選んだその日は何事もなく俺たちは家へと帰った。