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第9話 省エネ男子、記念日問題にぶち当たる

文化祭、告白、初デート――

思えばここ数週間、省エネ男子・斎藤悠斗の生活は驚くほど省エネではなかった。


そして、さらに追い打ちがかかるのは当然だった。


放課後の教室。


「斎藤くん……ちょっとだけ、いい?」


机に突っ伏してうとうとしていた悠斗の隣に、そっと座る河合美咲。

恋人特権である。


「……なに……」


「えっと……もうすぐ付き合って一ヶ月、だよね……?」


(……?……一ヶ月……?……ああ……)


悠斗の省エネ脳が遅れて起動した。


「……そう……だね……」


「でね……私、記念日とかちょっと大事にしたいタイプで……」


(……嫌な予感……)


「一ヶ月記念日、どこか行かない?」


言ったーーー。


「……行く……って言わないと……泣く……」


教室の隅で、悠斗は小さく呟いた。

森山がすかさず肩を叩く。


「お前、またデートか! すげーじゃん! どこ行くの?」


「……死ぬ……」


「デートで死ぬな!」


(……一ヶ月ごとに……これがある……?)


省エネ男子の脳内エネルギー残量ゲージが、未来を想像して目に見えて減った。


数日後、LINEに届いた河合のメッセージ。


『一ヶ月記念日、ショッピングモールに行きたいな!』

『一緒に服選びとか、してみたい!』


悠斗の親指が、送信ボタンを押す直前で止まった。


(……服……試着……試着待ち……歩く……人混み……)


『……うん……』


結局、送った。

泣かれるよりはマシだ。


一ヶ月記念日当日。


待ち合わせ場所のモール前で、河合が満面の笑顔で手を振っていた。


「斎藤くん! お待たせ!」


「……今来た……」


(嘘。30分前からベンチで寝てた。)


「今日はいっぱいお店まわろうね!」


「……うん……」


(俺……歩けるかな……)


雑貨屋、服屋、靴屋――

河合が「これ似合うかな?」「どっちがいいと思う?」ときらきら聞いてくるたびに、


「……いい……似合う……」


「……そっち……」


と省エネ回答を繰り返す悠斗。


それでも河合は楽しそうだった。


途中のカフェで休憩。


「斎藤くんって、ほんとに変わらないね。省エネで優しくて……」


「……省エネ……彼氏……」


「うん、でもそういうとこが好き」


彼女の笑顔に、省エネ男子の電池はギリギリで保たれた。


帰り道。


「今日はありがとう。来月も……記念日、ね?」


「……うん……」


「斎藤くんとなら、何しても楽しいから!」


(……俺の省エネ……どこへ……)


それでも、彼女の「楽しい」が聞けるなら、多少の体力は仕方ないか――

そう思いながら、悠斗はまた省エネできない恋人生活を受け入れるのであった。

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