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科学文明探訪【Web版】  作者: 橋本禰雲
第九章 作戦会議
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「お前はあの計画について知っているんだな?」


「ええ。少し手伝ったりもしたから」


「何をした?」


「メトロポリスで子供を身ごもったカップルを探して手厚く保護してあげたのよ」


「手厚く? 物は言い様だな」


「あら、手厚い報酬を約束してたのよ。それに乗るカップルは多かった」


「何をしたんだ?」


 待ちきれなくなって正木が問うた。ニーナが答える。


「妊娠中に脳をいじったり、体を機械化するといけないから、そういうのをしなくてすむように、『手厚く』治療を受けさせたりしたわ」


 悪いことではないようにつむぎには思えた。


「あと、生まれた人間にも電脳化、機械化を一切行わないようにしたの」


 つむぎは回りを見た。別に悪いことではないように思えたからだ。この星の人間、バーシ、フェルミ、ルチアノは深刻そうな顔をしているが、魔法使いたちはよく分からなそうな顔だ。つむぎと同じようによく分からなかったのだろう。


「どうなった?」


 バーシが暗い声で聞いた。


「それだとなかなか生き残れないのよね。ほとんどの生まれたての人間は死んでしまったわ」


 そういう処理を行わないと生きられない状況にこの星の汚染が進んでいるということか……。


「でも運良く死なずに大きくなった者たちがいた」


「……ど、どのくらいの割合で?」


「1%にも満たなかったかしら。七人しか成功しなかったのだけど、今は十歳から五歳くらいになっているわ」


 いったいどれだけの子供がその計画によって救われないまま死んでしまったのだろう。その考えに至り、一同は沈黙した。


「大勢の犠牲の上に生き残ったその子供たちが、『無垢な子供たち』というわけですか……」


 ズルが悲しそうに言った。


「でも、その生き残った子供たちに罪はないし、確かに貴重な存在だよ」


 フェルミがバーシのほうを見て言った。


「電脳化や機械化は生殖能力に悪影響があることが分かってきたんだけど、それがあるべき姿にリセットされたようなものなんだから」


「待ってくれ」


 とルチアノ。


「彼らの存在を考えてみよう」


 そう言って正木たちのほうを手で示す。


「同じ人間のように見える。彼らとその……ええい、この際はっきり言えば、彼らがこちらに移住し、子孫を残すことができれば、その子供たちの重要度は変わってくるのではないか」


「問題外だ」


 正木が発言した。


「魔法界は人身の取引などということを絶対に許さない。少しでもその兆候が見られた場合は、評議会がこの星のゲートを封鎖するだろう」


 正木はそれだけ言って腕を組んで黙った。


「その子たちは重要よ。どこにいるの?」


 フェルミが改めてそう主張し、ニーナに問うた。


「トピカの所在地と同じく最高機密だったわ。レジスタンスのような組織の運営をしていたら分かってもらえると思うのだけど、情報は内部の関係者にもしっかりと保護していくことが重要なのよね。だからトピカがどこに置いてあるのかほとんどの人間にも、端末アンドロイドにも知らされていないし、無垢な子供たちがどこにいるのかという情報も同じレベルで保護されているの」


「まずはその情報を確認する必要がありそうですね……」


 ズルが言った。


「トピカと無垢な子供たちの所在地を」


 トピカは破壊するため。子供たちは救出するため。


「どうやって確認すればよいのか。知ってそうなトピカの高位の者に聞くのが手っ取り早そうではありますが……」


 全員の脳裏に一人の人物の顔が浮かんだ。


 顎の張り出したごつい顔のダンサー。


「では次に、我々魔法使い冒険者と、レジスタンスの情報を確認しましょう。まず我々のほうからですが……」


 ズルが会議をそう誘導すると正木が発言するために片手を挙げた。ズルは正木の発言を促す。


「戦力はここにいる魔法使い六人だ。時間があれば評議会にかけあって増援を要請することもできたかもしれないが、今回はそんな猶予はないだろう。大規模な戦争をするわけでもないからその必要もないだろうが」


 正木が言うとズルやバーシは頷いた。


「敵地に侵入しての探索や破壊活動は対応可能だ。私の得意分野でもある」


 正木はそう言うけれど私は空中戦闘しか自信がない! とつむぎは思った。それすら正木におんぶにだっこ状態だったのだが……。


 正木の言によく分かったとバーシは頷きながら次に発言した。


「レジスタンスに関してはあらゆる情報を今までは秘匿してきたのだが、ここではすべて開示させてもらおう。ここを生き残れないと我々も終わりだからな」


 バーシは手の平サイズの機械を取り出すと、それを使ってテーブルの上に立体映像を映し出した。それにはこの惑星の世界地図が表示された。赤い点がいくつもプロットされ、レジスタンスの拠点を意味しているらしい。


「時間がないため、この大陸内の拠点からしか集められそうにないが、それでもそれなりの兵数を集められるだろう。トピカを直接叩くために鍛えられている部隊たちだ。同数の兵力なら勝てる自信がある」


 バーシは勝ち気に言った。正木が軽く手を挙げて質問した。


「武器や装備はどのようなものがある?」


「半分は最新鋭の機材を持った部隊だ。戦車、戦闘艇せんとうてい、トピカから拿捕して修理した機械獣きかいじゅうも一機ある」


「フェルミさんたちが動かしていましたね」


 ズルが言った。


「トピカが使ったような核兵器はあるのだろうか?」


 正木からこの質問を受けてバーシはしばし沈黙した。


「……あのような都市を破壊できるレベルのものはないが、戦術レベルのものならある」


 つむぎはぞっとした。あの恐ろしい兵器をこの人たちも持っているらしい。あんなものを撃ち合っていたら命がいくつあっても足りなさそう。それに土壌汚染がひどいと言っていたのは核兵器のせいかもしれない。そのようなことをズルが言っていたような気がする。


 正木がズルに目配せするとズルは議論を前に進めようとする。


「とりあえずの情報は出そろったと思います。トピカの暴挙を止めるために我々が協力して何ができるかということの相談をしたいと思います。案はありますか? どんなものでも結構です」


「トピカタワーって言ったかな」


 リリーが発言した。


「あの大きな建物にトピカがあるんでしょう? そこに核兵器というのを一発だけ撃ち込んだらいいわ。威力が小さいのならトピカを破壊しつつ、被害は最小限に抑えられるかもしれない」


 またあの核攻撃を思い出して皆沈黙した。


「ハク、今の案について成功すると思うか?」


 正木が訪ねた。


「成功確率0.75% トピカはメトロポリスを核攻撃から防衛する迎撃システムを備えています。飛来するミサイルに対して地対空砲、および、迎撃ミサイルによってメトロポリス到達前に破壊できる可能性が大です」


 ハクが無表情で答えた。


「それに、」


 フェルミが言う。


「戦術核爆弾を搭載するようにミサイル兵器を改造する必要がある。やったことがないから。技術部に確認する必要があるけれど、時間的に間に合わないかも知れない。それに、無垢な子供たちを救出したいのに、トピカと近い場所にいるとして、その攻撃を行ってしまったら助けられない」


 難しそうだと分かって一同はほっとしたような空気に包まれた。


「可能性を探って潰していく意味でももっと案を出そう」


 正木が言った。

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