番外編:決着不能!? 勇者と魔王、連打魔に翻弄される街
――街は夕暮れ。
泡まみれの勇者(もう何度目か)は、寝不足で目の下にクマ、肌は荒れ放題、充血した目をギラつかせながら立っていた。
麗しいと言われた俺の顔は見る影もなし。
寝ている間もずっと頭から離れなかった、あの地獄のカチカチ音――スキップ音。
もう何度目かのスキップ音に。正直、慣れた。
そう、用を足してたら素早くズボンを上げ、回避!!!
風呂に入ってたら一瞬で上がり、濡れたまま服を着て変態回避!!!
え? びしょ濡れで気持ち悪い? ほっとけ!!!
変態扱いされるよりマシだ!!!
しかし、慣れたと言えど、怒りが収まるはずもなく――
ーーー
【SKIP】
通行人A、姿が消える
ーーー
「待てごるぁ!!!!……そこの通行人っ!!! 今日こそっ!!!!」
「うわぁ!!! また来たぁ!!!!」
通行人は嫌そうな顔で叫ぶ。
「あんた勇者だろ!!! いいのかよ、名も無き通行人をいじめて!!!!」
「うっせぇ!!! 今までの恨みっ!!!」
「俺が何したってんだよ!!!!」
カチッ
「くっそぉ!!! また逃げられたっ!!!」
地面をダンと叩くと、少し凹む。俺は無言で立ち上がり、その場を去る。
ーーーそして
目の前に、ドン、と黒い影が突然現れた事により事態は急変する。
魔王登場。
「え、俺、死んだはずなのに!? また生き返った!?」
「お前、魔王か!?」
その禍々しいオーラ、二本の漆黒の角、人ならざる赤い瞳、人外の美貌――
聞けば魔王もスキップ連打の餌食で、倒しても倒しても結果だけが出る状態だった。
「死んでは蘇り、魔物を送っては無かったことにされ、挙句の果てには…!!!角の生え変わりにっ!!!」
え?角有るけど?と言う俺の思いを読み取ったのか、ポンッと外れる魔王の角
「っ......」
付け角.....っ......しかも変な所で曲がって.....笑うな.....笑うな俺!!!
耐えろ俺の腹筋!!!無駄に鍛えてて良かった!!!
魔王に同情しつつ、少し落ち着いた俺は同じような境遇に痛ましさを感じる。
目に毒だから角は付けて貰った。
「お前も……スキップ被害者か…」
魔王にスキップ魔の存在を伝えると、怒り心頭の魔王。
「そうだったのか!!!……共通の敵がいる……おのれぇぇ!!! スキップ魔め……」
「よし、一緒にスキップ魔を撲滅するか?」
「だな…」
――こうして、敵同士のはずの勇者と魔王が意気投合。
共通の敵=スキップ連打魔に立ち向かうことになった。
⸻
――スキップ魔撃退作戦開始
勇者+魔王コンビで追いかける。
スキップで瞬間移動を繰り返すスキップ魔に、倒しても倒しても復活される魔王。と、凱旋途中に飛ばされる勇者。
「くっそ!!! もう少しだったのに! 俺のエクスカリバー!! あと1ミリで届きそうだった!!!」
「惜しかったじゃねぇか!!! 次は俺が右から行く!!! その瞬間、お前は左から行け!!」
街中は混沌、通行人も逃げ惑う。
それでもコンビプレイでなんとかスキップ魔を追い詰めた2人。
「もう逃がさねぇぞ!!!」
「この日の為に!!! どれだけ……くっ」
スキップ魔は怯えながら後退する。
「な、なんだよ!! アンタら!!! 俺はただの通行人だぞ!!! 普通のヤツを追いかけて楽しいのかよ!!!」
それをジリジリ追い詰める2匹の猛獣ならぬ勇者と魔王。
「「あぁ、楽しいねぇ!!!! 今からお前を葬れると思うと!!!」」
敵同士のはずの勇者と魔王が結託した今回の騒動が、永劫語り継がれるとは誰も知らない。
「狡っ!!! 俺一人に対して!!! てかお前ら敵同士!!! なんで仲良く結託してんだよ!!!!」
顔を見合わせキョトンとする二人。
「「あ? そんなの、お前(通行人)を倒して再戦するに決まってるだろ!!!! この結託は今だけの期間限定だ!!!」」
声合わせんなし!!!
カチッ
「「ノーーーーーーーッ」」
悔しそうに地団駄を踏む勇者と魔王。
勇者「ちょ、まだ戦えねぇぇぇ!!!」
魔王「俺の本気を返せぇぇ!!!」
街中を、泡まみれ勇者(何度目か)+怒り心頭魔王(角紛失)+スキップ魔の三つ巴が疾走。
街は爆笑とカオスに包まれる。
⸻
――こうして、勇者と魔王は本来の決着をつけることなど叶わず、何度もスキップ魔に阻まれる。
街は荒れ放題、爆笑と涙と怒りの渦。
しかし確かに、勇者と魔王は互いを認めたのだ――共通の敵により、友情のようなものまで芽生えたのだ……。
結局、決着は持ち越し。
だが読者は爆笑間違いなし。
泡まみれ勇者と、怒り心頭魔王、そして逃げるスキップ連打魔。
これぞカオスの極み!!!
END




