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科学文明探訪【Web版】  作者: 橋本禰雲
第九章 作戦会議
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 フェルミ率いるレジスタンス軍と合流してから、しばらくはそのままの乗り物で森の中を進んだ。レジスタンスはどうやって手に入れたのか、トピカの巨大な機械獣きかいじゅうを一台保有していて、それを動かしていた。機械獣きかいじゅうの回りには荒れた道でも進めるように、車高が高く造られた車両が五台付き添っていた。機械獣きかいじゅうや車両には、よく見ると上部にカモフラージュのために網のようなものがかけられ、枝や葉がくっつけられていた。彼らも空からの監視を警戒しているようだ。


 レジスタンス兵たちはつむぎたちの騎乗する動物にとても興味を惹かれたようだった。なにしろ巨大なサイに魔法の鞍をつけてドスンドスンと歩いて進むのだから当然だ。


 レジスタンスに案内され、しばらく進むとさらに深い森の中に入っていった。低木が増えてきて機械獣きかいじゅうは進めなくなるので、カモフラージュされた格納施設に置いていかれた。


 さらに進むと道は細くなり、でこぼこな地形が断続的に現れるほうへ分け入る手前で車両は停止した。


「ここからは徒歩だ」


 車両から降りてサイに近づいてきたフェルミが言った。馬もサイも先に進むのは難儀しそうなので、魔法使い冒険者たちも降りて歩くことにした。


 頭上は木々が生い茂り、空からの監視については心配することは、もうなさそうだった。


 魔獣まじゅうの馬やサイを魔法使いたちがザックの中にしまったときはレジスタンス兵たちが驚きの声を上げた。


 フェルミはリンが大きな魔獣サイに向けて杖を振ると、もう一方の手の平にあった複雑な模様が刻まれた石に向かってサイが吸い込まれるようにして消えてしまったのを見た。


「ど、どうなってるの?」


 フェルミが口を大きく開けながら驚いて言った。


「サイちゃんは古代人が移動用に使っていた使役獣しえきじゅうだよ。この魔石ませきの中に封じられているの」


 リンはそう言ってサイが封じられた魔石をザックの中にしまおうとした。


「ちょ、ちょっとそれを見せてくれないか」


 フェルミがリンに手を伸ばした。


「いいよ」


 リンはにこやかに言った。


 フェルミは魔石を受け取って、それを目の前にかざして見た。精巧な彫刻によって不思議な紋様が石には刻まれていた。


「どうやってさっきの動物をここから出すの?」


「魔法を使うんだよ」


 リンはそう言ってザックから別の魔石を取り出した。彼女が杖を掲げると、その魔石から巨大な大鷲おおわしが飛び出てきて道端にドスンと着地し、広げると片方だけで大きなモミの木ほどもある翼をバサバサと羽ばたかせた。しかもギエエーと森中に響き渡るような鳴き声を発したので正木が怒った。


「リン! 何してる!? そいつをしまえ!」


 リンは慌てて再度杖を振って大鷲おおわしを魔石にしまった。フェルミにばつが悪そうに舌を出して見せる。


「すごいね!」


 フェルミが感嘆して言った。


魔石ませき使役獣しえきじゅうは召喚するときだけしか魔力を必要としないから便利なの。リンは召喚魔法が得意なんだよ。見せてあげる」


 リンはそう言うと今度は魔石ませきなどは出さずに杖をかざした。キラキラと光る複雑な模様が杖の周りをくるくる回り出して、杖の先に白い玉のような光りがその模様から出てきたようにフェルミには見えた。白い玉光りはフェルミのすぐ目の前の地面に落ちてきて、一瞬のちには人の半分くらいの大きさの人形になった。人形はわらでできているように見えた。目や鼻のない顔でフェルミを見上げて、片手を上げて挨拶しているようだった。


「召喚魔法の初歩の初歩。麦わら人形だよ」


 リンは楽しそうに言った。


 フェルミは手を伸ばして麦わら人形の手に触れてみた。麦わらの感触があった。


「どういう仕組みなのかしら。すごい」


 フェルミは麦わら人形を観察しながら言った。


「魔力を使って実体化しているから不思議なことはないよ。もっと高度な召喚獣なんかは複雑な術式を勉強しなくちゃならないし、魔力の準備も必要だから大変だけど」


 リンが杖を振ると麦わら人形はフェルミに向かってぶんぶんと手を振りながらかき消えた。


「フェルミ。時間が惜しい。出発しよう」


 ルチアノにそう促されて、フェルミはリンが見せてくれた魔法にすっかり夢中になって、他の人々を待たせてしまっていることに気づいた。


「ああ。すまない。おい! 先導してくれ」


 フェルミはレジスタンスの兵士に声をかけると兵士が先に立って歩くのについていきながら、リンたちの話しをもっと聞こうと思ったのか、魔法使いたちに近づいてから歩き出した。深い森の中の道は頭上に多い茂った木々の葉で日差しが遮られ、薄暗くも感じる道だった。細く狭い土の道が続いている。知らなければ人が通れる道とはなかなか気づかないだろうとつむぎは思った。


「その魔法という不思議な力でトピカを破壊しようと言うのだな?」


 フェルミは期待を込めて言った。


「そう簡単にはいかないだろうな。トピカという機械そのものの位置もまだ分かっていないし」


 正木が慎重さを声に込めて言った。


「トピカの場所だってその魔法とやらで探れば良いのでは?」


 フェルミの問いに正木は首を振った。正木はズルに目配せし、代わりに説明してくれという合図を送ったようだった。


 小難しいことはいつもズルにまかせちゃうんだから。


 でもズルに説明させるのは、そのほうが良いとつむぎも思った。魔法の力について、知らない人に分かりやすく話すのはなかなか難しいものだから。


「魔法の力を使って機械に干渉するのは難しいんです」


 ズルは歩く速度を少しあげてフェルミの横に出ながら言った。


「しかし、あのトピカ端末の通信を制限したりできているではないか?」


 フェルミは一番後ろを歩いてついてきている、ハクとニーナのほうを振り返って見ながら言った。


「あれは古代人が残した遺物、失われた古代魔法が封じられた魔具まぐを使った効果です。古代の魔法使いたちは機械を操ることもできる強力な魔術を持っていたんです」


 ズルが手振りを交えながら説明した。


「ではその魔具を使ってトピカを抑えてくれ」


 フェルミがそう言うとズルは首を振って答えた。


「残念ながら古代人が残した魔具は限定的なことしかできません。無線通信をできなくしたり、装着させた個体の特定の機能を停止させたりといったことです。トピカと呼ばれる都市を制御するような大型コンピュータの機能を制限するようなことは難しそうです」


「なんだ。魔法使いと偉そうなことを言ってもトピカに対しては無策なのだな」


 フェルミは正木たちを少し見下すように言った。


「情報の駆け引きをしている時間的な余裕はない」


 正木が地面に落ちている小枝を歩きながら踏んでパキパキという小さな音を出しながら言った。


「君たちレジスタンスに接触したいと思ったのは、我々と協力することでトピカの行動を止められる可能性があるかもしれないと思ったからだ。我々単独でもやれるかもしれないが、相当無理をする必要があるのでな」


 フェルミは少し考える様子を見せてから答えた。


「……分かった。アジトに着いたらバーシと一緒に話そう」

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