表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
科学文明探訪【Web版】  作者: 橋本禰雲
第八章 トピカ端末
32/42

32

 翌朝は夜明け前からリンが皆を起こしに各寝室を回り、手早く全員で戦闘糧食の朝食を済ませると魔法テントを撤収した。この日も天候は良さそうだった。払暁のオレンジ色の光が荒れた大地を照らす中、大鷲おおわしと護衛の魔獣鷹まじゅうたかは飛び立った。


 上空に達してから電脳コンピュータによって現在位置を確認したルチアノは、正木たちが驚いたことにトピカに近づくルートを示した。ルチアノが手首に仕込まれた投影機によって立体映像の地図を表示させて、レジスタンスの本拠地がある深い森を指し示すのを見てズルが言った。


「トピカのメトロポリスとそれほど離れていませんね」


「遠かろうが近かろうが発覚してしまえば同様の危険だと言っていたな。それよりもアクションを起こすときには近いほうが良いと」


 ルチアノは言った。


「あくしょん!いまこそ、その時。ですね!」


 リンが大鷲おおわしを操縦しながら言った。


「リンさん、僕が地形を見ますから右旋回 むぎ》の邪魔にならないように、飛ぶのは僕に任せてくれよと言っているように、ギャッと短く鳴いてハミを自らひっぱった。


 おっと、いけない。つむぎは自分の役割も忘れないようにしなくてはと気を引き締めた。360度を見渡して警戒する。敵が近づいてくるなら私が一番に見つけないとだめだ。でも日差しは暖かく、風に揺れるイムールの背中の上は心地よすぎて眠くなる。


 幸い目的地の森に近づくまで何事もなく、つむぎとイムールは大鷲おおわしに続いて高度を下げて行った。


 長く続いた荒野の先に現れた大きな森。森の中に比較的大きな川が流れているのが見えた。その川の川岸に、一行はまたカモフラージュの動的魔法フィールドを張りながら着陸した。


 ルチアノの説明によるとここから三時間ほどは森の中を歩いていくようだ。この時間を短縮するため、魔法使いたちは騎乗できる魔獣まじゅうを召喚することにした。正木、リン、デニは馬を召喚して騎乗した。残りの六人はリンが召喚してくれた大きな魔獣サイに乗った。サイの背中の上にはちょうど六人が乗れる鞍が付けられていた。 サイの鞍の先頭にはズルが乗り込み、手綱を握った。つむぎは魔獣サイに乗るのははじめてだった。サイはドスンドスンと歩き出したが、魔法がかけられた鞍の上は最低限の揺れと震動しか感じず、とても快適だった。


 三頭の馬と大きなサイは深い森の中を進んだ。


 つむぎはビアネが消失した一件以来塞ぎ込んでいるように見えるハクに声をかけた。


「ハク。調子はどお?」


 ハクはサイの動きに揺られながらつむぎを見た。無表情はいつものことだが、瞳がちかちかと瞬くこともなく、何の感情も伺わせなかった。


「私の調子は良好です」


 ハクは単調に答えた。


「その首枷くびかせ……ごめんね。辛くない?」


 つむぎはハクの首にはめられている首枷を指さしながら言った。つむぎも以前、正木と敵対関係にあったとき、同じように首枷くびかせを付けられたことがあった。そのときは首枷くびかせの魔具によってつむぎに魔法を禁じる効果があり、とても辛かったことを思い出したからだ。


「辛いという感情にはなっていません。私はアンドロイドですから」


「そう……」


「ただし、自己分析プログラムを実行したところ、このクビカセというものを装着されたことによって、私の中の幾つかの機能が正常に動作しなくなってしまいました。それで私の性能は85パーセント低減している状態となっています」


「私が聞くのは変な感じでしょうけど、どんな機能が正常に動かなくなったの?」


 つむぎ首枷くびかせの魔具について詳しくなかった。それで興味があって聞いてみたのだ。


「外部との無線通信ができなくなりました。有線通信についても仮想シミュレーションの結果は『シエキシャ』による許可命令がないと実行できないようです。それから『シエキシャ』、現在は正木に設定されているのですが、『シエキシャ』とその友好関係に設定されている人物、および、資産については敵対行動を取ろうとすると内部コア動力がカットされてしまい、正常動作することができなくなります」


「そ、その使役者の友好関係って順番があったりするの?」


「私が仮想シミュレーション結果から判断するに、『シエキシャ』の友好関係設定のデータ型は真偽値です。つまり友好関係か、そうでないかのどちらかです」


「そ、そう」


「私が行った正木の感情分析の観察結果についてお知らせしますと、首枷くびかせの友好関係設定とは異なり、正木のつむぎに対する友好関係は最上位の値となっています」


 ハクの報告を隣で聞いていたリリーは唇の端を歪めて少し笑ったようだった。


「よ、余計なことを報告しなくていいの!」


 つむぎは顔を赤らめながら慌てて言った。


つむぎについて、正木の感情分析は余計なこと。了解しました」


 ハクはそう言ったがつむぎは複雑な気持ちになった。私が言ったことだけどそうではないの。この微妙な気持ちがアンドロイドには分からないようだ。でもホムンクルスの私は人間として生きていたときと何ら変わらず思考していると思える。やはり魔法のほうが上なのでは? でもあの核ミサイル攻撃という破壊力を見ると、魔法では科学文明が作ったあの攻撃力に対応できそうにない。


 一長一短なのかな、とつむぎは思った。

YouTubeで朗読・ボイスドラマも配信しています

YouTubeで検索:harugin

もしよければ聴いてみてください

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
【Harugin Story Channel】
YouTubeでボイスドラマ配信しています
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ