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科学文明探訪【Web版】  作者: 橋本禰雲
第九章 作戦会議
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「トピカが我々を地上ごと抹殺しようとしているのなら、失うものなど何もない。可能な限りの全兵力を結集してメトロポリスに侵攻するのはどうだ」


 バーシが意気込んで言った。


「成功確率2% メトロポリス防衛隊が街の外郭に位置する防壁に拠って抵抗するでしょう。戦力比で言っても侵攻は難しいと言わざるを得ません」


「俺たちの召喚魔法による魔獣の軍団も加わることができるぜ」


 デニがそう言って正木やリンが召喚可能な軍団についての戦力をそれぞれに説明させた。科学文明の人にとってはそんなこともできるのかと、驚かせたが、


「成功確率4%」


 少し成功する可能性が高まったもののハクは厳しかった。


「魔法使い冒険者チームがメトロポリスに潜入。トピカを破壊する」


 正木が厳かに言った。自ら死地に飛び込もうと言うのか。


「成功確率1% トピカはメトロポリスに厳戒態勢を敷いているでしょう」


「秘密の地下道があるわ」


 とフェルミ。バーシと目配せし合ったのはかなり奥の手といった情報だったのかもしれない。


「メトロポリスが基盤とした古い都市の時代からあったものよ。レジスタンスは密かにその地下道を探り当てた。いつか役立てられるかもしれないと思って調査を進めていた。メトロポリスの第二防壁の中へ侵入できるわ」


「成功確率3%」


 ハクは成功確率を更新したことを発表した。


「さきほどのレジスタンス軍による侵攻作戦も加えよう。トピカの厳戒態勢を引きつける陽動作戦としてだ」


「7%」


「リンが潜入する人たちに姿隠し魔法をかけてあげる。見つかりにくくなるよ!」


「9%」


「あらかじめ帰還元となる転移魔方陣を例えばここに作っておけば、一瞬でトピカタワーから脱出できるよ」


 リンがどんなもんだいという顔で言った。


「転移魔方陣って構築に結構時間がかかるでしょ? 向こうでそんな余裕があれば、だけどね」


 つむぎは心配そうに言った。しかも帰還側の魔方陣を作成した魔法使いと同一人物が作成しなければならない。


 ハクは瞳を一瞬光らせただけでなにも言わなかった。


 成功確率には影響しないと判断したようだ。


「それなら」


 リリーが言った。


「トピカの場所が分からなかったときのために、その……せんじゅつ? 核爆弾を持っていくといい。転移魔方陣で脱出したあとにトピカタワーをそれで壊しちゃえばいいのよ」


「そんなことができるの?」


 つむぎは誰に尋ねるともなく言った。


「できる」


 バーシは言った。


「戦術核を時限爆弾に改造しておけば良いのだ。その改造ならすぐできる」


「成功確率15%」


「おお。まあまあ上がったな」


 デニが嬉しそうに言った。


 確かに最初の0.75% よりは上がったけれど、まだ85%の確率で失敗するんだよ? とつむぎは心配に思った。失敗したときっておそらく潜入した者は帰還することが難しいのでは?


 フェルミが手を挙げた。


「しかも、それなら無垢な子供たちの救出もできるかもしれないね!」


「そちらの成功確率は1%です」


 ハクが口調を変えるでもなく言った。


「あら……そう……」


 フェルミは残念そうに言った。


「それは私が担当しよう」


 正木が厳かに言った。


「え、ちょっと!? 正木! 何言ってるの?」


 つむぎは思わず詰問口調で言った。正木はうるさいなという表情でつむぎに手の平を向けた。


 つむぎは正木が言い出したら聞かないことを知っていたからそれなら、と。


「じゃあ私も一緒に行く」


「だめだ。トピカ破壊の成功率を下げたくない。つむぎ、お前はトピカ破壊任務に集中しろ」


 つむぎはみるみる顔を真っ赤にして怒った。そして、立ち上がり、両手でテーブルをバンと叩いた。


「どうしてそんな無茶言うの!? このわからずや!」


 そう言って椅子を倒して駆け出すと部屋を出て行った。


 リンが心配そうにつむぎが出て行ったドアを見つめてから正木のほうを向くと、正木はリンに頷いてくれたのでそっと席を立ち、つむぎの後を追った。


「心配いらない。いつものことだ」


 正木は皆にそう言った。


「他に良い案がなければこれでやろう」


 正木がそう言うと皆頷いた。


「潜入は私たち魔法使い冒険者チームが担当しよう。私がリーダー。リン、つむぎ、デニ、ズル、リリーの六人だ。それからハクとニーナも連れて行く」


「そう言うと思った」


 ニーナがつまらなそうに言った。


「私が子供たちの救出作戦のためにチームを離れた場合は、デニ、お前が指揮を執れ」


「お、おう」


 デニは少し驚いた様子だったがそう答えた。


「デニの次席はズルだ」


 ズルは唇をぎゅっと結びながら頷いた。


「あなたたちだけにこの星の重要な任務を任せるのも悪いよね」


 フェルミ。


「とはいえ、足手まといになる者を付けるわけにも行かない。一人だけ参加させてちょうだい。私の妹を」


「アマンダか」


 ルチアノが言った。


「大丈夫なのか?」


「大丈夫かどうかはすぐに分かる」


 フェルミは自信がありそうだ。


「命の保証はできない」


 正木がそう言うとフェルミは少し唇を曲げた様子を見せたが重々しく頷いた。


「よし。あまり大人数にもできない。潜入はこの九人で行く。フェルミ、バーシは陽動作戦のほうだな」


「ああ。すぐに準備に取りかかる。正木も同意してくれるだろうが作戦は夜間がいいだろうな。トピカが提示したリミット直前の深夜でどうだ」


 正木は頷いた。そしてこう付け加えた。


「分かっていると思うが陽動作戦と言っても成功確率2%に本気で挑むつもりでやってくれないと……」


「当然だ!」


 フェルミは怒気を見せて言った。


「ここで命を惜しむような我らではないぞ!」


 フェルミは言った。声のトーンは落としたが悲愴な気持ちを抑えるためだったのかもしれない。


 正木はフェルミには何も答えずに深く頷いた。


 そして周りを見渡した。


「ではこの案で行こう。戦術核爆弾の用意はお願いする」


 バーシに向かってそう言うとバーシは頷いた。


「どうしてもトピカの所在地が分からなかった場合はそれを使うしかないだろう。民間人にも被害が出てしまうので、なるべく使用は避けたいが……」


「そうかな……私は躊躇ちゅうちょしないがね」


 復讐心に燃えるルチアノは言った。




 リンが会議室を出ると通路の奥のほうでつむぎがしゃがみ込んで肩を震わせているのが見えた。


 リンはつむぎの近くに行き、同じくしゃがみ込んでそっと肩を抱いた。


 つむぎはリンが来てくれたことに気づいてリンに抱きついてきた。涙で目が真っ赤になっていた。


つむぎ。心配しないで。あんな確率あてにならないよ。正木さまの力をハクはまだ全て知っているわけじゃないんだから。今までもっと危なそうなことだって成功させてきたんだよ」


 つむぎはそれを聞いて顔を上げた。


「そうかな?」


「うん。きっと大丈夫だよ」


 つむぎつむぎが生まれ育った星で、強力な二頭の竜を正木が一人で倒してしまったことを思い出した。あれもそんなことが事前に可能だったとは思えなかっただろう。


「正木さまはつむぎにトピカを壊す任務に集中してほしいって思っているの」


 つむぎはリンの話しに思い直して立ち上がった。


「うん。分かった。私だって危ないのに人の心配している場合じゃないね」


「そうだよ。でもつむぎはリンが守るよ」


 つむぎはそれを聞いて暖かい気持ちになった。少なくともリンとは一緒に戦える。


 私はリンを守る。たとえトピカを破壊できなかったとしてもそれだけはやり遂げてみせる。


 つむぎは心のなかでそう誓った。

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